Monthly Archives: 9月 2013

不当労働行為71(津軽海峡フェリー事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合員に対する会社見解配信と船舶訪問による説明行為と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

津軽海峡フェリー事件(北海道労委平成25年5月24日・労判1071号93頁)

【事案の概要】

Y社とX組合は、平成23年2月、それぞれ労働協約改訂交渉を申し入れ、団交を開始した。

平成23年4月、Y社は、取締役専務執行役員Aを差出人とし、各船船長および全乗組員あてに、労働協約改訂交渉の背景、交渉経緯、労使の主張、論点等を記載した文書を、社内の情報連絡システム「デスクネッツ」により各船に配信した。

Y社とX組合は、従来から現場である船舶を訪問して、それぞれの方針・見解・団交の状況等を直接組合員に説明する訪船活動を行ってきた。

【労働委員会の判断】

不当労働行為に該当する。

【判例のポイント】

1 会社配信された書面には、組合方針に対する組合員の不信感をことさらに煽る内容が記載されており、それは会社の意見の表明の域を超えて、組合員に不当な影響を与え、組合の運営に影響を及ぼすべき性質を持つものということができることから、そのような会社見解を記載した文書を各船に配信した会社の行為は、法第7条第3号の不当労働行為に該当する。

2 ・・・会社見解について、訪船により会社が組合員に対して直接説明を行うことは、会社の意見表明の域を超えるものと認められ、文書の配信と同様に組合の運営に対する支配介入行為と認められる。
よって、本件訪船により、会社が組合員に対して上記内容に関する説明を行ったことは、法第7条第3号の不当労働行為に該当する。

短いですが、意味はわかると思います。

組合を飛び越して、直接、組合員に対して会社の意見を伝えると、本件と同じような判断がなされる可能性がありますので、ご注意ください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介242 図解 成功の9ステップ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、高校の時の同級生と一緒に鷹匠の「Venti Due」に行ってきました。

写真は、ピザの王道、「マルゲリータ」です。

モレッティによく合います。いつもおいしゅうございます。

今日は、午前中は、島田の裁判所で離婚調停が入っています。

午後は、静岡に戻り、離婚訴訟が1件、新規相談が2件入っています。

夜は、士業勉強会です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 CD-ROM付 図解 成功の9ステップ

以前、「成功の9ステップ」を紹介しました。

今回は、その図解版です。当然のことながら、こちらのほうが読みやすいです。

こちらから入るほうがいいのかもしれませんね。

どのように物事を考え、決断したらよいのか、この本を読めばわかると思います。

「決断力がない・・・」「すぐくよくよ悩んでしまう・・・」という人は、一度読んでみてください。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

幸せは心の中から来るものでなければならない。自分の価値観に沿って生きることから来るものである。正しいことをすることから来るものである。世界に自分の最高の贈り物をすることから来るものである。心に満ち溢れる愛を持つことから来るものであり、ほかの方法で入手できないものである。愛を豊かに持とう。寛容な精神を持とう。運が向いていないときに、勇気を出そう。運が向いているときに、謙虚でいよう。自分自身を超えて、ほかの人の幸福に貢献できる道を探そう。そうすれば、自分自身の幸せは必ずついてくるに違いない。」(123頁)

この内容が心から理解できれば、毎日の生活は幸せになります。

幸せは、探すものではなく、感じるものですから。

こういう感覚を持っているかどうかは、話をすればすぐにわかります。

他者から見れば、非常に恵まれた環境にいるにもかかわらず、不満ばかりを口にする人。

反対に、決して恵まれた環境にいるとはいえないにもかかわらず、いつも笑顔でいられる人。

死ぬ間際、はたしてどちらが幸せな人生だったと思うのでしょうか?

自分の置かれた状況で、毎日、最善を尽くす。

周りの人を幸せにしようと思いながら、生活してみる。

そんな心の習慣が、人生を幸せにするのだと信じています。

セクハラ・パワハラ1(K化粧品販売事件)

おはようございます。

さて、今日は、研修会でコスチュームを着用させることが不法行為に該当するとされた裁判例を見てみましょう。

K化粧品販売事件(大分地裁平成25年2月20日・労経速2181号3頁)

【事案の概要】

本件は、平成21年10月、当時Y社の業務に従事していたXが、同じくY社の業務に従事していたA、B、Cについては、Y社で行われた従業員の研修会に際して同人らがXに対しその意に反して特定のコスチュームを着用して研修会に参加するように強要するなどしたとして、また、同じくY社の業務に従事していたDについては、同人がXの診療情報を医療機関から詐取しようとしたとして、これらの行為がいずれも不法行為に該当し、これらのによって被った精神的損害について、A、B及びCに対しては、それぞれ民法709条及び719条1項に基づき、Dに対しては民法709条に基づき、損害を賠償するよう請求し、これと共に、Y社に対しては、同人ら4名の上記行為について使用者責任を負うとして、民法715条1項本文に基づいて損害賠償を請求した事案である。

