Monthly Archives: 3月 2013

労働災害58(後藤塗料商会事件)

おはようございます
__←先日、顧問先会社の社長とともに「博」に行きました

突然、毛ガニが出てきました。

言うまでもなく、味は秀逸です! すばらしい!!

今日は、午前中は、弁護士会で法律相談が入っています。

午後は、不動産関係の裁判が1件入っています。

最近、不動産関係の裁判が非常に多いです。

土曜日のセミナーの準備をしないと・・・

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、労災の特別加入者による労災保険不支給処分の取消請求に関する裁判例を見てみましょう。

後藤塗料商会事件(東京地裁平成24年7月20日・労判1058号84頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の代表取締役であるXが、就業中に脚立から滑り落ちて左足を負傷し、左リスフラン関節脱臼の傷害を負ったことが、業務遂行中の災害であると主張して、労働者災害補償保険法の特別加入者として、同法に基づく療養補償給付および休業補償給付の支給を請求したところ、品川労基署長が、本件傷害は業務遂行中の災害とは認められないという理由でこれらをいずれも支給しない旨の処分をしたことから、Xが、国に対し、本件各不支給処分の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

本件各不支給処分は違法

【判例のポイント】

1 特別加入制度は、労働基準法上の労働者に該当しない者であっても、業務の実情、災害の発生状況等に照らし、実質的に労働基準法の適用労働者に準じて保護するにふさわしい者もいることから、かかる者に対し、保険技術的な観点から可能な範囲において、労災保険を適用しようとする制度であるところ、特別加入者の被った災害が業務災害として保護される場合の業務の範囲をあくまでも労働者の行う業務に準じた業務の範囲としており、特別加入者の行う業務に関するすべての行為に対して労災保険による保護を与える趣旨のものではないと解される。そのため、本件通達は、要件を定めて、これを満たす行為に限り、業務遂行性を認めるとし、その1つとして、要件ロ「労働者の時間外労働または休日労働に応じて就業する場合」が定められている。
かかる趣旨によれば、要件ロの注の「労働者の所定労働時間外における特別加入者の業務行為については、当該事業場の労働者が時間外労働又は休日労働を行っている時間の範囲において業務遂行性を認めるものである。」という定めのうち「特別加入者の業務行為」については、要件イと別異に解する理由はなく、中小事業主の行為が、要件イの「特別加入申請書別紙の業務の内容欄に記載された所定労働時間内において、特別加入の申請に係る事業のためにする行為(当該行為が事業主の立場において行う事業主本来の業務を除く。)及びこれに直接附帯する行為(生理的行為、反射的行為、準備・後始末行為、必要行為、合理的行為及び緊急業務行為をいう。)を行う場合」に当たることを要するものというべきである。

2 なお、要件ロが、要件イのように中小事業主の時間外労働や休日労働に当たる行為という定め方をしなかったのは、中小事業主の場合は、自己の判断で時間外労働に従事することとなり、労働者とみなされる業務を遂行している際に被災したものか、事業主の立場において行った事業主本来の業務中に被災したものか等を判断できない事態が生じうるため、時間外労働や休日労働に従事していた労働者の陳述等によって、中小事業主が時間外労働や休日労働に従事していたことを証明させることとしたものと解される

3 Y社は塗料販売を業とする会社であり、会社の規模は役員2名、従業員3名という極めて小規模な会社であること、Xが本件受傷当時行っていた作業は店舗内の美化のための商品棚や壁の塗装であること、作業の態様も脚立の1.3mの高さの天板に腰掛けて、刷毛でペンキを壁に塗っていたものであることなどに照らせば、本件行為はあくまでも塗料販売を行う本件店舗の美化のために必要な行為であり、Xの特別加入申請にかかる事業である「塗料販売」の必要行為であるというべきであるから、「塗料販売」に直接附帯する行為であると認めることができる
以上によれば、Xは、本件受傷当時、「労働者の時間外労働に応じて就業していた」ものと認めることができるから、前記要件ロに該当し、本件受傷は、労災保険法7条の「業務上の負傷」に該当するというべきである(業務遂行性が認められる以上、本件受傷が業務に起因することは明らかである。)。

