おはようございます。
今日は、配転命令の有効性が争われた裁判例を見てみましょう。
ゆうちょ銀行事件(静岡地裁浜松支部平成26年12月12日・労経速2235号15頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の従業員であるXが、Y社に対し、Xに対するY社浜松店からY社静岡店への配置転換命令が無効であると主張して、Y社静岡店に勤務する労働契約上の義務のないことの確認を求めるとともに、本件配転命令がXに対する不法行為を構成すると主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Y社は、本件人事異動制度の一環として、不正行為の防止及びXのスキルアップを目的として本件配転命令を行ったことが認められるところ、長期間同一店舗に勤務する社員に対する人事異動は不正行為の防止及び社員のスキルアップに資する合理的なものであり、このことはXにも当てはまることから、本件配転命令には業務上の必要性があるものと認められる。
2 Xは、本件配転命令により通勤時間が延伸した結果、家族と過ごす時間が大幅に短くなり、生活上の著しい不利益を被った旨主張するところ、本件は移転命令により、Xが通勤のため60分から90分程度の時間を要することとなったことは上記認定のとおりである。しかしながら、本件は移転命令がされた当時、Xの妻は専業主婦であり、上記のとおりXの通勤時間が延伸したとしても、当時小学6年生の長女及び小学3年生の長男の養育が困難となるような客観的事情は見当たらない。このことは、Xが静岡店において残業や中勤を命じられる可能性があることを考慮しても異ならない。
3 Xが家族と共に過ごす時間を何よりも重視していること、本件配転命令による通勤時間の延伸によりその時間が減少して苦痛を感じていることは認められるものの、長時間通勤を回避したいというのは、年齢、性別、配偶者や子の有無等に関わらず、多くの労働者に共通する希望である。配転命令の有効性を判断するに当たって考慮すべき労働者の不利益の程度は、当該労働者の置かれた客観的状況に基づいて判断すべきものであり、上記のようなXの主観的事情に基づいて判断すべきものではない。
以上によれば、本件配転命令によりXが受ける不利益は、労働者が通常甘受すべき程度を著しく超えるものとは認められない。
配転事案についての裁判所の考え方がわかりますね。
配転により、かなり深刻な問題が生じない限り、通常甘受すべき程度を著しく超えるものとは認定してもらえません。
実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。