不当労働行為81(全日本建設運輸連帯労組関西地区生コン支部(大谷生コン・本案)事件)

おはようございます。

さて、今日は、産業別組合による業務妨害行為に対する差止め・損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

全日本建設運輸連帯労組関西生コン支部(大谷生コン・本案)事件(大阪地裁平成25年3月13日・労判1078号73頁)

【事案の概要】

本件は、Y社がXに対し、Y社の営業権に基づき、XによるY社に対しての業務妨害行為(Y社の取引関係者へのY社との取引停止の要請、納入先現場におけるY社の取引関係者への圧力、広域協組幹部会社への圧力、Y社の納入妨害及びこれらに準ずる行為)の各差止めを請求するとともに、Xによる業務妨害行為を理由とする不法行為に基づき、損害賠償を請求し、併せて遅延損害金の支払を請求した事案である。

【裁判所の判断】

Xによる取引先への要請行為、情宣活動、出荷妨害等に対するY社からの妨害差止請求と損害賠償請求(330万円)を認容

【判例のポイント】

1 Xが行ったと認められる本件業務妨害行為は、その態様からして、一般市民に許容される要請活動、宣伝活動または説得活動の域を超えているといわざるを得ず、Y社の取引関係者をして、Y社との取引の開始及び継続について心理的に委縮させる効果をもつものであると一般的に認められる。したがって、Y社は、本件業務妨害行為により、それが取引関係者にもたらす委縮効果を通じて、その営業権を侵害されているというべきであり、本件業務妨害行為は正当な組合活動と認められるなどして違法性を阻却されない限り、違法であるという評価を免れない

2 組合活動は、その目的及び行為態様を考慮して、労働者の労働義務、誠実義務、使用者の施設管理権との調整という観点も併せて斟酌して正当性が認められる場合には、憲法上の保護を受けて違法性が阻却されると解される

3 本件業務妨害行為の行為態様、頻度、違法性の程度を考慮し、これまでXがY社に対して業務妨害行為を繰り返してきたことを斟酌するならば、将来において同様の、またはこれらに準ずる方法、態様による業務妨害行為が行われる蓋然性は高く、それによりY社に軽度とはいえない不利益が生ずるおそれが高いと認められる。したがって、差止めの必要性は高く、これらについて差止請求権が認められる

4 本件業務妨害行為の態様からすると、その対象となった取引関係者の中に、現場の混乱を回避し、また、自社の社会的イメージを維持するという目的から、Y社との取引を縮小し、あるいは、解消することを考えるに至る業者が出ることは十分にあり得ることであると考えられる。そのような意味において、Y社の名誉及び信用の低下は現実に生じたものと認められ、そのこと自体がXの違法な本件各業務妨害行為によりY社に生じた損害であると認めるのが相当である。
このことが現実に売上げの減少につながったかをみると、・・・前記の損害は売上げの減少にはつながっていないことが認められる。しかしながら、売上げの上下は、Y社の営業努力による取引の維持や新規取引先の開拓、景気の動向等、複数の要因に影響されるものであるから、売上げの減少がないからといって、前記の損害がないとすることは相当でない
前記の損害は、その性質上、具体的な損害額の算定が困難であり、その損害額を立証することが極めて困難であるというべきであるから、民事訴訟法248条に基づき損害額を認定することとし、本件各業務妨害行為の態様等を考慮して、これを300万円と認定し、その一割の30万円を弁護士費用に関する損害と認定することとする

非常に参考になる裁判例ですね。

会社としては、組合の組合活動に正当性が認められないと考える場合には、差止請求や損害賠償請求を検討することになります。

裁判所がどのような要素を重視して判断しているのかを認識することが大切です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。