おはようございます。
今日は、学校閉鎖等を理由とする大学教員に対する解雇に関する裁判例を見てみましょう。
学校法人金蘭会学園事件(大阪高裁平成26年10月7日・労判1106号88頁)
【事案の概要】
本件は、Y社が経営する千里金蘭大学の教授であったXが、次年度に担当する授業科目がなく、従事する職務がないことを理由として、Y社から平成23年3月31日限り解雇されたことにつき、解雇権の濫用に当たり無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と、本件解雇後の平成23年4月から本判決確定の日まで、毎月21日限り賃金60万5090円及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。
原審は、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとはいえないとし、無効であると判断した。
Y社は、これを不服として控訴した。
【裁判所の判断】
控訴棄却
【判例のポイント】
1 Y社は、平成21年度には教育研究活動のキャッシュフローの黒字化を早くも達成し、学納金に占める人件費比率も平成19年度の約199%から約93%にまで低下し、帰属収支差額の赤字も解消には及ばないにせよ一定程度は圧縮できていたのであり、経営改善計画の目標達成までは未だ道半ばであったとはいえ、着実に成果を上げつつあったということができるから、Y社が、本件解雇当時、年間約2億円以上の人件費の削減の必要があったものと認めることができない。
2 Y社の経営改善計画が着実に成果を上げつつあった過程で行われた短期大学部や現代社会学部の募集停止に際しても、Y社がその所属社員を「過員」として人員整理の対象とすることを検討した形跡は窺われず、むしろ、選考を経た者についてはB機構に配置し、教養科目の授業担当者及び教養教育改革の管理責任主体として雇用を継続することとし、平成22年4月からB機構を発足させ、その後同年6月21日に本件希望退職募集に踏み切るまでの間に、当時の千里金蘭大学の兼務者を除く教員数88名の4分の1近い21名もの教員を人員削減の対象としなければならないほどの財政面での異変が生じた事実も窺われないのであるから、本件希望退職募集や本件解雇の時点で、財政面の理由からも、21名に及ぶ教員を対象とする人員削減の必要があったとは認められない。そうすると、平成22年6月時点において、Y者が21名もの教員を対象として人員削減を行うことについて、Y社の合理的な運営上やむを得ない必要性があったと認めることはできない。
3 本件希望退職募集については解雇回避措置としての位置づけが可能であること、Y社が、本件希望退職募集の開始後、対象者に対する説明会を開催し、労働組合の申入れによる団体交渉に応じたことなど、納得を得るための手続を一応は履践していること、Y社が、退職に応じた者の不利益を緩和すべく、平成23年度限り特任教員として再雇用し、退職金の加算を提案するなどの措置をとっていること等を考慮しても、本件解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められず、その権利を濫用したものとして無効というべきである。
整理解雇の必要性が否定された事例です。
労働者側で整理解雇を争う場合には、決算書等を正確に理解し、本当に整理解雇を行う必要性が存在するのかを具体的かつ詳細に主張することが求められます。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。