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今日は、私生活上の非違行為を理由とする諭旨解雇処分に関する裁判例を見てみましょう。
東京メトロ(諭旨解雇・仮処分)事件(東京地裁平成26年8月12日・労判1104号64頁)
【事案の概要】
本件は、Xが、Yがした平成26年4月25日付け諭旨解雇が無効であると主張して、雇用契約上の地位保全及び賃金仮払いを求める事案である。
【裁判所の判断】
Y社は、Xに対し、平成26年8月から平成27年7月まで(ただし、同月20日より前に本案の第1審判決の言渡しがあったときは、その言渡日まで、毎月20日限り、25万円を仮に支払え。
その余りの申立てをいずれも却下する。
【判例のポイント】
1 本件非違行為が、Y社の事業活動に直接関連し、Y社の社会的評価の毀損をもたらすものであると評価でき、Y社の企業秩序維持の観点から懲戒の対象となり得るものであることは、前記説示のとおりである。そして、痴漢行為が被害者に大きな精神的苦痛を与えることは周知の事実であり、痴漢行為を防止すべき駅係員として、倫理的にそのような行為を行ってはならない立場にあるXが本件非違行為を行ったことは、厳しく非難されるべきものである。
2 しかし、本件諭旨解雇は、自己都合退職の場合と同様の計算により算定した退職金が支払われるほかは、基本的にはY社が就業規則において規定する懲戒処分中、最も重い懲戒解雇と同列に取り扱われている。そこで、本件諭旨解雇の相当性については、なお慎重な検討が必要である。
3 本件非違行為の態様は、被害女性の臀部付近及び大腿部付近を着衣の上から手で触るというものであって、同種事案との比較において悪質性が高いとまでいうことはできない上、刑事処分においても公判請求はされておらず、東京都迷惑防止条例5条1号、8条1項2号の法定刑(6月以下の懲役又は50万円以下の罰金)では軽微な罰金20万円の略式命令で処分されるにとどまっている。
また、Y社が開示する、従業員の痴漢行為に関する懲戒処分例によれば、従業員が起訴された場合には諭旨解雇とされる一方で、不起訴処分となった場合には停職等にとどめられるとの運用がされていることが一応認められるところ、一件記録に照らしても、本件非違行為に対する懲戒処分の選択において、Y社側において、刑事手続における起訴・不起訴以外の要素を十分に検討した形跡がうかがわれない。
そして、Xには前科・前歴やY社からの懲戒処分歴が一切なく、勤務態度にも問題はなかったことが一応認められることを併せ考慮すれば、企業秩序維持の観点からみて、本件非違行為に対する懲戒処分として本件諭旨解雇より緩やかな処分を選択することも十分に可能であったというべきである。そうすると、本件諭旨解雇は重きに失するといわざるを得ない。
4 ・・・他方で、Xの支出としては、・・・合計約25万円程度を要することが一応認められる。上記のとおり疎明される債権者側の収入、資産及び支出の状況に加えて、Xについては、平成26年8月から平成27年7月まで(ただし、同月20日より前に本案の第1審判決の言渡しがあったときは、その言渡日まで)、毎月20日限り、月額25万円の賃金仮払いの限度で保全の必要性があると一応認められる一方で、その以上の保全の必要性を認めることはできない。
処分が重すぎるという判断です。 相当性の要件でぎりぎり救われました。
仮に一般の方が裁判員裁判で、本件事案で解雇の有効性を判断する場合、同じ結論になるでしょうか・・・?
まあ、一審で裁判員が解雇は有効であると判断しても、高裁でひっくり返されるか(皮肉)。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。