おはようございます。 10月も終わりですね。あと2か月で今年も終わりです。
さて、今日は再雇用後の雇止めの効力に関する裁判例を見てみましょう。
社会福祉法人新島はまゆう会事件(東京地裁平成25年4月30日・労判1075号90頁)
【事案の概要】
Y社は、介護施設を経営する社会福祉法人である。
Xは、Y社を平成23年4月末日で定年退職したが、Y社の再雇用制度に基づき、雇用期間を平成23年5月1日から平成24年3月31日まで、労働契約を締結し、調理員として稼動した。
Xは、平成24年2月1日、Y社に対し、同年4月1日から2年間の継続雇用を希望する旨の
申出書を提出した。これに対し、Y社は、同年2月20日、Xに対し、本件再雇用契約を更新しない旨を通知した。
【裁判所の判断】
本件雇止めは無効
【判例のポイント】
1 Xが本件再雇用契約締結のために署名押印したのは、「契約更新なし」の記載が削除された労働契約書であること、Xには当該労働契約書と同じ時期に「契約更新なし」の記載が削除された労働条件通知書が交付されたことは、・・・によって認められる。したがって、本件再雇用契約の締結の経過は、X主張のとおりであったと認められ、「契約更新なし」の文言が敢えて削除されたという経緯に照らすと、本件再雇用契約は更新の合意が含まれていたものと認められる。
2 Y社の調理室においては、平成23年4月に調理員が新たに採用され8人体制となったこと、Xの退職が発表された後の24年2月に開催された調理室会議では、前年度調理員が増員になった分、多忙な中でもサービスの向上を図ってきたのに、Xの退職でサービスの低下が懸念されるとの趣旨の発言があったこと等に照らすと、8人体制は、施設入居者各人の要介護度等に応じて要求されるきめ細かなサービスの質を維持するために必要な人員体制であったというべきであり、また、1年以上の育休を取得する予定であったAが24年3月に急遽職場に復帰していることも合わせ考慮すると、本件通知時に調理室の人員が過剰であったとは認められず、Xを調理室に配置することは可能であったと認められ、したがって、Xは本件更新要件をすべて満たす者と認められ、同年2月1日に更新の申込みをしたことにより、再雇用職員就業規則9条1項に基づいて本件再雇用契約が更新されたと認められる。
労働者側からすると、判例のポイント2のように、会社側が人員過剰であると主張するのに対し、それに反する事実をどれだけ主張立証できるかがポイントとなります。
使用者側からすると、整理解雇の場合と同様に、解雇(雇止め)理由に記載した内容と実際の状況の整合性をどれだけ保てるかがポイントになってきます。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。