Monthly Archives: 10月 2014

本の紹介365 お店の売上を倍増したいならお金をかけずにアイデアで勝負する!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
お店の売上を倍増したいならお金をかけずにアイデアで勝負する! ―販促ウエポン100

販促に関する本です。

複数のコンサルタントが、販促についての100個のアイデアを出しています。

販促初心者向けの本で、大変わかりやすいと思います。

ベタなネタが多いので、実行に移しやすいのではないでしょうか。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

当たり前のことですが、商売はうまくいっている時期と、うまくいかない時期があります。経営者やマネージャーは、うまくいかなくなるといろいろと変えたくなり、そこで問題が生じることが少なくありません。…しかし、変えること自体を否定しているのではありません。変えてもよいことと、変えてはいけないことがあるのです。また、うまくいっている場合でも、『飽きる』という心の動きも、くせものになることもあります。それは、まさに「『変えない』と『飽きる』の戦い」なのです。」(22頁)

変えてはいけないこととは何か。

この本によれば、それは「消費者のマインドに届けているメッセージの中で約束をしていること」だそうです。

つまり、顧客がこのお店、この会社に求め、期待する役割を放棄するような変更はしてはいけないということなのだと思います。

また、もう一つの視点として、うまくいっているにもかかわらず、経営者がその状態に飽きてしまい、今の状態を変えてしまう。

この「飽きる」という感情との戦いは、経営者なら誰もが感じたことのあるものだと思います。

いろんな分野に手を広げずに、1つのことをやり続けることは、この「飽きる」という感情に打ち勝たなければなりません。

限られた時間の中で、それほど多くのことはできないのです。

いろんなことをやってみたいという思いを抑えて、これだと思うものに注力することが大切なのだと思います。

解雇152(横河電機(SE・うつ病罹患)事件

おはようございます。

今日は、休職期間満了を理由とする退職扱いに対する損害賠償請求についての裁判例を見てみましょう。

横河電機(SE・うつ病罹患)事件(東京高裁平成25年11月27日・労判1091号42頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、上司であったAから、長時間の残業を強いられた上、Xの人格を否定するような非難、罵倒、叱責等を受けたことから、肉体的、精神的に疲労困ぱいし、鬱病等にり患して休職し、休職期間の満了を理由に退職を余儀なくされたと主張して、Aに対しては不法行為に基づき、Y社に対しては主位的にAの不法行為についての使用者責任、予備的に労働契約上の安全配慮義務違反等による債務不履行責任に基づき、損害賠償及び遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。

原審は、Xが鬱病等にり患したことについてAに過失があったとは認められず、Y社に安全配慮義務違反等があったとも認められないとして、Xの請求をいずれも棄却した

この原判決に対し、Xが控訴し、逸失利益及び治療費に係る損害の主張を追加して、上記請求を拡張するとともに、Xの休職は業務上の傷病によるものであるから休職期間の満了を理由にXを退職扱いすることは許されないとして、XがY社に対して労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める訴えを追加した。

【裁判所の判断】

Y社に対し、534万5641円の支払いを命じた。

その余の請求はいずれも棄却

【判例のポイント】

1 ・・・さらに、AがXの業務の成果について否定的な発言をしたこと、その他、AがXに対して強い口調で仕事上の注意や指示をしたことについては、Aの発言等は、Xの名誉を毀損する内容のものでもないのであって、Xがそれらに矛盾や不合理を感じることがあったとしても、業務上の指示・指導の範囲を逸脱したものということはできない
したがって、Aにおいて、Xに対する罵倒、誹謗中傷、責任転嫁、残業の強制、その他業務上の指示・指導の範囲を逸脱した違法な行為があったとは認められず、Aに対する不法行為に基づく損害賠償請求及びY社に対する使用者責任に基づく損害賠償請求は、いずれも理由がない。

2 Xは、Y社がXに対して復職当初からフルタイム勤務を求めたことにつき安全配慮義務違反があると主張するが、休職者が復職するに当たり、短時間勤務から徐々に勤務時間を延ばしていく方法も考えられるが、場合によっては職場復帰の当初から本来の勤務時間で就労するようにさせた方が良いこともあり、一概に短時間労働から始めて徐々にフルタイム勤務に移行させるべきであると断ずることができるものではない

