Monthly Archives: 2月 2014

本の紹介292 白鵬のメンタル(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は本の紹介です。

 白鵬のメンタル 人生が10倍大きくなる「流れ」の構造 (講談社プラスアルファ新書)

著者は、スポーツトレーナーの方です。

横綱白鵬が若い頃からトレーナーとして支えてきたそうです。

白鵬の強さの秘密は、体ではなく、心にあるということです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

「『一流の人は、どんなときも、つねに一つのことを考え続けている』『限られた時間の多くを、自分の仕事に割いている』 彼らは遊んでいるときも同じことを考えている傾向にあり、そこから様々なヒントが浮かび上がるのです。白鵬の場合も、24時間、つねに相撲を考えているところがあります。・・・稽古の休憩時間中もビデオで研究する、映画を観るときも相撲と関連づけるなど、まさに『相撲のために生きている』感があります。・・・結局のところ、『もっと相撲が強くなりたい』『相撲道を究めたい』という目的意識を持っているからでしょう。つらいこと、面倒なことも意味をつけて続けられる、この好循環が成功の秘訣といえるのです。」(101~102頁)

ここは考え方の違いがあるところかもしれませんね。

オンとオフを明確に分けるという方もいるのではないでしょうか。

これもまた正しい、間違っているという話ではなく、自分に合う方法ならどちらでもいいわけです。

私は、完全に白鵬タイプです。

仕事のことを考えない時間はありません。

一見、仕事とは関係ないように見える行動も、仕事との関連性を見出そうとします。

仕事との関連性を見出しにくいことは極力やらないようにしています。

「いや、人間の幅を広げるためにも全く関係ないことこそ積極的にやるべきだ」という意見もあろうかと思います。

それはそれで理解はできます。

しかし、少なくとも現時点では、仕事に関係のあることだけをやりたい気分なのです。

時間は有限なので、仕事に関係のないことをやっている時間がもったいないのです。

仕事に関係のない完全なる趣味は、老後にとっておきます。

もっともっと自分に力をつけて、社会における自分の役割を全うしたいと思います。

賃金72(CFJ合同会社事件)

おはようございます。

さて、今日は、業務遂行能力不足を理由とする降格・賃金減額に関する裁判例を見てみましょう。

CFJ合同会社事件(大阪地裁平成25年2月1日・労判1080号87頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、Y社に対して、Y社がした降格及びこれに伴う賃金の減額が人事権の濫用に当たり無効であるなどと主張して、主任職の地位確認及び賃金減額前と賃金減額後の差額賃金の支払を求める事案である。

【裁判の判断】

降格は有効

役職手当3000円の減額は有効であるが、基本給の減額は無効

【判例のポイント】

1 Xは、顧客に対する対応及びその後の対応に問題があったとして、平成19年6月16日付で係長代理から主任職への1階級降格処分(懲戒処分)を受け、本件降格までの間、数度の研修を受けているにもかかわらず、再三にわたり、Y社から顧客対応に関して注意書等により注意指導を受けている。同事実は、X自身も認めているところであり、Xの業務遂行能力は、Y社がジョブグレード制度において定める主任職の能力基準に達していないと認められる。以上の事実に加え、Y社のような貸金業者にとって、貸金業法に違反した場合、業務停止命令を受けるおそれがあるところ、Xが注意指導を受けた行為は、このような事態を招くおそれのあるものであることからすれば、本件降格は、Y社の有する人事権の範囲内であり、権利の濫用はなく、有効である。

2 以上のとおり、本件降格は、有効であるところ、Y社の給与規程第11条によれば、本件降格前にXに支給されていた役職手当は、主任職という役職に対して支給されていることが給与規程上明らかであるから、本件降格に伴ってされた役職手当3000円の減額は有効である。