労災保険の特別加入に関する裁判例はあまり見かけませんが、いつか取り扱うかもしれません。

日頃から準備をして、いざというときに適切に対応できるようにしなければいけません。

すべては準備が大切ですね。

本の紹介181 決断する力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
決断する力 (PHPビジネス新書)
決断する力 (PHPビジネス新書) [新書]

猪瀬さんの本です。

先日、猪瀬さんの「突破する力」という本を紹介しました。

非常によい本だったので、もう少し猪瀬さんの考えを知りたいと思い、読んでみました。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

仕事ができる、とは、仕事が速い、という意味。決断はスピード、実行もスピード。それが人の信用の基準。わかる人にはわかる合い言葉。いつも心がけていること。」(58頁)

決断が速い人というのは、間違いなく仕事ができる人ですね。

こういう人は、普段から決断が速いのが特徴です。

レストランでメニューを選ぶとき、買い物に行って品物を選ぶとき・・・いかなる場面においても決断は速い。

経営者は、実は、こういうところをよく見ています。

例えば、就職希望者と一緒に食事に行った場合、その人がどのような選択のしかたをするかを見ています。

面接では見えないその人の実際の姿を見たいのです。

数多くのメニューの中から、なかなか選べない人は、仕事においても、大事な場面で適切な選択ができないのではないか、という推測をしてしまうわけです。

仕事上、なかなか決断ができないという方は、日頃から決断のスピードを上げることを意識してはどうでしょうか。

労働災害57(富国生命・いじめ)事件

おはようございます
__←先日、久しぶりに「アンアン」のピザをテイクアウトして、事務所で食べました

さすがに一人で2枚は食べられません。休日出勤をしていたスタッフと一緒に食べました。

具がてんこもりです。 やみつきになりますね。

今日は、午前中は、顧問先会社の打合せが入っています。

お昼は支部総会に参加します。

午後は、建物明渡しの裁判が1件、新規相談が1件、裁判の打合せが2件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、いじめ・嫌がらせによるうつ病発症・休業と業務起因性に関する裁判例を見てみましょう。

富国生命・いじめ事件(鳥取地裁平成24年7月6日・労判1058号39頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において営業職のマネージャーとして勤務していたXが、Y社鳥取支社長であったA及び鳥取支社米子営所長であったBの、逆恨みによるいじめ、嫌がらせにより、過重な心理的負荷を受け精神疾患(ストレス性うつ病)を発症し、3週間にわたり休業に追い込まれたとして、鳥取労基署長に対して労災保険法による休業補償給付を各休業期間について請求したところ、処分行政庁がそれぞれの期間ともに不支給処分を行ったことから、それぞれ不支給処分には、Xの罹患した精神疾患を業務に起因するものではないと誤って判断した違法があるとして、同処分の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

鳥取労基署長による休業補償給付不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 相当因果関係の判断基準である、当該業務自体が、社会通念上、当該基礎疾患を発症させる一定以上の危険性の有無については、職場における地位や年齢、経験等が類似する者で、通常の勤務に就くことが期待されている平均的労働者を基準とするのが相当である。
そして、労働者の中には、一定の素因や脆弱性を有しながらも、特段の治療や勤務権限を要せず通常の勤務に就いている者も少なからずおり、これらの者も含めて業務が遂行されている実態に照らすと、上記の「通常の勤務に就くことが期待されている平均的労働者」とは、完全な健常者のみならず、一定の素因や脆弱性を抱えながらも勤務の軽減を要せず通常の勤務に就き得る者を含むと解することが相当である。
そこで、当該業務が精神疾患を発症ないし増悪させる可能性のある危険性ないし負荷を有するかどうかの判断に当たっては、当該労働者の置かれた立場や状況、性格、能力等を十分に考慮する必要があり、このことは業務の危険性についていわゆる平均的労働者基準説を採用することと矛盾するものではない。