3 Xの鬱病の症状が遷延化し、Xが長期間にわたり休職を継続したことについては、Xの個人の素質、ぜい弱性、生活の自己管理能力が少なからず寄与しているものとみるべきであり、鬱病の発症から寛解状態が4か月以上継続した平成18年10月末日までの症状に基づく損害については、全てY社の安全配慮義務違反と相当因果関係があると認められるが、その後、動揺傾向があるとされつつも寛解状態が更に1年間継続した平成19年10月末日までの損害については、50%の限度において上記相当因果関係が認められ、それ以降の損害については、上記相当因果関係は認められないというべきである

4 Xが過重な心理的負荷の掛かる業務に従事せず、鬱病を発症しなければ得られたであろう収入額は、想定される基本給に、想定される残業代として、平成17年1月から8月までの平均残業時間を考慮し、3割を加算して、さらに想定される賞与(1か月当たりで計算する。)を加えた額から、上記期間中にXが実際に受領した給与、賞与及び傷病手当金の額を控除して、算出するのが相当である。

5 Xの精神障害は、平成19年10月を過ぎた頃には上記業務に起因する心理的負荷により生じたものとみることはできなくなっており、Y社から雇用を解かれた平成21年1月30日の時点において、鬱病の発症から3年以上が経過してもなおその症状が全快せず、Y社で業務に従事することが困難であったと認められる。
そうすると、Xは、平成21年1月30日の時点において、一般社員就業規則35条(8)の「業務上の傷病者で傷病発生のときから3か年を経ても全快しないとき」に該当する事由が存在し、かつ、労働基準法19条1項所定の解雇制限事由は存在しないから、Y社による解雇は、上記就業規則の条項に基づくものとして有効であるというべきである。
したがって、Xは、Y社に対して労働契約上の権利を有する地位にあるとは認められない。

この裁判例は、非常に重要ですので、みなさん、参考にしてください。

リハビリ出社については、使用者の安全配慮義務として当然に行われるべきものとまではいえない、というのが裁判所の考え方です。

また、長期にわたり休職が続いている場合、会社としては、解雇制限との関係で難しい判断を迫られることになります。

東芝事件のような例もありますので。

完全な正解は、どこまでいってもありません。 後から正解だったのかがわかるのです。

休職命令を発するとき、休職期間中、復職の可否については、専門家に相談をしつつ、慎重に判断しましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介364 俺のイタリアン、俺のフレンチ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方

著者は、ブックオフ創業者であり、現在、俺の株式会社の坂本社長です。

今なお人気の「俺の」シリーズですが、どのようにしてここまでぶっちぎりで勝つことができたのかを説明してくれています。

業界は異なりますが、だからこそ参考になることがたくさんあります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

事業を目指す若い人に訴えたいことは、事業づくりで大切なことは『競争優位性』であるということです。この言葉は、この本のキーワードになるほど使ってきましたが、独自に築いたものを、絶対に次が追随できないような参入障壁をどれだけつくれるか、これがアントレプレナーの唯一のポイントです。それらをたくさんつくることによって、その事業は揺るぎない存在になります。」(197頁)

「競争優位性」という言葉は、他との差別化と言い換えてもいいですね。

何かがうまくいけば、瞬く間に真似をされます。

真似をされることにイライラしても仕方がありません。

一見、真似をすることが簡単なように見えるが、いざやってみるとなかなかうまくいかない・・・。

これこそが競争優位性につながるのだと思います。

飲食業で言えば、仕入れルートがそれにあたります。

いい材料を破格の値段で仕入れられるルートがあるかどうかで、ほとんど勝負が決まっているように思えます。

このルートを確保できないうちに、表向きの真似をしても、たいていうまくいきません。

成功事例の真似をする際は、競争優位性の本質を見極める必要があります。

有期労働契約51(富士通関西システムズ事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!

