Monthly Archives: 12月 2013

本の紹介278 仕事に必要な言葉(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今日で、仕事納めです。 今年も一年、お世話になりました。

新年は1月6日(月)から仕事開始です。

顧問先の会社様は、年末年始におきましても、通常通り、栗田の携帯電話に御連絡をください。
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←先日、いつもお世話になっている社長と、ホテルセンチュリーにディナーを食べに行ってきました。

写真は、「鮟鱇のポワレと鮟肝のバプール 赤ワインソース 菊芋のピューレを添えて」です。

アンコウといえば、鍋をイメージしてしまうのですが、今回は、洋食でいただきました。

繊細な味付けで、おいしゅうございました。

今日は午前中は、顧問先会社の社長との打合せ等が2件入っています。

お昼は、スタッフとともに年越しそばを食べに行きます。

午後は、打合せが1件と事務所の大掃除です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 仕事に必要な言葉

著者は、三井物産副社長、日本ユニシス社長を経て、住宅金融支援機構理事長になられた方です。

いい言葉がわかりやすく紹介されています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

縁を支配しようとすると、かえって縁は逃げていく。自分が選ぶのではなく、まわりが自分を選ぶという謙虚な気持ちが大切。」(172頁)

よく言われることですが、異業種交流会で名刺を配りまくっても、人脈なんて広がりません。

人脈は、広げるものではなく、自然と広がるものではないでしょうか。

まずは周りに選んでもらえるように力をつけることが大切です。

なんでもそうだと思いますが、無理矢理、支配しようとすればするほど、相手は逃げていきます。

他人に支配されたいと思う人はいませんから。

強引に他人を支配しなければ、つなぎ止めておけないような縁は、そもそも縁ではないのです。

お互いが依存しない関係にある人同士だからこそ、縁はつながっていられるのです。

不当労働行為81(全日本建設運輸連帯労組関西地区生コン支部(大谷生コン・本案)事件)

おはようございます。

さて、今日は、産業別組合による業務妨害行為に対する差止め・損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

全日本建設運輸連帯労組関西生コン支部(大谷生コン・本案)事件(大阪地裁平成25年3月13日・労判1078号73頁)

【事案の概要】

本件は、Y社がXに対し、Y社の営業権に基づき、XによるY社に対しての業務妨害行為(Y社の取引関係者へのY社との取引停止の要請、納入先現場におけるY社の取引関係者への圧力、広域協組幹部会社への圧力、Y社の納入妨害及びこれらに準ずる行為)の各差止めを請求するとともに、Xによる業務妨害行為を理由とする不法行為に基づき、損害賠償を請求し、併せて遅延損害金の支払を請求した事案である。

【裁判所の判断】

Xによる取引先への要請行為、情宣活動、出荷妨害等に対するY社からの妨害差止請求と損害賠償請求(330万円)を認容

【判例のポイント】

1 Xが行ったと認められる本件業務妨害行為は、その態様からして、一般市民に許容される要請活動、宣伝活動または説得活動の域を超えているといわざるを得ず、Y社の取引関係者をして、Y社との取引の開始及び継続について心理的に委縮させる効果をもつものであると一般的に認められる。したがって、Y社は、本件業務妨害行為により、それが取引関係者にもたらす委縮効果を通じて、その営業権を侵害されているというべきであり、本件業務妨害行為は正当な組合活動と認められるなどして違法性を阻却されない限り、違法であるという評価を免れない

2 組合活動は、その目的及び行為態様を考慮して、労働者の労働義務、誠実義務、使用者の施設管理権との調整という観点も併せて斟酌して正当性が認められる場合には、憲法上の保護を受けて違法性が阻却されると解される

3 本件業務妨害行為の行為態様、頻度、違法性の程度を考慮し、これまでXがY社に対して業務妨害行為を繰り返してきたことを斟酌するならば、将来において同様の、またはこれらに準ずる方法、態様による業務妨害行為が行われる蓋然性は高く、それによりY社に軽度とはいえない不利益が生ずるおそれが高いと認められる。したがって、差止めの必要性は高く、これらについて差止請求権が認められる

