Monthly Archives: 7月 2013

解雇107(第一興商(本訴)事件)

おはようございます。

さて、今日はパワハラで視覚障害発症、休職期間満了後の自動退職の効力に関する裁判例を見てみましょう。

第一興商(本訴)事件(東京地裁平成24年12月25日・労判1068号5頁)

【事案の概要】

Xは、Y社の正社員として勤務していたところ、上司等から仕事を与えられず、嫌がらせを受けたり暴言を浴びせられるなどした上、精神的に追い込まれて視覚障害を発症し、休職に追い込まれた結果、休職期間満了により自動退職という扱いになった。

Xは、①同視覚障害は、業務上の傷病に当たり、その療養期間中にXを自動退職とすることは労基法19条1項により無効であるとか、②Xは、休職期間満了時点で復職可能な状況にあったなどと主張して、Y社に対し、雇用契約上の地位確認並びに不当に低い評価を受けていた期間中の差額賃金及び上記自動退職後の賃金の支払いを求めるとともに、Y社にはその従業員らによる不法行為を漫然と放置したなどの安全配慮義務、不法行為があると主張して、Y社に対し、損害賠償を請求した事案である。

【裁判所の判断】

本件自動退職は無効

【判例のポイント】

1 ・・・以上のとおり、Xの供述内容には、全般的に疑問な点が多い。XがB課長やC課長らの暴言等を他部署の者、時には社外の者に訴え、その中で詳細にその言動の内容が記載されていることを考慮しても、X供述が客観的な裏付けを欠いていること、供述内容自体に合理性にが欠けていること、他の証拠との整合性がないことなどに照らすと、Xの供述についてはにわかにこれを信用することができないというべきである。
このように、Y社従業員(上司等)から継続的に暴言を浴びせられたり、嫌がらせを受けた旨のXの供述については信用することができず、他に、Xの主張を認めるに足りる的確な証拠は存しないというべきである。したがって、X主張にかかるY社従業員(上司ら)による不法行為の事実については、これを認めることができない。

2 労基法19条1項において、業務上の傷病により療養している者の解雇を制限している趣旨は、労働者が業務上の傷病の場合の療養を安心して行うことができるようにすることにある点からすれば、同項にいう「業務上の傷病」とは、労働災害補償制度における「業務上の傷病」、すなわち同法75条にいう業務上の傷病及び労働者災害補償保険法にいうそれと同義に解するのが相当である(東京高裁平成23年2月23日判決)。
そして、労災保険法にいう業務上の傷病とは、業務と相当因果関係のある疾病であると解されるところ(最高裁昭和51年11月12日判決)、同制度が危険責任の法理を基礎とするものであることからすれば、当該傷病の発症が当該業務に内在する危険の現実化と認められることを要するというべきであるところ、上記危険性については、その性質上、個々の労働者を基準として個別に判断すべきではなく、一般労働者を基準として客観的に判断されるべきものと解される

3 本件休職期間満了時点(平成22年1月6日時点)において、Xの休職事由が消滅していたか、すなわち、就業規則16条、18条に即していえば、休職の理由となった疾病が治癒し、通常の勤務に従事できるようになったかについて、以下、検討する。
・・・このように、労働者が、職種や業務内容を特定することなく雇用契約を締結している場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模・業種、当該企業における労働者の配置、異動の実情及び難易等に照らし、当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているのあれば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である(最高裁平成10年4月9日判決)。
また、休職事由が消滅したことについての主張立証責任は、その消滅を主張する労働者側にあると解するのが相当であるが、使用者側である企業の規模・業種はともかくとしても、当該企業における労働者の配置、異動の実情及び難易といった内部の事情についてまで、労働者が立証しつくすのは現実問題として困難であるのが多いことからすれば、当該労働者において、配置される可能性がある業務について労務の提供をすることができることの立証がなされれば、休職事由が消滅したことについて事実上の推定が働くというべきであり、これに対し、使用者が、当該労働者を配置できる現実的可能性がある業務が存在しないことについて反証を挙げない限り、休職事由の消滅が推認されると解するのが相当である

4 これを本件についてみるに、Xは、本件休職命令後、視覚障害者支援センターに通学して・・・主治医であるD医師やI医師は、いずれも視覚障害者補助具の活用により業務遂行が可能である旨の意見を述べているところ、上記各医師の意見を排斥するに足りる証拠をY社は提出していない
・・・Xは、本件休職期間満了時点にあっても、事務職としての通常の業務を遂行することが可能であったと推認するのが相当である。

