Monthly Archives: 5月 2015

本の紹介437 応援する力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
応援する力 (朝日新書)

今、乗りに乗っている松岡修造さんの本です。

松岡さんの熱い気持ちが伝わってきます。

松岡さんこそ、見ていると応援したくなりますね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

やはり『頑張っている人』はどんな場面においても『応援したい』と思わせるものですね。勝ち負けや成績は関係ありません。コツコツ努力している姿、ベストを尽くそうとしている姿、工夫している姿を見ると、人は自然に『頑張れ』と応援したくなるものです。」(156頁)

事実、周囲から応援される人、あまり応援されない人がいます。

この違いは、本当に大きいです。

できることなら、周りの人から応援される人になったほうがいいですよね。

みなさんが、「応援したい」と思う方の共通点って何ですか?

その答えを、自ら実践すればよいのです。

周りの人を応援し、自分も周りから応援してもらえるような人になる。

なぜルフィーがたくさんの仲間から応援されるのか。

そこに重要なヒントがありますね。

有期労働契約56(社会福祉法人東京都知的障害者育成会事件)

おはようございます。

今日は、寮建替えに伴う世話人業務契約更新拒絶の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

社会福祉法人東京都知的障害者育成会事件(東京地裁平成26年9月19日・労判1108号82頁)

【事案の概要】

本件は、Y社運営のA寮の世話人として業務を行っていたXに対し、Y社がA寮が廃寮となったとして世話人業務に関するX・Y社間の契約の更新拒絶をしたところ、Xは、Y法人に対し、X・Y社間の上記契約は雇用契約であり、上記更新拒絶は権利濫用として無効であると主張して雇用契約上の地位確認および賃金請求を求めた事案である(主位的請求)。

なお、Xは、本件において、X・Y社間の契約が雇用契約と認められない場合の業務委託契約上の地位確認および委託料請求(予備的請求1)ならびに更新拒絶が有効とされる場合の損害賠償請求(予備的請求2)も合わせて求めている。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、510万余円を支払え(予備的請求2の一部認容)。

【判例のポイント】

1 本件契約は、「業務委託契約書」の表題でX・Y社間でこれまで契約締結がなされており、条項についても「次の業務を委託し、世話人がこれを受託した。」と業務委託であることが明示されていること、本件契約の条項上、Y社の就業規則の適用は予定されていないこと、・・・雇用契約のような指揮命令関係があるわけではないことを認めていること、がそれぞれ認められる。
以上の諸点に鑑みれば、本件契約が業務委託契約であることは明らかであり、Xの主位的請求は理由がない。

2 Xが世話人として従事していたA寮と「はうす池上」「池上なのはな」がグループホームとしての同一性を欠くことは明らかである。・・・本件ではA寮の建物所有者であるAが建物を取り壊したことにより、A寮の運営が不能となり、「グループホーム運営に支障」が生じたこととなるため、Y社は本件契約の更新を行うことはできない。そうすると、本件通知が権利濫用であるとはいえず、Xの主張は理由がない。そして、本件通知が有効である以上、Xの予備的請求1は理由がない。

3 Xの法的構成は不明確であるが、本件通知に違法はなく、その他、Y社の債務不履行事実を認めるに足りる証拠はない
もっとも、民法651条1項は、委任契約において、債務不履行責任に基づく解除とは別の解除権を認めた反面として、同条2項において相手方当事者からの損害賠償請求を認めた規定であって、債務不履行の事実は要件事実として不要である。また、業務委託契約は、契約の性質上、民法の典型契約のうち、委任契約に類する性格を有する契約であり、民法651条2項の適用又は類推適用の余地はある

4 Y社のあるべき対応として「はうす池上」「池上なのはな」の世話人にXが就任できない代わりに他のY社運営のグループホームの空きのある世話人にXを就任させることも、本来十分考えられるところである
・・・Y社がXに「はうす池上」「池なのはな」の世話人として従事させないことの代わりにXに対し損害賠償させることが本件において不当とはいえない。

