Monthly Archives: 5月 2014

本の紹介325 史上最高のセミナー(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は本の紹介です。
史上最高のセミナー

一見すると、タイトルが誇大に感じられるかもしれませんが、とってもいい本であることは間違いありません。

9人の自己啓発界(?)の超大物が、自身の考える成功哲学を伝えてくれています。

全員のセミナーを受講したら、何百万円かかるかわかりません。

言葉の力を感じるのとともに、実践することの大切さを強く感じることができます。

何度も読み返す価値のある一冊です。 おすすめです!

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

富への真の鍵は、人生において二つのドアのうち一つを選ばなければならないことに気づくことだ。“自由”と書かれたドアを選ぶか、”安全”と書かれたドアを選ぶかのいずれかなんだ。安全と書かれたドアを選べば、あなたはそのどちらも失うことになる。だが自由と書かれたドアを選んだとしても、負けないわけでも、つまずかないわけでも、お金を失わないわけでも、不安に感じないわけでもない。しかし最後には、自由だけでなく、安全も手に入れることができるんだ。つまり、どちらも手に入れることができるんだよ。」(191頁)

私は、これを読んだとき、「安全」を「安定」と読み替えました。

「安定」を選ぶか、「自由」を選ぶか。

この2つのドアを開く傾向というのは、小さいころからの教育や環境が少なからず影響している気がします。

安定志向の家庭に育った子どもは、大人になってからも、自由より安定を選ぶ傾向にあるのではないでしょうか。

職業であったり、結婚相手であったり。

安定を求め出すと、変化を恐れるようになります。 不安定への変化を。

今の安定した生活が変わってほしくない、そう思うようになりませんか?

でも、そもそも変化しないことなんてあり得ません。 これまでもそうだったように、これからも変化しまくるにきまっているわけです。

安定よりも自由を愛する人間は、変化をそのまま受け入れられます。

少なくとも、私の周りの若手経営者の皆さんは、「安定? は? 寝言言ってるの?」という方が圧倒的多数を占めます。 安定はおじいちゃんになるまでとっておきます。

解雇140(財団法人ソーシャルサービス協会事件)

おはようございます。

さて、今日は、事業所廃止に伴う解雇に関する裁判例を見てみましょう。

財団法人ソーシャルサービス協会事件(東京地裁平成25年12月18日・労経速2203号20頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社による解雇を無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、解雇後の賃金及び賞与並びに不法行為(不当解雇)に基づく損害賠償金の支払いを求めている事案である。
Y社は、Xと雇用契約を締結したのはY社ではなく、権利能力なき社団である財団法人ソーシャルサービス協会東京第一事業本部であると主張して、X・Y社間の雇用契約の存在を争うとともに、仮に雇用契約が存在するとしても上記解雇は有効であると主張している。

【裁判所の判断】

解雇は無効

【判例のポイント】

1 Y社において、本件解雇を行った平成23年当時、東京第一事業本部の閉鎖に伴って、東京第一事業本部の事業に従事していた人員が余剰人員となっていたことは認められるものの、Y社は同年3月時点において2億円を超える現預金を保有しており、上記余剰人員を削減しなければ債務超過に陥るような状況になかったことは明らかであり、人員削減の必要性が高かったものと認めることはできない。にもかかわらず、Y社は、期間の定めのない雇用契約を締結しているXに対し、6か月間の有期雇用契約への変更を提案したものの、他の事業所への配置転換や希望退職の募集など、本件解雇を回避するためのみるべき措置を講じておらず、十分な解雇回避努力義務を果たしたものということはできない
上記のとおり、Y社においては、従たる事業所は完全な独立採算で独立した運営を行っており、本部が従たる事業所に人員配置を命じることはしない運用を行っていることが認められるものの、本件雇用契約における使用者がY社である以上、そのような内部的制限を行っていることをもって、東京第一事業本部以外の従たる事業所への配置転換等の解雇回避努力を行わなくてよいことになるものではないというべきである。・・・そうすると、本件解雇は、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であるものとは認められないから、その権利を濫用したものとして無効である。

