派遣労働20(日本S社ほか事件)

おはようございます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、派遣先との黙示の労働契約の成立および派遣先などへの損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

日本S社ほか事件(東京地裁平成26年4月23日・労経速2219号3頁)

【事案の概要】

本件は、A社及びA社を吸収合併したY社との間で派遣労働契約を締結し、派遣先であるS社において就業していたXが、①S社との間において、期間の定めのない労働契約が成立していると主張して、S社に対し、期間の定めのない労働契約上の地位確認並びに賃金及び遅延損害金の支払いを求めるとともに、②Y社らが、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律違反を行ったことにより、Xの権利・利益を侵害したと主張して、Y社らに対し、共同不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の連帯支払を求め、さらに、③S社が、Xの直接雇用を拒否し、Xの派遣就業を終了させたことにより、S社との間の直接雇用の実現に対するXの期待権を侵害したと主張して、S社に対し、不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払いを求めるとともに、④Y社が、XとS社との間の直接雇用の実現を侵害したことにより、上記直接雇用の実現に対するXの期待権を侵害したと主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払いを求める事案である。

なお、請求③及び④は、いずれも請求①を主位的請求とする予備的請求である。

【裁判所の判断】

いずれの請求も棄却

【判例のポイント】

1 労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質、さらに派遣労働者を保護する必要性等にかんがみれば、仮に労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、特段の事情のない限り、そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の雇用関係が無効となることはないところ(最判平成21年12月18日)、本件労働者派遣契約及び本件派遣労働契約が、労働者派遣法における派遣受入期間の制限等に関する一連の行政的取締的法規に違反するものであったとの事情をもって、本件派遣労働契約が無効になるものと解することはできないし、本件においては、上記特段の事情は窺われないから、本件派遣労働契約は有効に存在していたものと解するのが相当である。

2 労働者派遣法40条の4は、派遣先の派遣労働者に対する労働契約の申込義務を規定したにとどまり、申込みの意思表示を擬制したものでないことは明らかである。すなわち、労働者派遣法40条の4は、その規定の実効性を確保するために、厚生労働大臣による指導又は助言、労働契約締結の申込みの勧告、それに従わないときは勧告を受けた者の公表という、飽くまでも間接的な方法で労働契約の締結の申込みを促すという制度を採用しているにとどまる。仮に、S社が、派遣受入期間の制限を超過していることを知りながら、労働者派遣を受け入れていたとしても、そのことをもって、上記申込みの意思表示が擬制されるものではない

3 Y社らにおいて、労働者派遣法が定める派遣先の常用雇用労働者の雇用安定を目的とした一連の行政的取締規定(派遣受入期間の制限等)に違反するとの事実があったとしても、そのことのみで、派遣労働者であるXに対するY社らの不法行為が成立するものと解することはできないところ、Xが、Y社らの上記法令違反行為によるものとして主張する被侵害利益の内容やその法的根拠は不明瞭である上、上記法令違反行為によって、Xの主張する損害(賃金減額分及び慰謝料)が生じるものと解すべき事情も見当たらない。
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、XのY社らに対する労働者派遣法違反による共同不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。

特に目新しい判断はありません。

これまでの裁判例と同様の判断ですね。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。