2 被告は、精神障害の業務起因性は、判断指針及び認定基準に基づいて行われるべきであると主張する。
しかしながら、判断指針及び認定基準は、各分野の専門家による専門検討会報告書に基づき、医学的知見に沿って作成されたもので、一定の合理性があることは認められるものの、精神障害に関しては、生物学的・生理学的検査等によって安定できるものではなく、診断に当たっては幅のある判断に加えて行うことが必要であり、あたかも四則演算のようなある意味での形式的思考によって、当該労働者が置かれた具体的な立場や状況等を十分斟酌して適正に心理的負荷の強度を評価するに足りるだけの明確な基準となっているとするには、いまだ十分とはいえない
したがって、精神障害の業務起因性を判断するための一つの参考資料にとどまるものというべきである

3 Xは、平成15年2月初旬から本件発症に至る同年7月末の終わりまでの間に、上司とのやり取り、それによって生じた軋轢、感情的対立及び自己を巡る環境の変化から精神的負荷を蓄積させていったことになり、また、この間においてXに蓄積していた精神的負荷は、平均人の立場から見ても非常に強いものだったと解される。そして、Xの症状が、一連の出来事によるXの精神的負荷の蓄積に併せて、前記のとおり悪化し、その強い精神的負荷は、仕事や職場において得てして見られる上司と部下の関わり、人間関係に端を発し、営業成績や職場環境によって醸成されたものであることからすれば、社会通念上、Xの精神的負荷は業務の遂行により発生し、しかも、その発症は発症すべくして発症したものというべきであり、Xの精神的負荷は、客観的にみてストレス性うつ病を発症させる程度に過重であったと認めるのが相当である。
したがって、本件では、社会通念上、Xの業務に内在ないし随伴する危険の現実化として、本件発症に至ったものということができるから、本件発症との間には相当因果関係が存在する。

上記判例のポイント2は、判断それ自体には特に目新しいさはありませんが、言い回しは参考になりますね。

本の紹介180 成功する社長が身につけている「52の習慣」(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます また一週間が始まりましたね。今週もがんばっていきましょう!!
__←先日、事務所の近くの「穂乃花」に行ってきました

写真は、今年初の「アンコウ鍋」です。ぷるっぷるのアンコウがたくさん入っていました。

秀逸です。

今日は、午前中は、建物明渡の裁判が1件、裁判の打合せが1件入っています。

午後は、離婚調停が1件と裁判の打合せが3件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
成功する社長が身につけている「52の習慣」 (DO BOOKS)
成功する社長が身につけている「52の習慣」 (DO BOOKS)

現在、同じ社団法人で理事を務めている吉井さんの2冊目の本です。

吉井さんからはいろいろなことを学ばせていただいています。

とてもいい本です。おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

まずは自分自身への問いかけが大切なのです。『どうやったら儲かるか?』ではなく、『どうやったら、他者への貢献ができるか?』という質問を、自分自身に対して投げかけるのです。・・・儲からないのは、自社がお客様に喜んでいただいていないからです。ただそれだけの、いたってシンプルなことなのです。」(103~104頁)

成幸社長は、『儲けている』のではなく、『儲かっている』のです。」(106頁)

経営者が、この発想を持っているかどうかは、話をすればすぐにわかります。

また、会社の従業員の方の様子を見れば、すぐにわかります。

経営者が従業員や顧客から搾取し、自分だけ儲かればそれでいい、という会社が繁栄するはずがありません。

だれがそんな経営者についていきたいと思うでしょうか。

だれがそんな経営者とお付き合いしたいと思うでしょうか。

私は、従業員を幸せにできない経営者は、従業員を雇用する資格がないと思っています。

従業員は仲間です。 仲間が困っているときは、みんなで助ける。みんなで守るのは当たり前のことです。

その先頭に立つのが経営者ではないでしょうか。

管理監督者31(セントラルスポーツ事件)

おはようございます。

さて、今日は、スポーツクラブ運営会社のエリアディレクターと管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

セントラルスポーツ事件(京都地裁平成24年4月17日・労判1058号69頁)

