おはようございます。
今日は、旧組合書記長に対する転居を伴う配転命令に関する裁判例を見てみましょう。
東京測器研究所(仮処分)事件(東京地裁平成26年2月28日・労判1094号62頁)
【事案の概要】
本件は、昭和58年4月に債務者に入社し、入社とともに債務者の従業員を組織していた労働組合に加入した債権者が、平成25年11月1日付けで債務者の明石営業所勤務を命じる配転命令を受けたことについて、不当労働行為、協定違反等を理由に本件配転命令は無効であるとして、明石営業所において勤務する労働契約上の義務を負わないことの確認を求める権利を被保全債権として、同義務を負わないことを仮に定める仮処分を求める事案である。
【裁判所の判断】
XがY社に対し、Y社の明石営業所において勤務する労働契約上の義務を負わないことを仮に定める。
【判例のポイント】
1 明石営業所への転勤後は、XがこれまでJMIUY社支部において中心的な役割を果たしてきたのと同程度に、上記脱退決議の効力を争いJMIUY社支部を存続させるための実効的な活動を行うことは相当困難になるものと推認される。そして、JMIU脱退決議の無効及びJMIUY社支部の存続を公然と主張するのはY社のみであるから、XがJMIUY社支部存続のための実効的な活動を行うことが困難である以上、JMIUY社支部存続の可能性は極めて乏しくなるものと考えられる。
XがJMIU脱退決議の無効を主張することが不当な言いがかりに類する行為であるとは直ちに断じ得ないのであり、XがJMIUY社支部の活動を中心的に担ってきた立場でJMIU脱退決議の無効を主張しJMIUY社支部の存続のための活動を始めようとしていたところを、本件配転命令によって、明石営業所への転勤を余儀なくされ上記の活動を実効的に行うことが困難となる結果、JMIUY社支部存続の可能性が極めて乏しくなるものと考えられるのであるから、本件配転命令は、JMIUY社支部の存続の可能性を失わせる結果をもたらす点で、外形的にみて、JMIUY社支部の運営に対する支配介入に当たるものと評価し得る。
2 明石営業所に技術職の従業員を配置する必要性自体は否定できないものの、Aの大口計測工事以外には、技術職の従業員の明石営業所への配置を緊急に要する業務が具体化している状況ではなく、Aの大口計測工事に関しては、2か月半程度で終了する業務であったことからすると、技術職の従業員を上記期間Aに常駐する形で出張させることでも賄うことは可能であったものと考えられるところであり、Xがただ一人公然とJMIU脱退決議の効力を争い、JMIUY社支部の存続のための活動を行おうとしていたまさにそのときに、時間的な猶予を与えない形で、あえてXを東京本社から引き離して明石営業所へ転勤させなければならないほど緊急の必要性があったとまでは認め難いというべきである。
3 本件配転命令は、Y社が、少なくともJMIUY社支部の存続の可能性を失わせる結果になることを認識しつつこれを容認する意思の下で行ったJMIUY社支部に対する支配介入にあたると認められるから、労働組合法7条3号が禁じる支配介入に該当するというべきである。
4 以上のとおりであるから、その余の点について検討するまでもなく、本件配転命令は、不当労働行為に該当するため、違法であり、無効であると認められる。
基本的には、配転については、会社に広い裁量が認められています。
しかし、本件のように、従業員が組合員であり、かつ、重要なポストに就いている場合には、不当労働行為該当性にも配慮する必要が出てきます。
客観的にみて、組合の弱体化と判断されうる場合には、顧問弁護士に相談の上慎重な対応が求められます。