Monthly Archives: 1月 2014

不当労働行為84(ひめじや事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、組合加入直後の解雇と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

ひめじや事件(大阪府労委平成25年8月7日・労判1079号174頁)

【事案の概要】

平成24年4月7日、Y社従業員Xは、組合に加入し、同月13日、Y社に対して、労働組合に加入している旨を告げた。

同年5月16日、組合執行委員長が、Y社に電話をかけて、同月18日にY社を訪問し、団交申入書を提出したい旨を告げた。

同月17日、Y社は、Xに対して、「就業規則第38条の規定により」同日付で解雇する旨の通知書を交付し、Xが具体的な理由の説明を求めても、守秘義務違反、公私混同と回答するのみであった。

団交においても、Y社社長は、具体的な解雇理由を説明しなかった。

同月28日、Y社はXに対し、「経理担当者として知った秘密をしばしば漏えい、勤務中にしばしば私用電話」などと記載した解雇理由通知書を交付した。

【労働委員会の判断】

Xを解雇したことは不当労働行為に該当する

【命令のポイント】

1 ・・・以上を総合的に判断すれば、Y社は、平成24年4月13日にX組合員から労働組合への加入を告げられたことを契機に、同組合員に始末書の提出を求めたり、秘密裏に録音を行うなど、同組合員を解雇するための準備を始めたところ、同年5月16日になって電話で2日後にX組合員の組合加入が正式に通告されることを知り、組合の関与により解雇が困難になる以前にX組合員を解雇してしまおうとして、同月17日に、合理的で説得力のある解雇理由がないにもかかわらず性急に本件解雇を行ったのであり、解雇理由通知書についても解雇理由を後付け的に整理したと推認することができる

2 以上のことを総合すれば、本件解雇は、X組合員が組合に加入したことを知ったY社が、それを嫌い、X組合員を会社から排除することを企図して行われたものと判断せざるを得ず、労働組合法7条1号に該当する不当労働行為である。

わかりやすい不当労働行為ですね。

気持ちはわからないではないですが、このようなやり方では、事態を悪化させるだけなので、おすすめはしません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介287 逆襲弁護士 河合弘之(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、小鹿にある「篤」に行ってきました。

写真は、松葉カニの身とミソを混ぜたものです。

そもそもこのカニ自体の甘みが尋常ではありません。 さすが、こだわりまくっています。

めちゃうまでした!!

今日は、午前中は、労働事件の裁判が1件入ってます。

午後は、労働事件に関する民事調停が1件、新規相談が2件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 

逆襲弁護士 河合弘之

さくら共同法律事務所の河合先生に関する本です。

河合先生というと、原発訴訟を思い浮かべてしまいますが、いろんな有名な事件に関わっているんですね。

勉強になりました。おすすめの本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

弁護士は、自分を見失ってはいけない。怒るとしても、怒ったふりでなければならない。本当に怒りの心情がわいてしまえば、度を失い、我を忘れ、適切な弁護ができなくなる。河合は、つねにそう考えている。そのため、いつも冷静だ。極端にいえば、相手が仕掛けてきたならば、相手の弁護士を憎む思いよりも、むしろ、感謝する気持ちでいっぱいである。
〈ありがとう。おもしろい事件を起こしてくれて、ありがとう。そのおかげで、ぼくには、やり甲斐のあるいい事件がやってくる。ついでに報酬も入ってくる。本当に、ありがとう〉」(257頁)

弁護士にもいろいろなタイプがあり、感情剥き出しの人もいれば、いつも冷静な人もいます。

好戦的な人もいれば、平和な解決を望む人もいます。

正しい、間違っているではありません。

自分がこうあるべきだと思う弁護士になればいいのだと思います。

また、難事件を扱うことに、後ろ向きな弁護士と意欲的な弁護士にも別れるように思います。

問題なのは、このような弁護士のタイプが、顧客(相談者、依頼者)からわかりにくいということです。

取り扱っている分野は概ねホームページ等でわかりますが、その弁護士のタイプまではわかりませんよね。

普段から弁護士と接する機会が多い場合にはともかくとして、そうでない場合には、自分が納得できる弁護士にあたるまで、いろんな弁護士に相談してみるしかないのでしょうかね。

食べログで評判がいいラーメン屋さんに食べに行っても、ぶっちゃけ、そんなにおいしいとは思わないこともあります。 結局、好みは人それぞれということです。

労働災害70(岡山県貨物運送事件)

おはようございます。

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←先日、SEの会社の経営者と沓谷にある「岩市」に行ってきました。

写真は、「太刀魚ねぎま」です。

おそば屋さんですが、一品料理がとってもおいしいお店です。

お店の場所が中心地より少し離れていますが、いつも混んでいます。 みんなおいしいお店を知っているわけです。 おいしゅうございました!