【事案の概要】

Y社は、スポーツクラブの運営等を業とする会社である。

Xは、Y社に従業員として採用され、昭和56年からY社での勤務を開始し、平成15年10月からエリアディレクターに昇格したが、21年10月、副店長に降格した。

Xは、Y社に対し、平成19年11月分から21年9月分までの時間外手当等を請求した。

【裁判所の判断】

管理監督者性を肯定

【判例のポイント】

1 管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理につき経営者と一体的な立場にあるものをいい、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきである。具体的には、(1)職務内容が少なくとも、ある部門全体の統括的な立場にあること、(2)部下に対する労務管理等の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、部下に対する人事考課、機密事項に接していること、(3)管理職手当等特別手当が支給され、待遇において時間外手当が支給されないことを十分に補っていること、(4)自己の出退勤について自ら決定し得る権限があること、以上の要件を満たすことを要すると解すべきである

2 Xは、人事、人事考課、昇格、異動等について、最終決裁権限がないことを理由に管理監督者でないと主張するが、Xの主張するように解すると、通常の会社組織においては、人事部長や役員以外の者は、到底、管理監督者にはなり得ないこととなる労働基準法が管理監督者を設けた趣旨は、管理監督者は、その職務の性質上、雇用主と一体となり、あるいはその意を体して、その権限の一部を行使するため、自らの労働時間を含めた労働条件の決定等について相当程度の裁量権が与えられ、労働時間規制になじまないからであることからすると、必ずしも最終決定権限は必要ではないと解するのが相当である。

3 Xは、営業部長より、前日の業務について、翌日の午前10時頃に定時連絡をすることを指示されていること、また、マネージャー及びエリアディレクターはお客様を出迎えるために各スポーツクラブの開館時間頃には出勤しなければならないと指示していたことから事実上、出退勤時間が拘束されていたと主張する。
しかしながら、Xは、自己の勤務時間については、人事部に勤務状況表を提出するために部下であるCの承認を受ける以外、誰からも管理を受けておらず、実際にXが遅刻、早退、欠勤によって賃金が控除されたことがないことからすると、営業部長の発言の趣旨は、エリアディレクターとしてエリアを統括する以上、エリアの状況を当然に日々営業部長に報告することを指示したにすぎず、出勤時間を拘束する趣旨ではなく、また、開館時間についてもXは必ずしも開館時間に出勤していたとは認め難いことからすると、これをもって事実上出勤時間が拘束されたとはいえない
したがって、Xは出退勤の時間を拘束されていたものとは認められず、Xは自己の裁量で自由に勤務していたものと認められる。

4 Xが管理監督者であっても、Y社は深夜手当の支払は免れない。

5 以上のとおり、Xは管理監督者に該当するのであるから、Y社には故意に時間外手当の支払を免れようとした悪質性はなかったものと認められる。
したがって、付加金の支払を命じることは相当でない。

珍しく管理監督者性が肯定されてました。

エリアディレクターだから、というような形式的な理由ではありませんので、エリアディレクターでも管理監督者と認められない場合も当然あります。

上記判例のポイント2、3は参考にしてください。

人事に関し最終決定権限までは必要がないという判断です。 

原告側代理人がそう言いたくなるくらい管理監督者性の基準は厳しいのです。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

本の紹介179 成功者の告白(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます
__←先日、社労士の先生や会計士の先生と「こはく」に行ってきました

写真は、駿河軍鶏のたたきです。 身のしまり方がすばらしいですね。

いつもながら、とてもおいしゅうございました。

今日は、午前中は、不動産に関する交渉が入っています。

午後は、新規相談が2件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
成功者の告白 (講談社プラスアルファ文庫)
成功者の告白 (講談社プラスアルファ文庫)

少し前の本ですが、ちょっと気になったので、読んでみました。

物語を通して、成功者に必要なマインドを教えてくれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ピーター・ドラッカーによれば、このように会社や事業の寿命が個人の労働可能寿命よりも短くなることは、歴史上はじめてのことである。これまではひとつの仕事、たとえば印刷工になれば、一生そのスキルひとつで食っていけた。しかし今では、スキルを身につけても、まだ働けるのに会社のほうが先に寿命がきてしまう。それは一生の間に、いくつもの異なる分野で異なる能力を発揮しなければならないという、まったく新しい時代に生まれたことを意味する。
この環境では、変化に適応できる能力こそ安定を生む。看板や地位にしがみつくのではなく、自らを破壊し、柔軟に変化するからこそ、価値を生み出せる世の中になっている。
」(60頁)