5 これに対し、Y社は、「やむを得ない事由」(民法651条2項ただし書)に該当する旨主張する。
確かに、Y社の主張のとおり、本件契約が終了するのは、業務を行うべきA寮の建物所有者であるAが取り壊しを決めたために廃寮となり、Xが業務を行えなくなることにあるから、直接の終了原因となったのは、第三者であるAの判断である。
しかし、Y社は、A寮の取壊し前から新建物の建築に向けて相当程度の関与を続けていたことが認められ、その中で新建物の設計・内装にはY社の意向がかなり反映されていることは明らかである。第三者の独自の判断によるとまではいえない。前記のXの事情及び前記諸事情と比較した場合に、Xの損害賠償請求が否定されるような「やむを得ない事情」があるとは到底言えず、採用することはできない

この判決内容には、原告代理人も、内心、驚いているのではないでしょうか。

民法651条2項ただし書の「やむを得ない事由」の有無が争点となっており、裁判所の判断を読んでもわかったようなわからないような内容です。

原告側は、担当裁判官に恵まれた形です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介436 人生はZOOっと楽しい!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
人生はZOO(ずー)っと楽しい! ―毎日がとことん楽しくなる65の方法

犬、ネコに引き続き、今度は、動物園ということで、いろんな動物が登場します。

おみごとですね。 勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

目の前にある仕事に全神経を集中せよ。太陽光線も焦点が合わせなければ火をつけられない。」(グラハム・ベル)

大人物と小人物との差異は、一度意を決すれば、死ぬまでやるという覚悟があるかないかにある。」(フリードリヒ・シェリング)(53)

1人の力には限界があります。

時間にも限界があります。

このような制約の中で何かを成し遂げようと思ったら、あらゆることに手を出し、顔を出していては十分な力を1点に集中させることなどできません。

いかに力と時間を分散させないかがポイントになってきます。

ある地点からは、仕事、人間関係ともに取捨選択をしていかなければ、いくら時間があっても足りません。

不当労働行為112(学校法人札幌大学事件)

おはようございます。

今日は、給与規程等の改正にかかる団交の対応と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

学校法人札幌大学事件(北海道労委平成26年10月10日・労判1106号93頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、X組合に対し、平成24年9月4日掲示の法人給与規程の改正について、改正理由を資料を示して説明することなく団交継続中に本件給与規程改正を一方的に施行するなどしたこと、また、教員の定年後の勤務延長任用に関して、法人教員勤務延長任用規程の改正の協議を労組に申し入れず一方的に実施するなどしたことが、不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事案である。

【労働委員会の判断】

Y社の団交における対応は不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、上記規程改正につき、財政状況の健全化のため人件費の削減が必要であることを説明するだけではなく上記規程改正が財政状況の健全化にどの程度寄与し、今後どの様に財政状況を健全化していくのか、財政状況の見通しや中長期的な経営方針などを明らかにするなどして、上記規程改正によって労働者の被る不利益の程度が必要以上に過大なものではなく、また、特定の労働者だけが不利益を被るものではないなど、経過措置や代替措置などの他の施策も含めて上記規程改正が財政状況を健全化する施策として適正なものであることを説明しなければならない

2 Y社は、上記規程改正によって労働者の被る不利益、特に勤務延長任用教員に対する年俸額の削減につき、これまで申入れをしていた段階的な削減から一律に年俸額480万円に削減すること、さらには校務の負担及び休職の廃止などの不利益につき、労組の要求や主張に対し、単に財政難である旨を繰り返すのではなく、段階的な削減から一律に削減することにした理由や必要性の論拠、さらには激変緩和措置の有無などに関する情報を提供したり、校務の理解に対する溝を埋めるような提案や説得をしておらず、十分な説明をしたとはいえない

3 よって、Y社は、上記規程改正に係る団体交渉において、労働条件の更なる不利益変更につき、誠実に対応したと認めることはできない。

使用者側の説明が不十分であるとして誠実交渉義務違反とされた例です。

労働条件の中でも、賃金は労働者にとって最も重要なものですから、他の労働条件の不利益変更と比べても、より一層の説明が必要です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介435 なぜかうまくいくバカがやっている驚きの成功法則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
なぜかうまくいくバカがやっている驚きの成功法則

完全にタイトル売りですね(笑)

内容はさておき、どれだけキャッチーなタイトル、キャッチーなデザインにするかが勝負ですね。

帯にも書かれていますが、行動を起こすことの重要性が説かれています。

著者は、ただ闇雲に行動しているのではなく、明確な目的と計算のもとに行動しています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

