Monthly Archives: 11月 2014

本の紹介378 借金100億円からの脱出(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、本の紹介です。
借金100億円からの脱出---地獄の危機を乗り越える逆転発想経営術

マネーの虎で有名な南原社長の本です。

取引先の経営破綻が原因で一度は多額の負債を抱えたものの、そこから復活した南原社長の経営術が書かれています。

仕事が本当に好きなんだろうな、ということが伝わってきます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

リスクを取ることは恐怖を伴う。経営にリスクはつきものだ。だとしたらリスクにどう対処するか、リスクとどう戦うか。私たちはリスク・マネジメントを習得する必要がある。それには常に自分を追い込むことが、その助けになるのだ。リスクと対峙しなければ、リスクについて真剣に考えることなどできない。・・・リスクも取らず、恐れも感じず安穏と日々を過ごしていては、事業を大きくしていけないということだ。ピンチをチャンスに、などとつまらないことは言うまい。事業はやればやるほどリスクは増えていくが、それだけ楽しいことが待っているのだ。」(32頁)

日頃、仕事の中でリスクと対峙していないと、やはりリスクに対する感覚が鈍ってしまうことはよくわかります。

リスクに対する感覚は、人によりさまざまです。

それは、育ってきた環境や現在置かれている立場、仕事などが影響しているのではないでしょうか。

リスクや恐れを感じない生活をしていると、今の生活が永遠に続くように勘違いをしてしまうのです。

でも、そんなわけありません。 これだけ社会が変化しているのですから。 しかも凄まじいスピードで。

変化するには、リスクが伴います。

成長を続けるためには、人も会社も、変化を恐れてはいけないと思います。

ナイキではありませんが、「リスク上等」という強い気持ちが必要なのです。

労働時間39(ヒロセ電機(残業代等請求)事件)

おはようございます。

今日は、変形労働時間制・事業場外労働適用の有無と残業代等請求に関する裁判例を見てみましょう。

ヒロセ電機(残業代等請求)事件(東京地裁平成25年5月22日・労判1095号63頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において勤務していたXが、時間外労働に対する賃金及び深夜労働に対する割増賃金と付加金の支払いを求めるとともに、内容虚偽の労働時間申告書等をXに作成、提出させたとして不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社の就業規則70条2項によれば、時間外勤務は、直接所属長が命じた場合に限り、所属長が命じていない時間外勤務は認めないこと等が規定されている。
また、平成22年4月以降の時間外勤務命令書には、注意事項として、「所属長命令の無い延長勤務および時間外勤務の実施は認めません。」と明記されていること、かかる時間外勤務命令書についてXが内容を確認して、「本人確認印」欄に確認印を押していることが認められる。
・・・以上からすると、Y社においては、就業規則上、時間外勤務は所属長からの指示によるものとされ、所属長の命じていない時間外勤務は認めないとされていること、実際の運用としても、時間外勤務については、本人からの希望を踏まえて、毎日個別具体的に時間外勤務命令書によって命じられていたこと、実際に行われた時間外勤務については、時間外勤務が終わった後に本人が「実時間」として記載して、翌日それを所属長が確認することによって、把握されていたことは明らかである。
したがって、Y社における時間外労働時間は、時間外勤務命令書によって管理されていたというべきであって、時間外労働の認定は時間外勤務命令書によるべきである

2 Y社の旅費規程には、出張(直行、直帰を含む)の場合、所定就業時間勤務したものとみなすと規定されており、出張の場合には、いわゆる事業場外労働のみなし制(労基法38条の2)が適用されることになっている。実際にも、Xの出張や直行直帰の場合に、時間管理をする者が同行しているわけでもないので、労働時間を把握することはできないこと、直属上司がXに対して、具体的な指示命令を出していた事実もなく、事後的にも、何時から何時までどのような業務を行っていたかについて、具体的な報告をさせているわけでもないことが認められる。Xも、出張時のスケジュールが決まっていないことや、概ね1人で出張先に行き、業務遂行についても、自身の判断で行っていること等を認めている(X本人)。なお、Xは、Y社がXに指示していた業務内容からして必要な勤務時間を把握できたはずであると主張しているが、かかる事実を認めるに足りる具体的な事実の指摘はなく、Xの主張を認めるに足りる証拠はない。
以上からすると、Xが出張、直行直帰している場合の事業場外労働については、Y社のXに対する具体的な指揮監督が及んでいるとはいえず、労働時間を管理把握して算定することはできないから、事業場外労働のみなし制(労基法38条の2第1項)が適用される