3 基本給の減額は、以下のとおり、人事権の濫用であり無効というべきである。
・・・労働者にとって最も重要な労働条件の一つである賃金額については、就業規則や賃金規程等に明示されるか、労働者の個別の合意がないまま、使用者の一方的な行為によって減額することは許されないというべきであるところ、Y社のジョブグレード制度に基づき、基本給の減額が認められるためには、給与規程によって「基本給(部長職以上は、月例給)は、Job Grade別に月額で定める。」と定めるだけでは足りず、具体的な金額やその幅、運用基準を明らかにすべきである。しかし、上記のとおり、Y社においては、Xら従業員にその内容を明らかにしていない。また、主任職1等級と一般職3等級の基本給の額には約10万円もの差があり、Xも本件降格により約10万円もの減額を受けていることにも鑑みれば、本件降格によりXの基本給を減額することは、人事権の濫用として許されないというべきである。

上記判例のポイント3は、参考になりますね。

賃金の重要性に鑑みれば、規程の内容が抽象的であり、かつ、減額幅が大きい本件において、裁判所がこのような判断をしたことは妥当であると思います。

「降格処分が有効であるにもかかわらず」という視点を持つことが大切ですね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介291 勝ち続ける意志力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、仕事のついでに「カナキン亭」に行ってきました。

写真は、「カナキンチャーシュー」です。

中学時代からお世話になっているお店です。

部活帰りのカナキンラーメンは、最高においしかったです。 

思い出の味、おいしゅうございました。

今日は、午前中は、不動産に関する裁判が1件、新規相談が1件入っています。

午後は、労働事件の裁判が1件、新規相談が2件、破産の打合せが1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」 (小学館101新書)

著者は、世界一のプロゲーマーです。

ゲームをやることで収入を得るなんてすごいですね。 

本を読むと、現在の地位は、圧倒的な努力によるものであることがよくわかります。

近道も裏技もなく、ただただ人一倍努力するべきであるという熱いメッセージが伝わってきます。

職業こそ違いますが、考え方は共感するところがとても多いです。

普通の人とは明らかに違います。とても勉強になります。 おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

勝ち続けるためには、勝って天狗にならず、負けてなお卑屈にならないという絶妙な精神状態を保つことで、バランスを崩さず真摯にゲームと向き合い続ける必要がある。
バランスを保つ方法は人それぞれだと思うが、僕は、自分も人間だし相手も人間であるという事実を忘れないようにすることが、バランスを崩さないことだと考えている。つまり、自分にも相手にも特別なことは何もないということだ。自分が勝てたのは知識、技術の正確さ、経験、練習量といった当たり前の積み重ねがあったからで、得体の知れない自分という存在が相手を圧倒して手にした勝利などでは決してないということ。ひとりの人間がやるべきことをやり、もうひとりの人間に勝った。ただそれだけの、当たり前のことをやり続けた人間が、今回に限って勝てたということを忘れてはいけない。」(57~58頁)

「当たり前のことをやり続けた人間が、今回に限って勝てたということを忘れてはいけない」

何の奢りも感じられませんよね。

また、著者は、勝つため=成功するために必要な要素として、「知識、技術の正確さ、経験、練習量」といった「当たり前の積み重ね」が大切であると言っています。

成功したいと願っている人は、この「当たり前の積み重ね」の大切がよくわかっています。

何か特別なことをやらないと成功しないのではないか、と思ってしまう人もいると思います。

でも、実際は、当たり前のことを「積み重ねる」ことが成功の秘訣なのです。

誰でもできることを誰にもできないくらいやる、ということに尽きるわけです。

成功する人としない人の差は、当たり前のことを継続できるかどうかだけですから。

能力の差ではなく習慣の差だけだということを多くの成功者が説いています。

お互いがんばりましょう。

解雇128(エヌエスイー事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は、「業務上の都合による」解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ファニメディック事件(東京地裁平成25年7月23日・労判1080号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、平成23年10月31日付でY社から解雇されたが、これが無効であると主張して、就労期間23年11月1日(解雇日翌日)から24年5月15日(雇用期間満了日)までの賃金合計149万5000円およびこれに対する遅延損害金ならびに不当解雇等による不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)として100万円およびこれに対する遅延損害金の各支払を求めた事案である。

