Monthly Archives: 5月 2013

不当労働行為66(清水建設事件)

おはようございます。 今週も一週間、お疲れ様でした。

さて、今日は、小規模組合に対する組合事務所不貸与に関する命令を見てみましょう。

清水建設事件(愛知県労委平成25年1月15日・労判1064号96頁)

【事案の概要】

X組合は、平成20年3月、Y社名古屋支店社員9名で結成された。組合員は6名である。

X組合は、平成21年10月、組合事務室の貸与を要求したが、同年11月、Y社は、名古屋支店内にスペースがないことを理由に応じられないと回答した。

なお、Y社は、A組合(会社の管理専門職、総合職、一般職4772名で組織)の名古屋支部(組合員333名)およびB組合(地域管理専門職、地域職約2000名で組織)の名古屋支店(組合員233名)に対し、それぞれ約22㎡および約10㎡の組合事務所を貸与している。

【労働委員会の判断】

組合事務所不貸与は不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 ・・・X組合において組合事務室貸与にかかる交渉を行ったのは、平成21年10月からこれまでに数回にすぎず、その会社との交渉の中で、組合事務室の必要性や貸与可能なスペースについて具体的な主張をしたとは認められないことからすれば、Y社が組合の要求に応じる必要を見出せなかったとしてもやむを得ないものと認められる

 X組合が保有する資料等の分量は、小型の段ボール箱1つ分程度であるから、保管のために組合事務室が必要であるとまでは認められない。また、組合の活動規模が小さいことに照らせば、そもそも組合員同士が集まって交流する機会は少ないし、そのこと自体、組合事務室がなければ不可能なものではなく、部屋が必要な際にはその都度貸与を要求する等の方法でも可能である。更に、組合の存在の周知及び組合員の増員については、ビラ配付等の他の手段によって達成することが可能である

3 Y社の名古屋支店内において、X組合が組合事務室として使用するスペースをY社が捻出することは、不可能とまではいえないものの、X組合と他組合との間には、組合員数に大きな開きがあること、組合の活動規模も組合事務室の必要性が希薄であるといわざるを得ず、貸与拒否により組合の運営上特段の支障が生じるとはいえないこと、これまでの組合事務室貸与に係る交渉経過に鑑みて、Y社が組合の要求に応じる必要性を見出せなかったとしてもやむを得ないことから、Y社が組合からの組合事務室の貸与要求に応じなかったとしても、そのことには合理的な理由がある
したがって、Y社が組合に組合事務室を貸与しないことは、組合の活動を相対的に低下させ、その弱体化を図ろうとする使用者の意図を推認させるものではなく、組合の運営に支配介入するものとはいえないから、労組法7条3号には該当しない。

複数の組合が存在する場合に、一方には組合事務所を貸与し、もう一方には貸与しないという場合、貸与されなかった組合から不当労働行為と主張されることがあります。

本件の判断は、あくまでも事例判断ですので、一般化するのは難しいですが、是非、参考にしてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介207 たくさん失敗した人ほどうまくいく(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
たくさん失敗した人ほどうまくいく

10年程前の本ですが、もう一度読んでみました。

タイトル通り、失敗は決してマイナスではないということを、さまざまな方法で説いています。

このブログでも、これまで同様の内容について書かれている本を多く紹介してきました。

実際、失敗を恐れずに挑戦し続けることができるかどうかが人生を充実したものにする大きなカギになると確信しています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

起業家には興奮を追い求める気質がある。おだやかな晴天よりも、不吉な暗雲と雷鳴に吸い寄せられる。起業家の意識調査を見ると、こうした冒険者にとって、秩序だった環境は混沌とした環境よりも苦痛になるようだ。・・・混乱の最中には力を発揮し、平穏になると集中力を失う人間がいる。・・・こうしたリスクを追い求める人たちは重圧にうまく対処しているのではない。重圧を渇望しているのだ。」(34~35頁)

進歩が安穏をもたらすことはめったにないし、そうなるべきでもない。安穏に暮らす人たちが新しい可能性に挑戦するとは考えられない。・・・求めているのは挑戦である。挑戦の結果が、いわゆる成功か他人が失敗と呼ぶものになるかどうかは問題ではない。『高くつく失敗』という言葉をしばしば耳にする。だが、現状に甘んじる代償はそれ以上に大きい。人は失敗を経験しながら少しずつ前進する。」(61頁)

