おはようございます。
今日は、中途入社の採用内定取消しに対する不法行為該当性に関する裁判例を見てみましょう。
カワサ事件(福井地裁平成26年5月2日・労判1105号91頁)
【事案の概要】
本件は、Xが、XとY社とはY社がXを将来雇用する旨の始期付解約権留保付雇用契約(「本件内定契約)を締結したところ、Y社は本件内定契約にかかる採用内定を違法に取り消した旨主張して、不法行為に基づき、Xの被った損害および弁護士費用の合計約735万円およびこれに対する遅延損害金を請求した事案である。
【裁判所の判断】
Y社はXに対し252万8114円+遅延損害金を支払え
【判例のポイント】
1 Y社代表者は、その陳述書ないし尋問において、Y社代表者がXを不採用とした理由として、XがY社代表者に対してXが以前勤務していた会社の社長の悪口を述べたこと、Xが以前勤務していた会社におけるXの素行が悪かったこと、を供述するが、上記供述に係る各事実が認められたとしても、これらはいずれもY社代表者が本件内定契約の成立の当時に知ることが期待できた事実であるというべきである。
2 ・・・以上の検討に照らせば、Y社は平成24年4月13日に本件内定契約を合理的な理由なく解約したものというべきであり、これはY社のXに対する不法行為を構成するものというべきである。したがって、Y社は、Xに対し、不法行為に基づく損害賠償の義務を負う。
3 Xは、本件内定契約が解約されなければ、本件内定契約に基づき、遅くとも平成24年4月1日からY社に就職し、これにより、少なくとも月額25万円の賃金を得ることができたこと、Xは平成25年1月7日から本件再就職先に就職したこと、Xは本件内定契約が解約されたことに伴い失業保険として52万0273円を受領したこと、の各事実が認められる。
上記事実に照らせば、Xは、Y社による上記不法行為により、少なくとも、上記平成24年4月1日から平成25年1月6日までにY社から得られたであろう賃金分として、Xの主張する方法によって算出した合計229万8387円から上記失業保険受給額52万0273円を控除した177万8114円分の損害を被ったものというべきである。
4 Xは、本件内定契約の成立を受けて訴外会社を退職したこと、Xは現在本件再就職先に就職して収入を得ているが、Xの現在の収入は訴外会社に勤務していた場合に比べて減少していることの各事実が認められる。他方、Xの収入に係る上記減少の額を認めるに足りる的確な客観的証拠は見当たらないことを始め、その他本件に現れた一切の事情を斟酌すれば、Y社がXに対して支払うべき慰謝料の額は50万円が相当であるというべきである。
内定は、「始期付解約権留保付雇用契約」です。
留保解約権の行使に合理的な理由がなければ、違法と判断されてしまいます。
今回の事案では損害賠償を求めていますが、地位確認を求めることも当然可能です。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。