Monthly Archives: 11月 2013

解雇122(伊藤忠商事事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、双極性障害に罹患して休職・退職した労働者について、休職期間満了までに回復したとは認められないとされた裁判例を見てみましょう。

伊藤忠商事事件(東京地裁平成25年1月31日・労経速2185号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、双極性障害に罹患して休職したものの、休職期間満了前に復職可能な程度にまで回復したなどと主張して、Y社に対し、雇用契約上の地位確認を求めるとともに、雇用契約に基づく未払賃金等を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、休職期間満了時の復職不能の主張・立証は、使用者側であるY社がすべきであると主張する。しかし、雇用契約上の傷病休暇・休職の制度が、使用者が業務外の傷病によって長期間にわたって労働者の労務提供を受けられない場合に、雇用契約の終了を一定期間猶予し、労働者に治療・回復の機会を付与することを目的とする制度であると解すべき一方、労働者の治療・回復に係る情報は、その健康状態を含む個人情報であり、原則として労働者側の支配下にあるものであるから、休職期間の満了によって雇用契約は当然に終了するものの、労働者が復職を申し入れ、債務の本旨に従った労務提供ができる程度に病状が回復したことを立証したときに、雇用契約の終了の効果が妨げられると解するのが相当である

2 XがY社の総合職として雇用されたことは、前記のとおりであり、Xの復職可能性を検討すべき職種は、Y社の総合職ということになる
ところで、総合商社であるY社の総合職の業務は、Xが休業開始前に従事していた営業職においては、国内外の取引先間において、原材料や製品の売買の仲介を行うことが中心であり、具体的には、市況や需要等に関する様々な情報を収集・分析し、仕入先及び販売先に取引内容案を提示して交渉を進めるとともに、取引先の信用調査を行い、取引先への与信限度を社内で申請・設定し、仕入先及び販売先と合意に至れば契約書を締結し、その後、商品の引渡し、代金の支払、回収・運搬・通関手配、為替予約のための相場確認等を行うものであり、海外の取引先等を含め社内外の関係者との連携・協力が不可欠であるから、これを円滑に実行することができる程度の精神状態にあることが最低限必要とされることが認められる。また、営業職以外の管理系業務においても、社内外の関係者との連携・協力が必要であることは営業職と同様であるから、いずれの職種にしても、業務遂行には、対人折衝等の複雑な調整等にも堪え得る程度の精神状態が最低限必要とされることが認められる。

使用者側は、業務の大変さを丁寧に説明することが功を奏しました。

この手の事案は、ドクターの診断書や意見書が出されても、それだけで復職の可否が判断されることはありません。あくまで一考慮要素にすぎません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介263 秒速で10億円稼ぐありえない成功のカラクリ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

秒速で10億円稼ぐありえない成功のカラクリ

以前にも与沢さんの本を紹介したことがあります。

今回の本のタイトルも刺激的でいいですね!

今回の本も勉強になります。 成功したい方は、みんなこの本を読んだらいいと思います。

結局のところ、読むか読まないかではなく、やるかやらないかの差なのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

失敗にこそ『その人の傾向』が顕著に表れる。その人にとっての固有の失敗というものが必ずあるのだ。・・・自分の固有の失敗を認めるのは精神的にラクではないが、そんなの本人次第だ。周りからどう見られるかというような、どうでもいい自尊心は捨てていい。むしろ、それを認めて、そこからどれだけ自分の器を大きくできるかを、一生懸命考え行動すればいい。・・・歴史上の人物を見ても分かるように、失敗して何度も立ち上がり天下を取るということがふつうなのである。もう一度言おう。失敗を恐れて何も決断できない人間に成功はできない。」(145~146頁)