なお、Y社は、金融系システムオペレーション、金融システム開発、研修サービス、翻訳業、労働者派遣業等を営む会社である。

【裁判所の判断】

解雇は無効

【判例のポイント】

1 ・・・特に、本件質問メールに対しY社が本件返信メールを送信するとともに本件契約終了説明書面を交付した事実によれば、Y社は、Xに対し、平成23年10月31日付けで本件雇用契約における雇用契約書6条4号の「やむを得ない会社の業務上の都合によるとき」により解雇する旨の意思表示をしたものと認められる。

2 Y社は、本件契約終了説明書面には、実際にはXの自己都合による就業終了であることが明記されている旨主張し、本件契約終了説明書面には、Y社としてはXを契約社員として雇用継続すべく、先般2案件を紹介したが、Xが契約社員として雇用を継続することに不安を感じていることを理由に辞退した旨が記載されているが、Xは、平成23年9月30日において、Y社からの2つの案件の紹介に対し、本件雇用契約の内容が不安であることを理由として同日時点でその諾否について回答できない旨を述べたことは認められるが、そのことをもって直ちにXからY社に対して本件雇用契約の合意解約の申込や辞職の意思表示がされたとは認められず、前記記載をもってXの自己都合による就業終了であることが明記されているとは評価できないというべきであるから、Y社の前記主張は採用できない。

3 平成24年2月頃、Y社からXに対し、双方の代理人弁護士を通じて、Xの再雇用が可能である旨の連絡をしたが、Xがこれを拒絶したことが認められるが、Y社の当該連絡はあくまでも平成23年10月31日付け退職を前提とした再雇用の申出であって、Xによる当該拒絶をもって本件雇用契約に基づくXの就労意思の欠缺を基礎付ける事実と評価すべきではない

4 本件解雇は、XがY社から紹介を受けた2つの紹介先を検討すらしないまま辞退したことを踏まえ、Y社においてXに就労意思がないものと判断したことに端を発していると認められるところ、Y社がXの就労意思ないし退職意思を慎重に検討しないまま本件解雇に至っているという点は相当でないものと認められるが、上記事実経過によれば、本件解雇日後の不就労期間の賃金が填補されることとなることを前提として、さらに慰謝料等の請求を認めるべき程の不法行為法上の違法性があるとまでは認められないというべきである。

上記判例のポイント3の視点は参考になりますね。

バックペイとは別に慰謝料を認めないのは、通常の裁判例と同様です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介290 売る力 心をつかむ仕事術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間、お疲れ様でした。

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←先日、他士業の先生方と一緒に両替町の「武市」に行ってきました。

写真は「さよりの天麩羅」です。

あっさりとした白身です。お寿司で食べてもおいしいですし、このように天麩羅にしてもおいしいですね。

このお店は、料理がおいしいことに加えて、大将の対応がすばらしいです。

業界は違いますが、本当に勉強になります。 何度も行きたくなるお店です!

今日は、午前中は、新規相談が1件、債権回収の裁判が1件入っています。

午後は、新規相談が2件、裁判等の打合せが2件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
 売る力 心をつかむ仕事術 (文春新書 939)

著者は、言わずと知れたセブン&アイ・ホールディングスの鈴木会長です。

商売で大切にすべきことは何なのかがとてもわかりやすく書かれています。

顧客は経済合理性では動かないということがよくわかります。

業界に関係なく、おすすめですよ。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

経験的に『いい』と思われることはみんながやるから、結局、競合になってしまい、ますます厳しい状況になる。みんなが『いい』と思うことなどやる必要はなくて、むしろ、『そんなのだめだろう』と思うようなことに意味がある。みんなが賛成することはたいてい失敗し、反対されることはなぜか成功する。それはわたしの経験に限ったことではないようで、これまでお会いした方々も同様の経験をお持ちのようでした。」(88頁)

