Monthly Archives: 2月 2015

不当労働行為101(ZINZAN事件)

おはようございます。

今日は、離職した組合員に対する解雇予告手当および未払時間外労働賃金の支払を議題とする団交に応じないことと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

ZINZAN事件(岡山県労委平成26年9月25日・労判1099号93頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が経営する飲食店で働いていたX組合の組合員Aの解雇予告手当および未払残業代を議題とする団交に一度は応じたものの、その後、平成25年10月3日および同月10日に組合が申し入れた団交にY社が応じなかったことが、不当労働行為に当たるとして救済が申し立てられた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、解雇予告手当について、A及びX組合に十分な説明を行っておらず、離職に際して未清算の事項が存在するので、本件当事者間で協議する必要がある
以上のことから、Y社がA組合員の合意退職等を理由に解雇予告手当の支払いを議題とする団体交渉に応じないことには理由がない。

2 ・・・このように、Y社は、A組合員の時間外労働の実態を正確に把握していたとはいえない。また、X組合はY社に対し、再三にわたりA組合員の勤務実態を把握し、時間外労働の有無を明らかにするため、A組合員に関するタイムカード、A組合員の勤務した店舗の営業日報、会社の就業規則等の資料の提供を求めたにもかかわらず、Y社はタイムカードの一部を提示したのみで、団交でその他の資料をX組合に提示していないことが認められる。また、A組合員が休憩時間も含めて最大で14時間就労を繰り返していた際にも、Y社は職務懈怠等を理由に時間外労働は生じていない旨を主張するが、具体的な職務懈怠の説明をしていないことが認められる
以上に述べたY社の対応は、交渉の都度、主張が変遷するなどX組合の理解と納得を目指した誠実な対応であったとはいえないから、説明を尽くしたとの主張は認容することはできず、団体交渉を拒否する正当理由とは認められない

3 前記判断のとおり、Y社が、A組合員に対する解雇予告手当及び未払い残業代に関する組合の本件団交申入れに応じないことは労組法7条2号に該当する不当労働行為である。

全体を通じて、使用者側の説明不足という評価をされています。

もちろん使用者として、正直なところ、組合に見せたくなく会社の資料もありますが、少なくとも就業規則に見せない理由はないと思いますが。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介400 人生を変える正しい努力の法則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
人生を変える 正しい努力の法則

著者は、弁護士の方です。

「努力」がテーマになっていますが、努力以外にも著者の人生観や考え方を知ることができます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

結果ではなくプロセスで評価を求めたり、努力を売り物にするときは、実は努力が嫌で嫌でしょうがないか、結果が出ない言い訳にしている場合です。こういう努力は、愛の押し売りと同じように、見苦しいものです。自己中心的な、承認欲求を満たしたいだけの行為にすぎません。そして、多くの場合、結果もついてきません。ビジネスの世界でも、プロセスをやたら強調する人がいますが、それはプロフェッショナルのやることではありません。プロフェッショナルは結果がすべて。努力してもしなくても、結果を出さなければ意味がありません。努力やプロセスは、あくまで他人が評価するものであって、自分が声高に主張するものではないのです。」(138頁)

褒められたい症候群の方には、耳が痛い意見だと思います。

その仕事でお金をいただいている以上、仕事の種類に関係なく、多くの方がプロフェッショナルです。

プロセスが重視されて久しいこの社会において、あえて「結果がすべて」と言うことの意味は大きいと思います。

僕たちは、より結果を重視すべきです。

プロセスを重視するということは、結果が出ないときの言い訳、逃げ道を予め設定しておくことなのかもしれません。

もちろんどれだけ一生懸命に努力しても、結果が伴わないことはあります。

でも、ここでプロセス重視に逃げない。

あくまでも「結果がすべて」というスタンスを崩さないことで見えてくる道もあるのだと思います。

賃金88(フジスター事件)

おはようございます。

今日は、賃金格差の一部が性別に基づく不合理な取扱いとされた裁判例を見てみましょう。

フジスター事件(東京地裁平成26年7月18日・労経速2227号9頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、約20年間勤務した後、平成21年5月9日付けで定年退職したXが、在職中、Xが女性であることを理由として、賃金及び賞与が男性従業員よりも不当に低く抑えられてきたため、本来Xが受けるべきであった平成18年5月分以降の月例賃金、住宅手当、時間外割増手当、退職金、夏季・冬季賞与及び決算賞与の額と実際にXが支給された額との各差額相当額、年金差額相当額、慰謝料及び弁護士費用の合計として、①主位的に1621万4960円、②予備的に1551万7093円の損害を被ったと主張し、不法行為に基づく損害賠償請求をした事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、55万円(慰謝料50万円+弁護士費用5万円)+遅延損害金を支払え。