3 Xは、出張や直行直帰の日については、事前に訪問先や業務内容について具体的な指示を受け、指示どおりに業務に従事していたと主張する。しかしながら、Xの訪問先や訪問目的について、Xが指示を受けていたことは認められるが、それ以上に、何時から何時までにいかなる業務を行うか等の具体的なスケジュールについて、詳細な指示を受けていた等といった事実は認められず、Xの事業場外労働について、Y社の具体的な指揮監督が及んでいたと認めるに足りる証拠はない。

労働時間に関し、非常に参考になる裁判例です。

使用者側のみなさんは、是非、この裁判例を参考にして社内規程の作成、運用をしてみてください。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介377 不変のマーケティング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
不変のマーケティング

このブログでも頻繁に紹介する神田さんの本です。

マーケティングど真ん中の本です。

いろんなアイデアが紹介されているので、とっつきやすいものから実践していけば、おもしろいのではないでしょうか。

いつも2000円弱で神田さんからいろんなヒントをいただいています。 感謝してます。

今回の本は、かなり実践的で細かいハウツーが書かれています。

いかに自分の業界に応用できるかが鍵となりますね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・さらに重要なことは、『来店するメリット』を述べるだけでなく、『来店しないデメリット』を述べることだ。一般的に言って、人間は『新たなメリットを得る』ために行動するよりも、『現在あるデメリットを回避する』ために行動する動機のほうが強い。・・・たとえば、『この学習法を知れば、成績は倍になる』という話よりは、『もっと成績が良くて当たり前なのに、この学習法を知らないために、本来の半分の成績しか得られない』という話のほうが、より感情を揺り動かすのだ。」(51~52頁)

マーケティングは、心理学的な側面を多分に含んでいます。

同じことを相手に伝える場合でも、手段、場所、時間等によって、伝わり方が異なります。

相手に自分の考えをもっと伝えたい、という場合、マーケティングの発想は大変役に立ちます。

マーケティング会社に限らず、多くの人が日常の仕事の中で、マーケティングの発想を取り入れると表現方法が変わってくるのではないでしょうか。

不当労働行為95(南島原市事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、誠実交渉義務に関する命令を見てみましょう。

南島原市事件(長崎県労委平成26年7月22日・労判1095号94頁)

【事案の概要】

本件は、Y市が、組合からのゴミ収集業務の民間委託を議題とする団体交渉において、管理運営事項であり労働条件の変更はないと主張し、議論は平行線のまま進展しなかった。

このようなY市の対応が、労組法7条2号の不当労働行為に該当するかどうかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 確かに、管理運営事項については、地公労法第7条により団体交渉の対象とすることができないとされている。しかしながら、管理運営事項であると同時に労働条件にも関する事項があれば、その労働条件に関する事項は団体交渉の対象となると解されるところである。そうすると、本件民間委託自体が管理運営事項に当たるとしても、その実施に伴い影響を受ける労働条件については団体交渉の対象となるのであり、上記のとおり、本件においては労働条件の変更がないとは認められないのであるから、市の主張を採用することはできない。

2 ・・・以上のとおり、市の主張はいずれも認めることはできず、団体交渉において「労働条件の変更とは考えていない。管理運営事項であり、事前協議や団体交渉の対象ではない」という姿勢を頑なにとり続けた市の対応に合理的な理由を見出すことは困難である。
したがって、このような市の対応は、合意達成の可能性を模索する態度と評価することはできず、労組法7条2号の団交拒否(不誠実団交)に該当すると判断せざるを得ない。

上記判例のポイント1は理解しておきましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介376 世界を変えるエリートは何をどう学んできたのか?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
世界を変えるエリートは何をどう学んできたのか?

