有期労働契約47(医療法人清恵会事件)

おはようございます。

さて、今日は、無期転換後の再雇用契約における雇止めの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

医療法人清恵会事件(大阪高裁平成25年6月21日・労判1089号56頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社から平成23年3月15日解雇又は雇止めをされたとして、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認並びに賞与、解雇又は雇止め後の賃金及び不法行為に基づく損害の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

その余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 本件再雇用契約は、単に、簡易な採用手続により、1年間の有期雇用契約に基づいて補助的業務を行う従業員を新規に採用するような場合とは全く異なり、30年以上にわたって従来雇用契約に基づいて基幹業務を担当していたXと使用者たるY社との間で、双方の事情から、従来雇用契約を一旦終了させ、引き続き1年毎の有期雇用契約である本件再雇用契約を締結したものであり、加えて、契約更新が行われることを前提とする文言が入った本件再雇用契約書を取り交わしていることからすれば、Xの契約更新への期待は、客観的にみて合理的なものであるといえるから、本件再雇用契約を雇止めにより終了させることは、実質的に解雇と異ならないものと認めるのが相当であり、解雇権濫用法理が類推適用されるというべきである

2 雇止めという行為自体は、期間の定めのある雇用契約を期間満了により終了させ、契約を更新しないということにすぎないから、たとえ解雇権濫用法理の類推適用により当該雇止めが無効とされ、結果として契約更新の効果が生じたとしても、そのことから直ちに当該雇止め自体が不法行為に該当するような違法性を有するものであったと評価されるものではない。また、仮に当該雇止めが不法行為であると判断される場合であっても、当該不法行為により労働者に生じる損害は、雇止め後の賃金を失うことによる経済的損害であるから、当該雇止めが無効と判断され、当該雇止め後の賃金請求権の存在が確定すれば、原則として労働者の損害は填補されることとなる
そうすると、雇止めを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求が認められる場合とは、当該雇止めについて、雇止め後の賃金の支払いによって填補しきれない特段の損害が生じた場合であると解される

上記判例のポイント1に示されているような事情があると、有期雇用であっても、解雇権濫用法理が類推適用されてしまいます。

契約書や更新手続等、事前に変更可能な部分から手を付けることをおすすめします。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。