2 普通解雇された労働者は、当該解雇が無効である場合には、当該労働者に就労する意思及び能力がある限り、使用者に対する雇用契約上の地位の確認とともに、民法536条2項に基づいて(労務に従事することなく)解雇後の賃金の支払を請求することができるところ、当該解雇により当該労働者が被った精神的苦痛は、雇用契約上の地位が確認され、解雇後の賃金が支払われることによって慰謝されるのが通常であり、使用者に積極的な加害目的があったり、著しく不当な態様の解雇であるなどの事情により、地位確認と解雇後の賃金支払によってもなお慰謝されないような特段の精神的苦痛があったものと認められる場合に初めて慰謝料を請求することができると解するのが相当である。
これを本件についてみると、前記特段の精神的苦痛を認めるに足りる事実はない。

整理解雇については、要件説ではなく要素説を採用していることから、整理解雇の必要性がそれほど高くない場合には、高度の解雇回避努力が求められることになります。

本件では、十分な解雇回避がなされていないという判断です。

また、解雇事案において、賃金のほかに慰謝料を認める場合の規範が示されていますので、参考にしてください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介324 ど真剣に生きる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

ど真剣に生きる (生活人新書 327)

2、3年前に出版された稲盛さんの本です。

突然、稲盛さんの本が読みたくなったので、アマゾンで数冊、衝動買いしました。

生き方、ビジネスのしかたともに、哲学を見ることができます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・いいかげんな人は嫌いなんですね。いいかげんなことで人生うまくいくはずがないと思うものですから。スポーツであれ、経営であれ、学問であれ、何をするときでも真剣さというのは大事だと思うのです。それも『ど』がつくほど。だから、経営者の方々がよく『経営がうまくいってません』などと相談に見えるんですが、お話を聞いてみると、まったくいいかげんな経営をしていると思うこともしばしばですね。そこで『経営にどこまで真剣に打ち込んでいますか。自分のことをすべて投げうってでも、という気持ちがありますか。そんないいかげんなことではいけませんよ』と言います・・・」(148~149頁)

経営者のみなさんの多くは、自分自身としては「ど真剣」に経営をしていると思っているのではないでしょうか。

私もその一人ですから。

誰もいいかげんに経営などするわけないのです。

でも、それはあくまで主観の問題ですよね。

稲森さんからすれば、まだまだ全然甘いのかもしれません。

何をもって「ど真剣」なのか。

稲盛さん曰く、「自分のことを投げうってでも、という気持ち」があるか否かだと。

自分の人生をかけて、その仕事に没頭している人というのは、本当に強いですね。

また、情熱を持って自分の仕事をやっている人は、傍から見ていて、とても魅力を感じます。

私も弁護士として、そういう経営者がトップにいる会社の顧問弁護士でいることを大変誇りに思います。

これからも多くの若い経営者が情熱を持って会社を経営していく姿を側で支えていきたいと思います。

セクハラ・パワハラ6(M社事件)

おはようございます。

さて、今日は、従業員に対する暴言、暴行、退職強要行為と不法行為に関する裁判例を見てみましょう。

M社事件(名古屋地裁平成26年1月15日・労経速2203号11頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員として勤務していたXの相続人らが、Xが自殺したのは、Y社の代表表取締役であるA及びY社の監査役であるBのXに対する暴言、暴行あるいは退職強要といった日常的なパワーハラスメントが原因であるなどとして、主位的には、Aらに対し、不法行為に基づき、Y社に対し、会社法350条及び民法715条に基づき、それぞれ損害賠償金及び遅延損害金の支払を求め、予備的には、Y社に対し、債務不履行(安全配慮義務違反)に基づき、損害賠償金及び遅延損害金の支払いを求める事案である。

