有期労働契約46(Y1(機構)ほか事件)

おはようございます。 6月に入りましたね。 今週も一週間がんばっていきましょう!

さて、今日は、元派遣社員であった契約社員の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

Y1(機構)ほか事件(神戸地裁尼崎支部平成25年7月16日・労経速2203号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y1社との間で労働契約書に雇用期間の定めのある労働契約を締結し、契約職員としてY1社のA事務所で勤務していたXが、Y1社から労働契約を1回更新されたものの、2回目の更新がされることなく労働契約に定められた期間が平成23年3月31日に満了したことに関し、XとY1社との間においては、上記労働契約は形式的には期間の定めがあるものの、実質的には期間の定めのないものと認識されていた、あるいは、Xは雇用の継続について合理的な期待を有していたのであるから、本件雇止めの効力を判断するに当たっては解雇権濫用法理が類推適用され、解雇の場合と同様に、本件雇止めを正当化する客観的に合理的な理由が必要であるところ、Y1社にはこのような理由はなかったから本件雇止めは無効であると主張して、Y1社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた事案である。

また、Xは、上記主張のほかに、A事務所に所長として勤務していたY1社の従業員であるY2から、面談の席でXの性的関係について尋ねられたり、職場にXが不倫をしているとのうわさを流布されるなどのセクハラを受けたり、上記の根も葉もないうわさを信じたY1社及びY2から、不当にもXを職場から排除するために本件雇止めをされたりして精神的苦痛を被ったと主張して、Y1社とY2に対し、連帯して慰謝料50万円等の請求をした事案である。

【裁判所の判断】

いずれも請求棄却

【判例のポイント】

1 Xが担当していた業務は、Y1社にとって臨時的に生じた業務ではなく、恒常的に必要な業務であるといえるが、契約職員は、一般職員と異なり、チーフ業務や教育業務には従事しないこととされており、業務内容が一般職員と同一ではなかったこと、Xは、平成21年7月1日にY1社に雇用された契約職員であり、本件雇止めまでの勤務年数は1年9か月にすぎず契約更新回数も1回にとどまり、しかも、その1度の更新は、平成21年7月からの当初の雇用期間を年度末に終了するよう合わせるためのものであって、契約職員制度導入の当初から予定されていたものであること、Y1社の就業規則には契約更新の有無、更新の判断基準については個別に締結する労働契約において定める旨が記載されているところ、XとY1社との間で取り交わされた労働契約書には、労働契約の更新に関する事項として「労働契約の更新を行う場合あり」、「業務および要員体制の見直し、業務への適格性、勤務成績、事業縮小等による業務量の変化、経営状況の変化等を総合考慮して労働契約の更新を行うかどうかを決定する。」との記載があることが認められ、これらの事情からすれば、XとY1社との間の労働契約が、実質において期間の定めのない契約と異ならない状態にあったとか、労働者が契約の更新、継続を当然のこととして期待、信頼してきたという相互関係のもとに労働契約が存続、維持されてきたとはいえないことが明らかである。

2 司が職場内で部下が不倫をしているとのうさわがある旨を耳にした場合、上司として、業務効率の維持向上・職場環境の改善等の見地から、同僚等に対しそのようなうさわがあるか否かを確認したり、職員管理のために管理職間で情報の共有を図ったり、当該部下に対しそのようなうわさが出ないように留意してもらいたいと注意を喚起したりなどすることは、正当な業務行為であって違法性を帯びるものではない

有期雇用における雇止めの成功事例ですね。

顧問弁護士がいる会社では、最近、特に、本田技研工業事件判決以降、雇止めに関する方法が確立されてきているように思われます。

労働者側とすると、非常に戦いにくくなってきていますね。