おはようございます。
さて、今日は、自転車配送員の労組法上の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。
ソクハイ事件(東京地裁平成24年11月15日・労経速2169号3頁)
【事案の概要】
本件は、Y社が、メッセンジャー(自転車配送員)の労働者性等に関する団交拒否、メッセンジャーの労働組合の執行委員長である営業所長が労働委員会の調査期日に出席し発言したことを理由とする所長解任、この所長解任等に関する団体交渉拒否の不当労働行為性について、これを認めた中労委命令の取消しを求めた事案である。
【裁判所の判断】
労組法上の労働者性を肯定
【判例のポイント】
1 メッセンジャーについて営業所長の管理の下、Y社の事業組織に組み込まれていたといえること、契約内容をY社が一方的に決定していたものといえること、メッセンジャーの報酬は本来出来高払い制であるもののその出来高は労務提供(労働量)に依存する側面があること、メッセンジャーは個々の業務依頼を基本的には引き受けるべきものとされていたこと、メッセンジャーの稼動について、時間・場所・態様の各面につき、一定程度の拘束があるとみるのが相当であること、メッセンジャーの事業者性が高いものとは評価し難いことなどの諸点に、労組法の目的(同法1条1項)を総合考慮するに、メッセンジャーは、労働契約又は労働契約に類する契約によって労務を供給して収入を得る者として、同法3条所定の労働者に当たる(Y社との間では同法7条の「雇用する労働者」にも当たる)と認めるのが相当である。
2 Y社はメッセンジャーの兼業を禁じておらず、実際にも兼業をする者がいる。また、メッセンジャーは、稼動に当たり配送の手段である自転車や携帯電話機を自ら所有し、これらに係る経費を自ら負担した上、報酬については事業所得として確定申告しており、Y社から、物的設備や第三者に対する損害賠償を備え、その負担の下、保険への加入が義務付けられ、交通事故があった場合もメッセンジャーの責任において処理がなされていることが認められる。
しかし、上記のように配送手段を所有し、あるいは経費等の負担をしていたことについては、Y社の採用時の説明に基づく結果と見ることもでき(源泉徴収はされず、個人事業主として確定申告を要すること、自ら社会保険に加入する必要があること、個人として自転車その他の備品を用意し、傷害保険に加入する必要があることについて採用面接時に説明がされていることはY社自身も認めるところである。)、むしろ、配送経路の選択といった点以外は、メッセンジャーが、各人の裁量・才覚によって特段顕著な相違を生じさせ、利得する余地は乏しいと評価せざるを得ないところであり、第三者への再委託を禁じられていて、他人を使用することにより利得する余地もなかったことにも照らすと、メッセンジャーの事業者性が高いものとは評価し難い。
裁判所は、メッセンジャーの労組法上の労働者性を認定する際、(1)事業組織への組込みについて(、(2)契約内容について、(3)個々の業務依頼に関する諾否について、(4)労務供給の時間・場所・態様について、(5)事業者性について検討しています。
非常に微妙な判断ですね。
なお、東京地裁(平成21年5月13日・労経速2076号3頁)は、別訴において、メッセンジャーの労基法(現在では労契法)上の労働者性を否定しています(営業所長の労基法(現在では労契法)上の労働者性を肯定しています。
労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。