休職期間満了による退職処分と労基法19条との関係が争点となっています。

最近、この争点をめぐる裁判をよく見かけます。

使用者側のみなさんは、上記判例のポイント3を是非、参考にしてください。

裁判所の判断傾向を知っているだけで、とるべき対応策も変わってきますので。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介223 法則の法則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。3連休も終わり、また一週間が始まりました。今週もがんばっていきましょう!
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←先日、常磐町の「くりた」に行ってきました。

写真は、「鱧の薄造り」です。

ここの親方は、私と同級生、しかも同姓ということもあり、応援しています。

また、京料理がベースとなっており、大学時代、大学院時代、ずっと京都で過ごした私としては、懐かしい味です。

親方、また行きますね。

今日は、午前中は、交通事故の裁判が1件、裁判の打合せが1件入っています。

午後はずっと外部の法律相談です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

法則の法則―成功は「引き寄せ」られるか

巷に溢れているさまざまな法則を取り上げて、著者の意見が述べられています。

「引き寄せの法則」「原因と結果の法則」「正負の法則」「鏡の法則」「そ・わ・かの法則」「ランチェスターの法則」「80対20の法則」「パーキンソンの法則」「ハインリッヒの法則」「マーフィーの法則」・・・

本当にたくさんの法則が世の中にはありますね。

よく考えるものです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

まずは、自分を産んでくれた親に感謝すること。これが『第一法則』。そして、世のため人のために志を立てること。これが『第二法則』。この二つこそ、あなたが幸福になる二大法則であり、究極の成功法則であると、わたしは思います。」(232頁)

シンプルでわかりやすいですね。

私が普段、行動指針の一つとしているのは、自分の親の気持ちです。

「親が喜んでくれそうなことは、『やる』 親が悲しみそうなことは、『やらない』」

というものです。

父、母が喜ぶ顔を見るのは、子どもとしては、本当にうれしいものです。

私が、弁護士という職業を通じて、困っている方の力になることは、きっと父も母も喜んでくれると思います。

普段、忙しくてなかなか実家に帰ることができず、また、それほど頻繁に電話をするわけでもありません。

でも、心の中で両親が喜ぶ姿を思い浮かべて、日々、仕事をしています。

父も母も、今は元気ですが、いつか必ず別れの日が来ます。

その日が来ることを考えると、このブログを書きながら、涙が出そうになります。

一人でも多くの困っている方の力になることで、社会の役に立つことが、ここまで育ててくれた両親への恩返しになると信じています。

有期労働契約40(医療法人清恵会事件)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。た。

さて、今日は、有期転換後の再雇用契約における雇止めの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

医療法人清恵会事件(大阪地裁平成24年11月16日・労判1068号72頁)

【事案の概要】

Y社は、病院および診療所の設置、運営等を目的とする医療法人である。

Xは、Y社との間で、昭和53年9月21日付で期間の定めのない雇用契約を締結し、それ以降、Y社の本部ビルにおいて事務職員として勤務していた。なお、Xは、社労士資格の保有者である。

Xは、平成22年3月18日付(定年年齢60歳到達前)で本件再雇用契約を締結した。

Y社は、平成22年12月29日、Y社から本件再雇用契約を更新しないと伝えられた。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 ・・・Xは、当然のことながら、本件再雇用契約が1年間で終了することは想定しておらず、定年年齢である60歳、さらには定年後の再雇用に至るまで契約が更新されることを期待していたことは明らかであり、Y社もXのそのような期待を十分認識した上で本件再雇用契約書の文言を調整した上で調印に至ったものと認められる。
・・・以上のとおり、本件再雇用契約は、単に、簡易な採用手続により、1年間の有期雇用契約に基づいて補助的業務を行う従業員を新規に採用するような場合とは全く異なり、長年にわたって期間の定めのない雇用契約に基づいて基幹業務を担当していたXと使用者たるY社との間で、双方の事情から、期間の定めのない雇用契約を一旦終了させ、引き続き1年毎の有期雇用契約を締結したものであり、契約更新が行われることを前提とする文言が入った本件再雇用契約書を交わしていることからすれば、Xの契約更新への期待は、客観的にみて合理的な期待であるといえるから、本件再雇用契約を雇止めにより終了させる場合には、解雇権濫用法理が類推適用されるというべきである