「みんなが賛成することはたいてい失敗し、反対されることはなぜか成功する」

何かを始めようとしているみなさん、是非、この言葉を胸に刻んでおきましょう。

最後まで信念を貫くことができた人こそが成功者になれるのだと思います。

周りに反対されたくらいでやめてしまうような弱い信念(そういうのはそもそも信念とは呼びませんが)では、何をやってもうまくいきません。

ちょっとつまづいただけで「もうだめだ」と思ってしまうのでしょう。

野村監督曰く、「『もうだめだ』ではなく『まだだめだ』と思え」。

王監督曰く、「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのなら、それはまだ努力とは呼べない」。

そういうことです。

不当労働行為85(サントス事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合加入直後に自宅待機を命じた後、懲戒解雇したことの不当労働行為性について見ていきましょう。

サントス事件(神奈川県労委平成25年9月20日・労判1080号93頁)

【事案の概要】

Y社は、一般貨物自動車運送事業等を営む会社である。

Y社の従業員であるAおよびBが組合に加入したところ、Y社はAおよびBを自宅待機を命じた。

その理由としては、Aは8月配転および2月配転について取引先に内容を告知し、会社の人事労務管理について不満を述べたこと(A懲戒理由①)、上司である所長に暴言を吐き、脅迫したこと(A懲戒理由②)を、Bは物損事故について損害金を支払わず(B懲戒理由①)、事故の反省、謝罪をしないこと(B懲戒理由②)などをあげている。

Y社は、その後、AおよびBに対して懲戒解雇を通知し、その理由として、上記自宅待機の理由に付加して、自宅待機命令に反して出社を継続したこと(A懲戒理由③)をあげている。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Aが本件自宅待機命令を受けた後も本件懲戒解雇に至るまで出社を継続したのは、そもそも合理性を欠く本件自宅待機命令を認めない意思を表すためであり、また、Y社が自宅待機期間中にその理由を十分に説明していないことを併せ考えると、Aが出社を継続したことを本件懲戒解雇の理由とした③に合理性は認められない

2 Bが本件物損事故を起こし、会社の従業員に損害を与えたものの、その損害金を支払っていないことに争いはない。しかし、その損害金の支払についてBが同意したことを認めるに足りる証拠はなく、したがって、本件自宅待機命令及び本件懲戒解雇の理由である①に合理性は認められない

3 本件懲戒解雇は、A、B外2名による分会結成後間もなく両名同時に行われた結果、分会の中心人物であるAとBは社外に排除され、分会員が4名から2名に半減している。また、本件自宅待機命令及び本件懲戒解雇によって示された会社の分会に対する厳しい態度は、結成されたばかりの分会の勢力拡大に影響を及ぼしたものと推認することができる。したがって、本件自宅待機命令及び本件懲戒解雇は、分会の運営に対する干渉行為である。
・・・本件自宅待機命令及び本件懲戒解雇は、A及びBが組合員であること又は正当な組合活動をしたことを理由とする不利益取扱いであり、法第7条第1号に該当する不当労働行為であると判断する。

これも不当労働行為性が明らかな事例です。

上記命令のポイント3を読むだけで、会社の組合嫌悪の意思がよくわかります。

使用者側は、顧問弁護士の指示のもとで適切な対応をとることをおすすめします。

どんなときでも、信頼できるブレーンの意見に耳を傾けられる経営者でありたいですね。

本の紹介289 エメラルド・オーシャンな働き方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、事務所の近くにある「雪有圭」に行ってきました。

写真は、表面を炙ったカマスで明太子と大葉を巻いたものです。

創意工夫の賜物です。 探究心に脱帽です。

おいしゅうございました。

今日は午前中は、新規相談が1件入っています。

午後は、藤枝の銀行で不動産売買の決済に立会い、その後、静岡の裁判所で裁判が2件入っています。

夜は、顧問先会社の経営者と打合せです。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 エメラルド・オーシャンな働き方