非常にいい文章ですね。

私も間違いなく平穏や安心よりも、混沌、混乱、リスクということばを好みます。

「現状維持」ということばが死ぬほど嫌いです。

成功も失敗も経験した上で、次のステージに行きたいです。

ところで、私は、物事にはすべてやりかたや秘訣があると思っています。

目的を達成するためにも秘訣があります。

それは、「失敗してもあきらめないこと」と「成功者の真似をすること」です。 これに尽きると思っています。

「なんだ、そんなことか・・・」と思う方も当然いると思います。

しかし、真理は常にシンプルです。

あとは、どれだけ愚直に実行に移せるか。

私の周りには、同世代の多くの挑戦者がいます。

そういう人は、全力で応援します。

労働者性8(ソクハイ事件)

おはようございます。

さて、今日は、自転車配送員の労組法上の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

ソクハイ事件(東京地裁平成24年11月15日・労経速2169号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、メッセンジャー(自転車配送員)の労働者性等に関する団交拒否、メッセンジャーの労働組合の執行委員長である営業所長が労働委員会の調査期日に出席し発言したことを理由とする所長解任、この所長解任等に関する団体交渉拒否の不当労働行為性について、これを認めた中労委命令の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

労組法上の労働者性を肯定

【判例のポイント】

1 メッセンジャーについて営業所長の管理の下、Y社の事業組織に組み込まれていたといえること、契約内容をY社が一方的に決定していたものといえること、メッセンジャーの報酬は本来出来高払い制であるもののその出来高は労務提供(労働量)に依存する側面があること、メッセンジャーは個々の業務依頼を基本的には引き受けるべきものとされていたこと、メッセンジャーの稼動について、時間・場所・態様の各面につき、一定程度の拘束があるとみるのが相当であること、メッセンジャーの事業者性が高いものとは評価し難いことなどの諸点に、労組法の目的(同法1条1項)を総合考慮するに、メッセンジャーは、労働契約又は労働契約に類する契約によって労務を供給して収入を得る者として、同法3条所定の労働者に当たる(Y社との間では同法7条の「雇用する労働者」にも当たる)と認めるのが相当である。

2 Y社はメッセンジャーの兼業を禁じておらず、実際にも兼業をする者がいる。また、メッセンジャーは、稼動に当たり配送の手段である自転車や携帯電話機を自ら所有し、これらに係る経費を自ら負担した上、報酬については事業所得として確定申告しており、Y社から、物的設備や第三者に対する損害賠償を備え、その負担の下、保険への加入が義務付けられ、交通事故があった場合もメッセンジャーの責任において処理がなされていることが認められる。
しかし、上記のように配送手段を所有し、あるいは経費等の負担をしていたことについては、Y社の採用時の説明に基づく結果と見ることもでき(源泉徴収はされず、個人事業主として確定申告を要すること、自ら社会保険に加入する必要があること、個人として自転車その他の備品を用意し、傷害保険に加入する必要があることについて採用面接時に説明がされていることはY社自身も認めるところである。)、むしろ、配送経路の選択といった点以外は、メッセンジャーが、各人の裁量・才覚によって特段顕著な相違を生じさせ、利得する余地は乏しいと評価せざるを得ないところであり、第三者への再委託を禁じられていて、他人を使用することにより利得する余地もなかったことにも照らすと、メッセンジャーの事業者性が高いものとは評価し難い。

裁判所は、メッセンジャーの労組法上の労働者性を認定する際、(1)事業組織への組込みについて(、(2)契約内容について、(3)個々の業務依頼に関する諾否について、(4)労務供給の時間・場所・態様について、(5)事業者性について検討しています。

非常に微妙な判断ですね。

なお、東京地裁(平成21年5月13日・労経速2076号3頁)は、別訴において、メッセンジャーの労基法(現在では労契法)上の労働者性を否定しています(営業所長の労基法(現在では労契法)上の労働者性を肯定しています。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介206 経営は何をすべきか(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

