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さて、今日は、小規模組合に対する組合事務所不貸与に関する命令を見てみましょう。
清水建設事件(愛知県労委平成25年1月15日・労判1064号96頁)
【事案の概要】
X組合は、平成20年3月、Y社名古屋支店社員9名で結成された。組合員は6名である。
X組合は、平成21年10月、組合事務室の貸与を要求したが、同年11月、Y社は、名古屋支店内にスペースがないことを理由に応じられないと回答した。
なお、Y社は、A組合(会社の管理専門職、総合職、一般職4772名で組織)の名古屋支部(組合員333名)およびB組合(地域管理専門職、地域職約2000名で組織)の名古屋支店(組合員233名)に対し、それぞれ約22㎡および約10㎡の組合事務所を貸与している。
【労働委員会の判断】
組合事務所不貸与は不当労働行為にはあたらない
【命令のポイント】
1 ・・・X組合において組合事務室貸与にかかる交渉を行ったのは、平成21年10月からこれまでに数回にすぎず、その会社との交渉の中で、組合事務室の必要性や貸与可能なスペースについて具体的な主張をしたとは認められないことからすれば、Y社が組合の要求に応じる必要を見出せなかったとしてもやむを得ないものと認められる。
2 X組合が保有する資料等の分量は、小型の段ボール箱1つ分程度であるから、保管のために組合事務室が必要であるとまでは認められない。また、組合の活動規模が小さいことに照らせば、そもそも組合員同士が集まって交流する機会は少ないし、そのこと自体、組合事務室がなければ不可能なものではなく、部屋が必要な際にはその都度貸与を要求する等の方法でも可能である。更に、組合の存在の周知及び組合員の増員については、ビラ配付等の他の手段によって達成することが可能である。
3 Y社の名古屋支店内において、X組合が組合事務室として使用するスペースをY社が捻出することは、不可能とまではいえないものの、X組合と他組合との間には、組合員数に大きな開きがあること、組合の活動規模も組合事務室の必要性が希薄であるといわざるを得ず、貸与拒否により組合の運営上特段の支障が生じるとはいえないこと、これまでの組合事務室貸与に係る交渉経過に鑑みて、Y社が組合の要求に応じる必要性を見出せなかったとしてもやむを得ないことから、Y社が組合からの組合事務室の貸与要求に応じなかったとしても、そのことには合理的な理由がある。
したがって、Y社が組合に組合事務室を貸与しないことは、組合の活動を相対的に低下させ、その弱体化を図ろうとする使用者の意図を推認させるものではなく、組合の運営に支配介入するものとはいえないから、労組法7条3号には該当しない。
複数の組合が存在する場合に、一方には組合事務所を貸与し、もう一方には貸与しないという場合、貸与されなかった組合から不当労働行為と主張されることがあります。
本件の判断は、あくまでも事例判断ですので、一般化するのは難しいですが、是非、参考にしてください。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。