おはようございます。
今日は、賃上げの団交において回答の根拠となる売上高および人件費を含めた経費の内訳を提示しない会社の対応と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。
小城新生興業社事件(佐賀県労委平成26年10月20日・労判1101号171頁)
【事案の概要】
本件は、X組合が、賃金引上げ要求事項を議題とする団交において、Y社が、貸借対照表や損益計算書、もしくはそれに類似する資料の開示を拒否したことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
【労働委員会の判断】
不当労働行為にあたる
将来の労使関係安定を考慮して誠実な団交の応諾を命ずるに当たり条件を付した
【命令のポイント】
1 Y社は回答について具体的根拠を示した説明をしておらず、Y社が提示した資料からは会社の経費に占める人件費の割合やその内容が全く読み取れないのであるから、このような状況の中で、組合が自己の要求額や会社回答の妥当性を判断するために会社の財務資料の提示を求めたことには、一定の理由があるというべきである。したがって、Y社は、組合との交渉に必要な範囲内において、賃上げ額の説明に必要な具体的数値、例えば売上高や人件費を示すべきであったといえる。
2 ただし、組合発行の機関紙の表現や団交の経過を見ると、組合と会社間の相互不信は根強く、正常な労使関係が構築できない現状を鑑みると同時に、労使関係の将来における安定のためという救済命令の目的を踏まえ、特に条件を付すものである。
3 なお、組合は、貸借対照表や損益計算書、もしくはそれに類似する資料を求めているが、主文の範囲の救済(当事者間で提示方法等について協議し、合意することを条件とする。)を命令することによって、救済の実をあげうるものと判断する。
救済命令に条件を付した例として参考になります。
会社として、財務資料の提示を躊躇することはよくあることです。
もっとも、団体交渉の際に、必要な資料の提示を拒むと、不誠実団交とされますので、注意しましょう。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。