Monthly Archives: 7月 2014

有期労働契約49(F社事件)

おはようございます。 7月も終わりですね。早いですね。

さて、今日は、私用電話・メール、上司に対する反抗的態度等を理由とする店舗の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

F社事件(大阪地裁堺支部平成26年3月25日・労経速2209号21頁)

【事案の概要】

Xは、Y社に雇用期間1年の嘱託社員として雇用されていたところ、Y社から雇用契約の更新を拒絶されたため、その雇止めには解雇権濫用法理が準用され、かつ、その雇止めは、Y社が、Xの所属する労働組合及び執行委員長であるXを嫌悪し、同組合の弱体化を図るという不当な目的でしたものであり、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないから、解雇権を濫用した無効なものであると主張して、Y社に対し、雇用契約上の地位を有することの確認を求めるとともに、雇止め後の平成25年から判決確定の日まで、賃金25万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却
→雇止めは有効

【判例のポイント】

1 本件雇用契約は、契約期間を3か月間、9か月間と明確に定めて更新され、3回目以降の更新は、一貫して契約期間を1年間と明確に定めて更新されている。また、契約の更新手続の態様からすれば、嘱託社員としての雇用契約については、一般に、毎年、契約期間が明記された契約書が嘱託社員に送付され、当該嘱託社員がこれに署名押印して返送する手続が繰り返されており、Xの場合も同様であると推認される。 これらの事情に照らすと、本件雇用契約が期間の定めのない労働契約に転化したものであるとか、更新を重ねることによりあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたということはできない

2 しかしながら、Xにおいて、本件雇用契約が継続すると期待することに合理性が認められる場合には、期間満了によって本件雇用契約が当然に終了するものではなく、雇止めには相応の理由を要すると解するのが相当である。 ・・・以上によれば、本件雇止めについては、解雇権濫用法理が類推適用されると解するのが相当である。ただ、雇用契約が期間の定めのない契約に転化したり、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在している場合と比較して、本件雇用契約における雇用継続の期待を保護する必要性は相対的に低いといえるから、本件雇止めの理由としては、それ程強いものが要求されるのではなく、一応の相当性が認められれば足りると解するのが相当である

3 ・・・以上によれば、本件携帯電話を用いたメール送受信や電話の大半には業務関連性がなく、勤務時間中に送受信されたメールや電話が相当数に上ることも勘案すると、Xは、本件携帯電話の貸与を受けるに際し、遵守事項を確認したにもかかわらず、勤務時間中に私事を行うなどしたと認められる。また、C、D及びEらに対する言動も、業務私事の拒否や無視、上司に対する暴言や反抗的態度等、従業員としての忠実義務に反するものであると認められる。・・・そして、このような非違行為の内容及び程度に加え、XがY社から二度にわたり警告を受けていることなどを踏まえると、不当労働行為目的等の特段の事情がない限り、Xの上記非違行為は、本件雇止めの相当な理由となり得ると解するのが相当である

使用者側のみなさんは、上記判例のポイント2についての考え方を参考にしてください。

雇用継続に関する合理的期待を保護するケースでは、雇止めに関する判断基準が若干緩くなるようです。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介346 君の思いは必ず実現する(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
君の思いは必ず実現する

稲盛さんの本です。

たまに稲盛さんの本が無性に読みたくなります。

原理原則を重んじる経営哲学に触れられるからでしょうか。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人生では能力よりも熱意と考え方のほうがずっと大事です。たとえ能力が劣っていても、一生懸命に努力を重ね、人々のために何かをしたいと考える人の方が、能力に優れているものの、努力もせず、人間として誤った考え方を持った人よりずっといい結果が出ます。ちょっと能力が劣っているからといってあきらめてはいけません。ひたむきな努力と正しい考え方はきっとあなたを大きく育ててくれます」(154頁)

「うさぎとかめ」、「アリとキリギリス」の話を思い出しますね。

情熱を持って、正しいと思うことをやり続ける人というのは、本当に強いですよね。

世の中は、そういうひたむきに努力している人を放っておきません。

必ず手を差し伸べてくれる人が現れます。

くさらず、あきらめずに日々、努力を怠らないことが大切なのだと思います。

有期労働契約48(X学園事件)

おはようございます。
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←事務所のクリアファイル第4弾が完成しました。

