おはようございます。
さて、今日は整理解雇の有効性と賞与請求に関する裁判例を見てみましょう。
アクセルリス事件(東京地裁平成24年11月16日・労判1069号81頁)
【事案の概要】
本件は、Y社がXを整理解雇した事案である。
Y社は、ソフトウェア製品の販売、導入支援コンサルティング、トレーニング等を主な業とする株式会社である。
【裁判所の判断】
整理解雇は無効
賞与請求は棄却
【判例のポイント】
1 ・・・整理解雇の考慮要素としての人員削減の必要性とは、少なくとも当該人員削減措置の実施が不況、斜陽化、経営不振等による企業経営上の十分な必要性に基づいていることを要するものと解されるところ、本件においては、①本件解雇当時、Y社自身の経営状況が悪化していたことを認めるに足りる証拠はないこと、②米国親会社及び米国シミックス社の経営状況及び両社の合併に伴い、Y社において4名の人員削減を実施する必要性が十分にあったことを認めるに足りる証拠もないこと、・・・以上からすれば、本件解雇当時、X1名を整理解雇しなければならない十分な必要性があったとは認められないというべきである。
2 人員削減を実現する際に、使用者は、配転、出向、希望退職者募集等の他の手段によって解雇回避の努力をする信義則上の義務(解雇回避努力義務)を負うものと解され、同義務履行の有無を判断するに当たっては、当該使用者が採択した手段と手順が当該人員整理の具体的状況の中で全体として指名解雇回避のための真摯かつ合理的な努力と認められるか否かを判断すべきである。そして、人員削減の十分な必要性があったとまでは認められない本件において、本件解雇が正当化されるためには、相当手厚い解雇回避措置が取られた後でなければならないというべきである。
これを本件についてみると、Y社は、・・・当該人員削減指示の説明及び希望退職者募集は、説明資料等を交付することなく口頭でされたに過ぎない上、希望退職者募集に係る退職の条件についても、多少の退職金オプションを出せる旨の抽象的な説明しかしていないというものであって、Y社主張に係る説明ないし希望退職者募集をもって、前記の解雇回避努力義務の履行があったと評価されるべきものではないというべきである。
また、Y社は、Xの配転可能性について、Xの専門性を生かせるポストは顧客サポート業務以外にはなかったところ、Xが顧客からの評判が悪く、他のメンバーと強調しようとせず、同部門においてはXを除く他のメンバーによる新しいチーム作りが始まっていたことから、Xを顧客サポート業務に就かせることはできなかった旨主張するが、①職種限定契約である等の事情がなく雇用契約上職種や担当業務が限定されていないXについて、解雇回避義務の履行として配転を検討するに当たっては、異動候補先として幅広い職種・職務内容を検討すべきであること、・・・。なお、Y社は、X及び本件労組に対し、Xの専門性と無関係な他の業務(例えば、賃金額が大幅に下がる在庫管理)への配転の検討を要請したが、Xらがその検討を拒否したことをもって、解雇回避努力義務の履行をした旨主張するが、本件において、労働条件の大幅の不利益変更を伴う配転提案をしたことをもって同義務を履行したものとは評価できないから、Y社の主張には理由がない。
解雇回避努力に関する判断は、是非、参考にしてください。
4要素説では、他の要素との関係で、求められる解雇回避努力の程度が変わってきます。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。