4 本件業務妨害行為の態様からすると、その対象となった取引関係者の中に、現場の混乱を回避し、また、自社の社会的イメージを維持するという目的から、Y社との取引を縮小し、あるいは、解消することを考えるに至る業者が出ることは十分にあり得ることであると考えられる。そのような意味において、Y社の名誉及び信用の低下は現実に生じたものと認められ、そのこと自体がXの違法な本件各業務妨害行為によりY社に生じた損害であると認めるのが相当である。
このことが現実に売上げの減少につながったかをみると、・・・前記の損害は売上げの減少にはつながっていないことが認められる。しかしながら、売上げの上下は、Y社の営業努力による取引の維持や新規取引先の開拓、景気の動向等、複数の要因に影響されるものであるから、売上げの減少がないからといって、前記の損害がないとすることは相当でない
前記の損害は、その性質上、具体的な損害額の算定が困難であり、その損害額を立証することが極めて困難であるというべきであるから、民事訴訟法248条に基づき損害額を認定することとし、本件各業務妨害行為の態様等を考慮して、これを300万円と認定し、その一割の30万円を弁護士費用に関する損害と認定することとする

非常に参考になる裁判例ですね。

会社としては、組合の組合活動に正当性が認められないと考える場合には、差止請求や損害賠償請求を検討することになります。

裁判所がどのような要素を重視して判断しているのかを認識することが大切です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介277 掟破り(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

掟破り

僕が大好きな原田さんの本です。

今回の本は、テーマごとにとても簡潔にまとめられているため、すぐに読めてしまいます。

原田本初心者の方におすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

前項で『忙しいからランニングを1日休もう』と中断すると、とたんに能力が落ちてしまうと書きました。しかし、悪影響はこれだけではありません。一度休むと、ほかにも休む理由を探すようになり、歯止めがきかなくなるのです。・・・このように何かを休むクセをつけると、たとえそれが本来はあきらめてはいけない仕事であっても、自らに対する言い訳を探すようになります。・・・どんな環境でもあきらめず、乗り越えようと努力してこそ、そこに成長があるのです。」(217頁)

私はよく自分に「例外をつくらない」と言い聞かせています。

意味は、原田さんが言っていることと同じです。

一度、例外をつくると、なし崩し的に例外が広がっていくことを経験的に知っているのです。

だから、やらない理由をつくらないことが大切なのです。

目的を達成したければ、そのために必要な準備を継続することが求められます。

準備を継続するとは、すなわち、習慣化するということです。

習慣化をするのを妨げるのは、唯一、「弱い自分の心」なんだと思います。

そう。いつでも、弱い自分との戦いなのです。

まずは自分は弱いことを認め、そんな自分に負けないために必要な考え方を身につける。

必要な考え方とは、どんなときでも「やらない」という例外をつくらないことです。

寒くても、眠くても、二日酔いでも、疲労困憊でも、早朝のジョギングをやると決めたら、最後までやりぬく。

この繰り返しが、「自分に達成できないことはない」という自信につながるのです。

解雇125(秋本製作所事件)

おはようございます。 今年最後の1週間ですね。今週もがんばっていきましょう。

さて、今日は、分会長に対する非違行為等を理由とする降格・解雇等に関する裁判例を見てみましょう。

秋本製作所事件(千葉地裁松戸支部平成25年3月29日・労判1078号48頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社から降格処分を受けて賃金及び賞与を減額された上、普通解雇されたことについて、①賃金減額及び賞与減額は、そもそもY社にその権限がなく、仮に権限があったとしても人事権を濫用してされたものであるから無効であり、②上記普通解雇は、解雇事由が存在せず、仮に存在したとしても解雇権を濫用してされたものであり、不当労働行為にも該当するものであるから無効であるなどと主張して、Y社に対し、(1)雇用契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、(2)平成20年8月以降減額されたことによる賃金未払分(月額15万円)及びこれに対する遅延損害金、(3)平成19年以降減額されたことによる賞与未払分及びこれに対する遅延損害金などの支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

