Daily Archives: 2014年6月12日

賃金78(東名運輸事件)

おはようございます。

さて、今日はテレビ局の下ロケバス運転手による割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

東名運輸事件(東京地裁平成25年10月1日・労判1087号56頁)

【事案の概要】

本件は、Y社で稼働していたXが、平成20年6月から22年12月にかけての時間外労働等に対する割増賃金および付加金の各支払いと遅延損害金を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、583万7256円を支払え。

Y社はXに対し、400万円の付加金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、ロケバス業務に従事する従業員に関し、運行協定書が規定する事項については運行協定書が優先し、就業規則の適用が排除される旨を主張するから、運行協定書が就業規則の一部変更として有効であるか否かが問題となる。
就業規則の変更によって労働条件を変更するには、当該変更が合理的であり、かつ周知されている必要があるところ(労働契約法10条参照)、運行協定書は、その規定に特段不合理な点は認められないが、本件全証拠を総合しても、運行協定書の内容が事業場の労働者の知り得る状態におかれていたことを認めるに足りる的確な証拠はない。したがって、運行協定書は、就業規則一般に必要な周知性を満たしているとはいえないから、その余の点について判断するまでもなく、XとY社との間の労働契約の内容と認めることはできず、単なる業務心得又は運用指針に止まるものというべきである

2 使用者には、労働者の労働時間を適正に把握する義務が課されていると解されること、Y社は、業務毎に作成される運転日報によって労働時間を記録、管理していたことに鑑みれば、本件においては、記載内容が不合理なものでない限り、運転日報に記載された時刻を基準に出勤の有無及び労働時間を推定することが相当である(ただし、この推定は事実上のものであるから、後述の運行表等、他により客観的かつ合理的な証拠が存在する場合には、当該証拠により出勤の有無及び労働時間を認定することが相当である。)。

3 本来の輸送業務の他に、天候、出演者の体調、撮影の進行具合、買出しの必要等のために、撮影中の待機時間に突発的に運転業務を依頼される場合があること、予定外の依頼であっても、Xとして対応可能であれば応じざるを得ないこと、Y社も、待機時間中の依頼も支障のない限り手伝うようにという指示をしていたこと、等の事実を認めることができる
上記事実に鑑みれば、Xは、撮影中の待機時間についても、原則として労働契約上の役務の提供が義務付けられていたというべきである。

4 住宅手当及び通勤手当は、請求期間を通じて一定の金額が支払われていること、Xの住宅又は通勤に要する実費と支給額との関連を認めるに足りる証拠がないことから、実質的に、住宅事情や通勤費用にかかわらず支給されているものとみるべきであり、除外賃金に当たるということはできない。

5 携帯電話料は、ロケバス業務における携帯電話の使用頻度が相当高いものと推認されること…等にかんがみれば、従業員の私物を業務に利用することに伴う実費を負担するため、一種の経費精算として支給されているものとみるのが相当である。したがって、携帯電話料を算定基礎賃金に算入することは相当ではない。

トラックやタクシーのドライバーをはじめとする各種運転手が残業代等の請求をする場合、手待ち時間の問題がよく登場します。

ほとんどのケースで、労基法上の労働時間に該当すると判断するのではないでしょうか。

会社として、どのような対策を講ずるべきか、是非、顧問弁護士に相談してみてください。