たぶん、私の周りの同世代の成功している経営者は、みんなこのような考えを持っています。

周りからどう評価されるかなどというどうでもいいことに気を遣っている人は、皆無ではないでしょうか。

どんなことをしても、悪く言う人は、悪く言うのです。 そんなこと、別にどうだっていいじゃないですよね。

「ふーん、だから何?」くらいに思って、自分の目標に向かって、日々、努力すればいいのです。

一度だけしかない短い人生の中で、いろんなことにびびりながら、縮こまって生きていても何にも楽しくありません。

ということで、今日も一日、がんばります。

賃金68(八千代交通事件)

おはようございます。

さて、今日は、無効な解雇により就労できなかった期間は、年休取得要件である「全労働日」に算入され、かつ、出勤した日として扱うのが相当であるとした原審を維持した最高裁判例を見てみましょう。

八千代交通事件(最高裁平成25年6月6日・労経速2186号3頁)

【事案の概要】

本件は、解雇により2年余にわたり就労を拒まれたXが、解雇が無効であると主張してY社を相手に労働契約上の権利を有することの確認等を求める訴えを提起し、その勝訴判決が確定して復職した後に、合計5日間の労働日につき年次有給休暇の時季に係る請求をして就労しなかったところ、労働基準法39条2項所定の年次有給休暇権の成立要件を満たさないとして上記5日分の賃金を支払われなかったため、Y社を相手に、年次有給休暇権を有することの確認並びに上記未払賃金及び遅延損害金の支払を求める事案である。

法39条1項及び2項は、雇入れの日から6か月の継続勤務期間又はその後の各1年ごとの継続勤務期間において全労働日の8割以上出勤した労働者に対して翌年度に所定日数の有給休暇を与えなければならない旨定めており、本件では、Xが請求の前年度においてこの年次有給休暇権の成立要件を満たしているか否かが争われた。

一審および二審ともにXの主張を認めたため、Y社が上告した。

【裁判所の判断】

上告棄却

【判例のポイント】

1 法39条1項及び2項における前年度の全労働日に係る出勤率が8割以上であることという年次有給休暇権の成立要件は、法の制定時の状況等を踏まえ、労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者をその対象から除外する趣旨で定められたものと解される。このような同条1項及び2項の規定の趣旨に照らすと、前年度の総暦日の中で、就業規則や労働協約等に定められた休日以外の不就労日のうち、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえないものは、不可抗力や使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日等のように当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かされるべきものは別として、上記出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものと解するのが相当である

2 無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由無く就労を拒まれたために就労することができなかった日は、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日であり、このような日は使用者の責めに帰すべき事由による不就労日であっても当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものとはいえないから、法39条1項及び2項における出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものというべきである。

異論はないと思います。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介262 竹中式マトリクス勉強法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、久しぶりに「キャトル プレジール」に行ってきました。

お店の改装工事を行っていたため、休業していたためです。 工事が終わるのをずっと待っていましたよ。

写真は、「肉厚しいたけとパンチェッタのソテー」です。 もう見るからにおいしいそうです。

何を食べても間違いないです。 新メニューも加わり、楽しみが増えました。

今日は、午前中は、富士の裁判所で離婚調停です。

午後は、新規相談が1件と静岡の裁判所で労働事件の裁判で、証人尋問が入っています。

夜は、複数の士業の先生方と食事をしながら、打合せをします。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

竹中式マトリクス勉強法 (幻冬舎文庫)

5年程前に出版された本ですが、もう一度読んでみました。

竹中さんが、こういう勉強法に関する本を出しているのは意外かもしれませんね。

もっとも、この本を通じて、勉強法よりも竹中さんの考え方を知ることができるのがいいですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

知的生活を妨げるのは、意味もなく人と群れることです。ところが、サラリーマンの多くは、毎晩のように同じメンバーと飲みに行っては、愚痴や人事話に花を咲かせています。・・・しかし、誤解をして欲しくないのは、何も私は人付き合いなんてどうでもいいと言っているのではありません。むしろその逆で、優れた仲間、つまり自分の知的好奇心を刺激してくれる人と積極的に付き合って、切磋琢磨することほど、仕事や勉強の活性剤になることはありません。ただし、重要なのは、いい人を選ぶということ。残念ながら、時間は有限ですから、誰でも彼でも満遍なく付き合う時間はありません。」(78~79頁)