レッド・オーシャン(競争の激しい既存市場)、ブルーオーシャン(競争のない未開拓市場)とも異なる「エメラルド・オーシャン」という新しい概念について紹介をしている本です。

要するに「競争のない既存市場」ということだそうです。

「レッド・オーシャン」「ブルー・オーシャン」という言葉は、ちょっと前に流行った言葉ですが、最近では、会話の中でこれらの言葉を用いるのは、少し恥ずかしいです。

「倍返し」とか「お・も・て・な・し」とか「おもてなっしー」(声高めで)とか「今でしょ」って言うくらい気恥ずかしいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ビジネスを行うにあたり、多くの人は得をしたい、儲けたいという思いばかり強くなってしまい、損をする覚悟ができていない場合がほとんど(口では強がりを言っていても)なのです。誰だって得をしたい、儲けたい。一方で、痛い目にはあいたくない、損したくないと、身構えているわけです。しかし、身構えれば身構えるほど損することを多くの人は理解していません。なぜならば、損を恐れるということは、そこそこのレベルのもので手を打とうとすることを意味するからです。・・・二流、三流のもので周りを固めて、厳しい競争の中『稼げる』『成功できる』と思っていること自体NGです。そこそこのもので体裁を整えようとするから結果が出ない。結果が出ないから、また次のそこそこを探して失敗する・・・。」(179頁)

結構、痛いところを突いてきますね(笑)

「損してもいい」と思えるかどうか。 そう思える習慣ができているかは、確かに重要なポイントなのだと思います。

何か新しいことをやるときに、「損しないか」ということばかり考える癖がついている人は、なかなか一歩が踏み出せないのではないでしょうか。

損するかどうかなんてやってみないとわからないですし、そもそも判断基準が得するか、損するかという二択では、仕事をしていても、おもしろくもなんともありません。

やはりこれも習慣の問題なのです。心の。

労働時間32(レガシィほか事件)

おはようございます。

今日は税理士法人以外の会社も兼務する税理士の補助業務者に対する専門業務型裁量労働制の適用に関する裁判例を見てみましょう。

レガシィほか事件(東京地裁平成25年9月26日・労経速2194号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社ら双方に雇用されていたXが、Y社らに対し、時間外労働についての割増賃金の未払があるなどとして、割増賃金、遅延損害金、付加金等を求めた事案である。

Y社らは、Xには裁量労働制が適用されるなどと主張して争った。

【裁判所の判断】

裁量労働制の適用を否定
→Y社らに対し、約200万円の割増賃金の支払+20万円の付加金の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 労働基準法38条の3所定の専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務を対象とし、その業務の中から、対象となる業務を労使協定によって定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使協定によりあらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度である。・・・ここで「税理士の業務」を専門業務型裁量労働制の対象と定めるが、ここで「税理士の業務」とは、法令に基づいて税理士の業務とされている業務をいい、税務相談がこれに該当すると解するのが相当である。

2 ・・・Y社らは、このような税理士以外の従業員による事実上の税務書類の作成等の業務について、実質的に「税理士の業務」を行うものと評価して、専門業務型裁量労働制の対象と認め得ることを前提に、Xに専門業務型裁量労働制が適用されると主張するものであると理解される(なお、Xによる業務が、税理士又は税理士法人が行うべき税務書類の作成等の業務でなく、単なる税理士の補助的業務であるというのであれば、そもそも実質的に「税理士の業務」を行うものと評価する前提を欠くといわざるを得ない。)。
しかしながら、・・・税理士以外の従業員による事実上の税務書類の作成等の業務を専門型裁量労働制の対象と認め得るためには、少なくとも、その業務が税理士又は税理士法人を労務の提供先として行われるとともに、その成果が当該税理士又は税理士法人を主体とする業務として顕出されることが必要であるというべきである。
これを本件についてみると、・・・専門型裁量労働制を適用することはできないというべきである。