経営は何をすべきか

著者は、ロンドン・ビジネススクールの教授です。

イノベーションについて改めて考える機会を与えてもらいました。

非常に良い本です。 おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

妥協したり、他社が無条件に従うトレードオフを受け入れたりしたのでは、偉業など達成できない。トレードオフから抜け出す、つまり、二者択一を拒んで二兎を追うことによって、偉業は生まれる。・・・ここからは、『競争相手と同じトレードオフを受け入れたのでは、優位に立つことはできない』という大切な教訓が得られる。聞き分けのよい人々は、ブレークスルーを起こせないのである。」(121頁)

「聞き分けのよい人々は、ブレークスルーを起こせない」

心に突き刺さる言葉ですね。

業界の常識では、無理だとされていることに果敢に挑戦することからブレークスルーを起こす。

「うちの業界では・・・」なんて恥ずかしいことを言っている間は、枠からはみ出すことはできません。

常識を常識として受け入れるのではなく、「本当にそれって当たり前なの?」と疑問に持つことが大切ではないでしょうか。

周りに無理だと言われることに挑戦することに喜びを感じられる人種が世の中を変えていくのだと確信しています。

賃金61(ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう!!

さて、今日は、元料理人からの賃金減額分差額請求と割増賃金請求に関する裁判例を見てみましょう。

ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件(札幌高裁平成24年10月19日・労判1064号37頁)

【事案の概要】

Y社は、北海道の洞爺湖近くで「ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ」を経営する会社である。

Xは、平成19年2月、Y社との間で労働契約を締結し、平成21年4月までの間、本件ホテルで料理人又はパティシエとして就労していた。

Y社は、Xの賃金を減額した。

Xは、賃金減額が不当である旨の抗議などはせず、文句を言わないで支払わせる賃金を受領していたところ、平成20年4月になって、Y社から、労働条件確認書に署名押印するよう求められた。

Xは、この書面に署名押印し、会社に提出した。

Y社は、その後、さらに賃金減額の提示をした。

Xは、長時間残業をさせているのに残業代も支払わず、一方的に賃金を切り下げようとするY社の労務管理のあり方に強い反発を覚え、平成21年4月をもってY社を退職した。

【裁判所の判断】

賃金減額は無効

【判例のポイント】

1 平成19年4月にY社がXに賃金年額を500万円にしたい旨の説明ないし提案をしたが、その提示額に関する具体的な説明はなされておらず、他方で、Xはこれに対して、基本給と職務手当の具体的な金額等について尋ねたりすることもなく、「ああ分かりました」などと応答したにとどまるところ、その言葉尻を捉えてXが賃金減額に同意したと解することは、事柄の性質上必ずしも当を得たものとはいえない何故なら、賃金減額の説明ないし提案を受けた労働者が、これを無下に拒否して経営者の不評を買ったりしないよう、その場では当たり障りのない応答をすることは往々にしてあり得る一方で、賃金の減額は労働者の生活を大きく左右する重大事であるから、軽々に承諾できるはずはなく、そうであるからこそ、多くの場合に、労務管理者は、書面を取り交わして、その時点における賃金減額の同意を明確にしておくのであって、賃金減額に関する口頭でのやり取りから労働者の同意の有無を認定するについては、事柄の性質上、そのやり取りの意味等を慎重に吟味検討する必要があるというべきである

2 その後、Y社が、平成19年6月25日支払分から平成20年4月25日支払分までの11か月間、減額後の賃金を支払うにとどめ、Xがこれに対し明示的な抗議をしなかったという事実はあるが、この事実から、Xが平成19年4月の時点で賃金減額に同意していた事実を推認することもできない
何故なら、まず、平成21年4月25日支払分の賃金額からは、Y社について、労働者の同意の有無にかかわらず、自ら提案した減額後の賃金以上は支払わないとの労務管理の方針がうかがわれるところであって、事前に賃金減額に対する同意があったから減額後の賃金を支払っていたものと推認することはできない。
また、賃金減額に不服がある労働者が減額前の賃金を取得するには、職場での軋轢も覚悟した上で、労働組合があれば労働組合に相談し、それがなければ労働基準監督官や弁護士に相談し、最終的には裁判手続をとることが必要になってくるが、そこまでするくらいなら賃金減額に文句を言わないで済ませるという対応も往々にしてあり得ることであり、そうであるとすれば、抗議もしないで減額後の賃金を11か月間受け取っていたのは事前に賃金減額に同意していたからであると推認することも困難である
したがって、Y社の上記主張は採用することができない。

