Daily Archives: 2015年5月8日

労働災害80(アズコムデータセキュリティ事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、安全配慮義務違反等が認められないとした裁判例を見てみましょう。

アズコムデータセキュリティ事件(東京地裁平成26年12月24日・労経速2235号23頁)

【事案の概要】

Xは、Y社の従業員であったところ、平成25年8月24日以降欠勤し、同年12月3日、休職処分がされた。本件は、Xが、上記欠勤がY社の安全配慮義務違反に基づくものであり、また、上記休職処分が無効であると主張して、月額給与の支払を求めるとともに、上記安全配慮義務違反、無効な休職処分及び無効な賃金減額の通知によって精神的苦痛を受けたと主張して、慰謝料50万円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xとしては、12月2日に債務の本旨に従った労務の提供が可能な状態であれば、12月2日に出勤するか、その時点でXの体調からみて勤務することが可能な場所や従事する業務内容、条件についての協議を申し出なければならなかったというべきである
そうであるにもかかわらず、Xは、12月2日、3日と何の連絡もせず、出勤もしなかったのであり、Y社が、Xは越谷セキュリティセンターでの集配業務に従事できる精神的状況にはないと判断したこともやむを得ないものと認められる

2 Xは、本件診断書を提出しているが、「病状が改善しているため復職に関して問題なしと考える」との記載からは、どのような条件でXがY社での勤務を開始できるのか不明であり、また、あくまで医学的な判断であって、X自身がY社での勤務を開始する意思があることを示すものではないので、本件診断書の提出をもって、労務の提供があったとみることはできない
Xが越谷セキュリティセンターでの集配業務に従事できる客観的な状態にはなかったことは、X作成の11月30日付の労基署宛の文書において「ここ1週間あまり、引き続き極度の不安感に襲われて不眠症状が続いている」と記載されていることからも裏付けられる。Xは、Y社からの嫌がらせが続けば欠勤が続く可能性がある旨を記載したにすぎないと主張するが、労基署宛の文書ということからみても、病状が悪化していることを訴える趣旨と解される。また、Y社は、本件休職処分を発令した当時、上記文書の内容を認識していなかったのであるが、上記文書やXが無断欠勤したことからXの当時の精神状態が客観的に認定できる以上、本件休職処分の効力の判断においては考慮しうる事情と認められる。

非常に重要なポイントについて裁判所の判断が示されています。

上記判例のポイント1については、労使ともに理解しておく必要があります。

特に労働者側代理人は、依頼者に適切にアドバイスをする必要があります。