今回は、栗坊ではなく、くり子ちゃんのクリアファイルです。

さて、今日は、期間雇用のカウンセラーの解雇は無効だが雇止めは有効とされた裁判例を見てみましょう。

X学園事件(さいたま地裁平成26年4月22日・労経速2209号15頁)

【事案の概要】

本件は、平成3年4月1日に契約期間を1年と定めてY社と雇用契約を締結したXが、平成23年8月29日にY社が行った解雇は無効であり、その後のY社による雇止めには合理的な理由がないとして、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに平成24年4月支給分以降の賃金及び賞与の支払いを求めている事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 有期労働契約は、期間中は当事者双方が雇用を継続しなければならないという点で、雇用の存続期間を相互に一定期間保障し合う意義があることに照らせば、労働契約法17条1項にいう「やむを得ない事由」は、期間の定めのない労働契約の解雇において必要とされる「客観的に合理的で、社会通念上相当と認められる事由」よりも厳格に解すべきであり、その契約期間は雇用するという約束があるにもかかわらず、期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由と解すべきである。しかるところ、業務日誌の不提出については、これにより健康相談センターの学生相談部門による総合的な学生支援業務の遂行に支障が生じたか否かは証拠上判然としないこと、執務場所の変更については、1か月強遅れたものの実現していること、アンケートについては、実施日数は3日で、回収枚数は10枚に満たないことに鑑みれば、これらのXの行為が平成24年3月末日の本件雇用契約の契約期間満了を待つことなく平成23年8月29日に直ちにXの従業員としての地位を喪失させざるを得ないような特別の重大な事由に当たるとすることには躊躇せざるを得ない
したがって、本件解雇は、上記各行為によりXが兼務教職員就業規則6条2号(勤務実績が著しく不良と認められるとき)に該当するか否かを問うまでもなく、無効であるというべきである。

2 ・・・雇用継続に対するXの期待利益には合理性が認められるというべきであり、したがって、解雇権濫用法理を類推適用し、雇止めには合理的な理由が必要であるというべきである。
そこで、合理的な理由の有無について検討するに、Xの業務日誌の不提出及び執務場所の変更の遅れは、いずれもY社の業務命令に違背するものであり、また、アンケートの実施は、Y社の就業規則19条(職場内規律)に触れるものであって、その態様等に照らし、Y社が本件雇用契約を更新しなかったことには客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる

期間途中での解雇が雇止めに比べてハードルが高いことがよくわかる事案ですね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介345 3週間続ければ一生が変わる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間がんばっていきましょう!!
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←休日は、早朝ジョギングから始まります。

今回は、護國神社を通り、東の方へ行ってみました。

早朝でも、かなり暑くなってきましたね。

帽子は必須です。

継続は力なり。

今日は、午前中は事務所で書面を作成します。

午後は、新規相談が1件入っています。

夕方から月一恒例のラジオです。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

3週間続ければ一生が変わる〈ポケット版〉

「習慣」にフォーカスした本です。

いかに習慣が大切であるかがよくわかります。

良い習慣をつくれば、人生が変わるというのは決して大袈裟な話ではないと思います。

成功している人は、みな習慣の重要性を理解し、実践していますね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

充実した人生を送る秘訣は、安全を探すことに日々をついやすのではなく、機会を追いもとめることに時間をさくことです。たしかに、より計画的で情熱的な人生を始めれば、それなりに失敗もするでしょう。でも、失敗は、勝つ方法を学ぶことにすぎません。あるいは、父がいつかいっていたように、『ロビン、枝の先はたしかに危ない。だが、すべての実はそこにあるのだ』ということなのです。 人生はすべて選択です。おおいに満ち足りていて、潜在能力を十分に発揮している人びとは、ほかの人より賢い選択をしているにすぎません。」(38頁)

「人生はすべて選択です」

いい言葉ですね。

amazonのファウンダーであるジェフ・ベゾスさんも同様の発言をしていますね。

In the end, We are our choices.

