Monthly Archives: 1月 2015

本の紹介396 常識の壁をこえて(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
常識の壁をこえて…こころのフレームを変えるマーケティング哲学

著者は、マーケティング界では超有名なダン・ケネディさんです。

タイトル通り、巷で「常識」とされている考え方を疑え、と説いています。

とても勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

世に言うところの『クリエーティビティ』については忘れたほうがいい。自分には創造性のかけらもないという人もくよくよする必要はない。創造性のあるなしはたいした問題ではないからだ。クリエーティブな人も、『創造のための創造』に陥らないよう気をつけ、すでに効果が実証されているものを(ちょっと改善して)活用するよう努める必要がある。当たり前のことを人並みはずれた熱意と努力で行うことの力を忘れてはいけない。」(104頁)

成功している人のやり方を学ぶ。

形を少し変えてみる。

微調整を繰り返す。

これが、天才ではない僕の「創造」の定義です。

はじめから、無から有を生み出そうなどとこれっぽちも思っていないのです(笑)

労働者性11(NHK神戸放送局(地域スタッフ)事件)

おはようございます。

今日は、成績不良を理由とする契約期間途中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

NHK神戸放送局(地域スタッフ)事件(神戸地裁平成26年6月5日・労判1098号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、平成13年7月以降5回にわたり、Y社の放送受信料の集金及び放送受信契約の締結等を内容とする期間6か月ないし3年間の有期委託契約を継続して締結してきたXが、Y社から平成24年3月1日をもって同契約を途中解約されたことにつき、前記契約は労働契約であり、Y社の回約は契約期間中における解雇であるから、労働契約法17条1項により、やむを得ない事由がない場合でなければ許されないところ、そのような事由に基づかない不当な解雇であるとして、Y社に対し、労働契約に基づき、労働者としての地位確認並びに未払賃金及びこれに対する遅延損害金の支払、並びに不法行為に基づき、不当解雇による精神的苦痛に対する慰謝料及びこれに対する弁護士費用並びに遅延損害金の支払いを求めた事案である。

これに対し、Y社は、Xとの間の契約は労働契約ではなく、委任契約あるいはこれに請負契約たる性質を合わせた混合契約であると主張してあらそっている。

なお、Xは、労契法18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)及び同法19条(有期労働契約の更新等)に基づく請求はしていない。

【裁判所の判断】

XとY社との間の契約は労働契約
→Xは労基法上・労契法上の労働者である

期間途中の解約は無効

慰謝料請求は棄却

地位確認を求める部分は確認の利益がないから却下

【判例のポイント】

1 ・・・以上の検討のとおり、①スタッフの業務の内容はY社が一方的に決定しており(仕事の依頼への諾否の自由がない)、②勤務場所(受持区域)もY社が一方的に指定し、事実上スタッフには交渉の余地がないこと(場所的拘束性)、③勤務状況についても、稼働日などについて事前に指示があり、スタッフは事実上それに従った業務計画表を提出し、定期的に報告することになっていたこと(業務遂行上の指揮監督)、④Y社は、ナビタンを使用した報告により、スタッフの毎日の稼働状況を把握でき、十分ではないと認めたスタッフには細かく「助言指導」していたこと(業務遂行上の指揮監督・時間的拘束)、⑤これらの「助言指導」は、特別指導」制度の存在により、事実上、指揮命令としての効力を有していたと認められること(業務遂行上の指揮監督)、⑥事務費は、詳細に取り決められており、基本給的部分と評価し得る部分及び賞与といえる制度も存在していたことに加えて退職金といえるせん別金ほかの給付制度も充実していることなどからすれば、Y社から支給される金員には労務対償性が認められるというべきこと(報酬の労務対償性、組織への結びつけ)、⑦事実上第三者への再委託は困難だったこと(再委託の自由がない)、⑧事実上兼業も困難であったし、これが許されていたとしても、本件契約の法的性質を判断する上で大きな要素となるものではないこと(専属性)、⑨事業主であることと整合しない事務機器等の交付が行われていたこと(機械・器具の負担等)などの事情が認められるところ、当裁判所は、これらの事情を基礎として総合的に評価すれば、本件契約は労働契約的性質を有するものと回するのが相当と考える。