タイトルのとおり、世界のエリートたちが、何をどのようにして学んできたのかについて書かれています。

仮に世界を変えられるようなエリートでなくても、参考にすべき点はたくさんあります。

真似をすべき点はそのまま真似をしたらいいと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

“真のエリート”たちは『比較』という考えを捨てて花開いた。自分を見つめ、自分に訴えるものを知り、『どの位置にいて、どう見られたいか』ではなく、『何を“したいか”』に注目したからだ。・・・心理学者のスーザン。ボビット・ノレンのいう『課題志向』の彼らにとっては、他者との競争に勝つことではなく、自分のベストを尽くすことが人生のすべてだ。」(169~170頁)

「他者との競争に勝つことではなく、自分のベストを尽くすことが人生のすべてだ」

いい言葉ですね。

スポーツでも仕事でもそうですが、勝つときもあれば負けるときもあります。

どれだけ一生懸命に努力しても、結果がともなわないことはあります。

この本によれば、真のエリートたちは、他者との競争における勝敗という結果ではなく、そのプロセスにおいてベストを尽くすことを重視していることがわかります。

今置かれている状況で、人事を尽くす。

過去を振り返るのでも、遠い未来を夢見るのでもなく、今できることにベストを尽くすことが人生のすべてだと考えているのです。

派遣労働20(日本S社ほか事件)

おはようございます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、派遣先との黙示の労働契約の成立および派遣先などへの損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

日本S社ほか事件(東京地裁平成26年4月23日・労経速2219号3頁)

【事案の概要】

本件は、A社及びA社を吸収合併したY社との間で派遣労働契約を締結し、派遣先であるS社において就業していたXが、①S社との間において、期間の定めのない労働契約が成立していると主張して、S社に対し、期間の定めのない労働契約上の地位確認並びに賃金及び遅延損害金の支払いを求めるとともに、②Y社らが、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律違反を行ったことにより、Xの権利・利益を侵害したと主張して、Y社らに対し、共同不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の連帯支払を求め、さらに、③S社が、Xの直接雇用を拒否し、Xの派遣就業を終了させたことにより、S社との間の直接雇用の実現に対するXの期待権を侵害したと主張して、S社に対し、不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払いを求めるとともに、④Y社が、XとS社との間の直接雇用の実現を侵害したことにより、上記直接雇用の実現に対するXの期待権を侵害したと主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払いを求める事案である。

なお、請求③及び④は、いずれも請求①を主位的請求とする予備的請求である。

【裁判所の判断】

いずれの請求も棄却

【判例のポイント】

1 労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質、さらに派遣労働者を保護する必要性等にかんがみれば、仮に労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、特段の事情のない限り、そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の雇用関係が無効となることはないところ(最判平成21年12月18日)、本件労働者派遣契約及び本件派遣労働契約が、労働者派遣法における派遣受入期間の制限等に関する一連の行政的取締的法規に違反するものであったとの事情をもって、本件派遣労働契約が無効になるものと解することはできないし、本件においては、上記特段の事情は窺われないから、本件派遣労働契約は有効に存在していたものと解するのが相当である。

2 労働者派遣法40条の4は、派遣先の派遣労働者に対する労働契約の申込義務を規定したにとどまり、申込みの意思表示を擬制したものでないことは明らかである。すなわち、労働者派遣法40条の4は、その規定の実効性を確保するために、厚生労働大臣による指導又は助言、労働契約締結の申込みの勧告、それに従わないときは勧告を受けた者の公表という、飽くまでも間接的な方法で労働契約の締結の申込みを促すという制度を採用しているにとどまる。仮に、S社が、派遣受入期間の制限を超過していることを知りながら、労働者派遣を受け入れていたとしても、そのことをもって、上記申込みの意思表示が擬制されるものではない

3 Y社らにおいて、労働者派遣法が定める派遣先の常用雇用労働者の雇用安定を目的とした一連の行政的取締規定(派遣受入期間の制限等)に違反するとの事実があったとしても、そのことのみで、派遣労働者であるXに対するY社らの不法行為が成立するものと解することはできないところ、Xが、Y社らの上記法令違反行為によるものとして主張する被侵害利益の内容やその法的根拠は不明瞭である上、上記法令違反行為によって、Xの主張する損害(賃金減額分及び慰謝料)が生じるものと解すべき事情も見当たらない。
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、XのY社らに対する労働者派遣法違反による共同不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。

