おはようございます。
さて、今日は、労働者派遣個別契約が終了した組合員に対する派遣先の使用者性に関する命令を見てみましょう。
パナソニック草津工場事件(中労委平成25年2月6日・労判1070号172頁)
【事案の概要】
Xは、派遣社員としてY社の工場において、製品の検査業務等に従事してきた。
派遣元とY社との契約は、平成21年12月末に終了した。
Xが加入する組合は、Y社に対し、①Xの直接雇用、②労働者派遣法違反の状態で働かせていたことについての謝罪および金銭的解決等を求めて団交を申し入れた。
Y社は、Xと雇用関係がなく、黙示の労働契約も成立していないとして団交を拒否した。
組合は、本件救済を申し立てたところ、滋賀県労委は、Y社の団交拒否は不当労働行為にあたると判断した。
【労働委員会の判断】
団交拒否は不当労働行為にはあたらない
【命令のポイント】
1 派遣可能期間を超える労働者派遣に関する直接雇用の申込義務の規定は私法上の義務を課すものではないから、同規定の要件を充足して直接雇用の申込義務が生じたからといって、「近い将来において派遣労働者との間に雇用関係が成立する可能性」が、直ちに現実的かつ具体的に生じるものではない。ただし、労働行政機関が労働者派遣法の規定に従って、派遣先事業主に対して、その労働者派遣の実態にかんがみ、当該派遣労働者の雇入れ(直接雇用)の行政勧告ないしその前段階としての行政指導を行うに至ったという場合には、派遣先事業主は当該派遣労働者の雇入れに応じることが法律上強く求められ、派遣先事業主が同雇入れに応じる可能性が現実的かつ具体的に生じるに至っている状況にあるといえるから、上記の雇用主以外の場合に関する法理に従い、当該派遣先事業主は、当該派遣労働者との間で近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者として労組法7条の使用者となり得ると解するのが相当である。
2 ・・・以上からすると、Y社は、採用、配置及び雇用の終了という一連の雇用の管理に関する決定権について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な関与等をしたとは認められない。したがって、Y社は、本件交渉事項に関して、労組法7条の使用者に当たると解することもできない。
上記命令のポイント1の判断は、押さえておきたいですね。
派遣先会社の皆様、ご注意ください。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。