おはようございます。
今日は、更新3回後の期間満了を理由とする雇止めに関する裁判例を見てみましょう。
北海道大学(契約職員雇止め)事件(札幌高裁平成26年2月20日・労判1099号78頁)
【事案の概要】
本件は、Y社に契約期間1年間の契約職員として雇用され、3回の契約更新を繰り返してきたXが、平成23年3月31日の契約期間満了をもって雇止めとされたことは許されないとして、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認、雇止め後から本判決確定の日までの賃金及び遅延損害金並びに本件雇止めが不法行為であるとして慰謝料100万円及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。
一審(札幌地裁平成25年8月23日)は、Xの請求を棄却した。
【裁判所の判断】
控訴棄却
→雇止めは有効
【判例のポイント】(原審について)
1 本件においては、平成19年4月の本件労働契約締結の際、Xが3年雇用の方針を認識していたこと、更に、Xが、平成16年4月に短時間勤務職員として雇用された際にも3年雇用の方針を認識していたことは争いがない。当裁判所は、本件で最も問題になる点は、Xにおいて3年雇用の方針を認識した時点において、既に、雇用継続についての合理的期待を有していたと認められるか否かであると考える。
2 ①雇用継続の合理的期待を有するに至った後にXが3年雇用の方針を認識する(あるいは認識し得る)に至ったという場合であれば、使用者が事後的に設けた(労働者に認識させた)雇用期間の制限により労働者の雇用継続の合理的期待が消滅したと判断することが許されるのかという点が重要な論点になるが、②雇用継続の合理的期待を有するに至る前に、Xが3年雇用の方針を認識していたという場合であれば、その方針を前提に、Xが雇止めの時点で雇用継続の合理的期待を有していなかったとしても、①のような問題は生じないから、この区別は、本件の結論に大きな影響を及ぼす重要な点である。
3 Xは、自らが従事していた謝金業務は、非正規職員と比較しても不安定であり、財源を厚生科研補助金に依存しており、その支給がなくなれば、終了する可能性があることを認識していたのであるから、そのような謝金業務に最長で1年半従事したからといって、Xが3年雇用の方針を認識した時点において、その方針を超えて勤務が継続されるという合理的期待を有するに至っていたとはいえない。平成16年4月当時、C教授の研究に対する厚生科研補助金の支給は、平成17年3月31日までの予定であったから、その時点で、Xがある程度の勤務継続の期待を抱いたとしても、それが合理的なものと評価し得るのは、平成17年3月31日までが限度である。
4 仮にXが謝金業務に従事した期間を実質的には雇用的関係であると評価した場合には、平成14年10月頃から平成23年3月31日の本件雇止めまでの間に8年半の雇用的期間があったことになる。しかし、形式的に雇用的期間が相当連続したと評価したとしても、その実質は変わらないのであり、謝金業務に従事していた期間は、上記のように不安定で、雇用継続の合理的期待を持ち得ない雇用的関係であることに変わりはない。しかも、Xは、そのような雇用的関係が最長でも1年半続いた段階で3年雇用の方針を認識するに至っている。そうすると、謝金業務に従事した期間を実質的に雇用的関係であると評価したとしても、本件雇止め当時、Xが雇用継続の合理的期待を有していなかったという上記判断が変わるものではない。
5 なお、大学の非常勤講師として、1年の雇用契約が20回更新され、21年間にわたって勤務を継続してきた者につき、解雇に関する法理を類推しなかった原審の判断が維持された事例として、最高裁平成2年12月21日判決(亜細亜大学事件)がある。連続した雇用的期間が相当継続したと評価したからといって、当然に解雇に関する法理が類推されるわけではなく、その雇用的期間の性質、実質が問題になると解される。
非常に参考になる裁判例です。
特に上記判例のポイント3、4は理解しておくべき考え方ですね。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。