特に目新しい判断はありません。

これまでの裁判例と同様の判断ですね。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介375 99歳ユダヤのスーパー実業家が孫に伝えた無一文から大きなお金と成功を手に入れる習慣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
99歳ユダヤのスーパー実業家が孫に伝えた 無一文から大きなお金と成功を手に入れる習慣

長いタイトルですが、結局は、「習慣」にフォーカスしている本です。

考え方や生き方の「習慣」を変えることができれば、なりたい自分になることができます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

それにしても、最近、やる前から『自信がない』と言って諦めてしまう若者をよく目にするな。わしから言わせれば、それはまったくのナンセンスなのだが。そもそも、目の前のことに100%集中していたら、自信なんてものは意識せずともやっていけるもの。逆に言うと、自信がないと思った時点で、その仕事にありったけの情熱を注いでいないということだ。それに20代や30代なんか人生のスタート地点にすぎないのだから、やれることを全力でやるしかないんだよ」(35~36頁)

私は、「自信がない」という言葉は、「やる気がない」という言葉と同義語だと思っています。

同様に、「時間がない」という言葉も、「やる気がない」という言葉と同義語だと思っています。

結局、何かを成し遂げようとする気持ちがあるかどうかです。

ただ、「僕、やる気がないんですよ」とはなかなか言えないので、自信がない、時間がないという表現をしているにすぎません。

また、その方が、自分を正当化できますので。

「やる気はあるんだけど、時間がないからできないな~」と。

でも、ほんとのところは、「大きな声では言えないですけど、ぶっちゃけ、やる気がないんすよ」ということですよね(笑)

ですから、部下のみなさん、仕事を振られて、「自信がないです・・・」と言わないようにしましょう。

上司に「あ、こいつ、やる気がないんだな」と思われてしまいますので。

自信なんてなくても、できる限りの情熱をもって精一杯やればいいのです。

ちゃんとそういう姿勢を見てくれている人がいますから。

解雇156(ミクスジャパン事件)

おはようございます。

今日は、経営悪化に伴う会社解散と解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

ミクスジャパン事件(東京地裁平成25年12月27日・労判1095号86頁)

【事案の概要】

本件は、Y社を解雇されたX1~X12が、①当該解雇は、手続きの妥当性および相当性を欠いており無効であると主張し、解雇後2か月分の賃金の支払いを、②仮に上記解雇が有効であるとしても、Y社は、解雇の3か月前にはXらに解雇を予告すべき労働契約上の信義則に基づく義務を負っていたがこれを怠ったと主張し、そのためXらが上記解雇後2か月分の賃金相当額の損害を被ったとして、その賠償を求め、かつ、③未払いの時間外割増賃金、④付加金および各遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

本件解雇は有効
→2か月分の賃金相当額の損害賠償請求権は発生しない

信義則上の通知義務は認められない

時間外割増賃金、付加金の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 Y社の業績が悪化し回復の見込みがないことから、単独株主であるMISA社の意向を踏まえて解散するに至ったことに伴うXらの解雇はやむを得ないものというべきであり、解雇について合理的な理由があったものと認められる。

2 Xらは、本件労働協約1及び2の失効後も、Y社は、本件労働協約2に定めがあった本件通知義務を信義則上負っていたところこれを怠っており、そのような状況下で行われた本件解雇は相当性を欠く旨主張する。
しかし、本件労働協約1及び2は、いずれも、その更新期間の限度が3年と明定されており、当該定めにより、本件解雇の約1年前である平成22年11月15日に失効している。・・・本件のように、新たな労働協約の締結を、本件組合内部における引継ぎの不備によって失念した場合についてまで、当然に、信義則上、Y社が本件通知義務を負うと解することはできない
したがって、Y社が、本件解雇の3か月前にその旨を通知せず、1か月前に説明するにとどまった点をもって、本件解雇が相当性を欠くものであるということはできない。

3 Xらの退職に伴う経済的手当としては、Y社がXらに対し、Y社所定の規定に基づく退職金を満額支給したことにより一定程度は果たされているとみることができ、それ以上の手当をすべきであるとする根拠は見いだし難い。また、本件解雇は、本件解散と同時にXらに説明されたものであるところ、長期間にわたり経営状況が低迷し、改善の兆しの見えないY社の事業について、これをいつ廃止するべきかという問題は、基本的にはY社側の経営判断により決定されるべきものであって、本件通知義務をY社が負っていない本件においては、本件解雇の通知が解雇の1か月前であること(労働基準法20条1項本文の要求する予告期間は遵守されている。)をもって、Xらに時間的余裕を与えなかったということはできないし、Y社が本件組合との団体交渉に応じ、本件組合の要求に対し検討の上回答していることなどからすれば、Y社においてXらの就職活動を援助する措置を取らなければならない根拠も格別見いだすことができない。