異論なし。

先日、同級生の経営者と食事に行ったとき、同じような話が出ました。

30代の半ばにもなると、それなりにお付き合いの幅が広がり、会食等の機会が増えてきます。

その一方で、当然のことではありますが、1週間、1か月という時間の枠はそれと比例して広がることはありません。

1週間であれば、7日しかないのです。

どうがんばっても、じっくり話ができる人数は限られてきます。

そうであれば、自分の成長にとって有意義な方と会ったほうがいいですよね。

はっきり言うと、愚痴を言ったり、聞いたりしている程、時間に余裕がないのです。

過去の話には興味がなく、これからどうしていくかという話で盛り上がりたいのです。 これが本音ですかね。

賃金67(ファニメディック事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は、獣医師に対する試用期間中の解雇及び時間外労働に対する割増賃金等の請求に関する裁判例(ここでは、割増賃金等の請求について具体的に見ていきます。)を見てみましょう。

ファニメディック事件(東京地裁平成25年7月23日・労経速2187号18頁)

【事案の概要】

本件は、平成23年5月10日からY社で稼働していたXが、同年11月9日付けでなされた解雇について、解雇理由とされる事実自体が存在せず社会通念上相当性を欠いている等と主張して、Y社に対し、雇用契約上の地位確認等を求めた事案である。

Y社における獣医師の基本給は、各人別に算定される能力基本給および年功給により構成されるものとし、以下の式により算出される金額を75時間分の時間外労働手当相当額及び30時間分の深夜労働手当相当額として含むものとされている。

75時間分の時間外労働手当相当額=(能力基本給+年功給)×34.5%

30時間分の深夜労働手当相当額=(能力基本給+年功給)×3.0%

【裁判所の判断】

解雇は無効

未払残業代としてほぼ請求金額の満額を認めた。

付加金として同額の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 就業規則の効力発生要件としての周知は、必ずしも労基法所定の周知と同一の方法による必要はなく、適宜の方法で従業員一般に知らされれば足りると解されるところ、Y社では、流山本院の受付周辺に印字した就業規則を備え置いているほか、同じく流山本院の受付のパソコンに就業規則のデータを保管していること、Xにも、Y社での勤務開始前に、Y社代表者から上記事実が伝えられていたことを認めることができる。

2 36協定は、労基法32条または35条に反して許されないはずの労働が例外的に許容されるという麺罰的効力を持つものであるが、有効な36協定が締結されていない状況下でなされた時間外労働にも割増賃金は発生すること、その差異、就業規則に労基法に定めるものと同等か、それ以上の割増賃金に関する定めがあれば、使用者に対し、当該規定に基づく支払義務を課すことが相当であることに照らせば、36協定の効力の有無によって、割増賃金に関する就業規則の規定の効力は影響を受けないというべきである

3 基本給に時間外労働手当が含まれると認められるためには、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分が判別出来ることが必要であるところ(最高裁平成6年6月13日判決)、その趣旨は、時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分が労基法所定の方法で計算した額を上回っているか否かについて、労働者が確認できるようにすることにあると解される。そこで、本件固定残業代規定が上記趣旨に則っているか否かが問題となる。
・・・確かに、本件固定残業代規定に従って計算することで、通常賃金部分と割増賃金部分の区別自体は可能である。しかし、同規定を前提としても、75時間分という時間外労働手当相当額が2割5分増の通常時間外の割増賃金のみを対象とするのか、3割5分増の休日時間外の割増賃金をも含むのかは判然とせず、契約書や級支給明細書にも内訳は全く記載されていない
結局、本件固定残業代規定は、割増賃金部分の判別が必要とされる趣旨を満たしているとはいい難く、この点に関するY社の主張は採用できない(そもそも、本件固定残業代規定の予定する残業時間が労基法36条の上限として周知されている月45時間を大幅に超えていること、4月改定において同規定が予定する残業時間を引き上げるにあたり、支給額を増額するのではなく、全体に対する割合の引上げで対応していること等にかんがみれば、本件固定残業代規定は、割増賃金の算定基礎額を最低賃金に可能な限り近づけて賃金支払額を抑制する意図に出たものであることが強く推認され、規定自体の合理性にも疑問なしとしない。)。

