Monthly Archives: 9月 2013

セクハラ・パワハラ3(C社事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は、事務職員へのパワハラ・セクハラと解雇の有効性等に関する裁判例を見てみましょう。

C社事件(大阪地裁平成24年11月29日・労判1068号59頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、①Y社の代表者であるAからパワハラを、②Y社の従業員(専務)であるBからセクハラを、それぞれ受けたとして、不法行為に基づき、Y社及びA、そしてY社及びBに対し、それぞれ連帯して慰謝料の支払い(なお、Y社に対しては、いずれも債務不履行に基づく請求を選択的に併合している。)、③Y社から不当に解雇されたとして、不法行為に基づく損害賠償等を求めている事案である。

【裁判所の判断】

Y社と代表者Aは、Xに対し、連帯して30万円を支払え。

Y社と専務Bは、Xに対し、連帯して30万円を支払え。

解雇は無効→ただし、解雇による逸失利益の損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 証拠によれば、AがXに送信したメールにも、AがXに乱暴な口調や解雇をちらつかせたりして命令したり、行き過ぎた表現でミスを責めているものが認められるなど、Xの前記供述を裏付ける事実が認められるのに対して、それを否定するAやBの各供述は後述するように直ちには採用することができないことや、本件減給分の9万円を後にXに支払っていることなどを総合考慮すれば、Xの供述等はおおむね信用することができ、Xの前記主張は主要な点について認めることができる。

2 Xが供述している内容は、具体的かつ詳細で、証拠によれば、本件解雇後約1か月後から一貫して主張していることが認められる上、XがBと仕事以外の連絡を取るようになった経緯や、本件解雇をされたと主張する日の前日にBと一緒に食事をするなどの経緯、翌日も出勤するやBから事務室に呼び出されたことなど、主要な点は、Bにおいても認めている。そして、Xにおいて、むしろ退職を相談し、それを親身にのっていたBのセクハラを捏造してBを窮地に追いやる動機も特段認められないのに対して、セクハラを否定するBの供述は後述するように直ちには採用することができないことからすれば、Xの供述等はおおむね信用することができ、Xの上記主張は認めることができる。

3 XはY社から本件解雇をされたことが認められ、しかも、その原因は、Bから自分と交際するかY社を退職するかとの二者択一を執拗に迫られた結果、XがY社の退職を選択し、その一部始終をAに報告したところ、本件解雇をされたというものであって、Xが解雇されなければならない理由は何らないことは明らかである。

4 たとえ、Aにおいて、BがXにそのようなセクハラを行ったとは到底思えず、XのBに関する報告は嘘だと思ったとしても、Bの当該セクハラ行為はXと二人きりの場で行われたものであり、そのように断定するだけの客観的な根拠があるわけではないのであるから女性従業員のXが代表者のAにBからのセクハラ被害を報告し、Aもそれにより初めてそのような事実が存在する可能性を認知した以上、事業主であるAは、まず、事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するために、当事者のXとB双方から事実関係について充分聴取した上で、いずれの主張が信用できるか慎重に検討すべきである。にもかかわらず、Aは、はなからXの被害申告が虚偽であると決めつけているのであって、Aには重過失があることは明らかであるから、本件解雇は、社会的相当性を欠くものとして違法というべきである。

セクハラ・パワハラともに事実を認定してもらうのは、想像以上に大変なことです。

裁判所がどのような点に着目して、事実を認定しているのかを参考にしてください。

もっとも、この裁判例は、セクハラ・パワハラ認定に厳密さが欠ける感は否めませんが・・・。

また、従業員からセクハラ・パワハラの報告を受けた際の事業主の対応方法については、上記判例のポイント4を参考にしてください。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介247 京大理系教授の伝える技術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は本の紹介です。
 京大理系教授の伝える技術 (PHP新書)

著者は、京大の火山学の教授です。

鎌田先生の本は、これまでも何冊か読んできましたが、どの本もわかりやすく書かれており、私は好きです。

今回は、「伝える技術」についてです。 火山学からは想像もできません(笑)

分野を超えて本を書く、というバイタリティに共感を覚えます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