労働組合のみなさんは、上記判例のポイント2のような状況に気をつけましょう。

会社をいつたたむかは経営判断ですので、原則として会社の自由ですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介374 優雅な肉体が最高の復讐である。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう!

今日は本の紹介です。
優雅な肉体が最高の復讐である。

俳優・ミュージシャンの武田真治さんの本です。

「優雅な生活が最高の復讐である。」にかけたタイトルになっています。

表紙では、鍛え抜かれた、これぞ細マッチョという上半身を披露しています。 素晴らしいですね。

体の作り方のハウツー本ではなく、武田さんのこれまでの人生とともにどのようにしてここまでの体を作り上げたのかが書かれている本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

どんなお金持ちでも厚い胸板はお金では買えません。どんな生まれの何者でも、胸板を厚くするには鍛えるしかないのです。鍛えるとは苦しみや痛みに耐えること。だから鍛え上げられた胸板はどんな仕事においても、男にとって人となりを証明する名刺となり、その人が地道な努力を惜しまない強い人間であることを雄弁に語るのです。死ぬほど努力しても1週間では厚い胸板は作れません。最低でも数か月かかってようやく手に入るものですから、それだけ長期的なプランを立てて実行できる人間だけが、そのプライスレスな名刺を手に入れられるのです。」(27~28頁)

トレーニングをしている方であれば、武田さんが言いたいことがよく理解できるのではないでしょうか。

体つきを見て、「この人はセルフコントロールができる人で、信頼できるな。」と思うこともありますよね。

武田さんが言うとおり、一朝一夕に体をつくることはできません。

日々の地道なトレーニングがあったこそのものです。

体づくりと仕事は、本当によく似ています。

一朝一夕に成果を出すことはできないのです。

目標を立て、それに向かって地道に努力する。

そういうことができる人を僕は信用しています。

不当労働行為94(詫間港運事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、団交拒否、不誠実団交に関する命令を見てみましょう。

詫間港運事件(香川県労委平成26年2月10日・労判1088号95頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、会社の従業員で組合に加入している組合員に対し、仕事の配分差別を行ったこと、会社の代表者であるY1代表取締役が、組合との団交を欠席したことなどが不当労働行為であるとして救済を申し立てた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、Y1社長の身体の安全が確保できない状態であり、警察の助言を得たことを理由として団体交渉に応じないことの正当性を主張する。・・・仮に、単独で出席すれば身体の危険を及ぼす可能性がある場合にはI顧問や代理人弁護士と共に団体交渉に臨めばよいはずであるから、Y社の主張には合理的な理由がなく、Y社は意図的に団体交渉を拒否したものと判断される

2 Y1社長が、真意に反して意図的に事業閉鎖を示唆する発言をすることにより、組合に不安を生じさせて団体交渉を有利に進めようとしたものと推測されるのであり、不誠実団交であったと判断される

3 Y社は、平成23年3月頃から大口取引先の不祥事の影響で業務量総体が相当程度減少していたことが窺われるものの、業務遂行に必要とされる職務上の資格や能力に関して組合員とその他の従業員との間で仕事の配分について差別をしなければならないような特段の理由が存在しなかった。
それにもかかわらず、実際には組合員とその他の従業員に対し会社が配分した業務量には大きな較差があり、その他の従業員に対しては原則的に休業の割り当てが行われず、また、休業が開始された後に組合を脱退した者に対しては、脱退後は仕事が配分されるなど明らかに組合員差別をする事態が生じており、他方では組合員は会社から休業を余儀なくさせられ賃金が減少するという不利益を受けた。
よって、以上のとおり、当委員会は、組合員に対する仕事の配分差別及びその結果として賃金差別があったものと認定し、労働組合法7条1号の不当労働行為に該当するものと判断する。

上記命令のポイント1及び2は、参考にしてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。