これまでどのような選択をしてきたか、また、これからどのような選択をするかによって、私たちの人生は決まってきます。

自分が目指すべきゴールがあるのなら、そのゴールにたどり着くために必要な選択をすべきですよね。

夢や目標ばかりを声高に唱えても、また夢や目標を自宅の壁に掲げても、やるべきことをやり、やるべきでないことをやらないという選択をしなければ、夢や目標は達成できません。

日々、正しい選択をするように心がけたいと思います。

労働災害75(東芝事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。
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←先日、久しぶりに両替町の「心苑」に行ってきました。

写真は、定番の「海老のレタス包み」です。

行くと毎回注文します。

この海老の味付けがちょうどいいのです。

おいしゅうございました。

今日は、午前中は、富士の裁判所で債権回収の裁判が1件、顧問先でのセミナーが1件入っています。

今回のセミナーのテーマは、「事例をわかる!景品表示法のポイントと実務上の留意点」です。

過去の景表法違反の事例を通して、実務上の留意点を解説していきます。

午後は、新規相談が1件入っています。

夕方から、浜松市浜北区の会社を訪問します。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、メンタルヘルスに関する情報の申告がないことをもって、過失相殺をすることはできないとする最高裁判決を見ていきましょう。

東芝事件(最高裁平成26年3月24日・労経速2209号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、鬱病に罹患して休職し休職期間満了後にY社から解雇されたが、上記鬱病は過重な業務に起因するものであって上記解雇は違法、無効であるとして、Y社に対し、安全配慮義務違反等による債務不履行又は不法行為に基づく休業損害や慰謝料等の損害賠償、Y社の規程に基づく見舞金の支払い、未払賃金の支払等を求める事案である。

なお、上記休業損害の損害賠償請求と上記未払賃金の支払い請求とは選択的併合の関係にある。

原審(東京高裁平成23年2月23日)は、解雇は無効であるとし、過重な業務によって発症し増悪した本件鬱病につきY社はXに対し安全配慮義務違反等を理由とする損害賠償責任を負うとした上で、その損害賠償の額を定めるに当たり、Xが神経科の医院への通院等の情報を上司や産業医等に申告しなかったことは、Xの鬱病の発症を回避したり発症後の増悪を防止する措置を執る機会を失わせる一因となったものであるから、Xの損害賠償請求については過失相殺をするのが相当であること、またXには個体側のぜい弱性が存在したと推認され損害賠償請求についてはいわゆる素因減額をするのが相当であると判断して、損害額の2割を減額するととともに、休業損害に係る損害賠償請求につき傷病手当金、及び、いまだ支給決定がされていない期間の休業補償給付をXに対する損害賠償の額から控除することが相当であるとして、その認容すべき額が選択的併合の関係にある未払賃金請求の認容すべき額を下回るからこれを棄却すべきとした。

【裁判所の判断】

原判決中、損害賠償請求及び見舞金支払請求に関するX敗訴部分を破棄し、東京高裁に差し戻す。

その余の上告を棄却する。

【判例のポイント】

1 ・・・上記の業務の過程において、XがY社に申告しなかった自らの精神的健康(メンタルヘルス)に関する情報は、神経科の医院への通院、その診断に係る病名、神経症に適応のある薬剤の処方等を内容とするもので、労働者にとって、自己のプライバシーに属する情報であり、人事考課等に影響し得る事柄として通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される性質の情報であったといえる。使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っているところ、上記のように労働者にとって過重な業務が続く中でその体調の変化が看取される場合には、上記のような情報については労働者本人からの積極的な申告が期待し難いことを前提とした上で、必要に応じてその業務を軽減するなど労働者の心身の健康への配慮に努める必要があるものというべきである

2 ・・・このように、上記の過重な業務が続く中で、Xは、上記のとおり体調が不良であることをY社に伝えて相当の日数の欠勤を繰り返し、業務の軽減の申出をするなどしていたものであるから、Y社としては、そのような状態が過重な業務によって生じていることを認識し得る状況にあり、その状態の悪化を防ぐためにXの業務の軽減をするなどの措置を執ることは可能であったというべきである。これらの諸事情に鑑みると、Y社がXに対し上記の措置を執らずに本件鬱病が発症し増悪したことについて、XがY社に対して上記の情報を申告しなかったことを重視するのは相当でなく、これをXの責めに帰すべきものということはできない

