おはようございます。
今日は、更新を繰り返してきた派遣社員らに対する雇止め等の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
日産自動車ほか(派遣社員ら雇止め等)事件(横浜地裁平成26年3月25日・労判1097号5頁)
【事案の概要】
本件は、X1及びX2は、Y社を派遣先、A社を派遣元とする派遣労働者として勤務していた者であり、Y社との間で労働契約が成立しているとして、Y社に対し、労働者たる地位の確認及び平成21年5月以降到来する分の賃金の支払を求めるとともに、Y社及びA社に対し、不法行為に基づく慰謝料300万円を連帯して支払うよう求めた。
(なお、実際には、原告は、X1ないしX5の5名いる。)
【裁判所の判断】
本判決確定の日の翌日以降の賃金の支払を求める部分は却下
その余の請求は棄却
【判例のポイント】
1 X5は、派遣従業員から期間従業員となること、期間従業員から派遣従業員となることを「地位のキャッチボール」と呼称し、これは派遣制限期間の潜脱を目的として設計されたものであり、無効な契約である旨の主張をしている。
そこで、この点について検討するに、期間従業員として採用される際にY社担当者から、期間従業員としての期間終了後は、再び派遣従業員となって引き続き就労することができる旨の説明がされていたり、派遣労働期間が終了する頃に派遣従業員を対象とした期間従業員採用説明会が開催されるなどしていたことからすると、X5のみならず、Y社横浜工場で就労していた多くの派遣従業員が、短期間で派遣従業員からY社の期間従業員となり、再び派遣従業員となっていたことが推認されるところ、このような契約形態が常態化していたのは、Y社において、作業効率の観点から一定の経験を積んだ就労者を確保しつつ、他方で、いわゆる期間の定めのある労働契約の雇止めに際して期間更新の合理的期待を抱かせないようにすることにより期間従業員の雇止めが無効にならないようにする意図及び派遣期間制限違反が生じることを回避する意図が背景にあることが推認される。
2 しかしながら、労働者派遣法は、派遣労働期間の制限を定め、制限にかかるクーリング期間を設定しているところ、同法が平成24年10月1日に改正されたことによって離職後1年以内の労働者派遣が禁止されるまでは、派遣就労先において期間労働者として就労していた者を再び派遣労働者として雇用することを禁止する定めはなかったこと、また、クーリング期間中に派遣労働者を直接雇用することを禁止する定めもないことに照らせば、このような運用を行った場合に期間従業員に対する雇止めが有効となるか等は別途検討されるべき問題であるとはいえるものの、こうした扱いが当時の労働者派遣法の派遣期間制限に直接違反するものとはいえない。
3 また、Y社において、派遣労働者の希望の有無にかかわらず、派遣労働期間と期間雇用契約期間とを交互に設置して就労を継続させることを制度化していたことを認めるに足りる証拠はなく、上記の扱いは、派遣制限期間ごとに派遣就労先を変更することを避けて、同一の就労場所での継続的な就労を希望する派遣労働者の要請に応えたものともいえる。そして、Y社は、X5を職場推薦したように、1年以上就労している有能な派遣従業員についてはY社の正社員に登用する制度を用意し、派遣労働者を正規雇用化する措置も講じていたことを併せて考慮すれば、Y社の派遣労働者に対する上記のような扱いが、当時の労働者派遣法の潜脱を目的とするものであるとまでいうことはできない。
「地位のキャッチボール」が行われている現場は、全国各地にあると思います。
有名なマツダ防府工場事件判決とともに参考にしてください。
派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。