降格処分、解雇はいずれも無効

賞与の減額分の支払請求は棄却

【判例のポイント】

1 人事権の行使としての降格処分は、労働者を特定の職務やポストのために雇い入れるのではなく、職業能力の発展に応じて各種の職務やポストに配置していく長期雇用システムの下においては、雇用契約上、使用者の権限として当然に予定されているということができ、その権限の行使については、使用者に裁量権が認められるというべきである。そうすると人事権の行使としてされた本件降格処分の有効性については、その人事権の行使に裁量権の逸脱又は濫用があるか否かという観点から判断していくべきである。そして、その判断は、使用者側の人事権の行使についての業務上・組織上の必要性の有無・程度、労働者がその職務・地位にふさわしい能力・適性を有するか否か、労働者の受ける不利益の性質・程度等の諸点を総合してされるべきものである

2 本件解雇事由(ア)(懲戒処分後の就労拒否)及び(イ)(出勤停止期間中の出勤等)に係るXの行為は、ずれもY社の業務上の指示・命令に従わず、会社の秩序を乱すものであって、本件解雇に至る経緯に照らしても、本件解雇の主たる理由になったものということができる。
しかしながら、本件解雇事由(ア)については、本件解雇の際にXに示された事実自体についてはこれを認めることができないのであり、就業規則所定の解雇事由に該当する行為として認められるのは、懲戒処分2で既に制裁を受けた行為であって、解雇の理由としてこれを重視するのは相当でないというべきである
・・・以上の点を考慮すると、本件解雇事由として認められるXの行為は、いずれも解雇を相当とする重大なものではないのであって、これらの事実を総合し、かつ、本件情状事由を考慮しても、Xに対して解雇をもって対処するのは著しく不合理で、社会通念上相当性を欠くといわざるを得ない。したがって、本件解雇は、解雇権を濫用したものである。

本件では、Y社が数多くの解雇事由を主張しましたが、その多くが就業規則所定の解雇事由とは認められていません。

また、解雇事由と認められた数少ない事実についても、それだけで解雇とするのは不十分なものであるため、相当性を欠くという理由から解雇は無効と判断されています。

解雇事由については、単純な足し算ではないので、1つ1つの事実が解雇事由とはならない場合には、何百個主張しても、解雇は有効にはなりません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介276 「悩み」は「お金」に変わる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。__ 明日から3連休ですね。

3連休も打合せや相談がてんこ盛りです。ばりばり働きますよ!!

←先日、常磐町の「結(リボン)」に行ってきました。

このお店は、何を食べてもおいしいです。

メニューも豊富で、なによりリーズナブルです。

超おすすめのお店です。

今日は、午前中は、立川支部で離婚調停です。

午後は、そのまま名古屋の顧問先の会社へ向かい、セミナーです。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 「悩み」は「お金」に変わる (角川フォレスタ)

多くの仕事は、人の悩みを解決することでその対価を得ています。

この本は、その当たり前のことを強く意識させてくれる内容になっています。

結局、多くの人は、読むだけで何もやらないわけですけどね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私は、日本で昔から伝えられてきた『言霊』や『念』の力を信じています。『言霊』は、思いを言葉に出すことで願っている状況を引き寄せます。『念』は思いを強くイメージすることで、そのイメージを実体化させるといわれています。・・・あなた自身が『ほしい』と思う気持ちを押さえ込もうとしていては、目標達成する速度が遅くなるのは当たり前のこと。ほしいものを恥ずかしがらずに口にすると、思いもかけないところで、安く手に入る方法を教えてもらえたり、ほしいものについてよく知る人を紹介してもらえたりします。・・・人にやりたいこと、欲しいものを話すことのデメリットはありません。メリットしか無いものなのです。」(228~229頁)