「自らを破壊し、柔軟に変化するからこそ、価値を生み出せる」というようなことは多くの本で書かれていることですね。

確実に社会や業界の状況が変化しているにもかかわらず、自分は従前通りというのでは、うまくいくこともうまくいきません。

よくブログに書くことですが、変なこだわりを持っていると、なかなか柔軟に変化することが難しくなるのではないでしょうか。

「状況に応じて臨機応変に対応する」ということだけ決めておけばいいですね。

逆に細かいことを決めれば決めるほど身動きがとれなくなる。

あるがままを受け入れ、その状況で最善を尽くす。

人生においても仕事においても、そんな思いで毎日、突っ走っています。

不当労働行為64(関西学院(期限付契約職員雇止め)事件)

おはようございます。

さて、今日は、期限付契約職員の雇止めまたは嘱託職員として継続雇用しなかったことと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

関西学院(期限付契約職員雇止め)事件(中労委平成24年10月3日・労判1058号96頁)

【事案の概要】

Xは、Y法人のキャンパス自立支援課コーディネーターに応募して、平成18年4月1日、雇用期間1年、最長4年まで更新の可能性がある旨の期限付契約を締結し、キャンパス自立支援課で勤務することとなった。

平成20年11月または12月頃、キャンパス自立支援課課長は、Xから最長4年となっている自分の雇用について、本当に継続雇用の可能性がないのか人事課に聞いて欲しいと要請され、人事課に問い合わせたところ、継続雇用はできないといわれ、これをXに伝えた。

また、Xを嘱託職員に変更して継続雇用することの可能性についても人事課に確認したところ、そのようなことは課長には関係ないといわれ、それをXに伝えた。

21年1月、Xの所属長である教務部長および課長は、Y法人にXの継続雇用の可能性について確認したところ、Y法人から人事政策を変更することはできないと回答され、2月、Xにその旨を伝えた。

【労働委員会の判断】

Xの雇止めは不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 Xの継続雇用の可能性に関する人事課への問い合わせの経過からすれば、「継続雇用の可能性」は、回答済みの期限付契約職員としての継続雇用の可能性のことではなく、むしろ、明確な回答がなかった嘱託職員としての継続雇用の可能性の趣旨であったものと解するのが相当であり、21年1月20日の確認は、その点に関する法人の方針についての最終的な確認として行われたものであるとみることができる。また、上記の問い合わせに対する回答の内容はその都度Xに伝えられていたのであるし、同年2月13日、教務部長から継続雇用できない旨言われたことに対して、Xは、「私たちの継続雇用に向けて、あなた方ができる手立てはもうないと判断されたということですね。」「わかりました。後は自分でどうにかします。」と述べ、同日、自宅に帰った後に労働組合関係者に連絡を取り、翌日、労働組合関係者から紹介された組合に初めて連絡を取って、同月24日に組合に加入したのであり、これらのことからも、X自身、期限付契約職員としての継続雇用のみならず、嘱託職員への雇用形態の転換による継続雇用についても可能性がない旨を告げられたと理解していたものとみることができる。

2 そうすると、法人がXを期限付契約職員としては雇止めをしたこと及び同人を嘱託職員に変えて継続して雇用することも行わないことは、既にXが組合に加入する前から法人がとってきた方針なのであるから、これらをもって、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとはいうことはできない

雇止めが組合員であるがゆえの不利益取扱いにあたるか否かについて、法人が、既にXが組合に加入する前から雇止めにすることを決めていたことを理由に否定しました。

方針決定の時期からの判断という点で参考になります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介178 パクリジナルの技術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます
__←先日、仕事帰りに、一人で「博」に寄りました

