労働者性11(NHK神戸放送局(地域スタッフ)事件)

おはようございます。

今日は、成績不良を理由とする契約期間途中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

NHK神戸放送局(地域スタッフ)事件(神戸地裁平成26年6月5日・労判1098号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、平成13年7月以降5回にわたり、Y社の放送受信料の集金及び放送受信契約の締結等を内容とする期間6か月ないし3年間の有期委託契約を継続して締結してきたXが、Y社から平成24年3月1日をもって同契約を途中解約されたことにつき、前記契約は労働契約であり、Y社の回約は契約期間中における解雇であるから、労働契約法17条1項により、やむを得ない事由がない場合でなければ許されないところ、そのような事由に基づかない不当な解雇であるとして、Y社に対し、労働契約に基づき、労働者としての地位確認並びに未払賃金及びこれに対する遅延損害金の支払、並びに不法行為に基づき、不当解雇による精神的苦痛に対する慰謝料及びこれに対する弁護士費用並びに遅延損害金の支払いを求めた事案である。

これに対し、Y社は、Xとの間の契約は労働契約ではなく、委任契約あるいはこれに請負契約たる性質を合わせた混合契約であると主張してあらそっている。

なお、Xは、労契法18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)及び同法19条(有期労働契約の更新等)に基づく請求はしていない。

【裁判所の判断】

XとY社との間の契約は労働契約
→Xは労基法上・労契法上の労働者である

期間途中の解約は無効

慰謝料請求は棄却

地位確認を求める部分は確認の利益がないから却下

【判例のポイント】

1 ・・・以上の検討のとおり、①スタッフの業務の内容はY社が一方的に決定しており(仕事の依頼への諾否の自由がない)、②勤務場所(受持区域)もY社が一方的に指定し、事実上スタッフには交渉の余地がないこと(場所的拘束性)、③勤務状況についても、稼働日などについて事前に指示があり、スタッフは事実上それに従った業務計画表を提出し、定期的に報告することになっていたこと(業務遂行上の指揮監督)、④Y社は、ナビタンを使用した報告により、スタッフの毎日の稼働状況を把握でき、十分ではないと認めたスタッフには細かく「助言指導」していたこと(業務遂行上の指揮監督・時間的拘束)、⑤これらの「助言指導」は、特別指導」制度の存在により、事実上、指揮命令としての効力を有していたと認められること(業務遂行上の指揮監督)、⑥事務費は、詳細に取り決められており、基本給的部分と評価し得る部分及び賞与といえる制度も存在していたことに加えて退職金といえるせん別金ほかの給付制度も充実していることなどからすれば、Y社から支給される金員には労務対償性が認められるというべきこと(報酬の労務対償性、組織への結びつけ)、⑦事実上第三者への再委託は困難だったこと(再委託の自由がない)、⑧事実上兼業も困難であったし、これが許されていたとしても、本件契約の法的性質を判断する上で大きな要素となるものではないこと(専属性)、⑨事業主であることと整合しない事務機器等の交付が行われていたこと(機械・器具の負担等)などの事情が認められるところ、当裁判所は、これらの事情を基礎として総合的に評価すれば、本件契約は労働契約的性質を有するものと回するのが相当と考える。

2  X・Y社間において締結された最終の本件契約は、平成25年3月31日までのものであるところ、Xは、本件契約において労契法18条及び19条に係る主張をしていない。したがって、本件契約は、同日の経過をもって終了しているといわざるを得ないから、Xの請求は、同年3月分(同年4月末日支払)までは理由があるが、同年4月分以降は理由がない
また、同様の理由で、Xの本件契約上の地位は同年3月末日で消滅しているから、Xの請求第1項は確認の利益がないことになる。

労働者性について、いつもどおり、各要素について総合考慮されています。

請負契約にしたいと考える場合には、上記要素に配慮して契約内容を実質的に検討すべきです。

上記判例のポイント2については、裁判所から何の求釈明もなく、判決に至ったのでしょうか・・・。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。