3 原審は、安全配慮義務違反等に基づく損害賠償請求のうち休業損害に係る請求について、その損害賠償の額から本件傷病手当金等のX保有分を控除しているが、その損害賠償金は、Y社における過重な業務によって発症し増悪した本件鬱病に起因する休業損害につき業務上の疾病による損害の賠償として支払われるべきものであるところ、本件傷病手当金等は、業務外の事由による疾病等に関する保険給付として支給されるものであるから、上記のX保有分は、不当利得として本件健康保険組合に返還されるべきものであって、これを上記損害賠償の額から控除することはできないというべきである。
また、原審は、上記請求について、上記損害賠償の額からいまだ支給決定を受けていない休業補償給付の額を控除しているが、いまだ現実の支給がされていない以上、これを控除することはできない(最高裁昭和52年10月25日)。

有名な事件の最高裁判決です。

使用者側のみなさんは、上記判例のポイント1をおさえておきましょう。

本の紹介344 「高く」売れ!「長く」売れ!「共感」で売れ!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
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←先日、御幸町にある「フジヤマ55」に行ってきました。

写真は、「台湾まぜそば」です。

よくかき混ぜないと麺までたどりつけません。

すばらしいボリュームですね!

おいしゅうございました。

今日は徳島県の警察署まで私選弁護の関係で接見に行ってきます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
「高く」売れ! 「長く」売れ! 「共感」で売れ!

エクスペリエンス・マーケティングの藤村さんの本です。

これまでにもたくさんの本を出されている方ですが、毎回、楽しく読ませていただいています。

また、いろんな業種におけるマーケティングの工夫のしかたを見ることができるので、大変勉強になります。

おすすめです!

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ジョブズはたくさんの名言を残していますが、その中でビジネスの真理を、シンプルなたとえで表現している言葉があります。歴史に残る箴言だと思う。
『美しい女性を口説こうと思ったとき、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るかい?
そう思った時点で君の負けだ。ライバルが何をしようと関係ない。その女性が本当に何を望んでいるのかを、見極めることが重要なんだ』
これに尽きます。
本当にお客さまのほうを向いているか?」(209~210頁)

例え方が素晴らしいですね。 さすがジョブズさん!

競合他社と、バラの花の数で競うような競争をしている時点で、お客様のほうを向いていませんよね。

どんなときもバラの花の数でしか魅力をアピールできない、そんな商売の仕方をしていませんか?

もしこのような競争を繰り広げる道を選んだならば、最後には、バラの花を何本贈ることになるのでしょうか。

お客様は、本当にそれを望んでいるのでしょうか。

最高を目指す競争は、一見正しいように思えるが、実は自己破壊的な競争方法である

これは、マイケル・ポーターさんのことばです。

バラの花の多さで最高を目指す競争は、自己破壊的な競争方法であることがよくわかると思います。

そんなこと、求められていないのに・・・。

賃金82(A税務署職員事件)

おはようございます。

さて、今日は、早期退職特例の適用の可否と過払退職手当の返還請求に関する裁判例を見てみましょう。

A税務署職員事件(大阪地裁平成25年11月29日・労判1089号47頁)

【事案の概要】

Y社は、A税務署で勤務していたXが退職勧奨に応じて60歳の定年に達した後に退職した際、国家公務員退職手当法の経過措置規定を適用して退職手当の支給額を算定するに当たり、同法5条の3に規定する定年前早期退職者に対する退職手当の基本額に係る特例がY社に適用されると判断して上記支給額を算定した上で、Xに対して2958万0245円の退職手当を支給した。

本件は、Y社が、本来、Xには定年前早期退職特例が適用されないから、Xに支給されるべき退職手当の額は2844万2544円であり、本件退職手当との差額である102万9601円が過払いとなっていると主張して、Xに対し、公法上の不当利得に基づき、102万9601円及びこれに対する催告における納付期限の翌日である平成21年8月25日から支払い済みまで5%の遅延損害金の支払いを求める実質的当事者訴訟である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 ・・・そうすると、勧奨を受けて定年後に退職した者について、・・・「その者の非違によることなく勧奨を受けて退職した者」に含めることは、退手法4条1項及び同5条1項が、一定期間以上勤務し非違によることなく勧奨を受けて退職した者について、退職手当の基本額を優遇することとした趣旨に合致しないものというべきである。

