Daily Archives: 2013年7月12日

有期労働契約40(医療法人清恵会事件)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。た。

さて、今日は、有期転換後の再雇用契約における雇止めの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

医療法人清恵会事件(大阪地裁平成24年11月16日・労判1068号72頁)

【事案の概要】

Y社は、病院および診療所の設置、運営等を目的とする医療法人である。

Xは、Y社との間で、昭和53年9月21日付で期間の定めのない雇用契約を締結し、それ以降、Y社の本部ビルにおいて事務職員として勤務していた。なお、Xは、社労士資格の保有者である。

Xは、平成22年3月18日付(定年年齢60歳到達前)で本件再雇用契約を締結した。

Y社は、平成22年12月29日、Y社から本件再雇用契約を更新しないと伝えられた。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 ・・・Xは、当然のことながら、本件再雇用契約が1年間で終了することは想定しておらず、定年年齢である60歳、さらには定年後の再雇用に至るまで契約が更新されることを期待していたことは明らかであり、Y社もXのそのような期待を十分認識した上で本件再雇用契約書の文言を調整した上で調印に至ったものと認められる。
・・・以上のとおり、本件再雇用契約は、単に、簡易な採用手続により、1年間の有期雇用契約に基づいて補助的業務を行う従業員を新規に採用するような場合とは全く異なり、長年にわたって期間の定めのない雇用契約に基づいて基幹業務を担当していたXと使用者たるY社との間で、双方の事情から、期間の定めのない雇用契約を一旦終了させ、引き続き1年毎の有期雇用契約を締結したものであり、契約更新が行われることを前提とする文言が入った本件再雇用契約書を交わしていることからすれば、Xの契約更新への期待は、客観的にみて合理的な期待であるといえるから、本件再雇用契約を雇止めにより終了させる場合には、解雇権濫用法理が類推適用されるというべきである

2 ・・・以上のとおり、Xの業務量の減少については、その事実自体疑わしい上、仮に事実であったとすれば、Y社では、他の従業員について時間外労働が生じていたのであるから、Y社において適切な業務分担を指示すべきだったといえるのであって、このことが、本件雇止めの合理的理由になるとはいい難い

3 本件雇止めが不法行為に当たるかという点について検討すると、雇止め自体は、期間の定めのある雇用契約を期間満了により終了させ、契約を更新しないということに過ぎないから、たとえ解雇権濫用法理の類推適用により当該雇止めが無効とされ、結果として契約更新の効果が生じたとしても、そのことから直ちに当該雇止め自体が不法行為に該当するような違法性を有するものであったと評価されるものではない。また、仮に当該雇止めが不法行為であると判断される場合であっても、当該不法行為により労働者に生じる損害は、雇止め後の賃金を失うことによる経済的損害であるから、当該雇止めが無効と判断され、当該雇止め後の賃金請求権の存在が確定すれば、原則として労働者の損害は填補されることとなる
そうすると、雇止めを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求が認められる場合とは、当該雇止めについて、雇止めの違法性を根拠付ける事情があり、かつ、雇止め後の賃金の支払いによって填補しきれない特段の損害が生じた場合であると解される。
これを本件についてみると、・・・証拠上、Y社がそのような違法な目的で本件雇止めを行ったとまでは認定することができない。

 有期雇用については、これまでにも多くの裁判例が出されていますが、通常の解雇の場合と同様の配慮が必要になってきますので、注意が必要です。

また、雇止めが無効であったとしても、当然に損害賠償請求が認められるわけではないことも、解雇の場合と同様です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。