今日は、パワハラ対処を要望した女性期間雇用者の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

富士通関西システムズ事件(大阪地裁平成24年3月30日・労判1093号82頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある雇用契約を締結していたXが、上司であったAから、パワーハラスメントに該当する嫌がらせを受けたうえ、これに対処するようY社に要望したところ、Y社から不当に雇止めされたなどとして、Y社に対する雇用契約上の地位の確認および雇止め後の賃金の支払いの請求ならびにY社らに対する不法行為または債務不履行(安全配慮義務違反)に基づく損害賠償を請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・・以上見てきたとおり、XがAによるパワハラに該当すると主張する各言動は、いずれも、事実の存在自体が立証されていないか、仮に言動自体が事実であっても違法性を有しないものというべきであるから、Aの言動がパワハラに該当し、不法行為が成立するとのXの主張には理由がない。

2 Y社には、定年後の嘱託社員を除き、有期雇用契約を結んでいる従業員はX以外におらず、Xとの契約は、Y社の元社長であるEの紹介による極めて例外的な契約であったことが認められる。また、Xは、入社前に、Eの妻から、「忙しい部署があって、人手が足りないから」と言われており、実際の担当業務も、もともとBが一人で担当していた業務の一部を分担するというものであったことが認められるから、XとY社との間の契約は、Y社の人手不足を解消するための臨時的なものであったとみるのが相当である。
そして、Y社は、契約期間を平成22年12月20日までとする労働契約書の締結に際し、Xに対し、受注売上業務を関連会社に移管したこと及びCの復帰により企画・業務部の人員に余剰が生じたことを説明して以後の契約更新をしないことを伝え、Xも、「会社の言うことはわかりました。」と答えて、不更新条項のある労働契約書に署名・押印して提出しているのであるから、たとえそれまでに2回契約更新が行われていたとしても、Xには、平成22年12月20日以降の契約更新について合理的期待があったとは認められず、本件雇止めは、解雇権濫用法理を類推適用すべき場合に当たらないというべきである

3 なお、仮に、本件について、Xに契約更新への合理的期待があったと認められるとしても、上記の様な契約締結に至る経緯、契約形態の特殊性、担当業務の内容等を総合考慮すれば、当該期待の程度は希薄というべきであり、企画・業務部の人員に余剰が生じている状況からすれば、いずれにしても、本件雇止めは相当というべきである。

パワハラで訴訟をする場合には、立証方法を事前に考えてから提訴する必要があります。

雇止めにおいて会社がとるべき手順については、過去の裁判例の蓄積が相当程度ありますので、それらを参考にしながらすすめるべきです。

顧問弁護士や顧問社労士に相談しながら行うことをおすすめします。

派遣労働18(J社事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、元派遣等で就労していた期間労働者との間で黙示の雇用契約が成立していたとはいえず、雇止めも有効とした原判決を相当とした裁判例を見てみましょう。

J社事件(東京高裁平成26年6月4日・労経速2217号16頁)

【事案の概要】

本件は、A社に雇用され、当初、請負契約又は労働者派遣契約に基づきY社に勤務していたXらが、Y社との間で、期間の定めのある労働契約を締結したが、その後、契約更新がされず、その期間を満了したところ、Xらは、黙示の労働契約が成立していたこと又は、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を前提としても、それは実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態であったことを理由に、Y社がXらに対する雇止めを行ったことが無効であると主張し、Y社に対し、労働契約上の地位の確認及びそれを前提とした賃金の支払を求めた事案である。

原審は、Xらの請求をいずれも棄却した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Y社が、派遣労働者に再度戻す意図の下にクーリング期間として期間工という職種を新設したと認めるに足りる証拠はないし、Y社において、常用雇用の代替防止という労働者派遣法の根幹を否定するような施策を実施していたとは認め難く、XとA社との間の労働契約を無効とすべき特段の事情があると認めることはできない。
また、XらA社の労働者は、休暇届をA社に提出し、タイムカードはY社に直接雇用される正社員とは区別されていたなど、Y社の正社員と同様の労務管理がなされていたとも指揮命令を受けていたとも認めることはできないし、QCサークル活動への参加は義務付けられていないし、Y社が事実上A社の労働者の採用を決定していたとは認め難いし、Y社がXの賃金額の決定に関与したとも認め難く、XとY社間に実質的な賃金支払関係があったともいえない。そして、Y社が、Xの配転を決定していたと認めるに足りる証拠もない
以上によれば、XとY社との間に、黙示の労働契約が成立していたと認めることはできない