世の中にはモテる人とモテない人が厳然として存在します。その差異は何でしょうか。ここに、『相手の関心に関心をもっているか』どうかが関係しているのです。世の中には男女を問わず、相手の関心のないことを延々と話しつづける人がいます。・・・こういう人は絶対に異性にモテないでしょう。・・・恋する相手から気に入られたいと願うときに見つめるのは、自分の気持ちであってはなりません。逸る自分を抑えて、冷静に相手の気持ちを推し量るのです。相手が何を欲しがっているのかを考えて相手にとって好ましい状況を用意する。『相手の関心に関心をもつ』ことができてはじめて、片思いから両思いへと進展させることができるのです。」(86~87頁)

よくわかります(笑)

でも、これって、恋愛だけではないですよね。

日常生活や仕事でも全く同じことが言えます。

相手の関心のないことを延々と話す人というのは、相手の関心事かどうかには関心がなく、単に自分が話したいことを話しているだけですよね。

相手は、話に相づちをうちながらも、「で?」とか「また始まった。早く終わらないかな・・・」と内心思っているのです(笑)

こういう話し方をする人は、一事が万事、「相手の関心に関心をもつ」という姿勢に欠ける傾向にあります。

逆に、相手が求めていることを、相手のちょっとした行動、表情、しぐさなどから察して、臨機応変に対応できる人もいます。

こういう人は、プライベートでも仕事でもモテますよね。

この違いは、どこからくるのでしょうか?

少なくとも言えるのは、このような違いは、性格や能力の違いではなく、習慣の違いだということです。

「相手の関心に関心をもつ」ということを意識して生活をすることで、誰でも変わることはできると確信しています。

「相手が求めるものを与える」

これが王道です。

「自分が与えたいものを与える」ではないのです。

有期労働契約42(いすゞ自動車(雇止め)事件)

おはようございます。

さて、今日は、有期労働契約社員の一時休業時の賃金請求権、雇止めの効力に関する裁判例を見てみましょう。

いすゞ自動車(雇止め)事件(東京地裁平成24年4月16日・ジュリ1459号127頁)

【事案の概要】

Y社は、第1グループXらについて、各人の契約期間満了日までの所定労働日について休業として、その間労基法26条、臨時従業員就業規則43条及び労働契約法8条に基づき、平均賃金6割の休業手当を支給した。

Xらは、休業期間中の賃金請求をした。

【裁判所の判断】

XらのY社に対する休業期間中の賃金請求を認めた。

その他は請求棄却。

【判例のポイント】

1 一般に使用者が企業を運営するに当たり、企業運営の必要の範囲内で、それに見合う人数の労働者と、相応の労働条件の下で労働契約を締結しているのが通常なのであり、使用者が労務を受領しないのは、例外的な事態であるから、本件休業のように、労働者が労働を提供し、使用者がこれを受領しないことが、使用者の責に帰すべき自由に基づくものと推認されると解するのが相当である。そして、この意味での帰責事由がないというためには、休業の必要性、両当事者の状況等の事情に照らして、休業がやむを得ないものと認められることが必要である

2 一般に、Y社での臨時従業員のように、期間の定めのある労働契約を締結している労働者は、正社員(期間の定めのない従業員)に比して長期雇用に対する合理的期待は相対的に低くなると考えられるが、その一方で、当該契約期間内の雇用継続及びそれに伴う賃金債権の維持については合理的期待が高いものと評価すべきである。そして、第1グループXらは、Y社の臨時従業員として、労働期間内での昇級、昇進等の期待なく、固定された賃金収入を主な目的として短期間の期間労働契約を締結、更新しているのであって、その意味でも、雇用継続期間中の賃金債権の維持についての期待は高度の合理性を有するというべきである。そうすると、本件休業命令は、合意退職に応じなかった臨時従業員全員を対象として、その契約期間の満了日までとする包括的、かつ一律に定め、第1グループXらは、3か月以上もの間、その平均賃金の4割相当額を支給しないとするもので、本件休業により第1グループXらが被る不利益は重大かつ顕著であるというべきである。以上のような、第1グループXらの置かれた状況に鑑みれば、このような期間の途中に一定の期間の休業を命じるについては、より高度の必要性が認められなければならないというべきである

3 一方、Y社は、正社員及び定年後再雇用従業員については、本件休業期間中、平成21年3月の1か月に4日間の個別の休業日を設定、実施するのみで、それに伴い支給される休業手当の金額についても、基本日給の100%を支給している。これは、上記のとおり、期間の定めのある労働契約によって職務に従事する労働者が置かれている状況に照らして考えると、著しく均衡を欠くとの評価を免れないといわざるを得ない。