今日は午前中は、横浜の裁判所で財産開示の期日が入っています。

午後は、静岡に戻り、新規相談が3件、不動産に関する裁判の準備のための現地確認が入っています。

夜は、社労士の先生方を対象とした勉強会です。

今回のテーマは、「重要判例から読み解く組合による街宣活動等の差止請求のポイント」です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、過重労働・パワハラによる新卒社員の自殺と損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

岡山県貨物運送事件(仙台地裁平成25年6月25日・労判1079号49頁)

【事案の概要】

本件は、Y車のC1営業所に勤務していたXらの長男Xが、連日の長時間労働のほか、上司のAからの暴行や執拗な叱責、暴言等のいわゆるパワーハラスメントにより精神障害を発症し、平成21年10月7日に自殺するに至った(当時22歳)と主張して、遺族である原告らが、Y社に対しては安全配慮義務違反の債務不履行又は不法行為によろう損害賠償請求権に基づき、Aに対しては不法行為による損害賠償請求権に基づき合計約1億2000万円を請求した事案である。

【裁判所の判断】

Y社に対し、合計約7000万円の支払を命じた。

Aに対する請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xは、ただでさえ新入社員として緊張や不安が多く、強い心理的負荷が掛かっている中で、本件自殺5か月前(入社約1か月後)から、月100時間程度かそれを超える恒常的な長時間時間外労働に従事させられ、本件自殺3か月前には月129時間50分にも上る時間外労働に従事させられ、さらには、そのような長時間労働に対して労いの言葉を掛けられることもなく、ただミスに対してAによる叱責のみを受け、将来に向けた明るい展望が持てなくなっていったことがうかがわれるのであって、総合的にみて、Xには業務により相当程度に強度の肉体的。心理的負荷が掛かっていたものと認めることができる

2 Xは、本件自殺3か月前には月129時間50分にも上る時間外労働に従事し、また本件自殺5か月前から月100時間程度かそれを超える恒常的な長時間の時間外労働に従事していたことに加え、内容的にも肉体的・心理的負荷を伴う業務に従事し続けたこと、さらにはAによる叱責や新入社員としての緊張や不安がXの心理的負荷を増加させたことによって、相当程度に強度の肉体的・心理的負荷が継続的に掛かった結果、平成21年9月中旬頃に適応障害を発病し、適応障害発症後も引き続き長時間の時間外労働への従事を余儀なくさせられ、適応障害の状態がより悪化する中で、同年10月6日、午後出勤の前に飲酒をするという問題行動を起こし、これがAを初めC1営業所の従業員に知られるところとなったことにより、Xの情緒を不安定にさせていた解雇の不安が増大し、それまでに蓄積した疲労と相まって、Xは正常な認識、行為選択能力及び抑制力が著しく阻害された状態となり、自殺したものであり、このような経過及び業務以外に特段の自殺の動機の存在がうかがわれないことからして、本件自殺はXの業務に起因するものであったと認めるのが相当であるから、本件自殺と業務との間には相当因果関係があるということができる。

3 Y社は、Xが飲酒をして出勤し、その報告も怠ったことでAから叱責を受けるに至り、自ら命を絶ったという本件の経緯を考慮すれば、相当の過失相殺がされるべきである旨主張する
この点、確かに、飲酒をした上で車を運転して出勤したというXの行動は、社会的にも相当に非難されるべき問題行動であり、Y社が運送会社であるということからすればなおさらその問題性を重視すべきものである。しかしながら、・・・出勤前の飲酒は、適応障害を発症したことによる問題行動と評価できる。そして、業務の負荷以外の私的な出来事や個体側の要因に起因してこのような問題行動に至ったとはいえないことからすれば、Xの当該問題行動それ自体が、Y社の業務に起因して発病した適応障害の症状の一つであると評価すべきであり、同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れたXの性格により、このような問題行動に至ったとは評価できず、これをXの過失として評価することはできないというべきである。