3 Y社らは、いくつかの事情を摘出して、Xの割増賃金請求が信義則に違反する旨を主張するが、いずれの事情をもってしても、Xの請求が信義則違反であると評価するに足りない。
特に、Y社らは、Xが背信的意図に基づく機密保持義務違反行為に及んだことを強調するが、仮に、XにY社ら摘示の事実があり、それによりY社らが損害を被ったとしても、それをもってXの賃金請求が信義則違反である旨を主張することは、Xに対する債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権としてXの賃金債権を相殺するものにほかならず、賃金全額払の原則(相殺禁止の趣旨を包含する。)を定めた労働基準法24条1項本文の趣旨を潜脱するものであることが明らかである

4 Y社らは、労働基準法の規定に違反して、Xに対する時間外労働等についての割増賃金の支払をしなかったものであるところ、その違反の程度や態様については、専門業務型裁量労働制に係る法令の解釈適用を誤ったことに起因するものであり、必ずしも悪質であるとはいえない。他方、Y社らは、本件訴訟に至って以降、賃金全額払の原則を定めた労働基準法24条1項本文の趣旨を潜脱するものであることが明らかな主張を重ねるなどして、Xに対する未払割増賃金の支払をしようとしなかったという事情も存する。これらの諸般の事情を総合考慮すれば、本件においては、Y社らに対し、同法114条ただし書所定の期間内の付加金として、20万円の支払を命じるのが相当である。

相続関係でよく名前が出てくる税理士事務所の事件です。

税理士事務所では、税理士資格を持っていない従業員が、税理士業務を行っているところが多いと思いますが、労基法の文理解釈からすると、この裁判例の判断は妥当であるということになります。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介288 ヒットの法則が変わった(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 2月に入りましたね。今週も一週間がんばっていきましょう!!__

←週末の朝は、いつも海までのジョギングから始まります。 往復2時間ジョギングをすると、かなり汗をかきます。

2時間、「無」になって走ると、かなりリフレッシュできます。

継続は力なり。

今日は、午前中は、破産事件の打合せが入っています。

午後は、遺産分割調停です。

夜は、富士へ移動し、子ども未来大学です。

子どもたちに弁護士の仕事についてレクチャーしてきます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
 ヒットの法則が変わった いいモノを作っても、なぜ売れない? (PHPビジネス新書)

いいモノを作っても、なぜ売れない?」というサブタイトルからもわかるとおり、マーケティングの本ですね。

どうやったら、売れるのか、ということをいろんな例を出しながら解説してくれています。

模倣の重要性が熱く語られています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

模倣は決して簡単な作業ではない。成功したものを『成功したもの』と定義づけるためには、それなりの目利きも必要であり、また何が成功要素なのかを抽出することは同産業の業界人から見ても容易なことではない。だからこそ『成功要素を正しく模倣する』という、『創造的な作業』を生み出した模倣者たちは、自分たちのオリジナリティをスパイスのように軽くふりかけるだけで成功の果実を甘受することができる。」(111頁)

『イノベーターが獲得できるイノベーションの現在価値は2.2%』であり、実に市場の98%は模倣者や追随者によって生み出されている」(111頁)

模倣の重要性については、いろんな本に書かれていることです。

成功者の成功要素を正しく模倣することがポイントになるわけですが、それには一定の技量が求められるという話です。

これって、見方を変えると、人のいいところを見つけるということになりませんか。

普段から、人のあら探しばかりしている人と、人のいいところを見つけようとしている人では、模倣力も変わってくる気がします。

成功者を見て、素直に「僕もこの人のようになりたい」と思えるか、ということです。

いいものをいいものとして真正面から評価できる人でありたいです。

成功者への嫉妬で溢れかえっている中で、純粋に「あの人はすごい」と言える素直さが大切なのだと思っています。

また、別の角度ですが、仮に一定の成功を収めたとしても、そこで立ち止まっていると、すぐに模倣者に追い抜かれてしまいます。

常に改良を重ねていくという意識、すなわち、向上心を持ち続けることが大切なのです。