最近の裁判例を見る度に、固定残業代制度の終焉を迎えつつある気がしてなりません。

固定残業代制度の制度設計を間違うと、普通の未払残業代よりも多くの金額を支払わなければならないのが通常です。

しかも、使用者側の感覚からすると、二重払いのように思えてしまうので、たちが悪いです。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介261 成功者は端っこにいる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間、お疲れ様でした。 あっという間に時間が過ぎていきます。

さて、今日は本の紹介です。

 成功者は端っこにいる――勝たない発想で勝つ (講談社プラスアルファ新書)

著者は、「紅虎餃子房」等を運営する際コーポレーション会長です。

書かれている内容全てが、著者の経験に基づいているため、説得力があります。

とてもおもしろい内容で、参考になります。 おすすめです!

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人は、所詮はお釈迦様の掌の上でうごめき合っているだけ、と私は考えている。・・・その掌くらいのところに生きていて、やれ社長になっただの、やれクビになっただの、つぶやいているうちに命が尽きてあの世に行ってしまうのである。それを知ることが、『生きるコツ』である。つまりは『死生観』だ。・・・日々、あれこれ悩んだり、悲観したり、喜んだりして生きているわけだが、その程度の年数のなかですべてが起こっているのである。わかりきった理屈なのだが、そのことをしっかりと腹に収めておけば、悩むこと、落ち込むことなどひとつもなくなってくる。人生、どんなに長く生きたところで、行きつく場所は墓場以外ない。そう考えていれば、怖いことなんかない。見栄を張ることもない。腹をくくって生きていけばいいのだ。」(33~34頁)

こういう感覚でものを考えられるようになると、いちいち落ち込むこともなくなるのでしょうね。

「私は、マイナス思考だから」と嘆いている方へ。

マイナス思考は生まれつき持った才能でも性格でもありません。

マイナス思考は単なる習慣です。 毎日毎日、マイナス思考を懲りずに続けてきた結果、あたかも性格であるかのように無意識の領域までマイナス思考が定着しているだけです。

物事をプラスに考えることなど、実はそれほど難しいことではありません。

このブログでも、何度か書いたことがありますが、私が好きな考え方に「出来事それ自体に意味はない。出来事に意味を与えるのは自分の解釈である。」というのがあります。

だから、自分で大袈裟に「つらい」とか「きつい」とか「もうだめだ」などと解釈しないことが大切なのです。

解釈のしかたを変えるだけで、人生は楽しくなるし、幸せを感じることができるようになります。

幸せは、探しても見つかりません。感じるものですから。 ちーん。

賃金66(ヒロセ電機事件)

おはようございます。

さて、今日は、入退館記録表ではなく、時間外勤務命令書による労働時間管理を認めた裁判例を見てみましょう。

ヒロセ電機事件(東京地裁平成25年5月22日・労経速2187号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において勤務していたXが、時間外労働に対する賃金及び深夜労働に対する割増賃金と付加金の支払いを求めるとともに、内容虚偽の労働時間申告書等をXに作成、提出させたとして不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社の旅費規程には、出張(直行、直帰も含む)の場合、所定終業時間勤務したものとみなすと規定されており、出張の場合には、いわゆる事業場外労働のみなし制(労基法38条の2)が適用されることになっている。
実際にも、Xの出張や直行直帰の場合に、時間管理をする者が同行しているわけでもないので、労働時間を把握することはできないこと、直属上司がXに対して、具体的な指示命令を出していた事実もなく、事後的にも、何時から何時までどのような業務を行っていたかについて、具体的な報告をさせているわけでもないことが認められる。Xも、出張時のスケジュールが決まっていないことや、概ね1人で出張先に行き、業務遂行についても、自身の判断で行っていること等を認めている
以上からすると、Xが出張、直行直帰している場合の事業場外労働については、Y社のXに対する具体的な指揮監督が及んでいるとはいえず、労働時間を管理把握して算定することはできないから、事業場外労働のみなし制が適用される