2  X・Y社間において締結された最終の本件契約は、平成25年3月31日までのものであるところ、Xは、本件契約において労契法18条及び19条に係る主張をしていない。したがって、本件契約は、同日の経過をもって終了しているといわざるを得ないから、Xの請求は、同年3月分(同年4月末日支払)までは理由があるが、同年4月分以降は理由がない
また、同様の理由で、Xの本件契約上の地位は同年3月末日で消滅しているから、Xの請求第1項は確認の利益がないことになる。

労働者性について、いつもどおり、各要素について総合考慮されています。

請負契約にしたいと考える場合には、上記要素に配慮して契約内容を実質的に検討すべきです。

上記判例のポイント2については、裁判所から何の求釈明もなく、判決に至ったのでしょうか・・・。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介395 神さまとのおしゃべり(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
神さまとのおしゃべり -あなたの常識は、誰かの非常識-

この本は、「みつろう」と「神さま」との対話形式で話がすすんでいきます。

夢をかなえるゾウ」のパターンです。

分厚い本ですが、結構さくっと読めてしまいます。

帯にはこう書かれています。

99%の幸せを差しおいて1%の不満を探す人間のなぜ

これこそが幸せを感じられない根本的な原因ですかね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

他人を批判してはいけません。全てを認めない限り、あなたは幸せにはなれないのだから。」(450頁)

お前たちは、『片方』の意見だけを認める性質にある。たった1つの正解があると常に思っておる。だからは矛盾は絶対に許せないんじゃろう。」(455頁)

正解は一つじゃない、ということがわかると穏やかに生きることができると感じます。

人は、本当に他人を批判するのが大好きです。

自分が批判されるのは嫌なのに・・・。

自分が常に正しいという考えから抜け出すことが、心穏やかに生きる最も簡単な方法ではないでしょうか。

賃金87(ZKR(旧全管連)事件)

おはようございます。

今日は、会員権等販売の元営業社員による未払歩合給等請求に関する裁判例を見てみましょう。

ZKR(旧全管連)事件(大阪地裁平成26年1月16日・労判1096号88頁)

【事案の概要】

本件は、XがY社に対し、雇用契約に基づき、未払いの歩合給およびこれに対する遅延損害金を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社に対し約250万円の支払を命じた

【判例のポイント】

1 Y社は、営業社員を募集する広告に、基本給のほかに歩合給を支給する旨を記載していたこと、Xは、入社時、Y社から、基本給の他に歩合給が支給されると聞いたが、その際、歩合給の支給に何らの留保は付されていなかったこと、入社後数ヶ月間は固定給が25万円であったが、数か月後に19万3000円に引き下げられたこと、給与規程に歩合給に関する定めはないが、Y社は歩合規定を設けて営業社員らに歩合を支払っており、Xに対しては、入社後平成23年4月度まで、明細書に総支給額として記載された金額から所得税の源泉徴収分を差し引いた金額が、特段の留保なく全額支払われていたこと、Y社は、Xに対し、平成24年3月9日に31万3000円、同年5月1日、同月31日及び同年7月2日に各5万円を支払ったが、その後は支払をしていないこと、Y社は、Xら営業社員に対し、月別の売上げを公表したことはないこと、Y社は、平成23年5月度以降明細書どおりの支払をしないことについて、Xに対し、売上げが上がらないので支払を待ってほしいと述べたものの、月次売上が6億円に達しないからである旨の説明をしたことはないことが認められる。

2 これらの事実によれば、XとY社との間には、Y社が、Xの上げた売上げ等に応じて歩合を計算し、明細書に記載してこれをXに交付し、当該明細書に記載された金額を歩合給として支給することを内容とする黙示の合意が存在し、これが本件雇用契約の内容となっていたものと推認され、これを覆すに足りる証拠はない。

3 Y社は、歩合はY社がその従業員に対し恩恵的に支払っていた報奨金であってXに請求権はないと主張するが、上記各事実、・・・に照らせば、明細書を交付して支払われる金員は、Xの営業社員としての労働の対償すなわち賃金としての歩合給であり、その支払が上記のとおり本件雇用契約の内容となっていたものと推認される。

上記判例のポイント1のような事実が認定されれば、黙示の合意が存在するとされてもやむを得ないと思います。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介394 プレデターシンキング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週もがんばりましょう!

今日は本の紹介です。
プレデターシンキング/略奪思考 欲しいものはすべて「誰かのもの」

この本は、最初から最後までいくつものストーリーで構成されています。

それぞれのストーリーから教訓を導き出してくれています。

とてもわかりやすく、ためになる本です。 おすすめの一冊です!