【裁判所の判断】

Y社、A,B、Cは、連帯して、Xに対して、22万円を支払え。

その余の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 A、B及びCの行為は、単にXに対して勤務時間中の本件コスチュームの着用を求めたことにとどまらず、Xのみではなくその他未達であった3名と共にではあるものの、本件研修会の出席がXに義務づけられており、その際にXの本件コスチューム着用が予定されていながら、それについてのXの意思を確認することもなされず、Xが本件コスチュームを着用することについて予想したり、覚悟したりする機会のない状況の下、同被告らが、職務上の立場に基づき、本件研修会開催日の終日にわたってXに本件コスチュームの着用を求めたものであり、これを前提にすると、たとえ任意であったことを前提としてもXがその場でこれを拒否することは非常に困難であったというべきで、さらに、これがY社の業務内容や研修会の趣旨と全く関係なく、そのような内容であるにもかかわらず、別の研修会において、Xの了解なく、本件コスチュームを着用したスライドを投影したという事情を伴うものであるから、本件コスチュームの着用を明示的に拒否していないことなどを考慮しても、目的が正当なものであったとしても、もはや社会通念上正当な職務行為であるとはいえず、Xに心理的負荷を過度に負わせる行為であるといわざるを得ず、違法性を有し、これを行った同被告らには当該行為によってXの損害が発生することについて過失があったものであり、同被告らの行為は不法行為に該当するというべきである。

2 これに対して、被告らは、本件研修会のコスチューム着用は、レクリエーションや盛り上げ策を目的としており、X個人を人格的に攻撃するものではなく、現にXにおいても本件研修会において特段不満を述べていないと主張して、本件研修会のXの様子を写した写真、被告らの陳述書を提出し、Aにおいても同様の供述をする。
しかしながら、被告ら主張の当該目的そのものには妥当性が認められるものの、上記のとおり、その採用された手段が目的と必ずしも合致しているものとはいえず、本件コスチュームを着用させる手段では納得していない者については、被告らの述べる目的が果たせないことは容易に認められる。また、仮に、X個人を攻撃するものではなかったとしても、上記事情の下では、それによってXに対する当該行為の手段の相当性が認められるものではなく、違法性が覆されるものではなく、また、同被告らの過失が否定されるものでもないから、損害の範囲において斟酌されるべきに留まるというべきである。さらに、本件研修会中のXの一場面の様子をもってXが精神的苦痛を感じていなかっとみることは相当とはいえず、上記事実経過に照らせば、Xにおいて本件コスチュームの着用によって精神的苦痛を感じていたことが認められるから、被告らの主張は採用できない。

本件では、Xは、研修会の際、上司から、販売目標個数未達成の罰ゲームとして、「うさぎの耳の形をしたカチューシャ」を含む「易者のコスチューム」の着用を強要されたとして、損害賠償請求をしています。

本人が明示的に嫌がっていなかったとしても、場の雰囲気から断れないということもあります。

場を盛り上げたいという気持ちはわかりますが、やりすぎに注意しましょう。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介241 ドラゴン桜 東大合格をつかむ言葉161(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!
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←先週末、日弁連の研修に参加するため、沖縄に行ってきました。

自由時間に少しだけ海を見てきました。

海を見て、気分転換をしようと思いましたが、結局、海を見ても、頭では仕事のことを考えてしまいます。

引退するまでこの状態が続くのでしょうね。

今日は、午前中は、裁判が1件と新規相談が1件入っています。

午後は、裁判が2件と新規相談が3件、顧問先会社の打合せが1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 ドラゴン桜 東大合格をつかむ言葉161

私の家にある数少ない漫画のひとつがこの「ドラゴン桜」です。

懐かしいですね。 久しぶりに読んでみました。

「ドラゴン桜」の中で、いい言葉を集めたのがこの本です。 エッセンスがつまっています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

基礎となる『カタ』をまず身につけ、それを工夫とアイデアでアレンジしていくんだ! てめえにその基礎があんのか! 『カタ』にはめるな!なんてホザくやつはただのグータラの怠け者だ!」(158頁)

 つまりは、「守」「破」「離」というモノを学ぶときの姿勢を言い方を換えて伝えているのです。

どんな仕事でも「カタ」のない仕事は存在しません。

すべての自己流は、「カタ」の上に成り立っているのです。

「守」「破」「離」という大原則を守らずに、いきなり自己流でやり出すと、物事を習得するのに、回り道をすることになるため、とても時間がかかりますし、周りがとても迷惑をします。