理不尽に応えることで得られるものはいくつもあります。
・土壇場に慣れていく経験値
・追い込まれなければ思いつかないような方法論
・ムチャぶりを乗り越えたことで上がる周囲からの評価
・自分のペースで物事が進まないときにも動じない応用力
これらすべてが、仕事力の向上につながります。だからこそ、『普通に考えたらできないことをやる』。こうやって自分を追い込むことで、人間は成長していくものなのです。『理不尽は人を成長させるチャンス』 この言葉を胸に刻み込んでください。」(152頁)

「理不尽は人を成長させるチャンス」

いい言葉ですね。

もともと社会なんて理不尽のオンパレードですから、理にかなわないことにいちいち怒るようでは大変です。

理不尽に直面した際、腹を立てるのではなく、いかにこの局面を打開するかを考えることが重要です。

必ず解決策はある、と強く信じて最善を尽くすのです。

不当労働行為111(想石事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、就労拒否と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

想石事件(茨城県労委平成26年11月20日・労判1106号91頁)

【事案の概要】

Xは、Y社の取締役製造部長であり、A組合の執行委員に選出された。

A組合は、Y社に対し、未払賃金の支払等を要求して団体交渉を申し入れた。

その後、Xは、取締役辞任届を提出した。

Y社はXに対し、「取締役としての一切の義務及び権利が無効となり、会社との一切の関係が消滅した」旨通知し、翌日からXの就労を拒否した。

【労働委員会の判断】

Xの就労拒否は不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Xは、事業遂行に不可欠な労働力として会社の事業組織に組み込まれ、製造部門の業務に従事し、タイムカード打刻により労働時間を管理あるいは把握され、労務の対価としての報酬を受けていたものと評価できる。そうすると、XはY社との間で実質的な雇用関係にもあったものと考えるのが相当である

2 Xが会社の意を受けてA労組に加入した事実や、Xの加入によりA労組の運営等に関して、使用者の意向等が反映されたと思われるような事実については、一切認められないことを勘案すると、Xは労組法2条但書第1号により、労働組合への参加が制限される「役員」や利益代表者に当たるとまでは言えず、A労組も、労組法2条の要件を欠くものではなく、Xは労組法7条の保護を受ける労働者であると判断するのが相当である。

3 本件就労拒否は、未払賃金等や成果給、自動丸鋸機の問題などで敵対的な態度を見せるA労組を嫌悪したY社が、中心人物であるXを職場から排除することによって、A労組の組織や活動を弱体化することを企図した解雇であったと考えざるを得ないことから、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たると判断する。

Y社の主張は、なかなか厳しいものがあります。

取締役であったとしても、上記命令のポイント1のような事情がある場合には、会社としても形式的な対応は避けるべきであると考えます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介434 一流の人はなぜそこまで、習慣にこだわるのか?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
一流の人はなぜそこまで、習慣にこだわるのか?

「一流の人は~」シリーズですね。

同じような内容の本はたくさんありますが、結局のところ、どれだけ本を読んでも、やる人はごくわずかであるということです。

なんでも習慣化することが習慣化されている人は、何をやってもたいていうまくいってしまうのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『ジムに行かないと運動できない』と考える人は、ジム通いは仕事と同様、普段の生活とは相いれないものと考えているわけです。イメージとしては一日を大きなブロックごとに分割しているようなもので、各ブロックではそのことしかできないという考えでいるなら、ムダな時間が生まれて当然。一日にできることも限られてしまいます。そうではなく、私が大切にするのは、その両方を包括する上位概念。生活と行動の一致です。一日をどう分けるか決め打ちしないで、いかに同時進行させられるかで考えた方が、達成できることの数は断然に増えていきます。」(120頁)

体を鍛えるためには、ジムに通わなければならない・・・

英語を上達させるためには、英会話教室に通わなければならない・・・

料理の腕を磨くためには、料理教室に通わなければならない・・・

みたいな固定概念を持ち始めると、いくら時間があっても足りません。

時間にある程度余裕がある人でしたら、何の問題もありません。

でも、分単位で仕事をしているビジネスマンの場合、1日のスケジュールにこれらの予定を組み込むことはかなり大変です。

だからこそ、「生活と行動」を一致させるのです。

ジムに通う時間がなければ、10㎏の重りをかばんに入れて、歩きながら上腕二頭筋を鍛えればいいのです(笑)

歩きながら、かばんを上下に上げ下げしている人、いません?

