セクハラ・パワハラ2(ザ・ウィンザー・ホテルズ・インターナショナル(自然退職)事件)

おはようございます。今週もがんばっていきましょう!!

さて、今日は、自然退職扱い社員からのパワハラを理由とする損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

ザ・ウィンザー・ホテルズ・インターナショナル(自然退職)事件(東京高裁平成25年2月27日・労判1072号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社から休職期間満了による自然退職扱いとされたXが、Aから飲酒強要等のパワーハラスメントを受けたことにより精神疾患等を発症し、その結果、治療費の支出、休業による損害のほか多大な精神的苦痛を受けたと主張して、Y社らに対し、不法行為(Y社については更に労働契約上の職場環境調整義務違反)に基づく損害賠償金477万1996円及び遅延損害金の連帯支払を求めるとともに、上記精神疾患等は業務上の疾病に該当するなどとして、休職命令及びその後の自然退職扱いは無効である旨主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び自然退職後の賃金の支払を求めた事案である。

原審は、Xの本件請求について、Yらに対し、不法行為に基づく慰謝料70万円の連帯支払を求める限度で認容し、その余を棄却し、自然退職扱いが有効であると判断した。

【裁判所の判断】

Yらに対し、連帯して150万円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 Xは、少量の酒を飲んだだけでも嘔吐しており、Aは、Xがアルコールに弱いことに容易に気付いたはずであるにもかかわらず、「酒は吐けば飲めるんだ」などと言い、Xの体調の悪化を気に掛けることなく、再びXのコップに酒を注ぐなどしており、これは、単なる迷惑行為にとどまらず、不法行為上も違法というべきである(本件パワハラ1-①)。また、その後も、Aの部屋等でXに飲酒を勧めているのであって、本件パワハラ1-①に引き続いて不法行為が成立するというべきである(本件パワハラ1-②)。
また、Aは、翌日、昨夜の酒のために体調を崩していたXに対し、レンタカー運転を強要している。たとえ、僅かな時間であっても体調の悪い者に自動車を運転させる行為は極めて危険であり、体調が悪いと断っているXに対し、上司の立場で運転を強要したAの行為が不法行為法上違法であることは明らかである(本件パワハラ2)。

2 Xは、本件休職命令に対し、Y社に異議を唱えたことはなく、平成21年7月13日に休職期間が満了すること及び復職の相談があれば早期に申し出るようY社から告知を受けていたが、復職願や相談等の申出を提出することなく本件自然退職に至ったものであって、Y社が労働契約上の信義則に反したとか、本件退職扱いが権利の濫用であるとはいえない
また、A及びY社の作為又は不作為とXが復職しなかったこととの間に因果関係があるとはいえないから、当審におけるXの予備的請求も理由がない。

労働者(被害者)側からすると、パワハラ事案については、どのようにその証拠を集めるかが重要です。

判例は、あくまでも認定結果ですので、これだけを読むと、「そりゃパワハラでしょ」と思ってしまうのですが、裁判官に認定してもらうための証拠集めが大変なのです。

また、上記判例のポイント2のように、休職期間中や解雇予告を受けてからの労働者の対応を見られることはよくあります。対応のしかたを誤らないように注意が必要です。

会社側からすれば、日頃から管理職研修を徹底することに尽きます。

これを怠ると、本件と同じように使用者責任を問われますのでご注意ください。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。