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私の子供時代、こんな明快な格言があった-頼まなければ手に入らない。
だが大半の人は、望まない返事を恐れて頼むことをためらう。怖いのは拒絶されること。拒絶が怖いから頼まない。だから手に入らない。つまり、最初から失敗することが決まっているが、それでも拒絶されるよりはまし。・・・拒絶を避けることはチャンスを逃すことだ。いつも許可をもらえて拒絶に遭わずに済むなら、結構な話だ。だが、そうはいかない。拒絶に対処できない人間は、成功の可能性を自ら狭めている。」(92~95頁)

「拒絶を避けることはチャンスを逃すことだ」

「拒絶に対処できない人間は、成功の可能性を自ら狭めている」

断られることを恐れ、お願いできない人って本当に多いです。

断られることで、自分を否定されるのがいやなのです。

僕たちは、もっと断られることに慣れるべきです。 そして、断られることに対する免疫をつけるべきです。

いいじゃないですか、断られたって。 別に。

何がどうダメだから断られたのかを教えてもらう。 それを次につなげる。

それができれば、断られたことは決してマイナスではありません。

一度、断られたくらいでへこたれている時間など、ありますか?

時間がもったいない。

人生はそんなに長くありません。

解雇161(ブーランジェリーエリックカイザージャポン事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、GMに対するセクハラ行為を理由とする降格と雇止めの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

ブーランジェリーカイザージャポン事件(東京地裁平成26年1月14日・労判1096号91頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、GMとして採用したXに対し、セクハラ等GMとして不適切な行為があったとして、GMから業務部マネージャーに異動させ、賃金を減額した。また、Y社はXの定年日以降の労働契約は1年ごとの嘱託契約であったとして、平成25年2月28日以降、契約を更新しない旨を同年1月7日にXに通告したところ、Xが、本件降格が違法であると主張して、GMの地位にあることの確認および降格前の賃金と降格後の賃金の差額の支払い、慰謝料の支払いを求めるとともに、本件雇止めに効力がないと主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および平成25年1月以降の月例賃金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

降格は有効

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 本件降格に伴いY社はXに対して異動辞令しか交付しておらず、何らの懲戒処分を行っていないのであって、本件降格は人事権の行使として行われたものとみるほかない。

2 ・・・以上のとおり、複数の女性従業員の羞恥心を害するセクハラ行為を行っていたことが認められる上、裁判上は認定するまで至らない行為についても特に争っていなかったことも併せ考慮すれば、XにY社業務全般を統括するGMとしての適格性が欠けると判断したY社の判断に裁量の逸脱は認められない

3 Xは、減給額が過大であると主張するが、減給額が合計22万2000円に上るからといって、それだけで裁量を逸脱したものということはできない

4 X・Y社間において、雇用契約時に定年規定を適用しないという特約を交わしたということはないので、Xは平成24年2月末日をもって定年となり、同年3月からは嘱託契約が締結されたとみるほかないが、上記のとおり、Y社における嘱託契約は、1年のものとそうでないものがあること、Xについては、1年の嘱託契約となる継続雇用制度において定められた、定年6か月前までの条件提示と希望聴取という手続も踏まれていないことに照らすと、X・Y社間に1年の有期雇用契約が締結されたと認めることはできない
また、仮に1年の有期雇用契約であったとしても、定年後の継続雇用制度の趣旨からすればXには更新の合理的期待があり、降格後のマネージャーとしてのXの職務に問題があったと認められないことからすれば、本件雇止めは相当性を欠くものというべきである

複数のセクハラ行為の存在が認定されていることに加え、裁判上は認定するまでに至らない行為についても考慮の一要素となっていることは参考にすべきです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介393 なぜかすべてうまくいく1%の人だけが実行している45の習慣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
なぜかすべてうまくいく 1%の人だけが実行している45の習慣 (PHP文庫)

これまでにも何冊か紹介をしてきました井上先生の本です。

帯には「誰もができることなのに、99%の人はやっていない!」と書かれています。

元来、人間は、面倒くさがりで、飽きっぽく、弱い動物です。

そのことを十分に理解し、途中で止めない仕組みをつくっている人が成功のしかたを知っている人なのだと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

絶対に自分がやらなければならないということ以外はそれぞれのプロフェッショナルの手に委ねる。私が時間を創り出すために使っている方法です。・・・ここに気づくと、『時間を買うことは最高のコストパフォーマンスでお金を使うことだ』という考えに変わるでしょう。・・・お金は働けばまた手にできますが、同じ時間は二度と手にできません。」(73~75頁)