3 ・・・このような無制限な定額時間外賃金に関する合意は、強行法規たる労基法37条以下の規定の適用を潜脱する違法なものであるから、これを全部無効であるとした上で、定額時間外賃金(本件職務手当)の全額を基礎賃金に算入して時間外賃金を計算することも考えられる。
しかしながら、ある合意が強行法規に反しているとしても、当該合意を強行法規に抵触しない意味内容に解することが可能であり、かつ、そのように解することが当事者の合理的意思に合致する場合には、そのように限定解釈するのが相当であって、強行法規に反する合意を直ちに全面的に無効なものと解するのは相当でない。
したがって、本件職務手当の受給に関する合意は、一定時間の残業に対する時間外賃金を定額時間外賃金の形で支払う旨の合意があると解釈するのが相当である

4 本件職務手当が95時間分の時間外賃金であると解釈すると、本件職務手当の受給を合意したXは95時間の時間外労働義務を負うことになるものと解されるが、このような長時間の時間外労働を義務付けることは、使用者の業務運営に配慮しながらも労働者の生活と仕事を調和させようとする労基法36条の規定を無意味なものとするばかりでなく、安全配慮義務に違反し、公序良俗に反するおそれさえあるというべきである(月45時間以上の時間外労働の長期継続が健康を害するおそれがあることを指摘する厚生労働省労働基準局長の都道府県労働局長宛の平成13年12月12日付け通達-基発第1063号参照)。
したがって、本県職務手当が95時間分の時間外賃金として合意されていると解釈することはできない
以上のとおりであるから、本県職務手当は、45時間分の通常残業の対価として合意され、そのようなものとして支払われたものと認めるのが相当であり、月45時間を超えてされた通常残業及び深夜残業に対しては、別途、就業規則や法令の定めに従って計算した時間外賃金が支払われなければならない

高裁は、一審の判断を維持しました。

一審判決については、こちらを参照。

いろいろと参考になる裁判例ですね。

使用者側は、賃金減額をする際は、文書で合意をもらっておくべきです。

また、固定残業代の制度がこれだけ普及してくると、今までに検討されてこなかった新しい争点が出てきますね。

上記判例のポイント4については、使用者側としては頭に入れておくべきでしょう。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介205 上司はキミのどこを見ているのか?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます 一週間お疲れ様でした。
__←先日、スタッフを連れて「おか穂」に行ってきました
 
同級生の大将ががんばっています。
 
いつ行っても混んでいます。すばらしいですね。
 
今日は、午前中は、損保会社の方と打合せです。
 
午後は、打合せが1件、弁護団会議が1件入っています。
 

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。

上司はキミのどこを見ているのか?

まさにタイル通りの内容です。

非常にいい本です。

部下のみなさんだけでなく、上司のみなさんも非常に参考になると思います。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

そもそも世の中には2種類の人しかいない。自分の話したいことを話す人と、相手が聞きたいことを話す人だ。自分の話したいことを話す人は常に自分視点。相手が聞きたいことを話す人は常に相手視点。この差はビジネスにおいてものすごく大きい。ビジネスとは、いかに顧客の要望をつかみ、いかに顧客の望みを解決するか。それにかかっている。・・・だからこそ、部下がデリカシーなく自分の話したいことばかりを話していると、『上司相手に自分の話したいことを話している人は、顧客相手にもそうするだろうな』『相手視点になれない人には、仕事を任せられないな』と、上司からダメの太鼓判を押されてしまうんだ。・・・相手は何を知りたいだろうか、何を聞きたいだろうかと考えて話をしていくと、顧客視点で考えることができるようになるんだ。」(155~156頁)