2 ①XとY社との直接の雇用契約が締結されていた期間は、1年7か月にすぎず、更新の回数は2回にとどまっていること、②Xを期間工として採用する際に、Y社が従前の使用従属関係を認めてこれを追認する意思で期間工として直接雇用したものとみることはできず、Xが期間工として採用される以前から、XとY社との間に雇用関係があったものと評価することはできないこと、③XとY社間の雇用及び契約更新の際に交付された雇用条件通知書や雇入通知書、雇用契約書のいずれにも、有期労働契約であることが明記されており、また、採用前の説明会等で、期間の定めや雇用延長条件等が記載された書面が読み上げられるなどしており、XとY社の労働契約は、期間の定めのあることが明確になっていること、④Y社における契約更新手続が形式的なものであったとはいえないことは、原判決が説示するとおりであり、Xの業務は、プラスチックケースにシールを貼る作業及びゴミ捨ての業務であったことが認められ、基幹的、恒常的なものということもできないから、Xにおいて、雇用を継続されることに合理的な期待を有していたと認めることはできず、Xが主張する整理解雇の4要件について検討するまでもなく、XとY社の労働契約は、平成21年4月25日の期間満了により終了したものと認められる。

どの事案でもそうですが、派遣先との黙示の労働契約を認定してもらうのは、とても大変なことです。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介363 「ニーズ」を聞くな!「体験」を売れ!」(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
2時間でわかる!「ニーズ」を聞くな!「体験」を売れ!―エクスペリエンス・マーケティングでお客に「感動」を与える。

以前にも紹介をしたことがあるエクスペリエンス・マーケティングの藤村さんの本です。

一章一章、「なるほど~」と思ってしまう内容です。

マーケティングの楽しさがわかる、とてもいい本です。

いつも参考にさせていただいております。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

もしあなたの顧客のすべてが、素晴らしいアイディアを考えつくのだったら、あなたは明日から職業を変えなければならないってことでしょう。自分で商品を開発できないなら、そんな会社は存在する意味がないのですよ。『顧客の声を聞いて、新製品を開発しました』などと言っているのは、一見正しいように見えますが、それは会社の存在理由の放棄です。世の中の売れている商品やお店は、消費者が提案したモノではないということです。逆に顧客の声を聞けば聞くほど、既成概念にとらわれた、過去の延長線上にある、個性の少ないモノになってしまうのです。そんなの売れるわけない。この時代に。」(32~33頁)

「顧客の声を商品に反映させる」というのは、特に悪いことではないように思えます。

でも、著者によれば、それでは本当に新しい商品は生まれない、ということです。

確かにそうかもしれませんね。

これまでになかったような商品って、顧客のアンケートによって生まれるわけではありませんよね。

顧客アンケートに頼っちゃだめってことです。

顧客アンケートは、あくまでも現在の商品の改良のために参考にするものです。

新しいサービスは、顧客に対するサプライズがないとおもしろくないですよね。

「そうきましたか。 やられました。」と何人に思ってもらえるか。

これこそが新商品開発のおもしろさなんだと思います。

 

継続雇用制度21(日本郵便事件)

おはようございます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、高齢再雇用社員として期間満了後、期間雇用社員として雇用契約が継続されることに合理的な期待はないとされた裁判例を見てみましょう。

日本郵便事件(東京地裁平成26年6月2日・労経速2218号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結し、定年後、Y社の高齢再雇用社員として採用され、その後同社員としては雇用契約期間が満了して退職扱いとされ、かつ、期間雇用社員(その中の時給制契約社員)として不採用となったXが、上記不採用とされたことは違法無効なものであってY社との間に期間雇用社員としての雇用契約関係は継続していたと主張して、Y社に対し、賃金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件は、60歳に達したことにより定年となり、さらに64歳に達したことにより高齢再雇用制度による雇用契約期間が満了したXにおいて、さらに、期間雇用社員の時給制契約社員として1年間雇用契約が継続されることの期待について合理性があるかどうかが問題となる(XとY社間の有期労働契約が更新されることなく打ち切られたという観点からすれば、本件は雇止めの問題ともいえるが、高齢再雇用社員と期間雇用社員の契約類型が異なることを重視すれば、本件がそもそもいわゆる雇止め法理の適用が検討されるべき事案なのか疑問がないではない本件について雇止め法理の適用を考え得ないとすれば、雇用契約関係の継続を前提とするXの本件賃金請求は合理的期待の有無を検討するまでもなく主張自体失当ということになる。)。