なお、Xの死亡について、名古屋東労働基準監督署長は労災支給決定をしている。

【裁判所の判断】

Y社及びBは、合計約3600万円を支払え

Cに対する請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xは、平成21年1月23日に本件退職届を作成しているところ、(1)本件退職届にはY社が被った損害(1000万円から1億円)をXが一族で返済する旨の記載があったものと認められるが、Xにその支払能力があったとは窺えず、また、Xの一族にその返済をすべき責任があったとも窺えないから、Xが本件対処届の作成に任意に応じたものとは考え難いこと、・・・(3)Xは、同月19日にAから本件暴行を受けていたことからすれば、本件退職届を作成した当時において、Xは、Aを畏怖していたと認めるのが相当であることを考慮すると、AがXに対して本件退職届の内容で退職願を書くように強要したと認めるのが相当である。

2 AのXに対する暴言、暴行及び退職強要のパワハラが認められるところ、AのXに対する前記暴言及び暴行は、Xの仕事上のミスに対する叱責の域を超えて、Xを威迫し、激しい不安に陥れるものと認められ、不法行為に当たると評価するのが相当であり、また、本件退職強要も不法行為に当たると評価するのが相当である。

3 ・・・以上によれば、短期間のうちに行われた本件暴行及び本件退職強要がXに与えた心理的負荷の程度は、総合的に見て過重で強いものであったと解されるところ、Xは、警察署に相談に行った際、落ち着きがなく、びくびくした様子であったこと、警察に相談した後は、「仕返しが怖い。」と不安な顔をしていたこと、自殺の約6時間前には、自宅で絨毯に頭を擦り付けながら「あーっ!」と言うなどの行動をとっていたことが認められることに照らすと、Xは、従前から相当程度心理的ストレスが蓄積していたところに、本件暴行及び本件退職強要を連続して受けたことにより、心理的ストレスが増加し、急性ストレス反応を発症したと認めるのが相当である。・・・したがって、Aの不法行為とXの死亡との間には、相当因果関係があるというべきである。

4 AはY社の代表取締役であること、及び、AによるXに対する暴言、暴行及び本件退職強要は、Y社の職務を行うについてなされたものであることが認められるのであるから、会社法350条により、Y社は、AがXに与えた損害を賠償する責任を負う。

5 ・・・以上によれば、Xの逸失利益は、2655万5507円(365万4763円×0.7×10.380=26555507円(小数点以下切り捨て)である。なお、上記金額は、原告ら主張の逸失利益1452万1387円を上回るが、他の費用と合計した金額が、原告らの請求額の範囲内に収まる限り、処分権主義あるいは弁論主義違反の問題は生じないというべきである。

自殺とパワハラとの間の因果関係が肯定されています。

それはさておき、上記判例のポイント5ですが、逸失利益が原告ら主張の金額を上回る判決になっています。

被告からすると、原告の請求した逸失利益が上限だと思って防御しますので、不意打ちになりませんかね・・・。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介323 原田泳幸の仕事の流儀(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。
__
←週末は、海までのジョギングから始まります。

ジョギングの後は、これでもかというほど筋トレをします(笑) 常に筋肉痛になっていたいです。

継続は力なり。

今日も、先週に引き続き、裁判員裁判です。今日で6日目です。

夜は、裁判の打合せが1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
原田泳幸の仕事の流儀 (ノンフィクション単行本)

日本マクドナルドホールディングス会長の原田さんの本です。

先日、ベネッセホールディングスの社外取締役にも就任されましたね。

まだまだ勉強させていただきます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・その番組の中で流れていた『人間は、求めるものが少ないほど幸せです』といったナレーションは、とくに強く心に引っかかってきた。そのときあらためて、自分は何のために仕事をしてきたのかと考え、『決してモノに恵まれた生活を送るためではなかったはずだ』と気がついたのである。・・・このように私にしても40歳過ぎまでは物欲にとらわれていた部分があったのだから、『お金を得ることを目的にすべきではない』といったことを偉そうには言えないし、若い人がそうした望みを持つ気持ちはよくわかる。しかし、結果としては人生のどこかで、お金を得て贅沢な暮らしができることだけが幸せではなく、それがゴールなどではないと気がつくことになる人は多いだろう。仕事にしても、出生をしてより多くのお金を得ることを目的とすべきではない。よりやりがいのある仕事をして、自分を成長させていくことには、大きな喜びが見出せるものなのだから。」(210~211頁)