これまでに何度か同じようなことを書きましたが、多くの成功している経営者(に限りませんが)は、時間をお金で買っていますよね。

お金よりも時間のほうが大切だからです。

お金はまた稼げばいいですが、同じ時間はもう手にすることはできませんので。

特に私たち弁護士のように外部から会社の経営をサポートするような人間をうまく使うことで不慣れな仕事に時間を使わずに済むわけです。

債権回収なんてその最たるものだと思いますが。

弁護士に依頼すると高いんでしょ・・・という固定概念から、アウトソーシングできないでいる経営者の方は、先入観なしに一度、費用対効果を検討されたほうがいいと思います。

不慣れな債権回収を従業員にやらせ、従業員が精神的にまいってしまい、休職したり、退職したり・・・。

もう完全にその道のプロに依頼したほうがいいんですけどね。

一度、費用対効果がどんな具合か、弁護士に話を聞いてみてはいかがでしょう。

不当労働行為100(X労働者組合事件)

おはようございます。

今日は、組合の街宣活動等に対する差止め請求等に関する裁判例を見てみましょう。

X労働者組合事件(東京地裁平成26年9月16日・労経速2226号22頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Yらの街宣活動等の行為により、Xの名誉・信用が毀損され、平穏に事業活動を営む権利が侵害された旨主張し、Yらに対し、これら行為の差止めを求めるとともに、不法行為に基づき、連帯して230万円の損害賠償及び知念損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

街宣活動等の差止めを認容

慰謝料として100万円を支払え

【判例のポイント】

1 本件街宣活動等の態様、特に、配布されたビラにおいて「非常勤ヘルパーに対する不当な排除を許さない!!」、「だまし打ち的な職場からの排除」などと、演説において「会社の、甲の説によれば、雇止めだと言っているが、こちらから見れば、一方的な排除であり、解雇だというふうに評価している。」などとして、読み手ないし聞き手に対し、XがしたBに対する雇止めが不当だとの前訴判決の判断に反する印象を与えるものであること、その回数が、X事務所におけるものだけでも27回に及ぶこと、Xが本件雇用関係の不存在等について前訴を提起して公権的解決を求め、前訴判決確定後も平成23年にYらに対してYらのXに対する活動を止めるよう申し入れるなど、XがYらとの任意の交渉を拒絶する意思が明確であること等からすれば、本件街宣活動等は、Xの名誉・信用を毀損し、平穏に事業活動を営む権利を侵害するものといえる
以上の事実に加え、X理事らの自宅におけるものも十数回に及ぶこと、Y組合代表者が、今後もX及びXら理事に対して従前と同様の行動をとる余地がある旨述べていることなどからすると、Yらが今後も従前と同様ないし類似の方法で街宣活動等を行う蓋然性は高いといわざるを得ず、Xの名誉・信用を守り、平穏に事業活動を確保するためには、Yらの当該街宣活動等を差し止める必要性があるというべきである

2 本件街宣活動等のうち、X事務所におけるものは、Xの名誉・信用を毀損し、平穏に事業活動をする権利を侵害する違法な行為というべきであって、不法行為を構成するが、他方、本件街宣活動等のうち、X理事宅におけるものは、直ちにXの名誉・信用を毀損し、平穏に事業活動をする権利が侵害されたものとは認められない。
そして、本件街宣活動等のうちX事務所におけるものの回数・期間、ビラの内容等の態様、本件証拠により認められる諸般の事情を併せ斟酌すれば、Xが本件街宣活動等により被った損害は100万円であると認定するのが相当である。
この点につき、Yらは、Yらへの本件訴状送達時より3年以上前の行為については消滅時効期間が経過している旨主張する。しかし、Yらの行為は、その目的の同一性、態様の類似性等からすれば、Bの雇用問題に関する一連の継続した行為と評価するのが相当であるから、消滅時効期間は経過していないと認められる。

街宣活動等の差し止めが認められた事案です。

どのようなことを主張立証すればよいのかについて参考にしてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介392 人間は自分が考えているような人間になる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
人間は自分が考えているような人間になる

アール・ナイチンゲールの本です。

著者紹介によれば、ナイチンゲールさんは、アメリカでは「人間開発の神様」として知られている方だそうです。

とてもいい本だと思います。 何度も読むに値する本です。

おすすめですよ!