とてもわかりやすいですね。

相手の視点に立つことにより、どのような動きをすればよいかが見えてきます。

外資系生命保険会社のトップセールスマンが、先日、こう言っていました。

「成功している営業マンに話し上手な人はほとんどいないよ。みんな聞き上手。」

自分のことばかり話をする人は、気をつけましょう。

自分のことを話すよりも、相手に質問をしてあげる。

自分よりも相手が話す時間のほうが長くなるように意識する。

自分のことは、相手から質問されたときに、質問された範囲で話しをする。

つまり、相手が関心を持っていることを話す。

こういうことを意識するだけで、かなり変わると思います。

仕事でもプライベートでも、意識し、習慣化することが大切です。

労働災害63(A工業事件)

おはようございます
__←先日、社団法人の理事会終了後、理事のみなさんと「こはく」に行ってきました

写真は、「さくらえびのかき揚げ」です。

みんなプラスのオーラが出ているので、パワーをもらえます。 本当にいい仲間です。

今日は、午前中は、離婚調停と新規相談が1件です。

午後は、新規相談が3件、顧問先会社との打合せが1件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は特別加入者死亡に対する労災補償不支給決定処分取消請求に関する最高裁判決を見てみましょう。

A工業事件(最高裁平成24年2月24日判決・労判1064号18頁)

【事案の概要】

本件は、建築工事の請負を業とするY社の代表取締役であり労災保険法(改正前のもの)27条1項所定の事業主(中小事業主)の代表者として法28条1項(現行法34条1項)の承認に基づき労災保険に特別加入していたXが、Y社において受注を希望していた工事の予定地の下見に赴く途中で事故により死亡したことに関し、その妻が、Xの死亡は同項2号にいう「業務上死亡したとき」に当たるとして、法に基づく遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求したところ、広島中央労働基準監督署長から、これらを支給しない旨の決定を受けたため、その取消しを求めた事案である。

本件の争点は、労災保険法28条(現行法34条)1項2号所定の業務上死亡した場合に当たるかである。

第1審判決(広島地裁平成21年4月30日)は、Xの本件下見行為に業務遂行性を認めた。

第2審判決(広島高裁平成22年3月19日)は、一審判決を取り消し、業務遂行性を否定した。

【裁判所の判断】

上告棄却
→業務遂行性を否定

【判例のポイント】

1 法28条1項が定める中小事業主の特別加入の制度は、労働者に関し成立している労災保険の保険関係を前提として、当該保険関係上、中小事業主又はその代表者を労働者とみなすことにより、当該中小事業主又はその代表者に対する法の適用を可能とする制度である。そして、法3条1項、労働保険の保険料の徴収等に関する法律3条によれば、保険関係は、労働者を使用する事業について成立するものであり、その成否は当該事業ごとに判断すべきものであるところ(最高裁平成9年1月23日)、同法4条の2第1項において、保険関係が成立した事業の事業主による政府への届出事項の中に「事業の行われる場所」が含まれており、また、労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則16条1項に基づき労災保険率の適用区分である同施行規則別表第1所定の事業の種類の細目を定める労災保険率適用事業細目表(昭和47年労働省告示第16号)において、同じ建設事業に附帯して行われる事業の中でも当該建設事業の現場内において行われる事業とそうでない事業とで適用される労災保険率の区別がされているものがあることなどに鑑みると、保険関係の成立する事業は、主として場所的な独立性を基準とし、当該一定の場所において一定の組織の下に相関連して行われる作業の一体を単位として区分されるものと解される
そうすると、土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業(同施行規則6条2項1号)を行う事業主については、個々の建設等の現場における建築工事等の業務活動と本店等の事務所を拠点とする営業、経営管理その他の業務活動とがそれぞれ別個の事業であって、それぞれその業務の中に労働者を使用するものがあることを前提に、各別に保険関係が成立するものと解される

2 したがって、建設の事業を行う事業主が、その使用する労働者を個々の建設等の現場における事業にのみ従事させ、本店等の事務所を拠点とする営業等の事業に従事させていないときは、上記営業等の事業につき保険関係の成立する余地はないから、上記営業等の事業について、当該事業主が法28条1項に基づく特別加入の承認を受けることはできず、上記営業等の事業に係る業務に起因する事業主又はその代表者の死亡等に関し、その遺族等が法に基づく保険給付を受けることはできないものというべきである