原田さんも40歳過ぎまでは物欲にとらわれていたそうです。

なんかこう書くと、物欲を持ってはダメなように感じてしまいますね。 そんなわけありません。

原田さんも若者が物欲を持つことを否定はしていませんね。

日本では、お金持ちになりたい、いい車に乗りたい、いい家に住みたいという「本音」を言うのは、一般的には良しとされていません。

前にも書きましたが、日本は、本音を言ってはいけない文化がありますので。

原田さんの現在の年齢で、物欲にとらわれるべきではない、と言うのはいいでしょう。

もういろんなことを経験し、物欲も満たされたと思いますので。

少なくとも、私は、「あまり物欲とかないんですよ」と言っている若者に魅力を感じません。

もっとぎらぎらしていて、天下をとることを目標にしているようなバイタリティに満ちあふれている人と一緒に仕事をしたいと思います。

有期労働契約45(大阪運輸振興(嘱託自動車運転手・解雇)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、運転手としての適格性欠如を理由とする期間途中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

大阪運輸振興(嘱託自動車運転手・解雇)事件(大阪地裁平成25年6月20日・労判1085号87頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に嘱託社員(自動車運転手)として1年の期間で雇用されていたXが、期間途中の平成23年6月29日に解雇されたのが無効であるとして、労働契約上の地位確認及び解雇後の賃金の支払を請求する事案である。

【裁判所の判断】

解雇は無効

【判例のポイント】

1 本件解雇は、期間の定めのある労働契約の期間途中における解雇であるから、労働契約法17条1項により、やむを得ない事由がなければ無効となる。また、同条項にいう「やむを得ない事由」は、期間の定めのない労働契約における解雇に関する労働契約法16条の要件よりも厳格なものと見るべきであり、期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由を意味すると解するのが相当である。

2 ・・・本件事故は、発信直後の車内で急に本件女性客が歩き始めたことから、安全確保のため、やむなくバスを停止させた際、本件乗客が転倒したというものであって、Xに特段の落ち度は認められず、転倒の原因がひとえにXのブレーキ操作にあると認めることもできない上、結果も軽微なものに終わったことに照らすと、本件事故をもってY社の運転手としての不適格性の顕れであるとするY社の主張は理由がない

3 ・・・X運転のバスが前方の停留所に停車するため減速しながら走行中、前方を走行していた原動機付自転車との車間距離が徐々に縮まったところ、原動機付自転車は、前方の停留所に停車中の先行するバスを右側から追い越そうとする挙動を一瞬示したものの、にわかに進路を左に切り返し、よろめくようにX運転のバスの進路を妨害したため、Xが急制動を余儀なくされ、その結果、乗客1名が捻挫の傷害を負ったことが認められる。このような状況からすれば、Xの急制動は、原動機付自転車との衝突を回避するためにはやむを得ない措置であったと認めることができる。確かに、Xは原動機付自転車との車間距離を詰め過ぎていたと評価する余地はあるものの、原動機付自転車が上記のように危険な進路妨害をすることは予見の範囲を超えており、当初挙動を示したように右側へ車線変更して先行するバスの後方に問題なく停車することができたと認められるから、運転手としての適格性を疑わせるほどの過失があるとまでは認められず、また、乗客の負傷の程度が重大であったと認めるに足りる証拠もない

もともと労働者の勤務不良を理由に解雇するのは容易なことではありません。

ましてや有期雇用の期間途中の解雇となるとさらにハードルが高くなります。

小さなミスをたくさん積み重ねても解雇が有効になるわけではありません。

会社の顧問弁護士と相談の上、慎重に対応をしてください。

本の紹介322 外資系の流儀(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
__
←先日、両替町にある「地鶏料理 椛」(もみじ)に行ってきました。

写真は、「駿河シャモの親子丼」です。

駿河シャモは、お肉がしっかりしているのが特徴です。 普通の親子丼とは一線を画しています。

おいしゅうございました。

今日は、裁判員裁判4日目です。 朝から夕方までずっとです。

夜は、整骨院でセミナーが入っています。

テーマは、「ここがポイント!整骨院が患者様にお伝えすべき交通事故で怪我をした場合の手順と注意点」です。

他の整骨院さんとの圧倒的な差別化を図り、交通事故に強い整骨院であるというブランディングのお手伝いをします。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
外資系の流儀 (新潮新書)

