おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。
さて、今日は、会社解散に伴う解雇に関する裁判例を見ていきましょう。
F1社ほか事件(静岡地裁沼津支部平成25年9月25日・労経速2204号3頁)
【事案の概要】
本件は、Y1社の従業員であったXらが、平成22年2月9日にY1社から会社解散を理由として同日をもって解雇する旨の意思表示を受けたことから、Xらが、前記解雇は解雇権濫用により無効であるなどと主張して、Y1社、Y2社などに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、Y1社らに対し、同年3月1日以降の賃金又は不法行為に基づく賃金相当額の損害賠償金の支払いを求め、さらに、違法な前記解雇によりXらが精神的苦痛を被ったなどと主張して、Y社らに対し、不法行為に基づく損害賠償金360万円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効なところ(労働契約法16条)、会社が解散した場合、会社を清算する必要があり、もはやその従業員の雇用を継続する基盤が存在しなくなるから、その従業員を解雇する必要性が認められ、会社解散に伴う解雇は、客観的に合理的な理由を有するものとして、原則として有効であるというべきである。しかし、会社が従業員を解雇するに当たっての手続的配慮を著しく欠き、会社が解散したことや解散に致った経緯等を考慮してもなお解雇することが著しく不合理であり、社会通念上相当として是認できない場合には、その解雇の意思表示は、解雇権を濫用したものとして無効となるというべきである。
2 本件解散やそれに伴う解雇予定等について事前に説明がないまま本件解雇に至ったことについては手続的配慮を欠く面があったことは否定できないが、従前の賃金改定がなされなければ存続できなくなる厳しい経営状況にあること等について説明がされていたこと、本件解雇後ではあるものの、元従業員の再就職に関する措置を講じており、これ以上の再就職に関する措置をなし得たと認められないことに加え、タクシー需要が減少している状況やY1社の経営状況から早期の解散という選択が不合理であるとはいえないことを合わせて考慮すれば、Y1社が従業員を解雇するに当たっての手続的配慮を著しく欠いているとまではいえない。
以上によれば、本件解散に伴う本件解雇は、客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であると認められるから、無効とはいえない。
上記判例のポイント1が解散に伴う解雇(整理解雇)の規範です。
通常の整理解雇の4要素よりもさらに厳しいですね。
解散する以上、原則として解雇はしなければならないというところからくるものです。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。