2 Xは、出張や業務内容について具体的な指示を受け、事前に訪問先や業務内容について具体的な指示を受け、指示どおりに業務に従事していたと主張する。
しかしながら、Xの訪問先や訪問目的について、Xが指示を受けていたことは認められるが、それ以上に、何時から何時までにいかなる業務を行うか等の具体的なスケジュールについて、詳細な指示を受けていた等といった事実は認められず、Xの事業場外労働について、Y社の具体的な指揮監督が及んでいたと認めるに足りる証拠はない。

3 Y社の就業規則70条2項によれば、時間外勤務は、直接所属長が命じた場合に限り、所属長が命じていない時間外勤務は認めないこと等が規定されている。また、平成22年4月以降の時間外勤務命令書には、注意事項として「所属長命令の無い延長勤務および時間外勤務の実施は認めません。」と明記されていること、かかる時間外勤務命令書についてXが内容を確認して、「本人確認印」欄に確認印を押していることが認められる。以上からすると、Y社においては、所属長からの命令の無い時間外勤務を明示的に禁止しており、Xもこれを認識していたといえる

4 ・・・実際の運用としても、時間外勤務については、本人からの希望を踏まえて、毎日個別具体的に時間外勤務命令書によって命じられていたこと、実際に行われた時間外勤務については、時間外勤務が終わった後に本人が「実時間」として記載し、翌日それを所属長が確認することによって、把握されていたことは明らかである。したがって、Y社における時間外労働時間は、時間外勤務命令書によって管理されていたというべきであって、時間外労働の認定は時間外勤務命令書によるべきである

使用者側のみなさんは、是非、参考にしてください。

既に多くの会社で本事案と同様の制度を取り入れられています。

ポイントは、単に制度をつくるのではなく、実際にちゃんと運用することです。

上記判例のポイント4がミソです。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介260 6000人が就職できた「習慣」(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、同級生の経営者のお誘いを受け、人宿町に新しくオープンする「食 こみやま」に行ってきました。

洋風の店内で、和食を食べる、という新感覚のお店です。

コースのみのお店ですが、いろいろな料理が楽しめます。 是非、一度、行ってみて下さい。

今日は、午前中は、島田の裁判所で離婚調停が入っています。

午後も、島田の裁判所で離婚調停です。

夜は、不動産管理会社でセミナーです。3回シリーズの最終回です。

テーマは、「相続道場(発展編)」です。 今回でセミナーで完結します。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
 6000人が就職できた「習慣」 自分の花を咲かせる64ヵ条 (講談社プラスアルファ文庫)

著者は、リクルートエージェント転職力向上プランニングコンサルタントの方です。

何のことかよくわかりませんが、要するに、転職のアドバイザーということなのでしょうか。

タイトルに「習慣」という言葉を入れているところがいいですね。

どのような習慣をつくるかによって、あらゆることの成功と失敗が決まると思っています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。 

皆さんの周りにいる人、あるいはこれまで出会った人の中に『この人の仕事の進め方はいいな』『この人の発想は見習いたいな』と思う人はいますか。そういう人を『バーチャルメンター』、つまりは自分の心の中だけの指導者&助言者としてキープしておきましょう。困難な課題に出会ったとき、その人だったら何と言うか、どう行動するかを想像してみるのです。」(98頁)