2 ・・・以上のとおり、Xの業務量の減少については、その事実自体疑わしい上、仮に事実であったとすれば、Y社では、他の従業員について時間外労働が生じていたのであるから、Y社において適切な業務分担を指示すべきだったといえるのであって、このことが、本件雇止めの合理的理由になるとはいい難い

3 本件雇止めが不法行為に当たるかという点について検討すると、雇止め自体は、期間の定めのある雇用契約を期間満了により終了させ、契約を更新しないということに過ぎないから、たとえ解雇権濫用法理の類推適用により当該雇止めが無効とされ、結果として契約更新の効果が生じたとしても、そのことから直ちに当該雇止め自体が不法行為に該当するような違法性を有するものであったと評価されるものではない。また、仮に当該雇止めが不法行為であると判断される場合であっても、当該不法行為により労働者に生じる損害は、雇止め後の賃金を失うことによる経済的損害であるから、当該雇止めが無効と判断され、当該雇止め後の賃金請求権の存在が確定すれば、原則として労働者の損害は填補されることとなる
そうすると、雇止めを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求が認められる場合とは、当該雇止めについて、雇止めの違法性を根拠付ける事情があり、かつ、雇止め後の賃金の支払いによって填補しきれない特段の損害が生じた場合であると解される。
これを本件についてみると、・・・証拠上、Y社がそのような違法な目的で本件雇止めを行ったとまでは認定することができない。

 有期雇用については、これまでにも多くの裁判例が出されていますが、通常の解雇の場合と同様の配慮が必要になってきますので、注意が必要です。

また、雇止めが無効であったとしても、当然に損害賠償請求が認められるわけではないことも、解雇の場合と同様です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介222 100%(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、いつもお世話になっている経営者の方と、ホテルセンチュリー内の「花凜」に行ってきました。

終始、お上品なお味でございました。

おいしゅうございました。

今日は、午前中から名古屋の会社へ訪問します。

夕方から、事務所で裁判所の打合せが1件入っています。

今日も一日がんばります!!

 

さて、今日は本の紹介です。
100%

タイトルのとおり、100%力を出し切ることの大切さを教えてくれています。

あっという間に読めてしまいます。

素晴らしい本です。 こういう本、大好き!!

また、付録として、著者の講演が収録されたCD-ROMが付いています。これもまたいい!! 

夢や目標を必ず実現する方法がこの本を読むとわかります。

超おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

今の人生は自分の選択の結果だということを認めて、初めて違う人生を選ぶことができる。」(74頁)

何よりも成功の原因になるのは、100%の行動である。90%は10%同然だ。100%やるから奇跡が起こる。家族においても、恋愛においても、運動においても、ビジネスにおいても、趣味においても、すべてが同じである。100%は、すべての夢を叶えてくれる『たったひとつの原則』なのだ!」(334頁)

自分にふりかかるすべてのことは、自分の選択の結果であると考えて、初めて今までとは違う人生を選択することができる、という考え方には、とても共感を覚えます。

今、自分が置かれている状況は、他人のせいでも、不景気のせいでもなく、1つ1つの小さな自分の選択の結果であると。

このように考えることができると、自分の選択如何によって、全く異なる人生を送ることも可能になってくるのではないでしょうか。

だって、選択可能なんだから。

他人のせい、不景気のせいと言っているうちは、自分ではどうにもできないことが原因と考えているのですから、選択不可能です。

つまり、「運が悪かった」とか「ついてない」とか「あいつが悪い」と言っているうちは、自分の不甲斐なさから抜け出すことはできないのではないでしょうか。

まずは、すべての事柄について自分の選択の結果だと受けとめる。 

そこから人生を変えていくしかないのです。

不当労働行為68(社会福祉法人ひまわりの会事件)

おはようございます。

さて、今日は、委員長の責任者解任と減給及び配置転換と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

社会福祉法人ひまわりの会事件(神奈川県労委平成25年2月1日・労判1068号95頁)

