Daily Archives: 2014年5月9日

不当労働行為88(パナソニックプラズマディスプレイほか1社事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。
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乳白色のクリアファイルです。緑色、透明に続き、第3弾です。

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さて、今日は、組合員の施設内における文書の配布方法変更等と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

パナソニックプラズマディスプレイほか1社事件(中労委平成25年12月18日・労判1084号92頁)

【事案の概要】

X組合はY社に対し、A組合員にリペア作業を命じたことが人権侵害である等と主張した。

これに対し、Y社は、Aの問題は司法の場で解決したい等と主張した。

また、X組合は、Y社の親会社であるZ社に対しても、A組合員に対する人権侵害行為等を議題とする団交を申し入れたが、X社は団交には応じなかった。

【労働委員会の判断】

団交拒否は不当労働行為に当たらない

親会社は労組法上の使用者に当たらない

【命令のポイント】

1 Y社としては、A組合員に対する人権侵害行為の問題については話し合いが既に行き詰まっているので、組合の団交申入れに直ちに応じることはできないとしつつ、新たに話し合う必要性が認められれば応じる可能性は必ずしも否定しないとの態度を取ったものといえる。当時、継続的に団交が開催されていたわけではなく、約1年2か月間にわたり団交が途切れた後に、前回団交で話し合いが実質的に行き詰まっていた議題について再び行われた団交申入れであったことからすればY社が、団交応諾の可否を決めるに当たり、組合に交渉再開の必要性につき説明を求めたのは首肯しうる対応であったと考えられる。
以上からすれば、先行事件の団交申入れまでの間に、上記の議題に関する本件団交申入れに、Y社が応じなかったのもやむを得ないところであり、これを正当な理由なく本件団交申入れを拒否したものであったということはできない。

2 Z社は、Y社の親会社であることから、資本関係、人的関係及び取引関係に基づき、会社に対し、一定の影響力を有していたと推認される。しかしながら、Y社には、プラズマディスプレイの製造等、独自の事業活動を行っていた企業としての実体があり、A組合員が雇用契約を締結したのもY社であったことからすれば、A組合員の賃金、労働時間、休日等の就労の諸条件について管理していたのはY社であったと考えられる。
また、本件団体交渉の対象事項との関係についても、A組合員に対し、他の社員とは異なる場所において一人でリペア作業に従事するよう指示したり、雇止めにすることを告知したのはY社であり、パナソニックがこの決定に関与していたことをうかがわせる事実はない
以上のとおり、Z社は、Y社に対し、親会社として一定の支配力は有していたものの、組合が各主張するところを検討しても、Z社が、A組合員の基本的な労働条件等につき雇用主と同視できるほどに現実的かつ具体的な支配力があったことを推認することはできない

団交拒否にあたらない理由に客観的合理性が見出せれば、本件のように不当労働行為に該当しません。

また、本件は親会社に対しても団体交渉を求めているケースですが、「雇用主と同視できるほどに現実的かつ具体的な支配力があった」という要件をクリアしなければなりませんので、ハードルは高いです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。