その余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 Y社における賃金決定過程は、諸要素を考慮するものの、最終的にはY社代表者の判断で決定している部分が大きいものである。
企業として、いかなる点を重視して従業員にインセンティブを与えるべきか、という事柄は、当該企業の経営判断に属するものであり、当該企業の経営方針等に照らし、一定の職種によりインセンティブを与えるという方針の下で給与決定をすること自体は、それが職種の違いを踏まえても合理性を有しない不当な差別にわたると評価される場合に該当しない限り、違法とされるものではないというべきである。

2 Xは、平成20年2月8日付けの本件合意書において、本件組合フジスター支部の支部長として記名押印をしているところであるが、本件合意書には、X以外の本件組合の特定の組合員4名について住宅手当、家族手当及び主任手当を同年2月から支給する旨の条項、過去分の住宅手当及び家族手当については、上記組合員4名に対し、解決金名目で210万3000円を支払う旨の条項の他、いわゆる清算条項(「本件に関し」との限定を付したもの。)が設けられている。・・・本件合意書における清算条項の当事者である「組合員」にはXも含まれるということが本件合意書締結当時の当事者の意思に合致するものと解するのが相当であって、Xの、平成20年1月分までの住宅手当及び家族手当については、Y社との関係においては、本件合意により清算済みであり、現在ではY社に対する請求権を有しないというべきである

3 Xは、在職中、Y社の不法行為により、同じ企画職の男性従業員と比べて、役職手当(主任手当)の支給される時期が著しく遅くなるという不利益を被っていた。そして、その不利益は、Xが支給されるべき時間外割増手当やXが受給すべき年金額にも一定の不利益を及ぼすものである。これらの不利益の程度を具体的に認定することができないことは既に述べたとおりであるが、Xは、Y社のかかる取扱いにより、性別により差別されないという人格権を侵害されたものであり、これによりXが被った精神的苦痛を慰謝するには、上記のXが被った不利益をも考慮した相応の金員の支払が必要である。そこで検討するに、Xと、企画職の男性従業員との間の主任手当の支給額の差額、Xの勤続年数、Y社における賃金決定方法について、経営陣の裁量に委ねられる部分が大きく、Xの予測可能性が乏しいといえること、上記のとおりXが具体的な程度を認定することはできないが一定の不利益を受けていること、その他本件に現れた諸般の事情を総合すると、Xの慰謝料は、50万円と認めるのが相当である。

原告側の代理人の訴訟活動の大変さが思い浮かびます。

慰謝料の金額、少なくないですかね・・・? 日本の裁判所ではこんなもんでしょうか?

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介399 銀座に集う一流の午後6時からの成功仕事術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
銀座に集う一流の午後6 時からの成功仕事術~エグゼクティブから学ぶ、人の心を動かす極意~

著者は、銀座のクラブのオーナーの方です。

銀座で多くのビジネスマンを接客する中で見えた一流の方の話題やマナーを紹介してくれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ゲストが自分より年齢的に若くても、自分の考えや価値観を主張せず、話の主導権を相手に委ねることができる人は素敵だと思います。・・・基本的に、人は誰かの話を聞くよりも話しているときのほうが幸せです。だからこそ、できるだけ相手が話している時間を多くつくるように意識しましょう。」(107頁)

よく聞く話ですが、トップセールスマンは、話すのがうまいのではなく、聞くのがうまいのです。

人はみな、はなしを聞いてほしいのです。

口べたなトップセールスマンを僕は何人も知っています。

会話はキャッチボールです。

どれだけ相手の方に気持ちよくボールを投げてもらえるかが大切だと思います。

自分ばかりがボールを投げていないか。

自分が投げたいボールばかりを投げていないか。

意識することが大切です。

 

配転・出向・転籍22(学校法人越原学園(名古屋女子大学)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、配転命令拒否を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人越原学園(名古屋女子大学)事件(名古屋高裁平成26年7月4日・労判1101号65頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が設置・経営している名古屋女子大学の教授であり、Y社から平成23年4月1日付けで教職員研修室(兼務)の配転命令を受け、これを拒否したことを理由に普通解雇されたXが、Y社に対し、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、②未払賃金及び遅延損害金を求めた事案である。

原審は、本件配転命令は、業務上正当かつ合理的な理由や人選の合成はないのみならず、Xに対し不当な目的を持って行われたもので不当労働行為にも該当するから無効であり、これに従わなかったことを理由とする本件解雇も無効であると判断した。

