おはようございます。
今日は、会員権等販売の元営業社員による未払歩合給等請求に関する裁判例を見てみましょう。
ZKR(旧全管連)事件(大阪地裁平成26年1月16日・労判1096号88頁)
【事案の概要】
本件は、XがY社に対し、雇用契約に基づき、未払いの歩合給およびこれに対する遅延損害金を求めた事案である。
【裁判所の判断】
Y社に対し約250万円の支払を命じた
【判例のポイント】
1 Y社は、営業社員を募集する広告に、基本給のほかに歩合給を支給する旨を記載していたこと、Xは、入社時、Y社から、基本給の他に歩合給が支給されると聞いたが、その際、歩合給の支給に何らの留保は付されていなかったこと、入社後数ヶ月間は固定給が25万円であったが、数か月後に19万3000円に引き下げられたこと、給与規程に歩合給に関する定めはないが、Y社は歩合規定を設けて営業社員らに歩合を支払っており、Xに対しては、入社後平成23年4月度まで、明細書に総支給額として記載された金額から所得税の源泉徴収分を差し引いた金額が、特段の留保なく全額支払われていたこと、Y社は、Xに対し、平成24年3月9日に31万3000円、同年5月1日、同月31日及び同年7月2日に各5万円を支払ったが、その後は支払をしていないこと、Y社は、Xら営業社員に対し、月別の売上げを公表したことはないこと、Y社は、平成23年5月度以降明細書どおりの支払をしないことについて、Xに対し、売上げが上がらないので支払を待ってほしいと述べたものの、月次売上が6億円に達しないからである旨の説明をしたことはないことが認められる。
2 これらの事実によれば、XとY社との間には、Y社が、Xの上げた売上げ等に応じて歩合を計算し、明細書に記載してこれをXに交付し、当該明細書に記載された金額を歩合給として支給することを内容とする黙示の合意が存在し、これが本件雇用契約の内容となっていたものと推認され、これを覆すに足りる証拠はない。
3 Y社は、歩合はY社がその従業員に対し恩恵的に支払っていた報奨金であってXに請求権はないと主張するが、上記各事実、・・・に照らせば、明細書を交付して支払われる金員は、Xの営業社員としての労働の対償すなわち賃金としての歩合給であり、その支払が上記のとおり本件雇用契約の内容となっていたものと推認される。
上記判例のポイント1のような事実が認定されれば、黙示の合意が存在するとされてもやむを得ないと思います。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。