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今日は、経営悪化を理由とする解雇および更新拒絶の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
ガイア事件(東京地裁平成25年10月8日・労判1088号82頁)
【事案の概要】
本件は、XがY社に対し、Y社による解雇及び更新拒絶が無効であるとする労働契約上の地位を有することの確認、同地位を前提とした未払賃金、時間外手当、育児休業給付金の申請手続にかかる証明拒絶による債務不履行および不法行為に基づく損害賠償およびそれらの遅延損害金の支払いならびにY社が関係諸機関から納付を求められている社会保険料のうちX負担部分を超える金員の支払義務のないことの確認等を求めた事案である。
【裁判所の判断】
解雇は無効
更新拒絶も無効
育児休業給付金相当額130万6800円の支払を命じた
【判例のポイント】
1 Y社は、本件解雇の理由として、Xが平成23年11月半ばからY社からの連絡に一切応じなくなり、電話も電子メールもY社からのものは着信拒否の設定を行い、Y社から連絡が取れなくなったことを主張する。しかし、本件全証拠によっても同主張を認めるに足りず、かえって、平成23年11月13日にはXがY社に電子メールを送信しており、同月下旬にはXが体調不良となったためXの夫を介してY社と連絡を取っていることが認められる。本件解雇の有効性を基礎づける事実は認められず、本件解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないから、解雇権を濫用したものとして無効と解するのが相当である。
2 本件雇用契約は合計8回、約2年間にわたり、その途中平成22年10月20日からは契約書に自動更新の条項が明記される中で更新されてきたものであるから、Xにおいて更新を期待することに合理的な理由が認められる。他方、Y社は、本件更新拒絶の際のY社の経営状況は悪化し、10数人いた従業員は数人に減り、それでも毎月赤字で、開発技術を持っていない総務要員を雇用することができなくなった旨主張するが、同主張を認めるに足りる証拠はない。そうすると、本件更新拒絶は無効であって、本件雇用契約は更新前と同様の条件で更新されていると認めるのが相当である。
3 本件解雇等は上記のとおり無効であり、XはY社の従業員の地位を有しているところ、使用者が労働者が雇用保険及び社会保険給付を受けるに当たって手続上必要な協力をすることは、労働契約上の付随的義務であると解され、その拒絶は債務不履行を構成する。
・・・Y社が証明を拒否したのは、・・・8か月間であり、その間に支給されるはずであった育児休業給付金は130万6800円(16万3350円×8か月)であるから、Xの損害は130万6800円と認めるのが相当であり、Y社は同額について損害賠償義務を負う。
使用者のみなさん、上記判例のポイント3に注意してくださいね。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。