【事案の概要】

労働組合の委員長であったXは、施設長と言い争いをしたため、Y社は、Xに対して「注意喚起書」を発した。

Y社は、その後、Xに対し、施設長と良い争いをしたことなどを理由に、責任者の職責を解任し、減給処分とする旨通知した。

また、Y社は、Xを生活相談員から運転手業務に配置転換した。

【労働委員会の判断】

委員長の責任者解任、減給処分、配置転換はいずれも不当労働行為に該当する

【命令のポイント】

1 Xは、本件処分により責任者会議及び主任会議への出席がかなわなくなったことに伴い、生活相談員としての業務にも関わる法人の運営状況を確認する機会や入居者への対応を検討する場を失うこととなったのであるから、職務上の不利益を受けているといえる。
また、本件処分により、責任者手当として支給されていた職務手当4000円の支給が平成23年4月以降停止されており、Xには経済上の不利益が認められる

2 本件配置転換は、相談業務からデイサービスの送迎を中心とする運転手業務という職務内容の変更を伴う異動であり、Xにとっては、それまでの経験や技能をほとんど活かすことができない業務に就くという点において、職務上の不利益が認められることは客観的に明らかである。また、介護支援専門員の資格を取得するなどして、生活相談員として担当業務に取り組んできた同人が精神的苦痛を被ることは容易に推測できるところであり、精神上の不利益も認められる
・・・法人における運転手業については、本件配置転換の前は嘱託職員等の非正規職員が従事してきており、本件配置転換により正規職員に担当させなければならない具体的な必要性を窺わせる事情は認められない。したがって、本件配置転換は、業務上の具体的必要性や人選の合理性に疑問があるだけでなく、手続の相当性も欠落しており、その合理性を認めることはできない

3 以上から、本件処分及び本件配置転換は、組合員であること又は正当な組合活動をしたことを理由とする不利益取扱いに当たる。

配転命令は、使用者に広い裁量が認められていることから、訴訟でその有効性を争う場合、労働者側とするとかなりハードルが高いです。

これに対し、本件のように労働委員会において不当労働行為性を争う場合には、訴訟ほどハードルは高くないような気がします。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介221 負けかたの極意(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
負けかたの極意

監督生活24年、1565勝1563敗のノムさんの本です。

先日も野村監督の本を紹介しましたが、今回もまた「負け方」についての本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『自分はまだまだ』と思えば、『もっとやらなければいけない』と素直に考えるようになるだろう。中国の『書経』にこういう言葉がある。『満は損を招き、謙は益を受く』 満足すれば妥協を呼び、妥協を呼べば進歩も止まるが、謙虚な気持ちを忘れなければ、多くの疑問が生まれ、もっと高みを目指して努力するようになる。そう、失敗や負けは、謙虚さとともにさらなる意欲を引き出すことにもなる。」(56頁)

さすが野村監督。 いいこと言いますね。

失敗や負けを次につなげるためには、そこから何かを学ぶ必要があります。

敗因は何か、それを修正するためにはどうしたらよいか・・・

言ってしまえば、毎日が弱い自分との戦いです。

生きている間、常に少しずつ向上していたいと願うのは、自然なことだと思います。

日々、少しずつ向上するためには、まさに今、目の前に置かれている課題から何を学べるかということに尽きるのではないでしょうか。

人間はいつか必ず死にます。 Life is short.

死ぬ直前まで向上したいと願いつつ、今日も必死に生きようと思います。

解雇106(日本郵便事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は、連続26日間の無断欠勤を理由とする懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

日本郵便事件(東京地裁平成25年3月28日・労経速2175号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において郵便物の集配業務に従事していたXが、26日間連続で無断欠勤したことを理由とする懲戒解雇の無効を主張した事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は有効

【判例のポイント】

1 まず、本件期間中、Xが脳腫瘍等の診断を受けたことは、本人の努力ではいかんともし難い、まことに気の毒なことではあり、その診断を聞いて途方に暮れてしまったことは、一時の心情としては十分理解することができる。しかし、他方で、X自身、本件期間中、いつまでも途方に暮れ続けていたわけではなく、自らの意思で検査入院の手続を取って入院したり、10日間ほど、夕方6時から深夜にかけて、Y社において禁止されている無許可でのアルバイトをしたり、飯田橋のしごとセンター(ハローワーク)には行っていないとのことではあるものの、その界隈には行って仕事探しをしたり、友人宅に泊まったりしていたということであって、病状としても、どうしても直ちに手術が必要という状態ではなかったのであるから、再三にわたって発令された本件出勤命令を受けて、同じ班の同僚にかけているであろう迷惑を慮るとともに、病状等の近況につきY社に対して一報を入れることぐらいは容易に可能であったものというべきである。それにもかかわらず、Xは、本件出勤命令に応じて出勤するどころか、・・・長期間にわたってY社に電話すら掛けずにいたのであって、このことについては、本件出勤命令を再三にわたって無視し続けたという謗りを免れないというべきであり、脳腫瘍等の診断を受けていたことは、本件欠勤に関する就業規則違反事由該当性を正当化し、あるいは、違反性を減じるような事情になるものと評価することはできない