2 Xは、Y税務署長から、4パーセントの退職手当の割増しがされるらしいとの話を受け、国税庁及び大阪国税局の人事政策に協力するため退職を承諾したにもかかわらず、退職後2年も経過してから、Y社がXに対して本件過払金の返還を請求することは信義則に違反すると主張する
しかしながら、退手法に基づき本来Xに支給されるべき退職手当の額は2844万2544円であって、本件過払金については法律上の原因を欠くものである以上、Y社としては、債権を適正に管理するために、Xに対してその返還を求めるべき責務を負っているものというべきである。そして、法律による行政の原理の観点からすれば、行政行為に対する信義則の法理の適用について慎重に考えるべきものであるところ、仮に、Xが主張するような事情が存在したとしても、それだけでは、Y社がXに対して本件過払金の返還を求めることが正義に反するものということはできない。

3 Xは、退職の記念に中国旅行をするなどして本件過払金を費消したから、現存利益は存在しない旨主張する
しかしながら、本件過払金は、本件退職手当の一部として支給されたものであって、Xの固有財産に混入して固有財産と区別することができない以上、本件過払金について、現存利益の消滅を観念することはできないというべきである。また、仮に、Xが、本件過払金に相当する額を旅行費用として費消したとしても、当該費用の支出を免れた部分について、Xに現存利益が存在するものというべきである。

行政行為に対する信義則の法理の適用について裁判所の考え方を参考にしてください。

また、上記判例のポイント3は、民法703条の現存利益に関する裁判所の考え方がわかりますね。

現存利益に関する考え方については、いくつか最高裁判例がありますので、確認しておきましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介343 人生の原理(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は本の紹介です。

(文庫)人生の原理 (サンマーク文庫)

著者は、経営コンサルタントの小宮さんです。

タイトルのとおり、人生において大切にすべき原理原則=当たり前のことが書かれています。

奇をてらわず、王道だけが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

OJTだけで仕事ができるようになる。それは、甘い。それでは、一流になんか絶対になれない。イチロー選手が、家で素振りをしないとか、野球のことをまったく考えないとか、そんなことは、ありえない。家で勉強しなさい。週に1時間でも2時間でも。家で仕事をするのではなく、仕事の本質を家で勉強する。OJTでは、作業を効率よくする方法は学べても、その仕事の本質まで学ぶことはできない。それは、オフにやるのがあたりまえ。」(89頁)

仕事をする時間とそうでない時間を明確に分けている人からは反対されるかもしれませんね(笑)

「オフにまで仕事の本質を学ぶなんて、ワーク・ライフ・バランスを軽視するものである」とかなんとか言われるかもしれませんね。

まあ、それはそれでいいでしょう。

仕事大好き人間からすると、この小宮さんの意見は、当たり前の話です。

弁護士の世界でいうならば、仕事中は、目の前の書面を作成するのに必要な情報を入手し、それを踏まえて法的見解をまとめる。

でも、OJTだけでは、断片的でその場しのぎの知識が増えていくだけですから、体系的な理解には程遠いわけです。

そこで、休日に何をするか。

みんな忙しいので、OJTの延長になりがちですが、意識して、あえて基本書をじっくり読む。

これをやることで、これまで出会った点と点をつなぐわけです。

仕事は違えど、みんなが休んでいるときに準備をしている人が最終的には成功を収めるのだと確信しています。

労働時間37(八重椿本舗事件)

おはようございます。 

さて、今日は、化粧品等販売会社従業員に対する雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

八重椿本舗事件(東京地裁平成25年12月25日・労判1088号11頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対して、①未払の早出出勤(始業時刻前の出勤)手当、休日出勤手当、賞与の支払いを求めるとともに、労働基準法114条に基づく付加金の支払いを求める事案、②不法行為に基づいて、未払の早出出勤手当、残業手当、休日出勤手当、賞与相当額の損害賠償を求める事案、③主位的には正社員を定年退職した後に嘱託社員としての地位を有することの確認を求め、予備的には期間雇用の契約社員としての地位を有することの確認を求めるとともに賃金と遅延損害金の支払いを求める事案、④Xが発明考案したにもかかわらず、Y社がXの了解を得ずに公開技報(自分の発明の権利化を希望しないが、他人に権利化されることを防止したい者が、自分の発明内容を公表するための刊行物)に公開したため、Xが特許申請をすることができなくなった一方、Y社がXの発明を導入し不当に利得を得ているとして、不当利得の返還を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、残業手当として12万9722円+付加金として同額を支払え