4 以上によると、Y社に本件休業によって、平均賃金の4割カットによらなければならないというだけの、上記の高度の必要性までをも認めることは困難であるといわなければならない。そうすると、本件休業がやむを得ないものであると認めることはできない
以上によれば、本件休業によるY社の労務提供の受領拒絶については、「債権者の責めに帰すべき事由」によるとの推認を覆すに足りる事由はないから、第1グループXらのY社に対する民法536条2項に基づく賃金請求権は、これを認めることができる。

上記判例のポイント1の規範は、実務においても使う場面があります。

支払う賃金額を抑えるという理由から、なんでもかんでも休業にするというのはダメなわけです。

もっとも、1、2か月という短期間の休業の場合には、仮に当該休業がやむを得ないものとは認められなかったとしても、会社が従業員に支払うべき金額は、平均賃金の40%分にとどまる(つまり、それほど大きな金額にはならない)こと、それゆえ訴訟リスクが必ずしも高いとはいえないことなどの理由から、「ダメもと」で休業とする場合もありうると思います。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介246 マッキンゼー式世界最強の仕事術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
マッキンゼー式 世界最強の仕事術

10年以上前の本ですが、今読んでも、全く古さを感じさせません。

合理的な仕事術を参考にしたいという方には、非常にいい本だと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

どんな問題でも、どこかのだれかが、すでに似たような問題に取り組んでいる可能性が高い。もしかしたら社内にそういう人がいて、電話一本で知りたいことがすべて聞けるかもしれない。あるいは、同じ専門分野、他の部署、他社のだれかが、すでに同じ問題に遭遇しているかもしれない。そういう人を探し出して知り合いになろう。自分になりに調べて質問する。これで時間と労力を大いに節約できる。時間は貴重なので、よけいな手間ひまをかけて、むだにしてはならない。」(122頁)

真面目な人に限って、いちいちすべてを自分の頭で考えなければならないと思ってしまいがち。

でも、それははっきり言って、時間の無駄です。

使えるものはどんどん使う。

真似できるものはどんどん真似する。

この割り切りができるかどうかで、仕事の効率は格段に上がります。

すべてを1から作り上げられるほど、時間は有り余っていません。

時間は有効に使いましょう。

セクハラ・パワハラ2(ザ・ウィンザー・ホテルズ・インターナショナル(自然退職)事件)

おはようございます。今週もがんばっていきましょう!!

さて、今日は、自然退職扱い社員からのパワハラを理由とする損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

ザ・ウィンザー・ホテルズ・インターナショナル(自然退職)事件(東京高裁平成25年2月27日・労判1072号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社から休職期間満了による自然退職扱いとされたXが、Aから飲酒強要等のパワーハラスメントを受けたことにより精神疾患等を発症し、その結果、治療費の支出、休業による損害のほか多大な精神的苦痛を受けたと主張して、Y社らに対し、不法行為(Y社については更に労働契約上の職場環境調整義務違反)に基づく損害賠償金477万1996円及び遅延損害金の連帯支払を求めるとともに、上記精神疾患等は業務上の疾病に該当するなどとして、休職命令及びその後の自然退職扱いは無効である旨主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び自然退職後の賃金の支払を求めた事案である。

原審は、Xの本件請求について、Yらに対し、不法行為に基づく慰謝料70万円の連帯支払を求める限度で認容し、その余を棄却し、自然退職扱いが有効であると判断した。

【裁判所の判断】

Yらに対し、連帯して150万円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 Xは、少量の酒を飲んだだけでも嘔吐しており、Aは、Xがアルコールに弱いことに容易に気付いたはずであるにもかかわらず、「酒は吐けば飲めるんだ」などと言い、Xの体調の悪化を気に掛けることなく、再びXのコップに酒を注ぐなどしており、これは、単なる迷惑行為にとどまらず、不法行為上も違法というべきである(本件パワハラ1-①)。また、その後も、Aの部屋等でXに飲酒を勧めているのであって、本件パワハラ1-①に引き続いて不法行為が成立するというべきである(本件パワハラ1-②)。
また、Aは、翌日、昨夜の酒のために体調を崩していたXに対し、レンタカー運転を強要している。たとえ、僅かな時間であっても体調の悪い者に自動車を運転させる行為は極めて危険であり、体調が悪いと断っているXに対し、上司の立場で運転を強要したAの行為が不法行為法上違法であることは明らかである(本件パワハラ2)。

