解雇158(ジヤコス事件)

おはようございます。

今日は、業務命令違反等を理由とする試用期間中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ジヤコス事件(東京地裁平成26年1月21日・労判1097号87頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結していたXが、試用期間中に解雇されたことが、解雇権濫用であり、無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 Xが試用期間中であり、XとY社との間の試用期間付雇用契約が解約権留保付雇用契約であることについては当事者間に争いがないが、試用期間中といえども一旦成立した雇用契約を解消させる以上、留保解約権の行使は、法的には解雇であるから、解雇権濫用法理に服することとなり、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合にのみ許されると解すべきである

2 Xが、顧客からの問い合わせに対し、マニュアル記載の回答そのものではない応対を複数回行ったことが認められる。
しかし、Y社の主張を前提としても、Y社の業務命令は、顧客に対し誠実かつ配慮を持って対応せよという趣旨なのであって、マニュアルの回答例そのものを回答せよという趣旨ではない上記Xの対応は、いずれも常識的な対応の範囲内というべきであり、やや事務的にすぎると思われる対応はあるものの、これがY社と当該顧客との継続的な取引を阻害するものであるとまでは認められない。Xの対応に関連して顧客から苦情があったことは認められるのは、前記・・・のみであり、その内容も・・のとおりであって、Xの対応に対する苦情とはいえない
したがって、Xの上記対応がY社の業務命令違反に当たる旨のY社の主張は、これを認めることができず、他にXの業務命令違反の事実の存在を認めることはできない。

マニュアル通りの回答をしないからといって、それだけで解雇が正当とはなりません。

結局は、程度問題なので、あとになってみないと解雇の有効性は判断できないところがつらいところですが、仕方ありません。

会社としては、短気を起こさず、教育し、根気強く改善を求めることからやりましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。