著者は、大学卒業後、NHKに勤務し、その後、ボストンコンサルティンググループ等で勤務された方です。

日本の会社と外資の会社とを比較しながら解説してくれています。

特に外資系の会社に転職する予定はありませんが、学べるところからは貪欲に学びたいと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・どの会社も最も重要視しているのが、『一緒に働きたい人かどうか』。いわゆるカルチャーフィットだ。履歴書に書いてある『学歴』『職歴』『仕事の能力・スキル』ももちろん重要だが、最後の決め手になるのは、極めて非論理的な感覚だという。『能力・スキルが素晴らしいから、という論理的な理由だけで採用すると失敗しますね。やっぱり最後は直感ですよ。』というのは、外資系金融機関で採用面接を担当しているNさん(40代・女性)。」(61頁)

結局、外資系でもそうなんですね。

一緒に仕事をしていることがイメージできるかどうか、これは本当に大切なことです。

最後の最後は、非論理的かつ純主観的な「合う」、「合わない」という感覚なんですよね。

もっとも、このように書くと、学歴、職歴、スキルなどが関係ないように聞こえてしまうかもしれません。

でも、そんなことはありません。

相性は、「最後の最後」の問題だからです。

履歴書や筆記試験の段階では、相性の程度はわかりません。

この段階では、客観的な基準で採否を決めざるを得ません。

多くの会社から内定をもらえる人というのは、この客観的基準と主観的基準をクリアできるバランスのとれた人なのでしょう。

賃金76(医療法人衣明会事件)

おはようございます。

さて、今日は、ベビーシッターの家事使用人該当性と割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

医療法人衣明会事件(東京地裁平成25年9月11日・労判1085号60頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、その代表者個人宅でベビーシッター等の業務を行っていたXらが、Y社に対して、主位的に、解雇無効による地位確認と未払給与、時間外割増賃金、付加金の支払いを求め、予備的に、不法行為に基づき、同額の損害賠償を求めている事案である。

【裁判所の判断】

1 Xらは労基法の適用除外となる家事使用人とは認められない

2 Y社はX1に対し、461万8040円+遅延損害金(6%)、191万8040円の付加金+遅延損害金(5%)、平成22年5月から本判決確定の日まで毎月30万円+遅延損害金(6%)を支払え

3 Y社はX2に対し、202万8243円+遅延損害金(14.6%)、187万8243円の付加金+遅延損害金(5%)を支払え

【判例のポイント】

1 事使用人について、労働基準法の適用が除外されている趣旨は、家事一般に携わる家事使用人の労働が一般家庭における私生活と密着して行われるため、その労働条件等について、これを把握して労働基準法による国家的監督・規制に服せしめることが実際上困難であり、その実効性が期し難いこと、また、私生活と密着した労働条件等についての監督・規制等を及ぼすことが、一般家庭における私生活の自由の保障との調和上、好ましくないという配慮があったことに基づくものと解される。しかしながら、家事使用人であっても、本来的には労働者であることからすれば、この適用除外の範囲については、厳格に解するのが相当である。したがって、一般家庭において家事労働に関して稼働する労働者であっても、その従事する作業の種類、性質等を勘案して、その労働条件や指揮命令の関係等を把握することが容易であり、かつ、それが一般家庭における私生活上の自由の保障と必ずしも密接に関係するものでない場合には、当該労働者を労働基準法の適用除外となる家事使用人と認めることはできないものというべきである。