私もこの発想をよくします。

自分が模範としている先輩等だったら、こういうとき、どのような行動をとるだろうか、と考えることはよくあります。

このように思えるためには、模範とする方の行動や言動を近くでよく観察する必要があります。

別に「バーチャルメンター」は1人である必要はありません。

それぞれの人のいいところを取り入れるという感覚でいいと思います。

意識して真似をし、近づいていく。 これが王道だと思います。

不当労働行為76(中ノ郷信用組合事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は異なる労組に二重加入している組合員に関する団交申入れと団交応諾義務に関する命令を見てみましょう。

中ノ郷信用組合事件(中労委平成25年7月17日・労判1075号93頁)

【事案の概要】

Y社は、Aの懲戒処分等を議題とするX組合からの団交申入れに対し、Aが2つの労働組合に二重加入していることを理由に団交を拒否した。

【労働委員会の命令】

労働組合の二重加入を理由として、組合の申し入れた団交を拒否したことは不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 労働者が組織を異にする二つの労働組合に二重に加入している場合、使用者が、当該労働者の労働条件等に関する同一の事項について各労働組合から別々に団交が申し入れられたときに両労働組合の間でまでは調整を求める等を理由に団交を拒否することは認められうる

2 しかし、本件においては、Y社は、職員組合から、Aの本件懲戒処分等を議題とする団交と同様の要求は受けておらず、その他Aの労働条件についての団交の申入れも受けていなかった。その上、職員組合は非組合員であるAの本件懲戒処分ないしは労働条件等を議題としてY社と団交を行う意思を有していたとは認められない。そして、職員組合にAの本件懲戒処分等に関してY社に団交の申し入れをするようなことを窺わせる具体的な事情も認められないことを踏まえると、Y社は、7月15日付け拒否回答の時点において、AがX組合と職員組合に二重加入の状態であったとしても、職員組合はAの懲戒処分等について団交を行う意思がないことは容易に認識でき、職員組合から二重の交渉を求められないことも認識していたと認められる。

3 したがって、Y社は、X組合と職員組合から同一の事項につき別々の団交を申し入れられた事実はなく、加えて二重の交渉を求められないことも認識していたのであるから、Y社がX組合からの7.2団交申入れに応じられない正当な理由があるとは認められない

押さえておくべきなのは、判例のポイント1ですね。

二重加入の事実のみを理由として団交拒否をすれば、不当労働行為に該当するのは明らかです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介259 福沢諭吉に学ぶ賢者の智恵(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間、お疲れ様でした。

さて、今日は本の紹介です。

 福沢諭吉に学ぶ賢者の知恵 (だいわ文庫)

「ほんと、こういう本、好きだよね」と言われそうな本ですね(笑)

福沢諭吉さんからも学ぼうと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

福沢は緒方洪庵が開いた私塾の適塾で真剣に学問に打ち込んだ。あるとき福沢は枕を持っていなかったことにふと気づく。
『ついぞ本当に蒲団を敷いて夜具を掛けて枕をして寝るなどということは、ただの一度もしたことがない』 
昼夜の区別もなく、書を読み続けた福沢は、そのまま枕の上に突っ伏して寝るか、床の間の高くなっているところを枕にして寝ていた。」(80頁)

福沢は言う。『読書生が徹夜勉強すれば、その学芸の進歩如何にかかわらず、ただその勉強の一事のみをもって自ら信じ自ら重んずるに足るべし』」91頁) 

教訓として、 徹夜をしろ、ということではありませんので、ご注意ください(笑)

ちゃんと寝たほうがいいです。

このくらいの勢いで、勉強しないとものにならないということです。

何事もそうですが、中途半端にやっても、結局、よくわからないまま終わります。

勉強も仕事も極端な二択だと考えてもいいのではないでしょうか。

徹底的にやるか、徹底的にやらないか。 その中間はない。

「よくわからない」「私には向いていない」と考えてしまうのは、まだまだ徹底的にやっていないからではないでしょうか。

「もうダメだ」ではなく「まだダメだ」なのです。