思考は現実化すると言います。

思考を言葉にすることはとても大切です。

たとえば、自分の目標を口に出すことによって、目標に賛同してくれる人たちが応援をしてくれます。

もちろん、いつもいつも欲しがってばかりではいけません。

周りの人たちが目標に向かって努力しているときには、そっと手をさしのべて、応援してあげることから始めるのです。

まずは、周りの人を応援するところから始めることが大切です。

有期労働契約44(北港観光バス(雇止め)事件)

おはようございます。

さて、今日は、高齢と糖尿病を理由とする再雇用更新拒否(雇止め)に関する裁判例を見てみましょう。

北港観光バス(雇止め)事件(大阪地裁平成25年1月18日・労判1078号88頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、Xとの間の期間の定めのある雇用契約を更新せずに雇止めにしたことから、Xが、Y社に対し、当該雇止めは不当労働行為に当たり、解雇権濫用法理の類推適用により無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位があることの確認ならびに雇止め後の賃金および慰謝料の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 雇用契約書及び就業規則上は、Y社では定年を60歳とし、65歳までは再雇用制度を採用しているが、雇用契約書上は65歳以上の、就業規則上は65歳を超える従業員については個別に判断するものとされている。そうすると、65歳を超える従業員については、雇用継続への合理的期待がないとみる余地もないとはいえない
しかし、Xは、Y社との間で平成13年ころ雇用契約を締結したが、契約当初は雇用契約書が作成されておらず、その後、遅くとも平成16年ころから契約書を作成するようになったものの、当初、契約書の表題は業務請負契約書となっていたことが認められ、XとY社との間で雇用契約が締結された当時は、雇用期間について明確な合意がなされていたとはいい難い
その後、65歳以上の従業員の雇用を個別に判断する旨の記載のある雇用契約書が作成されるようになったが、実際の運用をみると、65歳を超える運転手も相当数の者が契約を更新されており、本件雇止めが行われた平成22年9月20日当時で、A営業所の従業員の約16%、平成23年1月1日当時でも約10%が65歳以上であったことが認められるX自身も、平成19年2月16日に65歳に達した後も複数回の契約更新を経ていることも併せ考えると、Xが、平成22年9月20日の時点で、雇用継続に対する期待を抱くことは客観的にみて合理的である
よって、本件雇止めに合理的理由がない場合には、本件雇止めは無効というべきである。

2 ・・・以上のとおり、Xの体力、健康状態が業務に耐えられない状況にあったとは認められず、高齢運転手を減少させるというY社の方針は、それだけでは本件雇止めの合理的理由とはなり得ないことからすると、本件雇止めは無効というべきであり、XとY社との間の雇用契約は、従前と同様の条件で更新されたとみるのが相当である。

3 本件雇止め自体は、契約期間が満了した労働者と新たに契約を結ばないということにすぎず、何らかの積極的な行為を伴うものではなく、また、仮に無効な雇止めがなされた場合でも、そのことが訴訟によって明らかとなり、未払賃金が支払われれば、当該労働者の損害は填補されるといえるから、無効な雇止めがなされたからといって、そのことが当然に慰謝料を生じさせるような不法行為に該当することになるわけではない。

契約書の記載内容から形式的に判断するのではなく、本件のように、実際の運用から判断するという手法は、多くの労働事件でとられているものです。

形だけ整えればよいという甘い考えは通用しないというわけですね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介275 榊原式スピード思考力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、大岩にある「La verdura」(ラ・ベルドゥーラ)にランチを食べに行ってきました。

写真は、「鶏ミンチとフレッシュトマトのローズマリー風味」のピザです。

ピザが冷めないように、熱した石のプレートの上に置かれています。

郊外のお店にもかかわらず、ほぼ満席でした。

おいしゅうございました。今度は、夜に行ってみたいと思います。

今日は、午前中は、裁判が2件入っています。

午後は、浜松の会社を訪問し、新規相談を受けます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 榊原式スピード思考力