2 他方、手続的な観点からみても、Y社は、合計4回、約90分の弁明の機会をXに与え、本県事情聴取の際、本件欠勤に関する種々の事情を尋ねたにもかかわらず、Xは、自己の病状や検査入院の事実について説明するどころか、本件期間中の自らの行動や電話すら掛けなかった理由について曖昧な返答に終始していたのであり、それにもかかわらず、Y社は、Xに対し、聴取書の記載内容を確認する機会や、諭旨解雇と退職金との関係について説明を受ける機会も与え、退職金はいらないから退職願は書かないと半ば投げやりな態度で答えたXに対し、日を改めて再度翻意の機会まで与えたのであるから、その手続的相当性は十分であると評価することができる

3 ・・・・以上の認定によれば、Xについては、その功労を抹消又は減殺するほどの著しく信義に反する行為があったといわざるを得ないから、就業規則どおり、有効な懲戒解雇処分を受けたXには、退職金請求権は発生しないというべきである。したがって、Xの予備的請求にも理由がない。
無断欠勤はやめましょう。

また、今回のケースでは、事案の重大性から、退職金の減額不支給も妥当だと判断されています。

この点は、控訴審で判断が覆る可能性があると思います。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介220 成功を決める「順序」の経営(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間、お疲れ様でした。 土、日もばりばり働きます。
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←先日、友人の弁護士と「ODECO」に行ってきました。

写真は、「フォアグラとつくねと味たまのミルフィーユ」です。

なにげにおいしいです。 おすすめですよ。

お客さんの女子率が9割を超えている中、おっさん2人で真面目な話をしていました。

今日は、午前中は、裁判が2件と顧問先会社の担当者の方との打合せが入っています。

午後は、沼津の裁判所で交通事故の裁判が1件、新規相談が1件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
 
成功を決める「順序」の経営 ―勝つためには戦略の順番を間違えるな (日経ビジネス経営教室)
 
 
原田さんの新しい本です。
 
 
戦略には順序があるということ、順序を間違えると成果は出ないということについて書かれています。
 
 
さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。
 
 
『客数を増やす』と『客単価を上げる』と『コストを下げる』。これは矛盾なんです。ですが、経営というのは、矛盾をどう乗り越えるかということです。矛盾がないことなら、やればいいんですから。経営の意思決定なんて必要ないでしょう。」(55頁、64頁)
 
 
「矛盾を乗り越えるのが経営」と言い切っています。 なるほど。 勉強になります。
 
一見、矛盾する案をどのような方法で両方とも実現するか。
 
だいたいは、どちらかをあきらめてしまいがちですよね。
 
でも、それでは、経営とは呼べないと。
 
ハードルが高い課題が目の前に存在する場合、「腕の見せ所」と考え、問題をプラス受信するべきですね。
 
このように考える習慣が身についている人は、逆境に強い人です。
 
こういう人と一緒に仕事をしたいです。

派遣労働14(トルコ航空ほか事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣法違反と黙示の労働契約の成否に関する裁判例を見てみましょう。

トルコ航空ほか事件(東京地裁平成24年12月5日・労経速2173号3頁)

【事案の概要】

本件は、派遣元に1年間の有期契約で雇用され、サービスアグリーメント(SA、労働者派遣契約)に基づき派遣先であるY社に派遣された労働者らが、労働組合を結成して、待遇改善を求めたところ、Y社が、中途解約条項に基づきSAを途中解約し、派遣元が、有期労働契約の解約条項(SAが終了した場合、期間途中で解雇できる)に基づき期間途中で解雇したため、Xらが、①派遣先に対し、黙示の雇用契約関係の存在確認、②派遣元に対し、派遣先によるSAの解除は、派遣法27条(派遣労働者の正当な組合活動を理由とする派遣契約の解除禁止)等に違反し無効であり、SAの解除の有効性を前提とする本件解雇も無効であるとして提訴し、③派遣元が、訴訟係属中に派遣労働契約を期間満了により雇止めしたため、雇止めの効力が争われた事案である。