その余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 そもそも、労働基準法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであり、使用者の指揮命令下にあるか否かについては、労働者が使用者の明示又は黙示の指示によりその業務に従事しているといえるかどうかによって判断されるべきである。
そして、終業時刻後のいわゆる居残残業と異なり、始業時刻前の出社(早出出勤)については、通勤時の交通事情等から遅刻しないように早めに出社する場合や、生活パターン等から早く起床し、自宅ではやることがないために早く出社する場合などの労働者側の事情により、特に業務上の必要性がないにもかかわらず早出出勤することも一般的にまま見られるところであることから、早出出勤については、業務上の必要性があったのかについて具体的に検討されるべきである

2 本件では、Y社の始業時刻は8時30分であるところ、Xは常にそれよりも1時間も早い、7時30分前後に出社していたとのことであるが、そもそも1時間も早く職場に来る必要性があったことを認めるに足りる証拠はない。また、X自身、タイムカード打刻後、食堂でいろいろと話をすることがあったとか、常時やらなければならない仕事があったわけでもないと述べている(X本人)。さらに、Y社は、平塚労基署からXの上長が早出出勤しているときは、早出出勤の必要性があったとして、早出出勤分の残業代を支払うよう指導を受け、これに従い、6万0340円の時間外手当を支払っている。
そうすると、Xが残業代を請求している早出出勤については、労働時間に該当すると認めるに足りる証拠はないものといわざるを得ず、Xの請求は認められない。

3 2年の短期消滅時効(労働基準法115条)にかかる早出出勤手当、残業手当、休日出勤手当、賞与相当額を不法行為に基づいて請求するについては、Xにおいて、Y社の不法行為の内容、それによってXのいかなる権利が侵害され、Xがいかなる損害を被ったのか、不法行為と損害との因果関係の存在、Y社の故意又は過失を主張立証する必要がある
ところで本件においてXは、・・・単なる時間外割増賃金の債務不履行を述べているだけであって、不法行為責任の発生根拠について具体的な主張立証がなされているとは認めがたい。・・・以上からすると、Xの不法行為に基づく損害賠償請求は認められない。

使用者側は、早出出勤について労基法上の労働時間性が争点となった場合には、上記判例のポイント1の視点を明確に主張すべきです。

タイムカードの打刻時間をそのまま労働時間算定の証拠とされないようにしなければなりません。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介342 インド人大富豪 成功の錬金術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
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←先日、顧問先会社の社長と会社で「博」の料理をご馳走になりました。

いつもながら、芸術的な盛りつけです。

おいしゅうございました。

今日は、午前中は、新規相談が1件入っています。

午後は、離婚調停が1件、慰謝料請求の裁判が1件、新規相談が1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
インド人大富豪 成功の錬金術

著者は、サチン・チョードリーさんです。 いろんなお仕事をしている方です。

「ジュガール」という言葉を使って、成功する秘訣を教えてくれています。

平和ぼけした日常生活に違和感を感じている人、さらなる一歩を踏み出したいと考えている人には、おすすめの本です。

「このままじゃ、いかん!」 そう思わせてくれる、とてもいい本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

そこまで勉強しなくても、そこまで働かなくても、そこまでがんばらなくても・・・生きていけるじゃないか、という“逃げ腰思想”が社会を停滞させているのです。でもね、IITのような大学では超難関をくぐったエリートたちが『世界を相手に大成功するぞ』というインディアンドリームを胸に、必死で勉強していますよ。貧しい家庭に生まれ、スカラシップで通学している学生は『はい上がりたい』『家族にいい生活をさせたい』という熱意で授業に食らいついている。そんな学生が年間数万人も卒業し、世界に飛び立っているのです。これからのグローバル社会、あなたが相手にするのはとんでもなくハングリースピリットをもった新興国のビジネスパーソンです。『そこまでしなくても・・・』なんて言っている余裕はないのです。」(208~209頁)

いいこと言いますね。

どうですか?

これを読んでもなお「自分には関係ない」と言い切る方はいるでしょうか。

東進ハイスクール英語講師の渡辺勝彦さんの言葉を借りるならば、

「平均点目指して、何がおもろいんだ」

ということです。

人生は、あっという間に終わってしまいます。

休んでる場合じゃないし、手を抜いている場合でもありません。

出し惜しみ、禁止。