3 Y社は、建設の事業である建築工事の請負業を行っていた事業主であるが、その使用する労働者を、個々の建築の現場における事業にのみ従事させ、本店を拠点とする営業等の事業には全く従事させていなかったものといえる。そうすると、Y社については、その請負に係る建築工事が関係する個々の建築の現場における事業につき保険関係が成立していたにとどまり、上記営業等の事業については保険関係が成立していなかったものといわざるを得ない。そのため、労災保険の特別加入の申請においても、Y社は、個々の建築の現場における事業についてのみ保険関係が成立することを前提として、Xが行う業務の内容を当該事業に係る「建築工事施工(8:00~17:00)」とした上で特別加入の承認を受けたものとみるほかはない
したがって、Xの遺族である上告人は、上記営業等の事業に係る業務に起因するXの死亡に関し、法に基づく保険給付を受けることはできないものというべきところ、本件下見行為は上記営業等の事業に係る業務として行われたものといわざるを得ず、本件下見行為中に発生した本件事故によるXの死亡は上記営業等の事業に係る業務に起因するものというべきであるから、上告人に遺族補償給付等を支給しない旨の本件各処分を適法とした原審の判断は、結論において是認することができる。

特別加入者に関する最高裁の判断です。

参考にしてください。

本の紹介204 本当に頭がよくなる1分間勉強法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます
__←先日、SEの会社の社長と2人で「チェリビ」に行ってきました(笑)
 
おっさん2人でチェリビ。なかなかこの選択はありません。
 
もっとも、話している内容は、今後の社団の運営等、とても真面目なのです。
 
久しぶりに食べました。青春の味です。今日は、午前中はラジオの打合せです。午後はずっと御前崎で法律相談です

夜は、新規相談が1件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
本当に頭がよくなる1分間勉強法

少し前の本ですが、もう一度読んでみました。

「勉強法」という言葉がタイトルについている本を片っ端から読み直しています。

この本は、いわゆる勉強法とは異なり、速読法に近いものです。

いかに素早く学習するか、という点を強調したものです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

よく、『専門家になりたいので大学に通います』という人がいるのですが、それは『時間のムダ』であるケースが多いです。図書館に行って、その分野の本を200冊近く読破したほうが、専門家になるには手っ取り早いのです。・・・アインシュタインもエジソンも、学校で勉強したわけではなく、自分で勉強をしました。」(89~90頁)

予備校やセミナーに通うことで、勉強した「つもり」になっていませんか、という話です。

学んだことを実践しなければ、意味がありませんよね。

セミナーを受けて、「ためになりました」「目から鱗が落ちました」と言い、そのまま行動に移さないのであれば、時間の無駄になってしまいます。

99%の人は、実行に移さないのではないでしょうか。

いいと思ったことは、間髪入れずに行動に移すという習慣が身についている人こそ、インプットをする意味があるのではないでしょうか。

特に20代、30代は、行動力が命だと思います。

やってなんぼ、みたいな感じです。

賃金60(HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件)

おはようございます。

さて、今日は、解雇予告手当請求権の消滅時効について判示した裁判例を見てみましょう。

HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件(東京地裁平成25年1月18日・労経速2168号26頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、Y社が支払った解雇予告手当の額には不足があると主張して、同未払分として190万9056円及びこれに対する退職日以降の賃確法所定の遅延利息並びに同額の付加金等を求めた事案である。

Y社は、通信・情報関連ハードウェア及びソフトウェアの開発、保守及び管理並びに情報・電算処理業、労務管理事務代行業等を目的とし、バハマ国法を準拠法とする外国会社であり、世界的金融グループであるHSBC(香港上海銀行)グループの労務管理事務の代行等を行っている。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、解雇予告手当請求権はその性質上時効消滅しない旨主張し、この点に関する根拠として行政通達(昭27・5・17基収1906号)を引用するが、当裁判所は、解雇予告手当請求権は、その性質上時効消滅しうるものであって、その時効期間は2年であると解する
すなわち、使用者が労働基準法20条所定の予告期間を置かず、または予告手当の支払をしないで労働者に解雇の通知をした場合、その通知は即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り、通知後同条所定の30日の期間を経過するか、または通知の後に同条所定の予告手当の支払をしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力を生ずるものと解すべきであるところ(最高裁昭和35年3月11日判決)、ここにいう「予告手当の支払をしたとき」には、使用者側が自ら正当であるものとして計算した結果に従って解雇予告手当を支払ったところ、不足額があった場合も含まれるものと解する。