自慢のお刺身とともに森伊蔵です。 遅めの晩ご飯のためこれで終了。

当然のことながら、長居はせず、1時間一本勝負で帰宅しました。

今日は、午前中は、顧問先会社でのセミナーが入っています。

テーマは、「第3回 契約書作成に必要なリーガルマインド習得講座」です。

午後は、労働事件の裁判と交通事故の裁判が1件ずつ、刑事裁判の判決が入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
パクリジナルの技術 ~何をパクリ、どうオリジナルを生みだすのか~ (経済界新書)
パクリジナルの技術 ~何をパクリ、どうオリジナルを生みだすのか~ (経済界新書)

帯には、「スティーブ・ジョブズ、孫正義、柳井正・・・世界の一流は、みんなパクって成功してます!

と書かれています。

同旨の内容の本は結構ありますよね。

この本もパクって成功しようとしていますね(笑)

すばらしいです。 有限実行。

この「パクリジナル」という造語は、「パクるだけではダメで、オリジナルまで昇華させなければならない」という意味を込めているようです。

この造語は、いまいちです(笑) たぶん、はやりません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ぼくは3才の時から練習を始めています。3才~7才までは、半年位やっていましたが、3年生の時から今までは、365日中、360日は、はげしい練習をやっています。だから一週間中、友達と遊べる時間は、5時間~6時間の間です。そんなに練習をやっているんだから、必ずプロ野球の選手になれると思います」(119頁)

これは、イチロー選手の「僕の夢」と題した小学校の卒業文集の一部だそうです。

「そんなに練習をやっているんだから、必ずプロ野球の選手になれると思います」って、すごくないですか?

まるで他人のことを評価するかのように、自分のことを評価しています。

これは、スポーツに限らず、受験勉強や仕事でも同じことがいえます。

自信を保つ唯一の方法は、圧倒的な準備だと思っています。

他人を誤魔化すことはできても、自分を誤魔化すことはできません。

日々の小さな準備をどれだけ続けられるか。

これができる人は目標を達成できるというシンプルな法則なのです。 

能力ではなく、習慣の問題です。

解雇98(ネッツトヨタ札幌(諭旨退職処分)事件)

おはようございます。 

さて、今日は営業スタッフに対する諭旨退職処分の効力に関する裁判例を見てみましょう。

ネッツトヨタ札幌(諭旨退職処分)事件(札幌地裁平成24年6月5日・労判1058号88頁)

【事案の概要】

本件は、Y社にサービス担当の総合職エンジニアとして採用され、営業スタッフとして勤務していたXが、Y社から諭旨退職処分とする旨の意思表示をされたが、(1)同処分に不可欠な退職届を提出することもなかったから、同処分が効果を生じておらず、未だY社との間の雇用契約は終了していないし、(2)諭旨退職処分の効力が生じているとしても、同処分には客観的に合理的な理由がなく、社会通念上も相当であるといえないから、同処分が懲戒権の濫用により無効であると主張し、雇用契約に基づいて、同契約上の地位の保全と給与の仮払いとを求めた事案である。

【裁判所の判断】

諭旨退職処分は無効

【判例のポイント】

1 ・・・上記通知には、「貴殿は、本日まで、退職届を出していません。そこで、通知人会社は、貴殿に対し、本書送達後5日以内に、書面で退職届を提出するように、改めて、通知します。もしこの期間内に、貴殿から諭旨退職届のないときには、直ちに懲戒解雇となりますので、御留意下さい。」と記載されていると疎明されるから、それ自体、停止条件付きの懲戒解雇の意思表示と解することもできないものではない。また、Y社における従業員の退職については、自己都合退職について「本人の都合により、退職を願い出て会社の承認があったとき」と定められているほか、「その他相当の理由があるとき」と定められていると疎明される一方、諭旨退職の手続については、「諭旨のうえ退職させる」と規定されているのみであるから、Y社においては、諭旨退職の手続について必ずしも退職届の提出が必須のものとされているものではないと考えられる。そうすると、本件諭旨退職処分については、退職届の提出期限である平成23年12月30日の経過をもって、その効果が発生したものと解するのが相当である