それ、僕ですから。

解雇173(学校法人金蘭会学園事件)

おはようございます。

今日は、学校閉鎖等を理由とする大学教員に対する解雇に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人金蘭会学園事件(大阪高裁平成26年10月7日・労判1106号88頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が経営する千里金蘭大学の教授であったXが、次年度に担当する授業科目がなく、従事する職務がないことを理由として、Y社から平成23年3月31日限り解雇されたことにつき、解雇権の濫用に当たり無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と、本件解雇後の平成23年4月から本判決確定の日まで、毎月21日限り賃金60万5090円及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。

原審は、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとはいえないとし、無効であると判断した。

Y社は、これを不服として控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、平成21年度には教育研究活動のキャッシュフローの黒字化を早くも達成し、学納金に占める人件費比率も平成19年度の約199%から約93%にまで低下し、帰属収支差額の赤字も解消には及ばないにせよ一定程度は圧縮できていたのであり、経営改善計画の目標達成までは未だ道半ばであったとはいえ、着実に成果を上げつつあったということができるから、Y社が、本件解雇当時、年間約2億円以上の人件費の削減の必要があったものと認めることができない

2 Y社の経営改善計画が着実に成果を上げつつあった過程で行われた短期大学部や現代社会学部の募集停止に際しても、Y社がその所属社員を「過員」として人員整理の対象とすることを検討した形跡は窺われず、むしろ、選考を経た者についてはB機構に配置し、教養科目の授業担当者及び教養教育改革の管理責任主体として雇用を継続することとし、平成22年4月からB機構を発足させ、その後同年6月21日に本件希望退職募集に踏み切るまでの間に、当時の千里金蘭大学の兼務者を除く教員数88名の4分の1近い21名もの教員を人員削減の対象としなければならないほどの財政面での異変が生じた事実も窺われないのであるから、本件希望退職募集や本件解雇の時点で、財政面の理由からも、21名に及ぶ教員を対象とする人員削減の必要があったとは認められない。そうすると、平成22年6月時点において、Y者が21名もの教員を対象として人員削減を行うことについて、Y社の合理的な運営上やむを得ない必要性があったと認めることはできない。

3 本件希望退職募集については解雇回避措置としての位置づけが可能であること、Y社が、本件希望退職募集の開始後、対象者に対する説明会を開催し、労働組合の申入れによる団体交渉に応じたことなど、納得を得るための手続を一応は履践していること、Y社が、退職に応じた者の不利益を緩和すべく、平成23年度限り特任教員として再雇用し、退職金の加算を提案するなどの措置をとっていること等を考慮しても、本件解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められず、その権利を濫用したものとして無効というべきである。

整理解雇の必要性が否定された事例です。

労働者側で整理解雇を争う場合には、決算書等を正確に理解し、本当に整理解雇を行う必要性が存在するのかを具体的かつ詳細に主張することが求められます。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介433 死ぬ気で働く営業マンだけがお客様に選ばれる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
死ぬ気で働く営業マンだけがお客様に選ばれる

私は、この著者の本がとても好きです。

同じ考え方である点が非常に多く、とても共感できるからです。

以前、「死ぬ気で働いたあとの世界を君はみたくないか!?」という本を紹介しましたが、いずれも「死ぬ気で働く」というメッセージが伝わってきます。

こういうことを書くと、「過労死を助長するのはよくない」みたいなことをすぐに言われますね(笑)

死ぬ気で働かされている人は読んではいけません。

仕事大好きな人だけが読めばよい本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私の辞書には『不可能』という文字は載っているが、『スランプ』という文字は載っていない。できないこと、不可能なことはたくさんある。しかし、スランプはない。その言葉は『禁句』だ。口にすると、営業マンとしての魂が腐っていくような恐怖感が襲ってくる。その言葉をひと言でも口に出せば、全身の血が逆流し自分が堕落していくような恐ろしさに苛まれるほどだ。ときとして、成果が出ない、気持ちが乗らない、悪循環に陥る、ということは営業マンなら誰にでもある。調子の波は必ずやって来る。しかし、それには必ず理由があるのであって、スランプそのものが理由なのではない。原因はすべて『あなた』にある。」(54頁)