2 そうすると、かかる支払をした解雇は有効であるものと解すべきところ、そうであるとしても、使用者側が不足分の解雇予告手当を支払う義務を免れると解することには何ら合理的理由はないから、少なくともこの場合、労働者に不足分の解雇予告手当請求権が生じるものと解すべきである。Xが引用する前記行政通達が、解雇予告手当について一切債権債務関係の生じないことを前提として、これを理由に解雇予告手当が時効消滅し得ないものと解しているのであれば、かかる解釈は相当ではない。
そして、解雇予告手当について、請求権を観念することができる場合には、これについて時効を観念することもできるものというべきであって、その時効期間は、解雇予告手当請求権が労働基準法115条の「この法律に規定する(中略)その他の請求権」に当たることは文言上明らかであるから、同条により2年となると解すべきである

3 Xは、地位確認請求訴訟の提起が、時効中断ないしこれに準ずる効力を有するものと主張する。
この点、地位確認請求訴訟は、労働者としての地位のあることを前提とするものであるから、その訴訟提起を、同様の前提に立つ賃金請求権の行使と同視する余地はあるとしても、労働者としての地位を失ったことを前提とする解雇予告手当請求権の行使と同視する余地はない。
よって、Xによる訴訟の提起を、解雇予告手当請求権の行使と同視することはできず、Xの前記主張には理由がない

4 労働者は、付加金を請求する場合、違反のあった時から2年以内に裁判上の請求をしなければならないところ(労基法114条ただし書。この期間制限は除斥期間の定めであると解される。)、・・・この裁判上の請求には、労働審判の申立ても含むものと解する

解雇予告手当の消滅時効について判示しています。

2年以上後に解雇予告手当を請求されることはあまりありませんが、参考にしてください。

とはいえ、ややマニアックな論点ですので、事前に顧問弁護士に相談すれば足りますね。

本の紹介203 仕事頭がよくなるアウトプット勉強法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます 久しぶりの雨ですね。たまにはいいですね。 今週も一週間がんばりましょう!!
__←先日、スタッフを連れて、「organico」に行ってきました

写真は、「4種のチーズのピザ」です。おいしゅうございました。

最近、オルガニコにはまっています。おすすめですよ。

今日は、午前中は裁判の打合せが1件入っています。

午後は、顧問先会社で打合せです。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
仕事頭がよくなるアウトプット勉強法

前の本ですが、もう一度読んでみました。

タイトルに「勉強法」という言葉が使われていますが、勉強の方法に関する記述はそれほど多くありません。

むしろ勉強や仕事に対する向き合い方、考え方が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

採用試験の面接で中心に見ているのは『成功体験』です。一番重視しているのは、『成功の再現性』。つまり、そのやり方でもう一回やったら、同じような結果が出せるのかという点。方法論を確立しているかどうかが、勉強したことを生かして仕事で成果を確実に出せるか否かのカギとなります。・・・単なるラッキーかもしれませんし、もしかしたら天才なのかもしれません。しかし、ビジネスで求められるのは天才ではなく、継続して成果を出せる人。一発屋よりはコンスタントに成果を出せる努力家がいいのです。」(185~186頁)

いわゆる「一発屋」ではなく、ヒットを連発できることが事業をしていく上では必要になってきます。

まぐれ当たりでは、長く続かないわけです。

継続して成果を出せる人というのは、やはり基本ができている人なんだと思います。

基本がしっかり身についていれば、状況が変わっても柔軟に対応できるので。

ちなみに学校での勉強の出来、不出来は、仕事で成功するか否かに全く関係ありません。

これだけは断言できます。

例外がありすぎて、法則化するのは無理なのです。

むしろ、社会に出てからも、学ぶことを止めない人こそが成功に近い人なのではないでしょうか。

20代、30代で勉強するのは当たり前ですが、40代以降も、ずっと向上心を持って、生涯、勉強していたいと思います。