おはようございます。
今日は、乗務員らに対する会社解散を理由とする整理解雇等に関する裁判例を見てみましょう。
帝産キャブ奈良(解雇)事件(奈良地裁平成26年7月17日・労判1102号18頁)
【事案の概要】
本件は、タクシー乗務員であったXらが、会社の解散に伴って整理解雇等をされたことに対して、整理解雇の無効、会社の団体交渉拒否について不法行為による損害賠償などを求めた事案である。
【裁判所の判断】
整理解雇は有効(不当労働行為にも該当しない)
団交拒否は不法行為に該当する
【判例のポイント】
1 会社の解散など企業の廃止に伴ってされる全労働者の解雇についても労働契約法16条所定の解雇権濫用規制が適用される余地があるが、職業選択の自由や財産権の保障といった見地から企業を廃止することが事業主の専権に属すると解され、その権利行使の当然の結果としてされるものであることから、真実企業が廃止された以上、それに伴う解雇は、原則として、労働契約法16条が規定する「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると解するのが相当であると認められない場合」に当たらず、有効であると解するのが相当である。しかしながら、解散による企業の廃止が、労働組合を嫌悪し壊滅させるために行われた場合など、当該解散等が著しく合理性を欠く場合には、会社解散それ自体は有効であるとしても、当該解散等に基づく解雇は「客観的に合理的な理由」を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇であり、解雇権を濫用したものとして、労働契約法16条により無効となる余地があるというべきである。
2 会社解散による解雇の場合であっても、会社は、従業員に対し、解散の経緯、解雇せざるを得ない事情及び解雇の条件などを説明すべきであり、そのような手続的配慮を著しく欠いたまま解雇が行われた場合には、「社会通念上相当であると認められない」解雇であり、解雇権を濫用したものとして、労働契約法16条により無効と判断される余地がある。
・・・本件解散決議については、Y社の株主が決定したものであるから、組合が団体交渉により求めようとしていたその決議の撤回等について、Y社役員らが団体交渉等において交渉することには限度があり、団体交渉を行ったとしても、これによって本件解散決議が撤回された可能性は乏しいと考えられる。また、人員削減等による整理解雇の場合には、従業員のうち特定の者が解雇されることから、その整理解雇の対象とされた者に対し、整理解雇の対象とされた理由を説明するなどしてその理解を得る努力が求められるが、本件各整理解雇は本件解散決議に基づく全従業員の解雇であるから、解雇される全従業員に説明すべき事項が本件解散決議の理由に限られることになるものの、本件解散決議はY社の株主の判断であるため、その理由をY社の役員らが全従業員に対し詳細に説明するのは困難であるといわざるを得ない。
3 Y社は、組合から本件解散及び本件整理解雇等についての説明会の開催を求められ、また、それらの撤回等のための団体交渉を求められたにもかかわらず、これらを拒絶しており、また、組合及びその組合員であるXらほか乗務員らに対する文書による説明も十分とはいえなかった。
このような団体交渉の拒絶及び説明を十分に行わなかったことは、組合の団体交渉権を違法に侵害するものであり、組合に対する不法行為に該当すると認めるのが相当である。
・・・上記不法行為による組合の損害の額については、30万円を認めるのが相当である。
会社解散に伴う整理解雇に関する裁判所の考え方がわかりますね。
参考にしてください。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。