5年程前の本ですが、もう一度読んでみました。

マクドナルドの原田さんもそうですが、榊原さんもちゃんと運動をしていますね。

だからいつまでたってもスマートですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

成功した理由など、本当は『運がよかっただけ』と思えばいいのです。そうしてそのときに出した答えも、”暫定的な答えだった”ととらえ、次の問題に対しては、一度頭をクリアにして臨む。そうでないと、目まぐるしいスピードの状況の変化に対応できません。・・・ビジネスもスポーツも環境が常に変わっているのですから、今日成功したパターンが明日も通用するとは必ずしもいえません。ということは、昨日の成功体験が足かせになることも少なくないのです。」(46~47頁)

同じことをファーストリテイリングの柳井さんも言っています。

過去の成功体験を一切無視して、全くクリアな頭で考えることなど、本当にできるのでしょうか?

私は自信がありません。

過去にうまくいった方法を参考にするなんてことは、日常的に行っていることです。

私が気をつけているのは、事案が異なるにもかかわらず、事案ごとの特殊性を考慮せずに、過去に成功したやり方にそのままのっからないということです。

「同じ事案はない」ということを意識しておくだけでも、冷静な対応ができるのではないでしょうか。

労働災害67(Y興業事件)

おはようございます。
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←先日、「篤」で忘年会を行いました。

写真は、「釣りきんきの塩焼き」です。

普段、きんきは煮付けで食べることが多いので、今回は、焼いてもらいました。

すべての魚が最高級で、満足度が非常に高いお店です! すばらしいです。

今日は、午前中は、顧問先の会社でセミナーが入っています。

テーマは、「第2回 総務部が知っておきたいビジネス法務の基本」です。

午後は、清水の裁判所で交通事故の裁判と債権回収の裁判があり、その後、富士の裁判所へ移動し、裁判が1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、会社専属タレントから暴行を受けた社員の療養補償給付等の不支給処分の取消に関する裁判例を見てみましょう。

Y興業事件(東京地裁平成25年8月29日・労判2190号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に勤務していたXが、Y社タレントから暴行を受け、頚椎捻挫ないし脳挫傷等の傷害を負い、その後、外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、療養・休業をやむなくされたとして、療養補償給付及び休業補償給付の請求を行ったが、中央労働基準監督署長が療養補償給付及び休業補償給付を支給しない旨の処分を行ったため、これらの処分の取消しを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 業務と傷病との条件関係を肯定するためには、医学的知見等専門的知見に照らし、当該傷病を発病する可能性があると考えられる業務上の負荷が客観的に認められ、当該負荷がなければ当該傷病を発病していなかったとの高度の蓋然性が認められる必要がある。

2 本件事件の発端は、XがEに対して私的にX自身を自己紹介しようとしたところ、Eがその態度に不快感を覚えたというものであって、そのXの行為について業務性は認められないこと、暴行に至る経過において、XがM及びNを呼び捨てにしたことがあるが、その発言自体は、Xの業務との関連性に乏しいことなどからすれば、本件事件による災害の原因が業務にあると評価することは相当ではなく、Xの業務と本件事件による災害及びそれに伴う傷病との間に相当因果関係を認めることができないから、業務起因性を認めることはできない

3 なお、Xは、Eが過去幾多の暴力事件を起こし、社内やテレビ局内でも暴行事件を起こしており、本件事件による災害は、Eを専属タレントとして抱えて業務を遂行する過程に内在化されたリスクというべきであり、業務起因性が認められるとも主張している。しかしながら、Xの主張は具体性を欠いているし、Eが起こしたとされる個々の事案の内容も不明であり、その真偽も定かではないし、本件事件に至るXのEに対する言動がXの業務と関連しないことからすれば、本件事件による災害がEを専属タレントとして抱えて業務を遂行する過程において内在化されたリスクとして発生したとまで評価することは相当ではない。

Y興業といえば、もうあの会社しか思いつかないわけですが・・・。

裁判所は業務起因性を否定し、業務災害とは認めませんでした。

なお、専属タレント・Y社とXとの間では、前2者がXに対し損害賠償欣を支払うことについて、裁判上の和解が成立しているそうです。

本の紹介274 つまずくことが多い人ほど、大きなものを掴んで成功している。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

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←昨日の早朝、2時間程、山までウォーキングに行ってきました。

海とはまた違った気持ちよさがありますね。

空気が澄んでいて、パワーがみなぎってきます!

