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さて、今日は、任期満了で更新拒絶された元教員からの地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。
ノースアジア大学(本訴)事件(秋田地裁平成24年10月12日・労判1066号48頁)
【事案の概要】
Xは、平成15年4月、Y大学の専任講師として、期間の定めのない雇用契約により採用され、その後、准教授となった。
Y大学は、平成19年3月、「大学の教員等の任期に関する法律」に基づき、専任教員の任期に関する規程を制定し、専任の全教員に任期制を導入した。
これに伴い、XとY大学との間では、任期2年の任期制雇用契約が締結された。
ところが、Xは、平成21年11月、懲戒処分となり、准教授から講師に降格され、基本給も減額された。
平成22年2月、Xは、Y大学から本件雇用契約が同年3月末をもって終了する旨の通告を受けた。
Xは、本件更新拒絶が不当な雇止めにあたり、無効であると主張し争った。
【裁判所の判断】
雇止めは無効
【判例のポイント】
1 Y大学における任期制は、理事長、学部長、事務部長などの限られた者の協議によってその導入が決定されてから6か月にも満たない期間で、基本的にY大学の全教員を対象とするものとして実施されたこと、その内容等について、前記の協議に参画していない教員らの意見を聴く特段の手続が行われた様子はなく、各教員につき、それぞれ任期法4条1項各号のいずれの事由によって任期制が導入されるのかといった具体的な検討やその説明がなされた形跡もなく、全教員に所与の決定として告知されたにすぎないこと、Y大学における任期制の具体的内容を決定した任期制規程が定められたのは、任期制実施のわずか11日前であり、継続教員らに実質的にその内容を確認し検討する時間が全く確保されていなかったことが認められ(これらの事情は、Y大学においては任期制の導入前と導入後とで、雇用契約の性質や被雇用者の身分保障について根本的な変更を伴うものではないことを強く推認させるものであるし、少なくとも、適用される教員の側においてはそのようなものと受け止めるのが通常であると考えられる。)、さらに、Y大学代表者がXに対し、任期制は特に問題のある教員等を排除するために導入したものでありXは全く問題はない旨説明していたことを併せ考慮すると、Y大学においては、任期法に基づき制定された任期制が制度として採用されたとはいうものの、ことXとY社との間における任期付雇用契約に限れば、特段の問題がない限り任期満了後も再任用されることが前提となる雇用契約として合意されていたと認めるのが相当である。
したがって、平成19年4月1日付雇用契約締結の時点において、Xには、特段の問題がない限り期間満了後も再任用されることについての合理的期待が存在していたというべきである。・・・本件不任用については解雇権濫用法理が類推適用されるというべきである。
2 本件不任用に解雇権濫用法理が類推適用される以上、本件不再任が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、XとY社との間で本件不再任後にも従前の雇用契約が更新されたのと同様の法律関係が生じているものといえる。
3 ・・・この点について、本件不再任にあたって否定的な評価がなされる問題点であることが、Y社からXに対し、理解可能な程度に指摘され、改善や弁明の機会が適切に与えられていたとは認められず、この否定的評価をもって本件不再任の理由とすることは、手続的に妥当ではない。そうすると、その他Y社がるる主張する事由を加味しても、結局、本件不再任には、客観的に合理的な理由はなかったものというほかない。
本件事案の仮処分決定については、こちらをご参照下さい。
裁判所は、しきりに手続的な不十分さを指摘し、本件不再任を無効と判断しています。
事案は異なりますが、整理解雇でも3要素説が登場するような流れもある中で、やはり手続面は軽視できないということを再認識させられる事案です。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。