時間外労働時間がこれだけ多いと、それだけで労災と判断され、また、会社の安全配慮義務違反を認定される可能性が高いといえます。

労働の質が争点となる事案に比べると、労働の量が争点となる事案は、労働者側に圧倒的有利です。

使用者側としては、従業員の労働時間が過大になっていないか、常に配慮すべきです。

本の紹介286 ジェフ・べゾスはこうして世界の消費を一変させた(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 ジェフ・ベゾスはこうして世界の消費を一変させた (PHPビジネス新書)

アマゾンのトップの言葉をまとめた本です。

アマゾンのすごさはここで書くまでもありませんね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

利益は出ていません。出そうと思えば出せますけどね。利益を出すのは簡単です。同時に愚かなことでもあります。我々は今、利益になったはずのものを事業の未来に再投資しているのです。アマゾン・ドット・コムで今利益を出すというのは、文字どおり最悪の経営判断だと言えます。」(215頁)

普通の人が言ったら、単なる負け惜しみです(笑)

短期的な利益よりも長期的な利益を重視していることがよくわかります。

こういう発想を持っていると、ちょっと利益が出ただけで、プライベートでじゃんじゃんお金を使ってしまうということもないのでしょうね。

うまくいっているうちに、次の手を打つ。

うまくいっているこの状態がずっと続くわけではない。

こういうことを冷静に考えられる人が経営者に向いているのでしょうね。

不当労働行為83(育良精機大阪工場ほか1社事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は、労組法上の使用者性に関する命令を見てみましょう。

育良精機大阪工場ほか1社事件(中労委平成25年9月4日・労判1079号172頁)

【事案の概要】

Y1社は、茨城県つくば市に本社を、大阪府東大阪市内に工場を置き、高速道路用防音壁等にかかわる金属のプレス加工や板金加工等を行う会社である。

Y2社は、茨城県筑西市に本社を置き、金属製品製造業等を営む会社である。

Y1社は、従業員に対して、平成22年4月2日に特別一時金を、同年7月29日及び12月28日に夏季および年末一時金を支給した。Eを除くプレス板金担当の正社員7名に対する支給額をみると、特別一時金は、2万円がAほか1名で、他の5名は3万円であり、夏季一時金は、Aが27万円で、他は30万円台が2名、40万円台が4名であり、年末一時金は、Aが30万円で、他は30万円台が3名、40万円台が3名であった。

平成23年4月1日、組合は、Aに対する本件一時金の差別支給が不当労働行為であるとして本件救済を申し立てた。

【労働委員会の判断】

1 Y2社はAに対する関係で使用者の地位にない

2 Y1社が、Aの一時金をプレス板金担当正社員の中で最低額としたことは不当労働行為に該当する

【命令のポイント】

1 Y1社とY2社との間には、業務運営に関し一定の関係がうかがえる事実が認められるものの、両社には資本関係がなく、また、兼務役員はいるものの、丙社長やD専務はY1社の役員でもなく、同人らの行為をもってY2社がY1社の経営に支配力を有していたことの証左とまではいえないことからすると、本件工場が、Y2社の建材事業部の大阪工場という位置付けにあるということはいえない。また、本件工場の本件一時金の支給額の決定過程を踏まえると、Y2社がY1社の従業員の基本的な労働条件について、具体的かつ直接的な影響力ないし支配力を有していたとみることはできない
したがって、Y1社は、Y2社の正社員であるA組合員に対する関係において、使用者の地位にあったということはできないから、労組法7条の使用者には当たらない

2 Y1社は、一時金の査定に当たってあらかじめ定められた一貫性のある合理的な査定方法を採っているとは認められず、むしろその運用においても粗雑な査定を行っていたといえるものであり、また、A組合員の業務の専門性が低いことや時間外労働時間数が少ないことをもって、A組合員の査定を低く評価していることに合理性はなく、他に、査定が適正に行われたと認めるに足る証拠はないことからすれば、A組合員の本件一時金の額がEを除くプレス板金担当の正社員の中で最低額であることに合理性を認めることはできない。・・・以上によれば、労組法7条1号に該当する不当労働行為に該当する。

判例のポイント1の労組法上の使用者性については、ときどき争点になりますね。

規範がありますので、参考にしてください。

判例のポイント2で示されている一時金の金額の問題ですが、他の従業員との金額の差について客観的に合理的な説明ができない場合には、本件のように不当労働行為性を肯定されてしまう可能性がありますので、ご注意ください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介285 ルールを変える思考法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。土、日も終日、打合せが入っています。がんばります!!
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←先日、「キャトル プレジール」に行ってきました。

写真は、「いろいろお豆のトマトカレー」です。

めちゃうまです。 すばらしい!