【裁判所の判断】

配転命令は無効

本件解雇も無効

【判例のポイント】

1 Y社は、具体的に誰に対して配転命令を出すかについては、使用者側に相当広い裁量権があるとして、別段組合員を狙い撃ちにしているのではなく、学内行政に対する貢献度が低い、すなわち、あからさまにいえば比較的暇な教員を選ぶと、結果的に組合員に当たるにすぎず、Y社には、Xに様々な問題行動があったればこそ、Xを教職員研修室に配属することがXの行動に良い影響を与えるのではないかとの目論見もあったなどと主張して上記認定判断を批判するが、様々な問題行動のある人物を教職員に対する研修を実施する立場にある教職員研修室の室員に選任するのはむしろ不合理というべきであって、上記Y社の目論見をもって業務上の必要性があるといえるものでないから、Y社の主張は採用できない

2 (原審判断)・・・以上の事情を総合考慮すると、Y社が教職員研修室への異動を命じる職員が大学組合の組合員である場合には、その選任は恣意的に行われており、その異動命令の目的は、組合活動を封じ込め、あるいは職員に対しことさら知識・技能の不足をあげつらい、また、あえて無意味・手間のかかる単純作業に従事させるなどして、当該教職員の自尊心を傷つけ、心理的圧迫・精神的苦痛を与え、これに耐えられない者についてはそのまま退職に追い込み、これに反発する者については懲戒処分を出した上で、最終的には解雇処分をすることにあると認めるのが相当である

3(原審判断)以上によれば、本件配転命令は、業務上正当かつ合理的な理由や人選の合理性はないのみならず、Xに対する不当な目的をもって行われたもので、不当労働行為にも該当するというべきである
したがって、その余の点(著しい不利益の生む、手続違背の違法の有無、信義則に反するか否か)について判断するまでもなく、本件配転命令は違法であって、無効というべきである。

配転命令は使用者に広い裁量が認められていますが、その対象が組合員(特にポストが上の人の場合)である場合には、不当労働行為の問題が起こります。

また、あからさまに配置転換を退職勧奨の手段として用いると、権利濫用となります。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。

本の紹介398 ここらで広告コピーの本当の話をします。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ここらで広告コピーの本当の話をします。

タイトルのとおり、広告コピーに関する著者の考え方がわかりやすく書かれています。

読んでいてとてもおもしろいですし、参考になります。

何度も読み返すに価値のある本です。

おすすめです!

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕は『必死な人』が好きです。『小賢しい人』が嫌いです。・・・自分の小さい理屈にとらわれている人はそこで成長が止まります。それよりはバカの方が、可能性がある。バカで必死な人。僕だけじゃないですよ。世の中のCDも営業さんも、みんなそういう人が好きだし応援したいと思っているはずです。
それからもう一つ大事なこと。『謙虚』であることです。類似商品、競合商品がどんな広告表現をしているか。そんなことも調べずにコピーを書き出す人がいますけど、経験も少ない人が先達を見習わず、学ばず、自分の中にあるものだけで正解が導き出せるでしょうか。プロにおいてコピーの『勉強』というのは、類似商品、競合商品が築いてきた成功表現に学ぶことを言うのです。」(206~207頁)

良いこと言いますね。

業界にかかわらず、同じことが言えますね。

一生懸命に泥臭く仕事をしている人を見ると、応援したくなりませんか?

また、経験者や成功している人から学ぶ姿勢を常に持ち続ける。

教えを乞えば、多くの人はいろんなことを教えてくれます。

成功している人は、「企業秘密」なんて言いません。

吸収できるものは貪欲に吸収すべきです。

必ず成功している原因があるわけで、その核となっている部分を吸収することが大切ですね。

解雇162(I式国語教育研究所代表取締役事件)

おはようございます。

今日は、解雇等に関する代表取締役の任務懈怠と損害賠償責任に関する裁判例を見てみましょう。

I式国語教育研究所代表取締役事件(東京高裁平成26年2月20日・労判1100号48頁)

【事案の概要】

本件は、Xらが、Y社の代表取締役であったAに対し、Aが、Y社をして①Xらを不当に解雇させたこと、②Xらへの賃金の仮払いを命じた仮処分決定に従わなかったことが、AのY社に対する任務懈怠ないしXらに対する不法行為に当たるとして、会社法429条1項ないし民法709条に基づき、損害賠償請求をした事案である。

【裁判所の判断】

慰謝料20万円+弁護士費用2万円の支払を命じた

その余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、本件仮処分決定に基づき、Xに対して賃金の仮払いをすべきであったところ、これを履行していない。また、Y社にその支払能力がなかったと解することができないことは原判決が認定判断するとおりである。そして、Aが代表者であるY社は、本件仮処分決定に基づき株式会社Eに対する集金代行契約に基づく精算金債権が差し押さえられるや、同契約を解除していること、また、同じくAが代表者である学校法人Hも、本件仮処分決定に基づき差し押さえられたY社の売買代金債権が存在していたにもかかわらず、これに反して存在しない旨の虚偽の事実を記載した民事執行法147条1項に基づく陳述書を裁判所に提出したこと、Y社は、根幹商品である絵本を株式会社Nに代金1647万6893円で売却し、その代金がY社の口座に入金されると直ちに同口座からY社の口座に1650万円を送金していることなどを考慮すると本件仮処分決定に基づく仮払いの不履行についてはY社に悪意があり、また、仮処分手続における審尋等によりXらが仮払いを求める事情をY社の代表者であったAは認識できたから、仮払いに応じないことによりXに損害を与える結果となることを認識していたというべきである
したがって、Aには会社法429条1項及び不法行為に基づく責任があると判断するのが相当である。