教える人も同僚も。

前にもブログに書きましたが、私の事務所では、よほどの例外的事情がない限り、他の事務所で法律事務の経験がある人を採用しません。

端的に言えば、経験者は「守」からやり直すことが難しいからです。

基礎・基本をばかにせず、また、まずは指示に忠実に従う。

仮に指示内容に疑問を感じたとしても、清濁併せ呑むという意識で、まずはすべてを受け入れる。

教えられる側にも、そのくらいの度量が求められるのではないでしょうか。

逆に、教えられる側がこのような姿勢を示した場合には、教える側はそれに応える義務があります。

教える側、教えられる側のお互いの真剣勝負なんだと思います。

解雇117(Principle One事件)

おはようございます。

さて、今日は、元オフィスマネージャーに対する解雇に関する裁判例を見てみましょう。

Principle One事件(東京地裁平成24年12月13日・労判1071号86頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、Y社に対し、Y社のXに対する整理解雇の意思表示が無効であると主張して、労働契約上の地位にあることの確認等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

整理解雇は有効

【判例のポイント】

1 整理解雇が有効であるために必要とされる①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続の相当性は、整理解雇について解雇権濫用法理の適否を総合判断するための評価根拠事実と評価障害事実とを類型化した要素と解すべきであり、①の人員削減の必要性の程度に応じ、当該企業の目的、従業員の数・構成、資産・負債、売上規模、組合の有無等の諸事情に照らして、②ないし④の各要素の充足の有無及び程度を検討し、当該整理解雇の効力について判断すべきであると解する

2 ・・・Y社は、本件解雇の時点において、経営危機に陥っており、早急に人員を削減しないと会社全体の経営が破綻しかねないような危機的な状況にあったということができるから、人員削減の必要性があったというべきである。

3 Y社は、資本金1000万円、従業員数名の小規模会社であり、平成20年10月頃以降、経営状態の悪化に伴う危機的状況の下、人員削減の高度の必要性があり、社内にXの就労場所を確保することが著しく困難であった中、Xに対し、前件退職から前件判決確定までの間はXの労働契約上の地位を争いながらもその間も賃金全額を支払い、前件判決確定から本件解雇までの間は自宅待機を命じて就労義務を免除しつつもその間の賃金全額を支払って、第1回・第2回団体交渉の場等において、X及び組合の希望を聞きながら、Xに対し、転籍先を探して紹介しようとしていた経緯が認められる。以上の経緯に加えて、人員削減の高度の必要性がある中、Y社の企業規模に照らして選択し得る解雇回避措置の方法は極めて限定的なものとならざるを得ないことを考慮した場合、Y社は、本件解雇の時点において、可能な限りの解雇回避努力を尽くしたものと評価すべきである
この点、Xは、整理解雇に当たっては希望退職者の募集が不可欠であると主張するが、整理解雇に当たっての解雇回避努力の履行として希望退職者の募集が不可欠であるとまでいうことはできないし、本件解雇の時点において、Y社の従業員は4名にすぎず、必要最小限の人員態勢の下で業務を遂行していたことがうかがわれるから、希望退職者を募集することが現実的な選択肢として有り得たということができるか相当に疑問である
また、Xは、そのほかにも、ワークシェアリング、再就職支援等の措置を取るべきであったと主張するが、本件解雇の時点における人員削減の高度の必要性のほか、Y社の企業規模に照らした場合、Y社がX主張の解雇回避措置を取ることは、およそ現実的ではなかったといわざるを得ない

4要素説です。

整理解雇の事案では、通常、解雇回避措置を十分に取ったかが主要な争点となります。

本件では、人員削減の高度の必要性が認められ、かつ、企業規模が小さかったことから、通常、解雇回避措置として求められる希望退職者の募集等については、裁判所も大目に見てくれています。

4要素説の考え方は、上記判例のポイント1にまとめられており、非常に参考になりますね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介240 やっぱりおまえはバカじゃない(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 昨夜からずっと事務所で書面を作成しています。体力の限界に挑戦しています(笑)

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←先日、税理士K山先生と「天盛楼」に行ってきました。

写真は、絶品の「エビチリ」です。

お店によって当然、味が少しずつ違いますが、ここのエビチリ、最高です。 秀逸です。

今日は、午前中は、離婚調停が1件と裁判の打合せが1件入っています。

午後は、浜松の裁判所で労働事件の裁判が1件入っています。

新幹線の中では、爆睡することはほぼ間違いありません。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
 やっぱりおまえはバカじゃない (小学館文庫)

東進ハイスクールの吉野先生の本です。

今から10年以上前の本ですが、今と言っていることがまったくぶれていません。

すごいですね。

さて、この本で、「いいね!」と思ったのはこちら。

ちょっとまわりを見て欲しい。要領ばかりよくて、計算高くて、自分に都合のいいことだけしかしなくて得意になっているヤツがたくさんいるだろう。こうやって、実力もないのに成功することばかりを目標にしていては、いつか失敗をしたときに立ち直れなくなるにちがいない。若いうちは、結果なんてどうだっていいじゃないか。『オレは、これくらいしかできない』とか、『こんなもんだ』とわかったような顔をしないで、とことんやってみることに、受験でも恋愛でも意義があるんじゃないか。」(160頁)

みなさんは、思ったことはとことんやってみる、という気持ちをもって毎日、生活していますか?