2 Xは、本件休職命令に対し、Y社に異議を唱えたことはなく、平成21年7月13日に休職期間が満了すること及び復職の相談があれば早期に申し出るようY社から告知を受けていたが、復職願や相談等の申出を提出することなく本件自然退職に至ったものであって、Y社が労働契約上の信義則に反したとか、本件退職扱いが権利の濫用であるとはいえない
また、A及びY社の作為又は不作為とXが復職しなかったこととの間に因果関係があるとはいえないから、当審におけるXの予備的請求も理由がない。

労働者(被害者)側からすると、パワハラ事案については、どのようにその証拠を集めるかが重要です。

判例は、あくまでも認定結果ですので、これだけを読むと、「そりゃパワハラでしょ」と思ってしまうのですが、裁判官に認定してもらうための証拠集めが大変なのです。

また、上記判例のポイント2のように、休職期間中や解雇予告を受けてからの労働者の対応を見られることはよくあります。対応のしかたを誤らないように注意が必要です。

会社側からすれば、日頃から管理職研修を徹底することに尽きます。

これを怠ると、本件と同じように使用者責任を問われますのでご注意ください。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介245 できる人の教え方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間、お疲れ様でした。また3連休ですね。

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←先日、呉服町の「高田屋」にお昼ごはんを食べに行ってきました。

写真は、「親子丼とそばのセット」です。 780円

いいんじゃないでしょうか。 

今度は夜行ってみます。

今日は、午前中から顧問先の会社へ行き、打合せです。

 

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

できる人の教え方

前回に引き続き、東進ハイスクール英語講師の安河内先生の本です。

こちらもとても参考になりますね。

教える仕事をしている人、上司のみなさんにはおすすめの1冊です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

教えることの究極の目的は、自分で勉強できる力を育てることです。つまり、自主性を育てること。隅から隅まで丁寧に教えれば、講義がつまらなくなるデメリットに加え、受講生が自分で考えようとしなくなってしまう危険性があります。・・・ですから、私の講義は、『コアな部分を因果関係からきちんと説明し、残りは自分で考える頭をつくる』というスタンスなのです。」(66頁)

安河内先生の意見に賛成です。

教えるときのポイントは、「教えすぎない」ということです。

なんでもかんでも教えると、教えている側の満足感は高いですが、教育的観点からはよくないというのが私の意見です。

教えられた範囲で問題が解決できるということでいいのであれば、なんでもかんでも教えればいいのでしょうね。

でも、現実は、教えられた範囲以外の問題が起こるわけです。

そのときに、「教えられていないから、わかりません」では、いつまでたってもいたちごっこ状態です。

あえて本質部分(=基本部分)だけを教え、未知の問題への対応方法を教えることこそが教育ではないでしょうか。

解雇118(東亜外業(本訴)事件)

おはようございます。

さて、今日は、工場の操業休止に伴う希望退職募集、整理解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

東亜外業(本訴)事件(神戸地裁平成25年2月27日・労判1072号20頁)

【事案の概要】

Y社は、大口径溶接鋼管の製造及び据付並びに各種管工事等を業とする会社である。

Xらは、Y社東播工場に勤務する従業員である。

Xらは、平成23年6月、整理解雇された。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 一般に、整理解雇の有効性を判断するに当たっては、①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務の履行(人員削減の方法として整理解雇を選択することの必要性)、③被解雇者選定の妥当性、④手続の妥当性が挙げられるが、これらは厳密な意味での要件ではなく、評価根拠事実と評価障害事実として、当該整理解雇が解雇権濫用となるかどうかを総合的に判断する上での要素と考えるのが相当というべきである(したがって、どれか一つの要素が認められないとしても、そのことのみで直ちに当該整理解雇が権利濫用となるとはいえず、他の要素に係る事情も加味して総合的に判断すべきことになる。)。
そして、当該労働者に解雇を正当化するだけの十分な理由(落ち度)がないにもかかわらず、これを解雇することが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」(労働契約法16条)に該当しないというためには、上記①ないし③の要素について使用者側に主張・立証責任があり、④の手続の妥当性を含め、その他の当該解雇が信義則に反するとの事情を労働者側に主張・立証させるのが相当である

