おはようございます。
さて、今日は、更新後9年9か月勤務してきた従業員からの退職金請求に関する裁判例を見てみましょう。
ディエスヴィ・エアシー事件(東京地裁平成25年12月5日・労判1093号79頁)
【事案の概要】
本件は、Xが、Y社に対し、雇用契約に基づく退職金およびこれに対する遅延損害金を求めた事案である。
本件の争点は、Xが、退職金規則1条(2)の「一定期間を定めて臨時に雇い入れられた者」に該当せず、同条所定の退職金請求権が認められる社員に該当するか否かである。
【裁判所の判断】
Y社に対し251万1250円の支払を命じた
【判例のポイント】
1 退職金規則1条(2)において、退職金請求権を有しない社員として定める「一定期間を定めて臨時に雇い入れられた者」の意義については、同条における退職金請求権を有しない社員として、上記の者と併せて「試用期間中の者」及び「勤続3年未満の者」が規定されていることにも照らして合理的に解釈する必要があるところ、一般に、存続期間の定めのある雇用契約については、短期間の臨時的雇用として期間満了後の更新等による雇用継続がそもそも想定されていない形態のものから、当初より比較的長期の雇用継続が予定され、実際の雇用期間も長期に及び、およそ労働力の臨時的需要に対応するものとはいい難い状況のものまで様々な形態が考えられ得るのであり、当該被用者が、Y社との間で存続期間の定めのある雇用契約を締結した場合であっても、あらゆる場合において、当該被用者が「一定期間を定めて臨時に雇い入れられた者」に含まれ、退職金請求権を有しないものと解するのは、退職金請求権を有しないものと解するのは、退職金の賃金後払的性格及び功労報償的正確に照らして相当とはいえない。この場合、当該雇用契約が存続期間の定めのある雇用契約であると解される場合であっても、当該有期雇用契約の締結時に当事者間において想定された更新可能性の程度、期間満了後の更新等による雇用継続の期間・実態、当該被用者の勤務内容・賃金形態等の諸般の事情を考慮した結果、当該被用者の従前の雇用継続状況が、退職金の賃金後払的性格及び功労報償的性格に照らして、「試用期間中の者」や「勤続3年未満の者」と同様に当該被用者の退職金請求権を否定すべき雇用の臨時的性格が存在しないという状況に至っている場合には、当該被用者は「一定期間を定めて臨時に雇い入れられた者」には該当せず、退職金規則1条所定の退職金請求権が認められる社員に該当するものと解するのが相当である。
2 …Xの勤続期間については、上記黙示の更新前における1年間に加え、とりわけ同更新後において、9年9か月間という長期に及んでいる。…Xが、Y社において従事していた業務内容や勤務時間・執務条件等については、Y社との間で存続期間の定めのない雇用契約を締結していた他の被用者との比較において、特段の相違はみられない。
3 仮に、本件雇用契約について、1年の存続期間を定めた有期雇用契約であると解するとしても、Xの雇用については、上記黙示の更新の前後を通算した勤続期間全体について、Xの退職金請求権を否定すべき臨時的性格が存在しないというべきであるから、Xは、退職金規則1条(2)に定める「一定期間を定めて臨時に雇い入れられた者」には該当せず、同条所定の退職金請求権が認められる社員に該当するものと解するのが相当である。
就業規則をはじめとする会社内部の規程の内容について、裁判所は、形式的に判断するだけでなく、具体的な事情を考慮した上で、実質的に判断します。
したがって、本件のような結論に至ることは何ら不思議なことではありません。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。