おはようございます。
今日は、団体交渉の当事者適格(使用者性)に関する命令を見てみましょう。
日本電気硝子ほか1社事件(中労委平成26年2月19日・労判1088号94頁)
【事案の概要】
Xらは、Y1社の工場で測定業務および記録業務に従事していた。
Y2社は、Y1社が100%出資する連結子会社であり、Y1社のA事業場において、ガラス製造業務の一部を請け負っている(Y1社及びY2社を合わせて「Y1社ら」という。)。
B社は、Y2社から測定業務等を請け負っている。
Xらは、B社と雇用関係にある。
Xらは、B社退職後、組合に加入し、組合は、Y1社らに対し、交渉事項を「これまでの中間搾取と違法な労働者供給事業に対する補償をすること」などとする団交を申し入れたが、Y1社らは、労組法上の団交義務がないとして、団交に応じなかった。
組合の救済申立てについて、初審滋賀県労委は、団交拒否が不当労働行為にあたるとして団交応諾を命じた。
会社らはこれを不服として本件再審査を申し立てた。
【労働委員会の判断】
Y1社らは労組法上の使用者に当たらない
【命令のポイント】
1 本件団交事項は、Y1社らがX組合員らを直接雇用すべきであったことを前提に、X組合員らがY1社らに直接雇用されていたならば得られたであろう会社らの従業員との賃金の差額相当額等の補償を求めるものと解される。そうすると、本件団交事項は、会社らがX組合員らの雇用主であること又は雇用主と同視し得る地位にあることを前提としたもので、就労の諸条件にとどまらず、X組合員らの雇用そのもの、すなわち、採用、配置、雇用の終了等の一連の雇用の管理に関する決定に関わるものということができる。
2 これらX組合員らに係る採用、配置、雇用の終了等といった一連の雇用の管理に関する決定について、Y1社らがB社と同視できる程度に現実的かつ具体的な関与等をしたことを認めるに足りる証拠はない。
3 以上によれば、X組合員らの就労に関する諸条件についても、Y1社とY2社とはいずれも、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたものと認めることはできないから、Y1社らは、本件団交事項に関し、労組法7条の「使用者」に当たるものと認めることはできない。
このような団交事項の場合、必ずといっていいほど、労組法上の使用者性が問題となりますね。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。