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

世間の人たちは日々暮らしていくのが精いっぱいなのであり、互いの足の引っ張り合いを演じていることにすら気がついていない。なのに、新しい事業を始めようとする起業家は、多数の人間がしていることなら間違いあるまい、と勝手に決めこんでいる。どうして世間一般が正しいといえるのか。皆、大成功などしていないではないか。世間一般の人間と同じことしかしていないで、めざましい効果が生まれるなどと考えるべきではない。」(244頁)

周りのみんなと同じほうが安心する・・・

多くの人が言っているから間違いない・・・

経営者にとって、「みんなと同じ」ということはマイナスにこそなれ、プラスにはなりません。

むしろ、みんながやっているならやらない。

みんながやっていないからこそやる。

こういう考えですよね。

みんなと同じことだけやっていて、どうやって成功するのでしょうか。

まわりから無理だと言われれば言われるほど燃えるくらいがちょうどいいのだと思います。

配転・出向・転籍21(リコー(子会社出向)事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう!

今日は、希望退職の応募を拒否した従業員らに対する出向命令に関する裁判例について見てみましょう。

リコー(子会社出向)事件(東京地裁平成25年11月12日・労判1085号19頁)

【事案の概要】

本件は、Xらが、Y社による2011年9月10日付け出向命令について、業務上の必要性及び人選の合理性を欠きXらに著しい不利益を与えるものである上、Xらに自主退職を促す不当な動機・目的に基づくものであるから出向命令権の濫用として無効であるなどと主張して、Y社に対し、①本件出向命令に基づく出向先において勤務する労働契約上の義務が存在しないことの確認、②Xらへの退職強要行為又は退職に追い込むような精神的圧迫の差止め、並びに③労働契約上の信義誠実義務違反及び不法行為に基づく損害賠償請求として、各原告に対し220万円及び遅延損害金の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Xらが、Y社に対し、Xらが訴外リコーロジスティクス株式会社に出向して同社において勤務する労働契約上の義務が存在しないことを確認する

その余の請求をいずれも棄却する

【判例のポイント】

1 第17次中計の大規模な人員削減方針が公表されたわずか半月後に本件希望退職が発表されたこと、本件希望退職の公表後間もなく、余剰人員とされた従業員の面談が開始され、結果としてその9割近くが本件希望退職に応募し、退職していること、Xらの面談では、その当初から、本件希望退職に基づく退職金の計算結果が具体的に示され、本件希望退職への応募を継続して勧められていること、Xらが断るとさらに面談が重ねられ、B及びCが本件希望退職への応募を数度にわたって勧めた末に本件出向命令が発令されたことは、認定事実記載のとおりである。これらに加え、人選担当者であるB及びCが、本件出向命令の内示に至るまでXらの具体的な出向先及び業務内容を知らなかったこと等も併せ鑑みれば余剰人員の人選は、事業内製化を一次的な目的とするものではなく、退職勧奨の対象者を選ぶために行われたものとみるのが相当である

2 リコーロジスティクスにおける作業は立ち仕事や単純作業が中心であり、Xら出向者には個人の机もパソコンも支給されていない。それまで一貫してデスクワークに従事してきたXらのキャリアや年齢に配慮した異動とはいい難く、Xらにとって、身体的にも精神的にも負担が大きい業務であることが推察される。

3 以上に鑑みれば、本件出向命令は、事業内製化による固定費の削減を目的とするものとはいい難く、人選の合理性(対象人数、人選基準、人選目的等)を認めることもできない。したがって、Xらの人選基準の一つとされた人事評価の是非を検討するまでもなく、本件出向命令は、人事権の濫用として無効というほかない。

4 本件出向命令の内容及び発令に至る経緯は、認定事実記載のとおりであり、リコーロジスティクスにおける業務内容は、前記のとおり、Xらにとって身体的、精神的負担の大きいものであることは否定できない。
しかし、リコーロジスティクス自体、半世紀近くの歴史を持つ会社であり、事務機器の製造、販売及び保守を基盤事業とするY社グループの事業を支える主要会社の一つである。Xらが行う業務は、リコーロジスティクスにおける基幹業務であること、就業場所も東京又は神奈川であり、Xらの自宅からは通勤圏内であること、本件出向命令後、Xらの人事上の職位及び賃金額に変化はないこと、結果として事業内製化の一端を担っていること等も併せ鑑みれば、本件出向命令が不法行為にあたるとはいえない

有名な裁判例ですね。

出向命令を退職勧奨の一手段として用いていることが客観的に明らかな場合には、人事権の濫用と判断されます。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら行いましょう。