第1審判決についてはこちらを参照してください。

これだけのことをやっても、慰謝料20万円です・・・。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介397 世界が変わる時、変えるのは僕らの世代でありたい(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
世界が変わる時、変えるのは僕らの世代でありたい。

家入さんの本です。

帯には、「20億円を使い切っても、都知事選で落選しても、ネットが炎上しても、この男はチョットしかめげない」と書かれています。

心の強さというのは、お金では買えません。 すばらしいですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

社会はそんなに甘くない、だからお前も地に足をつけて生きろ、俺だって色々と諦めたんだ!なんて意見、ほんと糞。知らんがな!!頼むから足引っ張るなって思うよ。」(106頁)

(笑)

社会はそんなに甘くない、夢なんか捨てろ、みたいなことを言う人、今どきいます?

少なくとも僕のまわりにはいないですが・・・。

むしろ、「夢しか叶わない」って本気で思っている人のほうが圧倒的多数じゃないですかね。

「だからお前も地に足をつけて生きろ、俺だって色々と諦めたんだ」(笑)

ださくて、とても言えません。

有期労働契約53(東京医科歯科大学事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、期間の定めのある大学の助教の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

東京医科歯科大学事件(東京地裁平成26年7月29日・労経速2227号28頁)

【事案の概要】

Xは、Y社が設置する東京医科歯科大学の助教として、期間を定めてY社に雇用されていたが、雇止めされた。本件は、Xが、本件雇止めに効力がないと主張し、Y社に対し、地位確認と雇止め後の月例賃金及び期末手当の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 任期のある助教にも、定年の定めのある職員就業規則が適用され、採用の日から35年以内の期間支給される初任給調整手当の定めのある職員給与規則が適用されることに加え、本件大学の大学院医歯学総合研究科(歯学系)においては平成25年3月に任期が終了する3年任期の助教で再任を希望した33名のうち30名が再任されたことからすれば、任期のある助教も継続した雇用が前提とされているものと認められる。そして、X自身、過去2回の再任を経ていることからすれば、Xには、更新の合理的期待が認められる。

2 教員任期に関する規則において、再任の可否を決定するに際しては業績審査を行うものとされており、原則として更新されるという期待までは認められない。再任の業績審査は、大学教員としての適格性の判断という性質上、本件大学の専門的裁量的な判断に委ねざるを得ないものであり、その判断過程に著しく不合理なものがない限り、雇止めの合理的理由が肯定されると解するのが相当である

3 再任の決定の判断過程は、分野長による評価が最も重要視されていることは双方当事者の主張から明らかである。
Xの分野長であるC教授は、Xの再任不適とした判断過程について、①Xに対して、本件基準①を満たす論文を作成するよう再三指導してきたが、Xは応えなかった、②分野長に着任してからさほど期間が経過しておらず、Xの再任を否定するような評価をするのは憚られたので業績評価表1及び理由書1を作成した、③D学部長からXのヒアリングの結果を伝えられ、その際受けた指摘が自己の考えと同じであったため、業績評価表2及び理由書2を提出し直したと、Y社の主張に沿う供述をする。
上記①から③については、次のとおり指摘ができる。まず、①については、XがC教授による度重なる指導にも全く応えなかったとすれば、理由書2にそのことが記載されているはずであるが、そのような記載はない。次に、②については、C教授が業績評価表1等を作成した平成24年10月は、同教授が分野長に就任してから1年が経過しており、Xの業績を評価する期間としては十分であったし、C教授自身の管理職としての評価が疑われるような安易な評価をしたというのも考え難い。そして、③については、D学部長自身、平成24年12月に研究業績の評価を2として、「引き続き、活躍を期待する」と記載した評価結果を通知しているのであって、同年11月に行われたヒアリングの結果で際に再任不適の評価をしたというD学部長の供述は信用できない

4 Y社が、一旦、Xを再任に適すると判断しながら、再任不適とした判断過程に合理性を認めるべき事情はなく、著しく不合理であったと認められる。したがって、本件雇止めには合理的理由を認めることができない。

再任の適否については大学側の専門的裁量的判断に委ねられているとしながらも、判断過程に「著しい」不合理があったと判断しました。

評価書1・理由書1と評価書2・理由書2との比較をしながら、判断過程の合理性を検討してくれています。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。