2 Xらの労働条件は、労働契約書によって明確に規定されており、その勤務態様も、3人体制又は4人体制で2交替制又は3交替制で行われ、労働基準法上の労働時間を意識した1コマ8時間という単位のシフト制を用いて組織的に行われていたものであり、とりわけ、その労働時間管理については、タイムカードにより管理されており、医療法人であるY社を介して給与支払に反映されていたのであって、Xらの労働条件や労働の実態を外部から把握することは比較的容易であったということができ、Xらの労働が家庭内で行われていることにより、そうした把握が特に困難になるというような状況はうかがわれない。さらに、Xらベビーシッターに対する指揮命令は、子の親であるA夫妻が主として行っていたが、各種マニュアル類の整備がされ、連絡ノートの作成や月1回程度の会議も行われており、そうした指揮命令が、専ら家庭内の家族の私生活上の情誼に基づいて行われていたともいい難い。
そうすると、Xらについては、その労働条件や指揮命令の関係等を外部から把握することが比較的容易であったといえ、かつ、これを把握することが、A家における私生活上の自由の保障と必ずしも密接に関係するものともいい難いというべきであるから、Xらを労働基準法の適用除外となる家事使用人と認めることはできないものというべきである。

3 Y社は、同じ時間に2人のベビーシッターは不要であるから、Xらに割り当てられたコマの時間帯の前後については、タイムカードに記載があったとしても、単にA家に在留していたにすぎず、業務に従事していた時間ではない旨を主張する。
しかしながら、Xらベビーシッターは、自らに割り当てられたコマの担当時間の前後においても、子から離れて行わなければならない業務や子の業態に関する引継ぎ等を行っていたものであるから、その担当時間の前後におけるXらの業務が存在しなかったなどとはいえないのであり、タイムカードに記載された担当時間の前後の時間には一切の業務を行っていなかったなどとは認め難いのであって、Xらの実労働時間は、Y社にも提出され、Y社がその内容を把握していたタイムカード記載の出退勤時間によって認定することができるというべきである。

4 Y社は、Xらと合意した勤務時間には、午後10時から午前5時までのいわゆる深夜帯にかかるコマの割り当てがあったから、深夜労働についての割増賃金は、30万円の基本給に含まれることが当然の前提とされていた旨を主張する。
しかしながら、深夜労働に対する割増賃金は、労働基準法37条4項に基づき、使用者に支払義務が課せられるものであり、労働基準法所定の深夜労働割増賃金が既に支払済みであるか否かを判断するためには、基本給月額30万円のうちのどの部分が何時間分の深夜労働の割増賃金に当たるものとして合意されているかが、明確に区別されていなければならないことは明らかである。合意した労働契約において深夜労働が予定されているから、その割増賃金部分が当然に基本給に含まれているなどという主張は、およそ深夜労働があっても、基本給以外には割増金を支払わない旨を合意したから、割増賃金の支払義務がない旨を述べることと同趣旨のものにすぎず、これを採用することができないことは明らかである。

労基法116条2項には、「この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない」と規定されています。

この規定の解釈が争点となる事例というのは多くありません。 参考になりますね。

「例外規定の厳格解釈」というルールからすれば、家事使用人の範囲を狭めることは当然といえるでしょう。

また、深夜労働に関する上記判例のポイント4は、基本的なことですが、裁判でよく争いになるところですので、参考にしてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介321 クオリティ国家という戦略(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
__
←先日、久しぶりに鷹匠の「魚弥長久」に行ってきました。

写真は「南鮪の刺身盛り合わせ」です。

このお店の鉄板メニューです。

インパクトがありますね。 おいしゅうございました。

今日も昨日に引き続き、朝から夕方までずっと裁判員裁判です。

今日も一日がんばります!!

 

さて、今日は本の紹介です。
クオリティ国家という戦略 これが日本の生きる道

大前研一さんの本です。

日本の新たな勝ち組「国家モデル」について提言されています。

タイトルにもなっている「クオリティ国家」という言葉がキーワードとなっています。

中でも教育をいち早く変えるべきだと言っています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

文部科学省の教育システムは、従来型の企業に適応する人材を作り出すシステムだ。いわば『横並び均質化教育』であり、それでは『これだけは世界のどこにも負けない』という突出した能力の人材はまず育たない。それゆえに企業もヒトも、国際競争力が落ちていった。日本衰退の大きな原因である。・・・かつて英語教育熱が上がってきた時に、英語教育の前に美しい日本語を身につけることが先だ、と当時の文部科学大臣が語った。この意見は正しい。しかし、正しいことだけを言っていては改革に着手さえできない場合もある。英語が話せなければ、もう食っていけないぞ、くらいまで言わないと改革という振り子はなかなか振れないのだ。」(174~175頁)