【裁判所の判断】

Y社との黙示の雇用契約は成立していたとは認められない。

本件派遣契約解除は派遣法27条に違反し無効。

派遣元のXらに対する解雇も無効。

雇止めは有効

【判例のポイント】

1 XらとY社との間に黙示の雇用契約が成立するためには、①採用時の状況、②指揮命令及び労務提供の態様、③人事労務管理の態様、⑤対価としての賃金支払の態様等に照らして、両者間に雇用契約関係と評価するに足りる実質的な関係が存在し、その実質関係から両者間に客観的に推認される黙示の意思表示の合致があることを必要と解するのが相当であり、労働者派遣においては、労働者に対する労務の具体的指揮命令は、派遣先会社が行うことが予定されているから、黙示の雇用契約の成立が認められるためには、派遣元会社が名目的存在に過ぎず、労働者の採否の決定、労務提供の態様、人事労務管理の態様、賃金額の決定等が派遣先会社によって事実上支配されているような特段の事情が必要というべきである

2 Xらは、自身が派遣元と雇用契約を締結した上で、派遣労働者としてY社で稼働していることについて十分了解していたというべきであり、またXらの業務に派遣期間の制限(労働者派遣法40条の2第2項)が及ぶとしても、同40条の3を根拠に雇用契約上の地位確認請求が発生すると解する余地はないし、このような事情があるからといって、黙示の雇用契約の成否に影響を与える余地もない。

3 Xらと派遣元の雇用契約については、契約更新手続が形骸化していたことをうかがわせる事情を認めることはできないが、旅客運送業務を営むY社における恒常的、基幹的業務に従事していたこと、Xらの中には少なくとも7回にわたって雇用契約が更新され継続してY社に派遣されていた者がいたことは、Xらと派遣元との間の雇用契約につき雇用継続に対する合理的な期待があるとしてその雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるとの主張を肯定する方向に一応傾く余地がないではないが、雇用主である派遣元が就業場所となることが予定されておらず、労働者派遣契約がなければ実際の就業場所を確保することができないという派遣労働の特徴、及び企業間の商取引である労働者派遣契約に更新の期待権や更新義務を観念し得ないことも併せかんがみれば、Xらの雇用契約(派遣労働契約)の継続に対する期待は、労働者派遣法の趣旨及び派遣労働の特徴に照らし、合理性を有さず、保護すべきものとはいえない。これは、Y社による本件SAの中途解約が無効と解される本件でも同様である。

派遣契約に関する裁判例が続きます。

派遣契約の特徴から更新の期待権や更新義務を否定しています。

やはり一般の有期雇用契約の場合の法理論を派遣契約に応用することはかなりハードルが高いですね。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介219 ノムラの教え 弱者の戦略99の名言(企業法務・顧問弁護士@静岡)

 おはようございます。

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←先日、顧問先会社のみなさんと事務所の近くにある「クシゾー」に久しぶりに行ってきました。

たらふく食べました。おいしゅうございました。

今日は、午前中は、島田の裁判所で離婚調停が入っています。

午後は、裁判所で法曹協議会です。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。

ノムラの教え 弱者の戦略99の名言

ノムさんの名言が詰まっています。

普通の人がいかにして成功するか、という哲学を感じることができると思います。

心に響く言葉に出会うことができます。 おすすめですよ!

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『もうダメだ』ではなく『まだダメだ』
ちょっと壁にぶつかっただけで、思うような結果が出ないからといって、『もう限界です』と弱音を吐く人間が増えているように思う。だが、『限界』というものは軽々しく口にしていい言葉ではない。限界を知るには、それこそ血を吐くような努力を要するからだ。・・・たいていの人間は、ほんとうの限界を知る前にあきらめてしまう。そして、うまくいかない原因を才能の有無に求めてしまう。・・・限界だと挫けそうになったときは、『もうダメだ』ではなく『まだダメだ』と考えるべきなのである。」(100~101頁)

「もうダメだ」ではなく「まだダメだ」 

いい言葉ですね。 

既に事務所の壁に貼ってあります(笑)

「限界」という言葉を軽々しく使ってはいけないという野村監督の教えが伝わってきます。

「もうダメだ」と弱音を吐きたくなる地点からが本当の戦いだと自分に言い聞かせることが必要です。

すべては、習慣ですね。 性格や才能ではないと確信しています。