今日は、午前中は、裁判員裁判の公判前手続と債権回収の裁判が1件入っています。

午後は、島田の裁判所で離婚調停が1件、夕方から顧問先会社でのセミナーが入っています。

セミナーのテーマは、「第3回 契約書作成に必要なリーガルマインド習得講座」です。

夜は、顧問先会社の新年会に出席します。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 ルールを変える思考法 (角川EPUB選書)

著者は、「ニコニコ動画」で有名な株式会社ドワンゴの代表取締役会長です。

YouTubeに勝つためにどのようなことを考えているのかが書かれており、参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

とにかく、簡単に理解できるものであればライバルが増えすぎるし、あまりにも先に行きすぎてしまうと、ついてくる人がいなくなる。そんなギリギリの境界線上に立つためには、『偶然』や『運』も求められてくるはずですが、それら偶然や運までを含めて、個人の『才能』と考えるべきなのでしょう。逆にいえば、才能は、運にも左右されるものなのです。」(87頁)

著者は、「勘違いと先見の明は紙一重である」と言っています。

わかりやすすぎてもダメですし、とんがりすぎてもダメですよね。 

なんでもそうですが、このバランスをとることが大切なのだと思います。

ビジネスも人間関係も、すべては「バランス力」だと思っています。

また、著者は、「才能は、運にも左右されるもの」と言っています。 同感です。

もっとも、失敗したときに、運のせいにするのは論外ですが。

成功したときには、「運がよかった」。 失敗したときには「力が足りなかった」と思うべきです。

労働災害69(園田競馬場事件)

おはようございます。

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←先日、常磐町にある「ピッツェリア レジーナ」に行ってきました。

写真は、「カルツォーネ」です。

生地を二つ折りにして焼いてあるピザです。

中にはソーセージ等が入っています。

これはこれでおいしいです。

お店が街中にあるので、行きやすくていいですね。 

今日は、午前中は、新規相談が1件と離婚調停が1件入っています。

午後は、新規相談、裁判の打合せ、ラジオの打合せが入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、同一職場の警備員によるマークレディ殺害と業務起因性に関する裁判例を見てみましょう。

園田競馬場事件(大阪高裁平成24年12月25日・労判1079号98頁)

【事案の概要】

本件は、兵庫県競馬組合園田競馬場において、マークレディ(園田競馬場において勝馬投票券購入のためのマークシートの記入方法等を案内する担当係員の通称)として稼働していたXが、園田競馬場で警備員として勤務していたCに殺害されたことにつき、Xの遺族が、本件災害がXの業務に起因するものであると主張して、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金と遺族補償年金前払一時金及び葬祭料とをそれぞれ不支給とした尼崎労働基準監督署長の各処分の取消しを求めた事案である。

原審は、原告の請求をいずれも棄却した。

【裁判所の判断】

原判決を取り消す。

遺族保障年金等不支給処分を取り消す。

【判例のポイント】

1 ・・・このような観点からすると、労働者(被災者)が業務遂行中に、同僚あるいは部下からの暴行という災害により死傷した場合には、当該暴行が職場での業務遂行中に生じたものである限り、当該暴行は労働者(被災者)の業務に内在または随伴する危険が現実化したものと評価できるのが通常であるから、当該暴行が、労働者(被災者)との私的怨恨または労働者(被災者)による職務上の限度を超えた挑発的行為もしくは侮辱的行為によって生じたものであるなど、もはや労働者(被災者)の業務とは関連しない事由によって発生したものであると認められる場合を除いては、当該暴行は業務に内在または随伴する危険が現実化したものであるとして、業務遂行性を認めるが相当である
そして、その判断に当たっては、暴行が発生した経緯、労働者(被災者)と加害者との間の私的怨恨の有無、労働者(被災者)の職務の内容や性質(他人の反発や恨みを買いやすいものであるか否か。)、暴行の原因となった業務上の事実と暴行との時間的・場所的関係などが考慮されるべきである

2 ・・・男性警備員が、来場者や警備員を含めて圧倒的に男性が多い園田競馬場において、近隣で1対1の関係にもなり得る数少ない魅力的な女性であるマークレディに対して、恋愛感情を抱くことも決してないとはいえず、その結果、男性警備員が良識を失い、ストーカー的行動を引き起こすことも、全く予想できないわけではない
そして、これは、前記のそれぞれの採用条件や配置状況等に照らすと、単なる同僚労働者間の恋愛のもつれとは質的に異なっており、いわばマークレディとしての職務に内在する危険性に基づくものであると評価するのが相当である。
現に、本件組合も、マークレディと来場者との間のセクハラ行為を巡るトラブルやマークレディと警備員との間のセクハラ発言を巡るトラブルの存在を把握している(なお、判明している件数は少ないものの、このようなトラブルは性質上表沙汰にならないものも少なくないものと考えられる。)。