私は、こういう気持ちで毎日、生活しています。

あとから後悔したくないので。

あまりごちゃごちゃ考えず、即断即決です。

私たちに与えられている時間はそれほど多くはありませんので、ごちゃごちゃ複雑に考えている時間がもったいないのです。

 とことんやって、それでもダメなら、それはそれであきらめがつきますよね。

とことんやらないで、途中であきらめることを考えただけで、気持ちが悪いです。

まあ、そういうことです。

解雇116(学校法人昭和薬科大学事件)

おはようございます。 

さて、今日は、機器購入で不正処理した教授らに対する解職処分に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人昭和薬科大学事件(東京地裁平成25年1月29日・労判1071号5頁)

【事案の概要】

X1は、Y大学の教授でR長の地位にあり、X2は、Y大学の専任講師でSアドバイザーの地位にあったところ、Xらが所属する研究室では、平成18年ころ、国庫補助金の支給を受けて光散乱光度計という機器を購入した。ところが、同光度計購入に当たって、当該年度に入る前に当該光度計の納入を受けるという会計年度を跨った処理を行ったなどとして学内で問題となり、Xらは、懲戒処分として、それぞれ上記R長及びSアドバイザーの職につき解職処分を受けることとなった。

本件は、Xらが、同懲戒解職処分には事実誤認等の違法があるなどと主張して、Xらについて、同懲戒解職処分が無効であることの確認等を求めた。

【裁判所の判断】

解職処分は無効

Xらに慰謝料10万円が認められた。

【判例のポイント】

1 ・・・このような会計年度を跨いだ会計処理は不適切というべきである。
しかるところ、X1は、X研究室の主任教授であってその最高責任者であり、本件光度計のような高額な備品の購入に当たっては当然に関心を払うべきであったのであるから、その購入手続に関して、何らかの不適切な行為があれば、監督しこれを是正すべき義務を負っていたというべきである。しかるに、X1は、本件光度計の購入手続についてはほとんど関与することなく、X2及びD助手が上記の会計年度を跨いだ処理をするのを防止しなかったのであるから、上記の監督義務違反があったことは否定できない。
以上のX1の監督義務違反は、Y大学就業規則所定の懲戒事由に該当するというべきである。

2 解職という処分は、Y大学就業規則において定める懲戒処分の中でも懲戒解雇に次いで重いものであるところ、 本件補助金を返納する直接の契機となった本件不当事項に関しては、K事務長が(懲戒処分でない)厳重注意とされているに止まるものであるから、その過程で判明した本件各非違行為に対してのみ、懲戒解職処分という重い処分とすることは、均衡に失するといわざるを得ない(Y大学は、本件不当事項は形式的、手続的なミスにすぎないと主張するが、そうはいっても、庶務課長という責任ある立場において、数百万円もの補助金の返納につながるミスをしたJ庶務課長の責任は本来重いはずであって、これとの均衡という点は無視できないはずである。)。また、会計年度を跨った処理にせよ、81万円に関する処理方法にせよ、J庶務課長ら庶務課の職員が認識し、事実上容認した上での行動と認められるのであって、この責任を全く庶務課職員に負担させることなく、Xらのみに帰するのは酷である。特に、本件光度計納入当時、同光度計のような高額機器の納入時にも庶務課が検収すら行っていなかったことからも明らかなように、Y大学において、実際の会計規律は極めて緩いものであったのであるから、手続面で問題があると返納を求められる可能性があるからといって、公的補助金により購入する場合にのみ厳格な会計規律を要求するのは筋が通らないというべきである。さらに、以上のような状況下で、当時、X研究室側において、実際、どの程度まで当該行為の悪性についての認識があったのかについても微妙な問題があるのであって、(少なくとも、X研究室側が、庶務課を欺くという意識の下に行動してなかったこと確かである。)、その行為の経緯、動機や主観的態様に照らしても、Xらについて強い非難が妥当するとまではいえない
以上のとおり、X1に対する本件懲戒解職処分は、その行為の性質、態様等に照らして重きに失するものであって、社会通念上相当と認められないから、懲戒権の濫用に当たり、無効というべきである。

相当性の要件でぎりぎり救われています。

労働者側とすれば、合理的理由が存在する場合には、相当性がないことをいかに主張できるかがポイントになってきます。

主張するポイントは、上記判例のポイント2を参考にしてみてください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。