おはようございます。
さて、今日は、適格性欠如を理由とする降格・手当等減額の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
TBCグループ事件(東京地裁平成25年8月13日・労判1087号68頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の総務部長および関東地区の営業部を統括するゼネラル・マネージャーを兼務していたXが、Y社からゼネラル・マネージャーの職を解かれたうえ、出向を命じられ、その後も他社へ異動を命じられ、同時に部長職から課長Ⅱ職に降格され、さらに係長Ⅰに降格されたことに伴い、役職手当および職務給、調整手当を減額されたことに対して、これらの減額は無効であり、賞与算定に際して行われた人事評価が違法であって不法行為に当たると主張して、Y社に対して、支給されるべき給与および賞与との差額合計1318万3500円ならびに退職日まで6%の遅延損害金合計73万2091円および退職後から支払済みまで14.6%による遅延損害金の支払いを求めた事案である。
【裁判所の判断】
降格処分は無効
→降格処分に伴う役職手当および職務給の減額も無効
調整手当の減額も無効
→1106万2000円+確定遅延損害金59万8514円+遅延損害金の支払いを命じた
賞与請求は棄却
【判例のポイント】
1 ・・・以上のとおり、Xに対する降格処分についてのY社の主張は前提を欠くものである。なお、Y社は、Xが総務部長として適性を欠くことについて、プローブ取引の責任について以外具体的に主張しないし、なぜ複数回の降格が必要であったかについても主張しない。なお、Y社は、XがY社の利益を犠牲にしてC社の利益を図ったのではないかという疑念を抱いているとも主張するが、XがC社の利益を図った事実を具体的に主張・立証しておらず、上記のような疑念だけでXが総務部長としての適性を欠いていたということはできない。
したがって、降格処分は無効であり、降格に伴う役職手当及び職務給の減額も無効である。
2 調整手当は、給与規程上、「経済状況の変動、給与体系の変更等、調整が必要と認められた場合に暫定的に支給する」とされており、兼務の手当とはされていないこと、Xは、平成19年2月にゼネラル・マネージャーを解任された後も、3年以上調整手当の支給を受けてきており、兼務と調整手当との対応関係を見いだすのは困難であることに照らすと、調整手当は兼務の対価とは認められない。
Y社は、給与管理の不備からXに調整手当を支給していることが見逃されてきたと主張するが、Y社自身が年2回の賞与の査定の際に幹部社員の賞与を厳格に査定していると主張しているにもかかわらず、その査定の際に、本給があるべき給与額より20万円以上かさ上げされていたことに気付かされなかったというのは不自然であり、Y社の主張は採用できない。
全体的に使用者側の主張・立証は具体性・整合性に欠けると評価されているように感じます。
「適性を欠く」との理由で解雇や降格をする場合には、客観的にわかりやすい証拠を会社側で準備しておかなければ、このような結果になります。 ご注意ください。
1000万円を超える支払を命じられていますので、会社としては厳しい結果ですね。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。