2 Y社における高齢再雇用社員と期間雇用社員を比較すると、就業規則が別に定められ、その就業規則の内容について検討しても、社員の種類、雇用契約期間、契約更新条件等において大きく異なっていることが認められる。そして、Xにおいて反復継続された雇用契約は高齢再雇用社員としての雇用契約であって期間雇用社員としての契約更新手続ではないこと、高齢再雇用社員としての契約更新手続においても「郵便局株式会社高齢再雇用社員雇入労働条件通知書」が作成され、契約期間も明記された厳格な手続によるものであったこと、期間雇用社員の採用については、「会社は、会社に入社を希望する者の中から選考により社員を採用する。」とされていることなどからすれば、Xが、高齢再雇用社員としての雇用契約が反復継続されたことから本件雇用契約の継続について期待したとしても、雇用形態等が多くの点で異なる期間雇用社員として採用されることの期待については合理性があるとは認め難い

通常の有期雇用契約における雇止めの問題とは異なります。

高齢再雇用社員と期間雇用社員との間に労働条件に大きな違いがあることを理由にXの雇用契約継続に関する期待を保護しませんでした。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

本の紹介362 「フォロワー」のための競争戦略(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
リーダーやニッチャーでなくても勝ち残る 「フォロワー」のための競争戦略

帯には「安易な『選択と集中』は会社をつぶす!」と書かれています。

この本にも書かれていますが、従来、フォロワーが取るべき戦略は、競合他社との差別化を図るために「選択と集中」を徹底的に行うことと説かれてきました。

しかし、このような従来のセオリーに疑問を投げかける内容となっています。

多くの企業を例にあげて説明をしているため、とてもわかりやすいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

IT化が進めば進むほど、『ハイタッチ』の重要性は増すばかりです。たしかに、物理的に生活をするだけならば、ネットだけでだいたい事足りる世界ができました。・・・ランチェスター戦略のように、『弱者の戦略』の1つのセオリーは『接近戦』です。なるべくお客様と近い距離で戦うと、強者に負けない戦いができるのです。お客様と近い距離に密着できれば、ニーズをつかむ確度は高まります。お客様と濃密なコミュニケーションをとることが、最大のリスクヘッジになるはずです。つまり、ハイタッチ戦略は、中堅中小企業にこそ有効なものといえるでしょう。」(92~93頁)

会社の規模が大きくなるにつれて、また、顧客の数が増えるにつれて、顧客との距離が遠ざかってしまいがちです。

大企業にはできず、中小企業にできること。

それは、顧客一人一人との距離を近くに保つことです。

距離が近いとは、どういうことなのか。

私が思うに、「融通を利かせる」ことなのではないでしょうか。

予め決められた対応だけでなく、顧客の個性や性格に合わせて臨機応変に対応する。

大手量販店にできず、町の電気屋さんにできること。

総合病院にできず、町のお医者さんにできること。

大手チェーンの居酒屋さんにできず、町の小さな料理屋さんにできること。

そんなことを考えてみると、小さなお店や会社だからこそできることって、いろいろありますよね。

欠点も見方によっては利点に変わります。

不当労働行為92(田中酸素事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう。

さて、今日は、賞与等に関する団交における会社対応の不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。

田中酸素事件(東京地裁平成26年1月20日・労判1093号44頁)

