おはようございます。
今日は、解雇等に関する代表取締役の任務懈怠と損害賠償責任に関する裁判例を見てみましょう。
I式国語教育研究所代表取締役事件(東京高裁平成26年2月20日・労判1100号48頁)
【事案の概要】
本件は、Xらが、Y社の代表取締役であったAに対し、Aが、Y社をして①Xらを不当に解雇させたこと、②Xらへの賃金の仮払いを命じた仮処分決定に従わなかったことが、AのY社に対する任務懈怠ないしXらに対する不法行為に当たるとして、会社法429条1項ないし民法709条に基づき、損害賠償請求をした事案である。
【裁判所の判断】
慰謝料20万円+弁護士費用2万円の支払を命じた
その余の請求は棄却
【判例のポイント】
1 Y社は、本件仮処分決定に基づき、Xに対して賃金の仮払いをすべきであったところ、これを履行していない。また、Y社にその支払能力がなかったと解することができないことは原判決が認定判断するとおりである。そして、Aが代表者であるY社は、本件仮処分決定に基づき株式会社Eに対する集金代行契約に基づく精算金債権が差し押さえられるや、同契約を解除していること、また、同じくAが代表者である学校法人Hも、本件仮処分決定に基づき差し押さえられたY社の売買代金債権が存在していたにもかかわらず、これに反して存在しない旨の虚偽の事実を記載した民事執行法147条1項に基づく陳述書を裁判所に提出したこと、Y社は、根幹商品である絵本を株式会社Nに代金1647万6893円で売却し、その代金がY社の口座に入金されると直ちに同口座からY社の口座に1650万円を送金していることなどを考慮すると、本件仮処分決定に基づく仮払いの不履行についてはY社に悪意があり、また、仮処分手続における審尋等によりXらが仮払いを求める事情をY社の代表者であったAは認識できたから、仮払いに応じないことによりXに損害を与える結果となることを認識していたというべきである。
したがって、Aには会社法429条1項及び不法行為に基づく責任があると判断するのが相当である。
第1審判決についてはこちらを参照してください。
これだけのことをやっても、慰謝料20万円です・・・。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。