私のまわりで「スランプ」という言葉を使う人はいませんが、著者が言わんとしていることはよくわかります。

うまくいかない原因を「スランプ」のようなふわっとしたわけのわからないことに求めてはいけません。

原因はより具体的な点に求める必要があります。

そうしなければ、改善に向けた対応ができないからです。

著者も言っているとおり、うまくいかない原因はすべて自分にあります。

景気、政治、生活環境に原因を求めたくなる気持ちはわかりますが、それをすると、自分の力ではどうにもならないことを自ら認めることになってしまいます。

これらの外的要因がまったく影響しないとはいいませんが、原因はあくまで自分にあると考えるところからしか次には進めないと信じています。

解雇172(メルセデス・ベンツ・ファイナンス事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、中途採用者に対する普通解雇に関する裁判例を見てみましょう。

メルセデス・ベンツ・ファイナンス事件(東京地裁平成26年12月9日・労経速2236号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、稼働していたところ、解雇されたXが、この解雇は解雇権を濫用したものとして無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、賃金及び賞与並びにこれらに対する遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、同僚等に対し、日常的に高圧的、攻撃的な態度を取り、トラブルを発生させていたほか、インターネットのサイトで業務と無関係なことをし続けていたのであり、そのため、Y社は職務の遂行に支障を来していたところ、このようなXの言動は、容易には変わり得ないであろう性向等に起因しているものと推認できるから、Xについては、「協調性を欠き、他の従業員の職務に支障をきたすとき」と、「その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき」という、本件就業規則41条3号及び7号に該当する事由が存在したことが認められる

2 この点に関し、Xは、職種や配置の転換の可能性を検討することなく解雇したのは、解雇回避義務を尽くしたものとは評価し得ないと主張するが、Xの言動に照らすと、その原因であるXの性向等は容易に変わり得ないものと推測でき、職種や配置を転換することによって問題が解決ないし軽減の可能性を検討していなかったとしても、そのことをもって解雇回避義務を尽くしていないと評価するのは相当ではない
したがって、本件解雇については、「客観的に合理的な理由」があるものと認められる。

3 そして、Y社は、自分が職種限定社員であるという主張に固執していたXをその希望どおり与信審査部に異動させた上で、本件合意に沿って、他の従業員らとのコミュニケーション及び行状について、何度もXとの面談を実施し、注意を行い、懲戒処分たる譴責処分も行うなど、改善の機会を何度も与えたものの、Xの言動が基本的に変わることがなかったため、Xを解雇するに至ったものであるから、以上の経緯を踏まえると、本件解雇は「社会通念上相当」と認められる

4 これに対し、Xは、Y社がXに対し個々の言動を指摘した上で注意や指導をしたことはないから、具体的かつ明示的な注意や指導を受けていない言動を理由とする本件解雇は社会通念上相当性を欠くと主張する。しかし、Xは、21年間にわたる銀行勤務の後にY社との間で本件雇用契約を締結し、月額50万円近い賃金の支払を受けて稼働していたのであり、相応の経験を有する社会人として、自身で行動を規律すべき立場にあったものといえるところ、他者とのコミュニケーションに意を用い、その名誉や感情を徒に害するような言動を慎むことは、かかる社会人経験を有する者としては当然のことであり、改めて注意されなければ分からないような事柄ではない。とすれば、Y社がXに具体的かつ明示的な注意や指導をしていなかったとしても、そのことを重視するのは相当ではない。しかも、Y社が実施していた面談等は、何が問題であるのか通常の理解力があれば容易に認識し得る方法で提示し、注意や指導をしていたと評価することができ、Xとしても、改善の契機はあったと認められるのであって、Y社はXに行動を改める契機を何度も与えてきたということができる。むしろ、Xにおいて前期のような主張をしていること自体が、Xの処遇の困難性を示し、本件解雇の相当性を裏付けるものというべきである。Xの主張には理由がない。

今回は、裁判所も解雇の有効性を認めてくれましたね。

しかるべき手続を踏み、従業員の行動、言動をしっかりと記録しておくことが大切です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。