【事案の概要】

Y社内の労働組合である補助参加人は、Y社が、平成21年10月22日付け労働協約に反し、団体交渉に決定権限を有していない者を出席させたこと、本件労働協約及び平成21年12月19日の団体交渉における合意事項に反し、賞与及び昇給に係る団体交渉の申入れ及び査定に使用した資料等の提示を行うことなく平成21年の冬季賞与、平成22年1月の昇給及び同年の夏季賞与を支給したこと並びに補助参加人による平成22年1月26日及び同年3月22日の団体交渉の申入れを拒否したこと等が不当労働行為に当たるとして、同年8月24日付けで山口県労働委員会に対し、①団体交渉におけるY社代表者の出席及び誠実交渉、➁賞与及び昇給の支給予定金額を決定次第、支給予定金額及び査定に使用した資料等を補助参加人に提示して団体交渉を申し入れ、賞与等の支給前に団体交渉を開催すること、③謝罪文書の交付等を求めて、Y社を被申立人とする救済の申立てをした。山口県労委は、上記➁について、平成21年の冬季賞与及び平成22年1月の昇給に係るY社の対応が不当労働行為に当たるとして、Y社に対し、今後の賞与又は昇給に関する団体交渉において本件労働協約を遵守し必要な資料を提示してY社の主張の根拠を具体的かつ合理的に説明し誠実に対応することを命じ、その余の申立てを棄却した。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 …以上のとおり、平成21年12月21日のY社の対応は、本件合意事項に反するものと認められ、加えて、補助参加人からY社に対し、平成21年の冬季賞与の支給金額の決定に使用した資料の提示が繰り返し求められたにもかかわらず、平成22年4月22日の団体交渉や同年6月10日の団体交渉に至っても当該資料が提示されていないことからすれば、平成21年の冬季賞与に係るY社の対応は、本件合意事項及び本件労働協約に基づくY社及び補助参加人間のルールに従って誠実に対応したものと認めることはできない

2 救済命令を発するためには、不当労働行為の存在が認定されることに加え、救済を受けることを正当とする利益又は救済を与えることを正当とする必要性、すなわち救済の利益が救済命令を発する時点で存することが必要であると解される。
この点について、Y社は、…今後の団体交渉の場の内外で同様の暴言や暴行が繰り返されるおそれがあると優に認められるから、本件初審命令のような救済命令を発すべき救済の利益は失われている旨主張するので、以下、検討する。
…Y社が、平成21年12月以降に行われた団体交渉等において、補助参加人からの再三の要求にもかかわらず、本件労働協約や本件合意事項に従った対応を必ずしもとっていなかったことなど、このような団体交渉におけるY社の対応が、補助参加人が団体交渉において上記のような態度をとったことの原因又は誘因の一つになっていた可能性も必ずしも否定することができないとも考えられるのであるし、団体交渉における補助参加人の上記の態度をもって直ちに、補助参加人が今後の団体交渉において、いかなる課題であるかにかかわらず、又はY社の対応にかかわらず、繰り返し同様の態度をとるであろうとも、これを前提とした上でY社が今後の補助参加人との団体交渉において何ら本件労働協約等に従った対応をとる必要がないとも認めることができないというべきである

ユニオンから資料の提示を求められた際は、(もちろん資料の種類・内容によりますが)前向きに検討しましょう。

過去の裁判例からすると、資料の不提示というのは、誠実交渉義務を尽くしていないと評価される場合が多いからです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介361 ダン・ケネディから学ぶ「稼ぐ社長」の作り方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
ダン・ケネディから学ぶ 「稼ぐ社長」の作り方

最初から最後までマーケティングの本です。

マーケティングの世界で超有名人のダン・ケネディさんの教えを基本としてマーケティングの作法を伝えてくれています。

とてもわかりやすく参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『商品の品質』については注意が必要です。なぜなら売り手の思う品質と買い手の思う品質は違うからです。そして、買い手の思う品質の方がはるかに重要だからです。・・・品質は、売り手のこだわりや思い、原価がいくらかかっているか、などとは全く関係がありません。あなたの品質へのこだわりは、顧客に受け入れられるか=マーケティングの観点から見て、無意味になっていないか注意が必要です。マーケティングの成功に寄与しない品質へのこだわりは『間違い』なのです。」(48~49頁)

これ、確かにそうですよね。

新しいサービスを考えていると、いろんなアイデアが浮かんでくるのですが、はたしてこの新サービスは顧客にとって意味のあるものなのだろうか、と考えることもあります。

ただ、そんなことは、試してみなければわかりません。

試行的に一定期間、やってみればいいのです。

その結果、「間違い」だったのなら、やめればいいのです。

新しいことをやると、周囲は、「そんなの意味がない」「どうせ成功しない」と言うものです。

それはそれでいいのです。

「くっそー」とか「見返してやる」なんてことも思わなくてもいいのです。

ただ、自分がやりたいからやる、試してみたいから試してみる。 それ以上でもそれ以下でもない。

周りの人全てを納得させることなんて目標にすべきではないと僕は思います。