今日は、午前中は、富士の裁判所で刑事事件の公判が入っています。

午後は、新規相談が2件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 つまずくことが多い人ほど、大きなものを掴んで成功している。 日本人への遺言 (magazinehouse pocket)

著者は、明治40(1907)年生まれの方です。100歳を超えています(!)

サブタイトルが「日本人への遺言」とあるように、著者のこれまでの人生訓が詰まっています。

一読に値します。 おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

幸福は欲しいと思うと手に入りません。むしろ逃げていくものだと覚えておいていただきたい。幸福は与えてこそはじめて自分の手中に入ってくるものなのです。まずは、他人のために自分には何ができるのか。広い視野を持ちながら考えを深めましょう。そうすることであなたにも幸せは訪れるのです。」(108頁)

私は、こういう発想が大好きです。

正しいかどうかではなく、好きなのです。

自分が幸せになりたかったら、まずは周りの人が幸せになるのを手伝ってみる。

実際は、周りの人が笑顔になるのを見るだけで幸せになれますよね。 もうそれだけ自分も幸せだったりするわけです。

こういうことが、きれいごとではなく、自然と思える人というのは、自然と人が集まってきて、その人を助けてくれますね。

不当労働行為80(城陽市事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、非常勤嘱託員の任用拒否、団交拒否に関する命令を見てみましょう。

城陽市事件(京都府労委平成25年8月9日・労判1077号91頁)

【事案の概要】

X組合は、Y市に対し、団体交渉を申し入れ、Aの勤務条件について8回団体交渉を行った。

Aは、特別職の地方公務員であり学童保育指導員(非常勤嘱託員)である。

Y市は、Xとの団体交渉において、Aに対し、24年度の任用を行わない旨を通告した。

その後、Y市は、X組合に対し、団体交渉を打ち切る旨を通知した。

【労働委員会の判断】

契約更新を行わなかったことは不当労働行為に当たらない

団交における市の対応は不当労働行為に当たる

【命令のポイント】

1 Y市は、平成22年度、Aを特別な支援を必要とする児童に対して配置される加配指導員として任用したが、Aは自己の考え方に基づき担当児の監護に専念しないなど学童保育所のルールを逸脱した業務を行い、これに対する他の指導員の指摘や注意も聞き入れようとせず、さらに、休日に担当児と関わろうとするなど家庭において監護を受けられない留守家庭児童の保育という学童保育事業の趣旨を逸脱した行動をとった。・・・Aは相変わらず自己の考え方に固執し、各学童保育所のルールを逸脱した業務を行い、他の指導員と連携しようともせず、注意を聞き入れようとしなかった。・・・このような報告を受けて、Y市は本件任用拒否について判断した。
以上のことから、本件任用拒否はAの勤務態度を理由として行われたものと認めるのが相当であり、AがX組合に加入したこと又はX組合の正当な行為をしたことの故をもって行われたものとはいいがたい

2 Aの勤務条件について、Y市は、業務の性質の観点から誠実に対応し、夏休み期間中は特別の配慮も行い、本件勧告に対しても、労基署の指導に基づいて是正措置を実施し、その旨説明したと主張する。
確かに、上記主張に沿う事実も認められるが、一方、Y市は、X組合の労基法15条違反の主張に対しては、労基署等への問い合わせの有無も明らかにしないまま違反には当たらない旨説明し、これにX組合が納得していないにもかかわらず、交渉の打ち切りを表明しており、このような対応は、後に本件勧告を受けていることから見ても、X組合の主張に対する自己の主張の根拠について十分説明を尽くしたものとは認められない。・・・Y市が上記誠実交渉義務を尽くしていたとはいえない。

雇止めについては、合理的な理由があるということです。

注意をし、改善を促したにもかかわらず、一向に改善しなかったというプロセスが大切ですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。