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今日は、労働組合の街宣活動等の事前差止め請求等が相当とされた裁判例を見てみましょう。
ミトミ建材センターほか事件(大阪高裁平成26年12月24日・労経速2235号3頁)
【事案の概要】
本件は、Y社らが、Y社ら二社の商品納入現場、請負工事現場、取引先又はY社代表者Aの自宅の周辺等における付近で、X組合の組合員又は関係者による街頭宣伝活動、ビラ配布又はシュプレヒコールによって、Y社ら二社は営業権を侵害され、名誉や社会的信用を毀損されたなどと主張氏、X組合に対し、営業権又は人格権に基づき、X組合の所属組合員又は第三者をして、各行為をさせることの差止めを求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償請求をする事案である。
なお、差止請求について、Y社らは、原審では、Y社ラ全員との関係で各行為の全て(ただし、街宣活動等をY社らを非難する内容のものに限定しない。)の差止めを求めたが、当審において、被控訴人ごとに差止めを求める行為を特定し、請求を減縮した。
原審が、差止請求については、対象をY社らを非難する内容のものに限定して認容し、損害賠償請求については、Y社ら二社の請求につき各330万円及び遅延損害金、Aの請求につき110万円及び遅延損害金の限度で認容したため、これを不服とするX組合が本件控訴をした。
【裁判所の判断】
街宣活動は、Y社ら二社のいずれとの関係においても正当な組合活動であるとは認められない。
ビラ配布は、正当な組合活動である。
シュプレヒコールは正当な組合活動とは認められない。
【判例のポイント】
1 労働組合であるX組合が組合員のためにする組合活動については、それが使用者等の権利や法律上の保護される利益を侵害するものであっても、その目的、必要性、態様、使用者に与える影響その他の事情を総合考慮し、社会通念上相当と認められる正当な範囲内のものである限り、違法性を欠くというべきである。そして、この場合、その行為が使用者等の社会的評価を低下させる内容の表現行為であるときには、当該表現行為において摘示され、又はその前提とされた事実が真実であるか、真実と信じたことにつき相当の理由(真実相当性)があるか否かも、重要な要素になるものと解される。
2 労働組合の組合活動であっても、組合員の使用者ではなく、殊更にその関連会社や取引先等の第三者を標的としてその権利や法律上保護される利益を侵害するものは、原則として社会通念上相当と認められる正当な範囲内の組合活動とはいえず、違法性が阻却されることはないというべきである。
3 労使関係の問題は基本的には労使関係の場(領域)で解決されるべきであり、労働組合の組合活動であっても、使用者の経営者等の私宅やその周辺等の私生活の領域に立ち入り、その平穏を害する行為は、原則として社会通念上相当と認められる正当な範囲内の組合活動とはいえず、違法性が阻却されることはないというべきである。
X組合によるシュプレヒコールは、Aの自宅から約240mという相当程度離れた距離で行われており、その内容も攻撃的・扇情的であったり、侮辱的であったりするものではないものの、横断幕の記載等に照らし、その目的は、別件地位確認等請求訴訟においてX組合組合員ら敗訴の控訴審判決が言い渡されたことを受けて、Y社やBに対して嫌がらせを行い、その社会的評価を低下させること自体にあったものともうかがわれ、少なくとも、元日の朝という特に生活の平穏を尊重すべき日時においこれを行うべき必要性は認められない。
これらを総合考慮すると、正当な範囲内の組合活動であるとは認められず、その違法性は阻却されないというべきであって、他にこの判断を覆すに足りる証拠はない。
労働組合の街宣活動に関する裁判所の考え方を参考にしてください。
なお、同事案の仮処分決定についてはこちらをご覧下さい。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。