園田競馬場とマークレディに対する裁判所の評価のしかたが印象的です。

労災であるか否かを判断する以上、今回の結論を導くためには、このような評価が必要になってきます。

本の紹介284 選ばれる理由(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
__←先日、税理士や社労士の先生方と両替町の「武市」に行ってきました。

写真は、「えび芋のカニあんかけ煮」です。

このお店は、魚もおいしいのに加えて、和食がとてもおいしいです。 

こういう料理を食べると、落ち着きます。

おすすめですよ。

今日は、午前中は、新規相談が2件、交通事故の裁判が1件入っています。

午後は、新規相談が1件、外部の法律相談が1件と弁護団会議が1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 選ばれる理由:どうしても売上と利益が増えてしまう心理マーケティング

久しぶりのマーケティング本です。

サブタイトルに「どうしても売上と利益が増えてしまう心理マーケティング」と書かれているとおり、顧客の心理を理解した上で、効果的なマーケティングを考えるというものです。

こういうことに興味がある人にとっては、とてもおもしろい本だと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『人は経済合理性に基づき、最も安いものしか選ばない生き物』ではないのです。だからこそ、ぜひこのように考えてみて下さい。 
お客様はあなたの会社の商品やサービスを買いたい。だから、それを買う理由を用意して差し上げる。
これこそが、『ウリ』をお伝えすることなのです。・・・私たち人間は、『絶対的な基準で決定することはほとんどない』と言えます。商品やサービスの絶対的な価値を計る尺度など、生まれながらに備わっていないのです。あくまで何かと相対的に比較して、価値を判断するのが人間です。だからこそ、あなたの会社の商品やサービスを買っていただきたいのであれば、『比較する本能』を知り、それを利用して『選ばれる理由』『買われる理由』を用意していきましょう。」(48~49頁)

勉強になります。

人間は、絶対的な基準で決定することはほとんどないと。

確かに、言われてみるとそうですよね。

飲食店の評価でも、確かに、相対的な評価なしに、純粋に「おいしい」と思うことももちろんあります。

でも、同じ種類の料理を食べたときには、「あ、あの店よりおいしい」、「あのお店のほうがおいしい」と相対的な評価をしています。

顧客が、他との比較により、買う・買わないを判断するのであれば、その判断をしやすくお手伝いをすればよいことになりますね。

そう考えると、いろいろと工夫することが頭に浮かんできます。

あとは、実行にうつして、試行錯誤を繰り返すのです。

賃金71(広島経済技術協同組合ほか(外国人研修生)事件)

おはようございます。

さて、今日は、中国人研修・技能実習生らによる未払賃金請求に関する裁判例を見てみましょう。

広島経済技術協同組合ほか(外国人研修生)事件(東京高裁平成25年4月25日・労判1079号79頁)

【事案の概要】

本件は、いずれも中華人民共和国の国籍を有し、出入国管理及び難民認定法における外国人研修・技能実習制度の下、第一次受入れ機関を原審Y1社、第二次受入れ機関をY2社として、本邦に入国し在留したXらが、Y2社の「相談役」の肩書きを有するY3に対し、Y3はY2社の名義を利用していたもので、研修期間及び技能実習期間を通じて、XらはY3と雇用関係にあったと主張して、未払賃金、労働基準法114条所定の付加金等の支払を求めるとともに、Xら及び同様の立場にあったX2が、Y1社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求をした事案である。

原審は、Y3とXら及びX2との間に雇用関係があったと認め、XらのY3に対する請求並びにY1社ら及びX2のY1社に対する請求を、いずれも一部認容し、一部棄却した。

これに対し、Y3のみが控訴した。したがって、Xら及びX2のY1社に対する請求については、原判決が確定している。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】(以下、原審の判断)

1 労働契約法2条2項は、同法における「使用者」について、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいうと定義し、最低賃金法2条2号が準用する労働基準法10条は、同法における「使用者」について、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいうと定義する。これらの定義からすれば、前記各法における「使用者」とは、実質的に指揮命令をして労務の提供を受け、賃金を支払っていた又は支払うべき者をいうと解するべきであり、その前提として、会社の場合においては、これらの主体となり得る実態を有していることが必要である