英語については、韓国に大きく差をつけられていますね。

この本によれば、採用や昇進の条件として、いくつかの例が挙げられています。

サムスンは、TOEICで900点を採用の条件に、920点を課長昇進の条件としているそうです。

これに対し、ソニーは、620点が入社の目安になっているそうです。

これに呼応する形で、ソウル大学、高麗大学、梨花女子大学など韓国のトップ校では、受験資格をTOEIC800点以上としたり、卒業条件に半年以上の海外留学経験を設けているそうです。

ちなみに、日本では、英語教員のTOEICの平均スコアは、中学校では560点、高校で620点という統計があり日本の英語教員の平均値では、韓国のトップ大学に入学することができないとのことです。(以上、162~163頁)

また、WEDGE5月号でコロンビア大学のヒュー・パトリック名誉教授が以下のように言っています。

経営者はより厳しい国際的な競争環境にさらされる。残念ながら日本語は国際的な言語ではない。英語を話し、世界に出ていくことが望まれる。若い世代はなおさらだ。・・・たしかに日本は居心地が良いだろうが、安住するのではなく、人々を外の世界にさらすことが必要である。」(47頁)

疑う余地もなく、今後はますます国際化が進むことでしょう。

であれば、みなさん、それぞれで準備をするほかありません。

この状況にわくわくするか、絶望するか。 ここが分かれ道ですね。

解雇139(カール・ハンセン&サンジャパン事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

今日は、身体の障害で「業務に耐えられない」ことを理由の解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

カール・ハンセン&サンジャパン事件(東京地裁平成25年10月4日・労判1085号50頁)

【事案の概要】

Y社は、家具・室内装飾品の製造、輸出入および販売を目的とし、主としてデンマーク製の家具の輸入および販売を行っている会社である。

Xは、Y社の従業員であったが、平成22年、ギラン・バレー症候群および無顆粒球症の診断を受けた。

Y社は、Xに対し、就業規則に定める解雇理由である「身体の障害により、業務に耐えられないと認められたとき」またはそれに「準ずるやむを得ない事情があるとき」に該当するものであることを理由に、解雇した。

Xは、本件解雇の有効性を争い、提訴した。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xは、・・・ギラン・バレー症候群及び無顆粒球症に罹患し、・・・平成23年3月頃までは起立不能及び上肢機能全廃・・・などと診断され、徐々に回復していた様子は窺われるものの、ずれも就労不能である旨診断されていた・・・。
以上の事実に加え、Xの業務の内容に照らせば、本件解雇予告当時のXは、制限勤務であってもY社において就労することが不可能であったと認められ、この事実は「身体の障害により、業務に耐えられない」という本件就業規則29条1項2号に当たり、本件解雇予告には、客観的に合理的な理由があるというべきである。

2 また、Xは、ギラン・バレー症候群及び無顆粒球症の治療のために入院してから本件解雇予告までの約1年7か月の間、就労することができない状態にあり、その間、Y社のXに対する、3か月分の給与を支払うことで退職して欲しい旨の打診に対し、Xが、失業保険の受給の関係で欠勤期間を平成23年11月以降まで延長して欲しい旨の要望をし、Y社がこれに応えて同年11月以降まで解雇を見合わせていた等の事情が認められる。
そうすると、本件解雇予告につき、社会通念上相当と認められない事情があるとは認められない。

従業員の症状に加えて、会社としては、可能な範囲での解雇回避や経済的支援をしていることが評価されています。

休職期間満了後の復職の可否の問題とも関連してきますが、この問題は、主治医の診断書や意見書のみで判断するのは早計であり、より多角的な視点で総合判断することが求められます。

それゆえ会社の判断の適否は、その時点では明確にならず、その後の訴訟を通じて明らかになるわけです。

訴訟リスク、敗訴リスクを考慮に入れつつ、労働者の就労の可否を判断する必要があります。

言うのは簡単ですが、とても難しい問題です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。