2 Y社が、①社外工につき、平成20年9月から12月末までに30人、・・・合計208人を削減したこと、②分会の同意を得て、雇用安定助成金制度を活用し、平成21年に12日、・・・休業を実施したこと、③平成23年度の新入社員採用取止めを実施したこと、④納期の切迫した仕事がある場合以外の残業の禁止を実施したこと、⑤1次募集及び2次募集に分けて本件希望退職を実施したこと、⑥希望退職者に対して再就職のあっせんを行ったこと、⑦社内他部門に対して受入れ打診を行ったが、要員充足のため、受け入れることが困難であるとの反応であったこと、の各事実が認められる。
・・・Y社は、一定の解雇回避努力をしたことが認められる
しかしながら、Y社は、①千葉市中央区内の事業所での工事施工管理者や②神戸第一事業所での電気工事職などにつき、求人活動を行っていると認められるが、Y社にとって、これらの勤務場所についてXらに提示することは必ずしも困難ではなかったと考えられるところ、Y社がこれらについてXらに提示した形跡は認められない。
・・・さらに、Xらは、今回解雇された従業員のほとんどは溶接の技術を有しており、溶接の仕事が主であるY社事業所部門でも十分就業は可能であるにもかかわらず、Y社は他部署への配転を全く検討していないと主張しているところ、Y社がこれを十分に検討したことを裏付ける的確な証拠は見当たらず、加えて、他の部署で採用したとする7人の新規採用の対象職務や勤務場所についても、Xらのいずれもが対象外であったとの適切な証明もされていない
整理解雇が、当該労働者には帰責事由がないのに、使用者側の一方的都合により実施されるものであることにかんがみると、解雇回避努力は、可能な限り試みられるべきであるが、前号認定の事実及び事情からすると、Y社がその回避努力を真摯に尽くしたとは言い難いというべきである。

3 当該企業の経営状況に照らし、整理解雇がやむを得ないと認められる場合であっても、使用者は被解雇者の選定については、客観的で合理的な基準を認定し、これを公正に適用して行うことを要すると回するのが相当である。
・・・Y社があらかじめ客観的基準(年齢、勤務年数、役職、担当職務、資格、特別な貢献度、扶養親族の有無など)を策定し、Xらを含む従業員にこれを提示して十分な協議が行われた事実は認められない

4 以上の検討の結果を総合すれば、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないというべきである(労働契約法16条)。したがって、本件解雇は、解雇権を濫用したものとして無効と判断するのが相当である。

本件の仮処分事件については、こちら

3要素説ですね。

解雇回避努力についても、「可能な限り試みられるべき」としており、かなり厳格です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介244 できる人の勉強法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、仕事帰りに一人で「日本丸」に行ってきました。

写真は、「特上ウニ入りちらし」です。

てんこ盛りです。 このお店、完全に穴場ですね。

一人で行くのに、最適です。

今日は、午前中は、離婚訴訟が1件、破産事件の債権者集会が1件、新規相談が1件入っています。

午後は、焼津の会社で債権回収の打合せをし、その後、静岡に戻り、ラジオの打合せ、新規相談が入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
できる人の勉強法

東進ハイスクール英語講師の安河内先生の本です。

少し前の本ですが、再度、読み直して見ました。

私が読んだ勉強法に関する本の中で、最も共感できる本かもしれません。

いつもスタッフに伝えている勉強法と多くの点で重なります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

学校時代などを思い返してみると、つきあう人間によって成績が左右されることが多々あります。このことは、程度の差こそあれ、社会人になっても変わりません。
『まわりが勉強しないから、勉強できない』という人がいますが、私にいわせれば、それを選んだのはあなたであり。責任はあなた自身にあるのです。『まわりの環境がよくない』と愚痴る前に、どんな人とつきあっていきたいのかを、もっと真剣に考えるべきだと思います。」(217頁)

これもまた「引き寄せの法則」=「類は友を呼ぶ」という話です。

何かを達成しようとするとき、環境が大きく影響することは否定できません。

もちろん簡単には変えられない環境もあります。

しかし、他方で、変えることができる環境もあります。

本気になれば、多くの場合、環境を変えることはできると信じています。

本気かどうかが問題です。

お金があるかないか、時間があるかないか、そんなことはどうだっていい話です。

本気かどうか、ただそれだけです。

本気なら、周りの環境が次第と変わってくると思います。

本気の人を、周りは放っておかないからです。

本気の人の周りには、本気の人が自然と集まってくるものなのです。

不当労働行為72(E社事件)