2 本件においては、Xに雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めるべき保全の必要性があることを疎明するに足りる主張も疎明資料もない。

3 疎明資料及び審尋の全趣旨によれば、Xは、妻の外、Xの父及び兄とともに二世帯住宅において生活を送っているが、X夫婦とXの父及び兄とは別々に生計を立てていること、X及び妻は、夫婦の生活費の外、同住宅を取得する際の兄名義の住宅ローン月額13万円のうち8万円並びに同住宅の光熱費等のうち燃料代及び回線使用料等を負担していること、Xの妻は、本件諭旨退職処分の後、失業するに至っているほか、Xの父及び兄からの援助も期待することができないこと、Xに貯蓄等の蓄えもないことが疎明される。このようなXの生活状況等に照らすと、本件においては、Xが請求する月額賃金にほぼ相当する額の仮払いを命ずるだけの保全の必要性があるということができる(一方で、月額賃金を超えて賞与等の仮払いを命ずるだけの保全の必要性についての具体的な主張も疎明もない。)が、一方で、本案審理の見込みに照らすと、賃金の仮払いは、平成24年6月から平成25年5月までに限って認めることが相当である。

本件は、仮処分事案です。

上記判例のポイント1は、おもしろい認定のしかたをしていますね。

「まあ、そうとも解釈できるね」という感じでしょうか。

仮処分事案ですので、被保全権利と保全の必要性について疎明しないといけません。

現在、私も2件、労働事件の仮処分事件をやっています(1つは労働者側、1つは使用者側)。

賃金仮払いの仮処分が認められると、労働者側とすると非常に助かる反面、使用者側とすると非常につらいところです。

自ずと攻防も激しくなります。

訴訟とは異なるポイントを押さえつつ、全力で戦うのみです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介177 思考の「型」を身につけよう(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます 今週も一週間お疲れ様でした。 今日から3月です。今月もがんばっていきましょう!!
__
←先日、スタッフと「あさ八」に行ってきました

1時間一本勝負です。 野菜を食べたいときは、このお店ですね。

今日は、午前中は、建物明渡しの裁判と労働事件の仮処分の審尋が入っています。

午後は、新規相談が5件と調停の打合せが1件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、本の紹介です。
思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント (朝日新書)
思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント (朝日新書)

エコノミストの方の本です。

経済学における考え方を切り口として、物事をどのように考えたら合理的であるかを解説している本です。

読み物としてとてもおもしろいと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・地球環境が一変すると、それまでの環境にパーフェクトに適応していた恐竜は絶滅せざるをえなくなります。代わって新世代の地球の覇者となったのはかつての劣等生であった哺乳類でした。『地球上の生物の生存』大目標と考えるならば、着々と環境に適応した恐竜よりも、無駄の多い進化を遂げた哺乳類の方が優れた進化の経路をたどっていたのです。
これは現代の組織においても同じことです。今の経営環境にぴったりの人材を集め、今の業界慣習に完全に併せた技能のみを習得している人材で構成される会社は、局所最適化に陥っている可能性があります。自社を取り巻く環境が変わり、その会社の経営陣・社員がみな『恐竜』になってしまっていたとき、その会社の命運はつきると言っても過言ではないかもしれません。
」(178頁)

この文章、みなさんはどう読みますか?

私は、「あまり強いこだわりを持たない」ということを大切にしています。

変にこだわりが強いと、柔軟性に欠ける気がするからです。

自ら新しい仕事をつくっていく、自らよりよい環境をつくっていくことももちろん大切です。

しかし、他方で、与えられた仕事、与えられた環境の中でいかに自分の力を発揮するかということもまた大切だと思います。

すべての前提条件を自分の力を発揮しやすいものに変えることは難しいです。

「この仕事(会社)は自分には向いていない」と思うのは自由ですが、どの仕事をしたって、すべて自分の思うとおりになることなどありえません。

みんな与えられた環境や地位の下で精一杯もがきながら役割を果たす。

そこに小さな達成感や幸福感を感じることができるかどうか。

それは、環境や仕事の内容ではなく、自分自身の考え方ひとつなんだと思います。