2 ・・・以上からすれば、外国人研修・技能実習制度における研修生が、労働契約法及び最低賃金法上の労働者に当たるか否かについては、受入れ機関側における研修体制の構築の有無、実際に実施された研修内容・時間、特に非実務研修の実施の有無、その内容・時間のほか、研修生が研修手当を受領していた場合にはその手当についての認識等を総合考慮した上で、研修生が行った作業であっても、労務の提供として賃金の支払を受けるにふさわしいものであった場合には、前記労働者に当たるというべきである

3 外国人研修・技能実習制度の団体監理型における第一次受入れ機関は、研修を受けようとする者に対して、第二次受入れ機関が研修を適正に実施する体制を整えず、体制を備えることが全く期待できない場合にあっては、そもそもそのような機関に研修生を受け入れさせてはならない義務を負い、また、研修生に対して、自ら第一次受入れ機関として適正な研修を実施し、第二次受入れ機関による研修が研修計画どおり実施されているか、実質的な労働となっていないか等について監査し、これを指導し、管轄の地方入国管理局長に報告する義務を負うというべきである。

4 研修における第一次受入れ機関は、実態のない会社と雇用契約を締結しようとしていることを管轄する地方入国管理局長に報告しないなど、実習実施機関における不法就労を殊更助長しているといえる場合に限って不法行為責任を負うというべきである
Xらの研修における形式上の第二次受入れ機関であるY2社は、Y3が、研修生及び技能実習生の受入れ等の名義として用いたに過ぎない実態のない会社であって、Xらに研修を実施する体制は何ら構築されておらず、適正な研修体制が構築されることは到底期待することができない状況であったといえる。また、Xらが研修期間中に実際に行った作業は、技術、技能又は知識を修得させることを目的とするものではなく、実態として労働であったものである。これらの事情によれば、Y3がY2社を形式上の第二次受入れ機関としてXら研修生を受け入れた目的は、労働基準法及び最低賃金法の規定を潜脱し、同法所定の最低賃金を大きく下回る研修生1人当たり月額7万円程度の研修手当を支払うのみで労働力を得ることにあったことは明白であったといえ、Y1社は、Y2社がその組合員であること、Y1社担当者がXらの受入れに当たってY3と交渉していたことからすれば、上記のとおりXらを受け入れるにあたってのY3の目的を当然に認識していたことが認められる。

法の予定していない、研修制度の悪用であるという評価です。

妥当な判断だと思います。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介283 「成功の型」を知る 起業の技術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

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←毎週末は、海までの早朝ジョグからはじまります。

風がなく、本当に気持ちがいいです。

2時間程度、何も考えずにジョギングをすると、本当にリフレッシュできます。 おすすめですよ。

今日は、午前中は、顧問先会社の社長との打合せ、債権者集会が1件入っています。

午後は、島田の裁判所で医療事件の民事調停が1件、顧問先の社労士の先生との打合せが1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

  「成功の型」を知る 起業の技術

帯には、以下のように書かれています。

どのような分野でも『成功の型』のようなものがあります。天才と言われる人でさえ、そういった基本を土台にして活躍しているのです。しかし、ほとんどの起業家は、その『型』を知りません。だから、失敗するのは当然です。

「型」という言葉、いいですね。

あらゆることには「型」があるので、まずはそれをしっかり学ぶところから始めることが大切です。

極めて実践的な内容となっています。 参考書としてはとても良い本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ブランドには『徹底力』が大切です。ブランド会社になるための『最初で最後の手段』は『誰でもできることを、誰もやらないくらいやる』ことです。誰でもできるけど、多くの人がやらないことは『自分が生きる分野を決めて集中し、そこで、誰でもできることを誰もやらないくらいやる』ことです。小さなことを積み重ねていきましょう。ブランドは『微差の集積』で築かれていくのです。」(140頁)

とても参考になります。

大切なことをこれだけコンパクトにまとめて伝えられる著者がすごいです。

「自分が生きる分野を決めて集中し、そこで、誰でもできることを誰もやらないくらいやる」

おそらく、成功している人は、みんなこの視点を持って、実際に実行しているのではないでしょうか。

よく「他との差別化」ということを言いますが、決して、突拍子もないことをやる必要はなく、自分の得意分野で、だれにもできないくらいの努力をすることこそが、結果として、「他との差別化」になるのではないでしょうか。