おはようございます。 

さて、今日は、機密情報を無断で持ち出したこと等を理由とする懲戒解雇と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

E社事件(大阪府労委平成25年4月24日・労判1071号95頁)

【事案の概要】

Y社(産業廃棄物の収集運搬業)は、組合員Xを懲戒解雇した。

懲戒解雇事由は、Xが、従業員の昇給等のデータや会社の得意先一覧データを無断でプリントアウトし持ち出したこと等である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない。

【命令のポイント】

1 X組合員の本件得意先一覧及び本件昇給等データの無断持出しは、懲戒解雇に相当する重大な違反であり、A分会長の上記行為は、X組合員に対し、本件得意先一覧の持出しを依頼することで、結果として同人に窃盗罪にも当たる違反行為を行わせる原因を生ぜしめた上、自らそのリストを受け取っていることからすれば、Y社が、就業規則74条11号の「会社内で横領、傷害などの刑法犯に該当する行為があったとき」及び同条21号の「刑法その他法令に規定する犯罪に該当する行為をなし、その後の就業に不適当と認められるとき」に該当するとして、懲戒処分の中でも懲戒解雇に相当する重大な違反と判断したことは首肯できる

2 以上のとおり、解雇理由は、いずれも不当とはいえず、Y社がC分会長に対する処分として懲戒解雇に相当するとしたことを相当性を欠く判断とはいえない。
以上のとおりであるから、組合員らに対する本件懲戒解雇は客観的に合理的な理由を欠くものとは認められず、社会通念上相当性を欠くとも認められないのであって、組合員であるが故の不利益取扱いとはいえず、この点に組合の申立てを棄却する。

 本件では、懲戒解雇の有効性と不当労働行為成立の有無は、表裏の関係にあります。

特に組合員であるからどうだという話ではないということですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介243 変革のための16の経営哲学(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間、お疲れ様でした。 

明日から3連休ですね。 ばりばり仕事しまーす!__

←先日、ホテルセンチュリー内のけやきの特別賞味会に行ってきました。

写真は、「静岡そだちサーロインをおろしポン酢で 漢方牛フィレステーキを日本一の山葵で」です。

タイトル、長いっす(笑)

そりゃ、おいしいに決まっているわけです。 はい。

今日は、午前中は、証人尋問の準備をします。

午後は、ずっと労働事件の裁判で証人尋問です。

夜は、スタッフのバースデーパーティーです。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

富士フィルム・マーケティングラボの変革のための16の経営哲学

帯には、「フィルムからデジカメ、サプリ、化粧品へ その変化の渦中で、『現場』は何を考えていたのか?」と書かれています。

これまでの富士フイルムの構造改革は、業界が違っても、大変興味があります。

この本の著者は、富士フイルムで構造改革に取り組んできた方です。

この著者が、16社のリーダーを取り上げ、経営哲学について考えています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

よく若い人に言うのだが、一日も早く『地力』をつけよ、と、僕はこの『地力』という言葉が好きで、これは人間の足腰を鍛え、少々のことではへこたれない本物の力を意味する。地力をつけるには、苦労を体験するのが必須条件だ、苦労を知らぬ人間は、端から見れば一にしかみえぬ打撃が10にも20にも感じられ、そのショック1つで潰れてしまうことがある(中略)、・・・一のショックを10に感じる者もいれば、10のショックを毛ほどにも思わぬ者もいる。厚顔無恥は困るけれども、そのくらいの根性がないと、長いサラリーマン生活はやっていけません。いつも自分を最低の線、つまり社会の底辺に置いておけば、何が起こったって怖くはない。矢でも鉄砲でも持ってきやがれ-と、そのくらいの気概で生きることですよ」(234頁)

元東芝社長、元経団連会長の土光敏夫さんの言葉です。

精神的に強い人というのは、頼もしいですよね。

「どんな状況下でも、この人ならなんとかしてくれる」

周りの人にこのように思われることが、修行の目的なのかもしれません。

20代、30代は、修行です。 いや、死ぬまでずっと修行なのかもしれませんね。

1年前よりも、昨日よりも、少しでも強くなりたい、そう思いながら、日々の課題に向かっています。

精神的にも肉体的にも強い男になりたいです。

うおーーーー。

無駄にテンションがあがってしまったので、このへんでやめておきます。